Recommended Books by Teachers (Review)

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  • 2024/03/28 Books
    漢字文化事典 = The encyclopedia of Chinese character culture / 日本漢字学会編

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:古澤 義久

    この本は漢字にまつわるさまざまな事柄に関して解説した事典です。形・音・義(意味)といった漢字そのものの解説に加え、漢字の調べ方、漢字の歴史、様々な漢字辞書、漢字教育などさまざまなテーマで243項目が取り扱われています。対象となる地域も中国や日本だけでなく、朝鮮半島やベトナムはもちろん、欧米圏の漢字まで扱われており、世界的な広がりがあります。事典と言えば通常、「引く」ものですが、この事典は一項目につき2頁または4頁で解説されており、「読む」ことができる事典です。漢字の持つ奥深い世界を手軽に知ることができる便利な本です。この本を紹介した私も2項目書いていますので、探してみてください。

  • 2024/03/28 Books
    道をひらく / 松下幸之助著

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:新田町 尚人

    社会人として働き始めてしばしば考えることに、「経営者はいったい何を考えているのだろうか」がある。経営者は一般労働者の考えとは異なる判断を行うことが多く、彼らは何を考えているのかを知りたくなる。「株価や株主のことしか考えていない」、「金の亡者」と思える経営者も多いが、人格者と言える経営者も少なくない。
    松下電器産業(現パナソニック)を創業した松下幸之助は、丁稚奉公という会社でいえば一番下の立場から働き始め、創業した会社を日本有数の大企業に育て、私たちの暮らしを向上させる製品を世に送り出してきた。
    松下が著した『道をひらく』では、「逆境」という試練にもまれた人は尊いと書かれており、幼い頃から病気がちで丁稚奉公からスタートした松下自身の人生を振り返っているように思える。私たちが困難に直面した際に勇気を与えてくれる文章だ。しかし、物事がうまく進む「順境」も尊いと言っている。逆境であれ順境であれ、与えられた環境に素直に生きる、謙虚の心を忘れないことの大切さを説く。読むたびに、自分自身が素直に生きているか、謙虚の心を忘れていないかを気づかせてくれる。
    また、次のページには「志を立てよう。本気になって、真剣に志を立てよう」と書かれている。「志を立てるのに、老いも若きもない。そして、志あるところ、老いも若きも道は必ずひらけるのである」。大学に入ること自体が人生の目的となり、学生生活で何をどうしていけばよいのかわからない学生が多いのではないだろうか。志はすぐに立てられなくても、何か新しいことを始めてみて、面白ければ続けてみればどうだろう。いつか、志につながるかもしれない。
    経営者だけでなく、マネージャー層、一般の方々から愛された『道をひらく』は、1968年の出版から50年以上、発行560万部を超える人気の本である。書かれていることの多くは人としての姿勢であり、普遍的な思想である。多くの人と共有したい思想である。人生という道に迷ったとき、その道をひらく手助けをしてくれる松下の言葉が満ち溢れた一冊である。

  • 2024/03/28 Books
    自動車の社会的費用 / 宇沢弘文著

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:鈴木 裕介

    日本を代表する経済学者である宇沢弘文氏が1974年に出版した名著である。
    私たちの社会は1960年代以降の急速な自動車の普及、いわゆるモータリゼーションの進展により、様々な恩恵を受けてきた。人々の移動は容易となり、より遠くへ、より早く移動することができるようになった。またトラックを中心とした物流網が整備され、物質的な豊かさを獲得した。一方で自動車の普及は私たちの社会に様々な交通問題を引き起こした。都市の市街地では自動車交通の増大による慢性的な交通渋滞が発生している。また自動車事故は毎日のように日本のどこかで発生し、尊い命が失われている。さらに国道などの自動車の交通量の多い幹線道路の沿道では、自動車による騒音や大気汚染などが深刻化し、人々の生活環境は悪化している。
    このような自動車の負の側面をいち早く指摘したのがこの書籍である。宇沢氏は自動車が急速に普及し始め、政府も高速道路などの整備を積極的に進め始めた時代の流れの中で、いち早く自動車のベネフィットだけではなく、自動車のコストに目を向けるべきだとこの書籍の中で主張している。新たな道路建設による自然環境の破壊、自動車からの排気ガスや事故による被害などを社会にもたらされるコストと捉え、自動車中心の社会の問題点を指摘している。
    そして私たちが生活する現代、自動車中心の社会はさらに深化し、私たちの生活はもちろん、街の形や社会のあり方も大きく変えてしまった。皆さんも生活の様々な場面で自動車を利用し、自動車は日々の生活における「当たり前」なものになっているだろう。しかし便利なものだからこそ、生活における自動車の活用の仕方をぜひ考えてほしい。街中で小さなわが子に「車に気をつけて」と注意する親の姿、自動車を運転できない高齢者が自宅から遠いスーパーへ買い物に出かける姿、狭い歩道を車をよけながら登校する小学生の姿。
    自動車の利便性と引きかえに、私たちは何か大切なものを失ってしまったのではないか。ぜひ大学生の皆さんにぜひ一読してもらいたい一冊である。

