Posted:2023/02/17
教員お薦めの本(工学部)
推薦者名:篠原 正典
本書に,「新左翼系の党派に入るという少なくとも東京では『市民社会から降りる』ということ」とある。このことは,私が学生時代であった90年代もそうだったように思える。90年代はカルトともいえる新興宗教が流行った時代でもあり,やはりそのような宗教にのめりこむことは「市民社会から降りる」ことでもあった。本書には,「左翼というのは始まりの地点では非常に知的でありながらも,ある地点まで行ってしまうと思考が止まる仕組みがどこかに内包されている」とあるが,本書を読みながら宗教も同じような所があるように思えた。いや,特定の思想を現実社会に適用する際には,必ず起こることなのかもしれない。だからこそ,学生運動が華やかなりし時代の雰囲気・動静を知ることは,将来に出会う政治・宗教・教育などに関する思想にどう向き合えばいいのか,考える契機になるのではないかと思う。
本書は,学生運動が一番激しかった時代を取り扱っているため,伝説ともなりえる有名な名前が多く出て,彼らにまつわる端的な説明も本書の面白さの一つである。さらに,学生運動を経験してもなお,事業などで成功している方々の紹介もあり,その方々の能力の高さにも驚かされる。