  • 2024/03/28 Books
    十角館の殺人 / 綾辻行人 [著]

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:渡部 智也

    世の中には「これを読んでいないなんて、人生の損失だ!」と思えるような本が確実に存在しています。そしてそのうちの1冊は、間違いなくアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』でしょう。これはその推薦文に書いたことですが、クリスティーの作品の影響力はすさまじく、これまでに数々のオマージュやパスティーシュ(模倣作品)が生み出されてきました。その中でも必読の名作と言えるのが、時代と国を超えて生み出された『十角館の殺人』です。本書は、推理小説研究会に所属する大学生たちが、合宿で集まった孤島で一人ずつ殺されていくという物語です。これだけ見ると、まさにクリスティーの作品をなぞっただけの作品に思えますが、それをどう作者の綾辻行人が「味付け」しているか、が読みどころです。本書は、そのトリックに関わる部分から、長らく映像化が不可能と言われてきました。しかし、2024年にHuluで実写ドラマ化されることが発表され、再び注目を集めています。食べ物に食べ頃があるように、本にも読み頃というものがあります。この実写ドラマ化は、まさに今こそ本書を読むべきタイミングであることを象徴的に示しています。まずクリスティーの原作を読んで「本格」探偵小説を味わった後、是非綾辻行人の本作を読んで、現代の「新本格」探偵小説を堪能して欲しいと思います。なお、推薦者個人は、実は同作者による別作品『時計館の殺人』をより評価していますが、残念ながらこの本は福岡大学図書館にはありません。興味を持った方は、是非購入申請して欲しいと思います。

  • 2024/03/28 Books
    そして誰もいなくなった / アガサ・クリスティー著 ; 青木久惠訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:渡部 智也

    最近の学生さんと接していて痛感することがあります。それは、「皆さんこちらが想定している以上に本を読んでいない!」ということ(勿論例外はあります)。これは、特にインターネットとスマートフォンの発達により、娯楽が多様化したことと無縁ではないでしょう。しかしながら、世の中には「これを読んでいないなんて、人生の損失だ!」と思えるような本が確かにあります。大学生のうちに、出来るだけ多くそのような本に触れておいて欲しいと思っています。
    前置きが長くなりましたが、そのような観点から強くお薦めしたいのが、このアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』です。おそらく誰もがタイトルくらいは聞いたことがあるでしょう。孤島に招かれた、互いに面識のない男女十名が、童謡(数え唄)になぞらえて次々に殺されていく物語です。「あれ、なんかそういう話を見たことがあるような」と思った方は鋭いです。なぜなら、クリスティーのこの作品の後ろには無数のオマージュやパスティーシュが続いている、つまり、このクリスティーの作品をベースに、様々な模倣作品が生み出されているからです。その形も小説、漫画、アニメ、ドラマ、映画、ゲーム、と多種多様で、その影響の幅広さは底知れません。それら全ての作品の原点とも言える、この『そして誰もいなくなった』を読んでおくことで、世の中に氾濫する本作の亜種に触れたとき、自然とその面白さを十二分に味わうことができるようになるでしょう。

  • 2024/03/28 Books
    續明暗 / 水村美苗著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:畑中 佳恵

    夏目漱石の未完の小説『明暗』(大正5年)を、現代の女性作家である水村美苗が「完結」させた話題作である。本作について予備知識をもたず、作者の名前を隠したままページをめくれば、まずは明治・大正期らしい文章だと感じるだろう。漱石の文体への擬態はすみずみまで行き届いており、漱石が造形した津田や淸子やお延ら登場人物の「あれから」が、何の断絶もなく書き継がれているかのような錯覚を起こす。実際、冒頭の「百八十八」章は『明暗』の末尾がそのまま用いられているのであり、読者は漱石の文章を入り口に、水村が「完」と書き付ける「二百八十八」章までを読み通すことになる。これは誰の作品なのだろう。作者とはいったい何なのか。小説と作者をめぐるラディカルな問いへといざなわれた読者は、すでに文学研究の門を叩いているのかもしれない。

  • 2024/03/28 Books
    悪魔の系譜 / J・B・ラッセル著 ; 大瀧啓裕訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:小笠原 史樹

    アメリカの歴史学者にして宗教学者、ジェフリー・バートン・ラッセル(1934-2023)の著作。英語の原題は『暗黒の王子:歴史上の根源的な悪と善の力(The Prince of Darkness: Radical Evil and the Power of Good in History)』で、原著の出版は1988年。J・B・ラッセルは長年、主に西欧における悪魔の概念の歴史について研究し、古代から現代に至る悪魔の概念について『悪魔』、『サタン』、『ルシフェル』、『メフィストフェレス』という四冊の研究書を発表した後、それら四冊の概略をコンパクトに示す本として、この『悪魔の系譜』を書いた。この類の本はしばしば、多くの情報を一冊で伝えようとするあまり、無味乾燥な記述で満たされてしまいがちであるが、本書にその心配は要らない。ページをめくる度に、魅力的で印象的な物語の紹介や引用、それらの物語に関する明快で刺激的な解釈が次から次へと出てきて、とにかく面白い。当然ながら、悪魔に関連する文学作品への言及も豊富で、これから読む本を探すための「読書ガイド」としても使える。また、悪魔の物語や概念について調べることで悪の問題にアプローチしようとする、という方法論も明確であり、この明確さも、本書の読みやすさに大きく寄与しているように思われる。もちろん、決して「完璧」な本ではない。それぞれの物語の解釈がどこまで妥当なのか、色々と検討の余地はあるだろうし、悪の問題がやや単純化されすぎている、とも感じられる。その他、日本語訳に幾らか違和感を覚える箇所もあるが、それらの「問題点」によって本書の魅力が失われてしまうわけではない。悪魔という一つの「キャラクター」に注目して西欧の概念史を実際に辿ってみせることで、本書は、学術研究の圧倒的な面白さを実感させてくれる。この本では詳しく扱われていないような、西欧以外の「悪魔」の歴史について調べたり、さらに現代日本の小説やマンガ、アニメやゲームなどに登場する「悪魔」について調べたりすることで本書の研究を補完・拡大する、という生産的な課題も与えてくれる。めくるめく「悪魔の概念史」の研究は未だ始まったばかりであり、その研究の一端を担うのは、きっと現代日本の大学生に違いない。

  • 2024/03/26 Books
    実践医療現場の行動経済学 : すれ違いの解消法 / 大竹文雄, 平井啓編著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:八尋 英二

    「行動経済学 (Behavioral Economics)」は経済学と心理学が融合された学問で 2000 年
    初頭に提唱されました。人は直感や感情によって合理的ではない判断をすることがあり
    ます。医療現場では、インフォームド・コンセントによって患者と医師の間で相互理解
    を得ながら治療方針の決定などを決定することが重要視されています。医師が患者に十
    分な医療情報を提供すると患者は合理的な意思決定ができると考えられていますが、実
    は医師の情報提供の仕方次第で患者の意思決定は大きく変わることがあります。これが、
    医療現場で最近注目されている行動経済学です。この本の中には、多岐にわたる異なる
    医療現場や患者・家族状況などで行動経済学の活用方法を患者や家族に対する表現方法
    の工夫について実践例を交えて紹介しています。医療現場の中で行動経済学を用いた行
    動変容への期待が高まる中、多様化する医療現場で将来働く医療系学生には非常に参考
    になると一冊だと思います。

  • 2024/03/21 Books
    父という余分なもの : サルに探る文明の起源 / 山極寿一著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:藍 浩之

    私はミツバチの研究をしている。皆さんはミツバチの社会がほぼ“雌”でできていることをご存じだろうか。女王が生んだ幼虫の世話をし、巣の掃除をして清潔を保ち、幼虫や蜜をためるための部屋を作ったり、外敵が巣に入ってこないように門番をしたり、短期間の多くの蜜を花から集めてきたり・・・このように雌はこれらの仕事を分業しており、雌だけで十分巣を維持できる。一方、ミツバチの“雄”は一生ほとんど働かず、雌に養ってもらう生活を続ける。そのため、英語ではdrone(怠け者)と呼ばれている。雄の唯一の仕事は、春に他の巣箱から出てきた女王バチを探して、交尾をすることである。つまり、雄は多様な遺伝子を次世代に残すためだけに巣内で雌に“飼われている”個体で、社会にとって、その程度の意義しかない。
    もちろん動物の中には、雄が父親になると父性が目覚め、子供の保護、世話、教育を率先して行う種も存在する。また、大型類人猿は雌よりも雄の体が大きくなり、家族を守る役割を持つようになった種がある。その代表格がゴリラであろう。本書を執筆された山極寿一先生は、人間社会のルーツをゴリラに代表される大型類人猿に求め、家族とは何か、父とは何か?そして、人間とはどんな生き物なのか?を解き合かすことに尽力した研究者である。
    ご存じの通り、今の時代は様々な価値観があることを前提にした社会となり、人間社会としては正しい方向に進んでいることは間違いない。一方、これまで人類が当たり前のように受け入れてきた、家族、父、母、社会の在り方も大きく変わろうとしている。これから人類はどのようになっていくのか?今一度本書を通して人間社会の由来に耳を傾け、未来の我々の社会の在り方について考えてみてはいかがだろうか。

  • 2024/03/15 Books
    とてつもない数学 / 永野裕之著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:宮田 一司
    私は数学のファンである。多くの野球ファンが自分ではホームランを打てないように、私も専門的な数学には全くついていけない。それでも数学に引き付けられる。本書は、時に一般人を引き付ける数学の持つ魅力を垣間見せてくれる一冊である。すでに数学のファンである人、これから数学のファンになる人に是非読んでほしい一冊である。本書の章立ては「とてつもない数式」「とてつもない天才数学者たち」「とてつもない芸術性」「とてつもない便利さ」「とてつもない影響力」「とてつもない計算」となっており、見出しだけでわくわくが止まらない。

  • 2024/03/15 Books
    素朴な疑問に答えます

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者氏名:加藤貴史
    食事は心身の健康を保つために非常に重要だ。近年では、食に関する様々な情報が身の回りに溢れている。例えば、政府広報オンラインにも、“「食べる力」=「生きる力」を育む 食育 実践の環(わ)を広げよう"といったコンテンツがあるくらいだ。しかるに、我々は普段の食事や料理に対して、どれくらい正確な知識を持ち合わせているだろうか。よくわからないけど、そう言われているから・・・といった曖昧な理解のままですませたり、信じたりしてはいないだろうか。本書は、食と料理に関する素朴な疑問を科学的見地からわかりやすく解説している。健康関連の話題でよく取りあげられる砂糖や塩、ミネラル、酢、脂肪といったものの話から、肉や魚の料理にまつわる話まで、いろんな切り口からの情報提供がQ&A型式でなされている。全二巻で構成されているので、食や料理に少しでも興味がある人は、ぜひ読んでいただきたい。正しい知識を持ち合わせれば、食生活が今よりもずっと楽しく充実したものになること請け合いだ。

  • 2024/03/14 Books
    手の倫理 / 伊藤亜紗著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:山本 泰暉

    とても興味深く、考えさせられる作品でした。
    「さわる」と「ふれる」。「さわる」はモノに接触するように、一方向的な意味合いがあり、「ふれる」はヒトに接触するような、相手の状態や状況を鑑み、相手からもなにかを感じ取ろうとする双方向的な感覚に陥る。
    「ふれる」には優しさや相手へに気遣いを感じる一方で、湿度を感じるような感情が込められている印象がある。必ずしもすべての場面でふれることは正解ではなく、ドライに、お互いが気遣わず「さわる」ことでスムーズにいく場面もあるのだと感じた。
    自分はこれまでどう人と接してきたか、これからどう接していくのか。ついつい言葉のコミュニケーションに目がいきがちであるが、その中で触覚を通じたコミュニケーションについて考えさせられる一冊です。
    冒頭には、筆者と体育を専門としている先生の間で、「体育の授業が目指すべきところは『他人の体に、失礼ではない仕方でふれる技術をみにつけさせること』」というやりとりがあります。例えば手つなぎ鬼ごっこや、ゲーム中の攻防による接触プレーなど、思い返すと体育授業では多くの場面で接触を伴います。その中で、相手に押し負けたり、逆に自分の力が強すぎて思いがけず怪我をさせてしまったり。そういった、経験や体験をただの失敗や出来事として受け流すのではなく、そこになにを学び取るのか、そのときにどんな声かけができるのか。そんなことを考えると体育授業で教えられることが広がりもっと面白いものになるんじゃないかなと思いました。スポーツ科学部の学生にもぜひ読んでほしいなと思います。

  • 2024/03/14 Books
    未完の天才 南方熊楠 / 志村真幸著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者:大川 雅史

    南方熊楠(1867 – 1941)の研究者である著者の言葉を借りれば、熊楠の魅力は「未完の天才」という点であることだとする。そして、この“未完"をキーワードに13の謎が熊楠にはあると言う。
    明治から大正期にマルチな活躍をした熊楠。超人的な記憶力をもち、十数年前に読んだ書物の抜書の内容を諳んじられたというが、書いて覚えていたらしい。しかし、少年時代に書写したという「和漢三才図会」は、実は“未完"のまま終わっている。上京し、東大予備門に入学するが、数学が苦手で落第して中退している。ここでも“未完"のままである。米・英に留学し、のち大英博物館に勤務、特に英国留学中から科学雑誌『ネイチャー』に投稿し始め、生涯51報の報告をしている。帰国後は、紀南に定住してそこからはほぼ動くことはなく、「エコロジーの先駆者」として環境保護活動に勤しんだかと思うと数年でフェードアウト、民俗学にも貢献するが考え方の違いで柳田國男と仲違い、変形菌(粘菌)研究にも足跡を残したが、キノコの研究は未発表のまま、それでいて“夢"に関する研究は続けていた。
    熊楠は、博物学者、生物学者、民俗学者として世界に名を残している。柳田國男は、彼を「日本人の可能性の極限」と称賛し、「南方君は往々新聞などでは世界の植物学界に巨大な足跡を印した大植物学者だと書かれ、また世人の多くもそう信じているようだが、実は同君は大なる文学者でこそあったが、決して大なる植物学者ではなかった。」と牧野富太郎は評した。
    本書は、最近の研究結果を元に熊楠の実像とはどうであったのかを検証した一冊である。語学の天才と言われた熊楠、なぜ“夢"の研究を続けたのか等の謎は、本書を読んで是非確かめてみて欲しい。

  • 2024/03/14 Books
    植物たちの戦争 : 病原体との5億年サバイバルレース / 日本植物病理学会編著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者:大川 雅史

    ウイルスなどの病原性の微生物(病原体)は、ヒトを含めた動物にとって共通の脅威であるが、免疫というシステムでそれに対抗している。一方、植物は動物のような免疫のシステムをもっていない。では、如何にして植物はウイルスのような病原体に対抗するのであろうか。
    植物に病気を起こす微生物は、主に真菌・細菌・ウイルスの三つである。これらの病原体に対抗する手段を植物は進化の中で獲得・発達させていった。植物細胞は、動物細胞と違い細胞壁をもっている。城で言うところの城壁であるが、病原菌は力技でブチ破り城内に攻め込むように細胞壁を破って細胞内に侵入する。また、植物は分子レベルの防御機構が備わっていて、囮を使って病原菌を感知し、排除するが、病原菌側も植物が仕掛けたワナを恐ろしく精緻なしくみで回避する。まさにお互いに軍拡戦争を繰り広げているようだ。
    一方、植物の病気?と思う諸君もいるかもしれない。1845年から四年間続いたアイルランドの「ジャガイモ飢饉」では、100万人もの犠牲者を出す結果となった。この原因となったのがジャガイモ疫病菌の侵入である。米作をする我が国の農家もイネいもち病で多くの被害を出す。家庭菜園でもうどん粉病、青枯病など病原体が起こす様々な病気が収穫に影響を及ぼす。人間の生活にも無縁ではないのだ。
    本書は、陸上植物がこの世に誕生してから約5億年、微生物との互いに生き残りをかけた闘いについて最新の研究を盛り込みつつ解説をしている。動かないからこその植物の巧みな生存戦略、宿主がいなければ生きていけない微生物が感染を成立させるために如何に進化を遂げてきたかがわかる一冊になっている。

  • 2024/03/14 Books
    競技力向上のためのウエイトトレーニングの考え方 / 河森直紀著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:神田 菜摘

    ウエイトトレーニングを行うにあたって、「競技力向上させたい!」「身体を大きくしたい!」「引き締まった身体をつくりたい!」「リハビリの一環で!」などと様々な目的があると思います。
    この書籍は、タイトルにもある通り「競技力向上」を目的としたウエイトトレーニングについて執筆されています。
    皆さんが持っているウエイトトレーニングの知識は果たして正しいのでしょうか?
    この一冊を読んで、ウエイトトレーニングの行い方を見つめ直してみてください。

  • 2024/03/14 Books
    脳の中の身体地図 : ボディ・マップのおかげで、たいていのことがうまくいくわけ / サンドラ・ブレイクスリー, マシュー・ブレイクスリー著 ; 小松淳子訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:岩崎 領

    我々が想像している以上にヒトの脳は良くできている、そんなことがよくわかる一冊です。身近なトピックを中心に、なぜそのようなことが起こるのかについて脳神経科学の知見から理由を知ることができます。物事がうまく遂行できるわけ、怪奇現象(オーラが見える、幽体離脱など)が起きたと感じるわけ、心と身体の関係など・・・。解説されている内容は、かなり詳しいためもしかしたら難解に感じることもあるかもしれませんが、興味がそそられ、しっかり理解できる内容になっています。知的好奇心を刺激するのに、最適な一冊になること間違いなしです。

  • 2024/03/14 Books
    超訳ニーチェの言葉 = Die weltliche Weisheit von Nietzsche / フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ [著] ; 白取春彦編訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:前川 省吾

    ニーチェは、宗教をあの世的思想だと批判し、この世における真理、善、道徳こそ大切だと唱え、今生きている人間のための哲学を行いました。本著には、彼の急所を突くような鋭い視点、力強い生気、不屈の魂、高みを目指す意志が生み出す名文句を現代人向けに選別された内容になっています。「己・喜・生・心・友・世・人・愛・知・美」の10のテーマについて190の言葉が収録されています。
    自身の経験や思想と照らし合わせることで気づきを得ることができます。決して難しい哲学ではありませんので気軽に読んでほしいと思います。悩んだ時、刺激やインスパイアが欲しい時は、是非この本を読んでみてはいかがでしょうか。

  • 2024/03/01 Books
    なぜ、会計嫌いのあいつが会社の数字に強くなった? : 図だけでわかる財務3表 / 村上裕太郎著

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:河瀬宏則

    企業分析しなくては、あなたはそんな課題で困っていませんか?大学生なら就職活動で企業分析を求められるでしょう。就職希望先の企業の平均給与はいくらなのでしょうか。業績が悪いと職場の雰囲気までもが悪いかもしれません。また、大学を卒業してどこかに就職したのなら、取引先企業の分析のため、株式投資のためなど、企業分析を行う必要があるでしょう。
    企業について調べるとき、会計情報は非常に有用です。企業価値の評価や倒産リスクの評価、企業のビジネスモデルを知ることにも有用です。身近な企業で例を挙げましょう。西日本鉄道(にしてつ)の2023年度の有価証券報告書をチェックすると、売上高の多くの割合を占めるのがバス・鉄道事業ではなく、別の事業であることがわかります。
    この本は会計情報を活用するための入門書です。簿記資格の勉強もビジネスの専門用語を学ぶのに重要ですが、簿記は会計情報を作成することに特化しています。会計情報を活用して企業を分析するには、異なるトレーニングが必要です。
    この本は、会計学を専攻してこなかったビジネスパーソンを対象に執筆されています。会計学を学ぶ商学部の学生はもちろんですが、それだけでなく企業分析に興味はあるけれども、敬遠してしまっている方におすすめします。

  • 2024/02/16 Books
    エミール / ルソー著 ; 今野一雄訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕
    18世紀のフランスの思想家ジャン=ジャック・ルソーは社会契約という考え方で知られている。人間の社会というものは自由な個人が契約によって作り出したものであって、全ての人に平等に権利が認められていなければならないということだ。近代日本でルソーは自由を求める若者から熱烈に支持された。ルソーの『社会契約論』を明治時代に『民約論』として翻訳した中江兆民は「東洋のルソー」と呼ばれている。なぜ「日本のルソー」ではなく「東洋のルソー」なのかと言えば、彼が漢文で翻訳を作ったからだ。漢文であれば中国の人たちにも読める。こうして中江の翻訳は日本だけでなく東アジア諸国に自由啓蒙思想が広がるうえで大きな役割を果たした。今皆さんが学んでいる地域からも「九州のルソー」と呼ばれる明治時代の若者が出た。自由民権運動で活躍した熊本県荒尾市の宮崎四兄弟の長男・宮崎八郎である。彼は中江にも師事したが、西郷隆盛の起こした西南の役に参加して戦死している。さて、ルソーは『社会契約論』とほぼ同時に『エミール』を出版している。このなかでルソーは、人間は自由なものとして生まれるのだが、到るところで鎖に繋がれてきたと書いている。つまり、私たちは生まれたときの自由を守っていかねばならない。社会である以上、個人が自分の欲望のままに生きることはできない。人は社会を契約によって作るときに個人の意志とは異なる社会全体の意志に従うことを約束する。これは一見自由を奪われることのようだが、個人は自由な決断で社会に従うことを選択するのである。だから、王様や上司などの人間に従属することとは全く違う。一方、子どもが保護者である親に従うことは当然と思うかもしれない。しかし、ルソーは『エミール』で、子どもは未熟な大人でなく社会のなかで確固とした位置を占める存在であると書いた。これはとても重要な考えだと思う。現在日本では少子化が大問題になっているが、その背景には子どもの養育に親が過度に責任を感じてしまい重荷になってしまっている事情もあるのではないだろうか。子どもの自由意志を尊重しながら、その安全と教育を大人が見守る在り方が求められているのかもしれない。

  • 2024/02/16 Books
    遠野物語 ; 山の人生 / 柳田国男著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕
    鬼と人間の戦いを描いた『鬼滅の刃』は、アニメになってテレビ放送や劇場で人気を集めた。この時代背景が大正時代であることはご存知だろうか。大正時代、近代化の一方で農村や都会には未だ怪しい物の怪の類が潜む暗闇が残されていた。同じ時代、日本民俗学の創始者・柳田国男は『遠野物語』を出版した。岩手県の遠野地方に伝わる不思議な話を収録したこの本は、当時のオカルトブームとも相まって大変な反響を呼んだ。柳田は序文に「願はくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」と記した。このフレーズは怖いもの見たさでその本を開いた人をゾクゾクさせるサービスかもしれない。だが、恐らくは、都会に住む人々に伝統的な農村の心象風景を思い出してほしいという柳田の願いが込められているように思う。と言っても、柳田の思いは失われていく古いものへの郷愁みたいな生易しいものではなかった。元々、柳田は農商務省の官僚として農山村を調査する仕事をしていた。見出したのは農山村に住む人々の貧しさである。いかにすれば農村を豊かにできるかが官僚・柳田の課題であった。彼は農政学の専門家として早稲田大学で教壇にも立っている。そんななかで日本人が自分自身を知るための学問として民俗学が必要だと考えた。自分たちの意識や社会を改善する方法は外国の学問をいくら学んでも見出すことはできない。自分たち自身を深く考え、自分たちが何者であるかを明らかにすることで初めてできることなのだ。柳田は『遠野物語』を執筆した4年後に貴族院議員書記官長に就任している。しかし、民俗学にかまけて職務を疎かにしているのではないかと疑った貴族院議長・徳川家達(いえさと)と折り合いが悪くなり、就任から5年後に辞任して遂に官界を去った。現在の私たちは、日本人とは何かを考えているだろうか。それを考えないと日本社会は良くなっていかない。『遠野物語』の最初のページには「この書を外国に在る人々に呈す」という1文だけが記されている。ここで名指されているのは現代の日本に暮らす私たちのことである。一人自室で『遠野物語』を読んでみてほしい。ふと後ろを振り返ると、山人たちが君を見詰めているかもしれないよ。

  • 2024/02/16 Books
    諸国民の富 / アダム・スミス著 ; 大内兵衛, 松川七郎訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕
    学生の皆さんに「知ってる経済学者は?」と聞くと「アダム・スミス」と答えるだろう。しかし、経済学の父と呼ばれる本人は自分を経済学者と思ったことはないはずだ。18世紀の彼が専門としたのは道徳哲学という学問であった。これは万有引力で有名なニュートンが大成した自然哲学と並ぶ学問分野で、社会の成り立ちを考える、現在で言う社会科学のことである。アダム・スミスは最初道徳の観点から社会の成り立ちを考えて『道徳感情論』を著した。アダム・スミスが強調するのが共感の感情である。万有引力が物質同士を結び付けて宇宙の秩序を形作っているように、人間社会では他人のことをわが事のように感じる能力によって秩序ある状態が保たれる。ニュートンはアダム・スミスが最も尊敬する学者であった。次いで、彼は社会的分業の観点から社会の成り立ちを考える。こうして有名な『諸国民の富』が書かれた。一般に古典というものは現代人が読んだらなかなか退屈なので、私が学生の皆さんに勧めることは少ない。しかし、『諸国民の富』は面白いから一度読んでみてほしい。なぜかというと、到るところにアダム・スミス自身の驚きが散りばめられているからだ。彼の研究は本当に好奇心が原動力になっていると感じることができる。さて、共感の感情は、分析の次元を異にする『諸国民の富』では交換性向というかたちで姿を現す。人は一人で生きることを好まず、人と物の交換を通じて関わりを持つことに喜びを感じる。そうして分業が生まれるのだが、分業で特定の製品の生産に特化しているうちに生産性が高まって人々は経済的に豊かになっていく。だから、アダム・スミスの経済観は普通そう思われているように競争ではなく共生である。最も世間の誤解が酷いのは『諸国民の富』に一度しか出てこない見えざる手という言葉である。一般に、競争を通じて機能する市場の原理を意味するとされるが違う。アダム・スミスは人々が自分の仕事に専念するうちにお互いに助け合っているという不思議をこの言葉で表している。彼は最後に法律の観点から社会の成り立ちを考える本を準備していたが病で完成できないと思い、原稿を全て焼き払った上で亡くなった。

  • 2024/02/08 Books
    人を動かす / D・カーネギー [著] ; 山口博訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:江田孝治
    デール・カーネギーの『人を動かす』は初版の出版が1936年と非常に古い本ですが、1981年の改訂を経て、2023年に新たに改訂版が出ています。この本は1981年版が元になっていると思いますが、人間関係やコミュニケーションのスキルを向上させるための宝庫です。この本では、他者との効果的な関係構築に不可欠な心理学と実践的な方法が絶妙に融合されています。この本を読むことで、他者との良好な関係を築く方法や協力を促進するテクニックを身につけることができます。
    『人を動かす』は、大学生活だけでなく、社会に飛び出してからも役立つスキルを提供してくれる一冊です。自分の人間関係の質を高め、将来の成功に向けて一歩踏み出すために、ぜひ手に取ってみてください。未来のリーダーや影響力を持つ個人になるための重要な手助けがこの一冊に詰まっています。

  • 2024/02/07 Books
    大量絶滅はなぜ起きるのか : 生命を脅かす地球の異変 / 尾上哲治著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:柴田智郎
     昨年(2023年)の夏は暑かった。その前年10月に福岡大学に赴任してきたので,福岡での初めての夏であった。気象庁ホームページで福岡市の8月の日平均気温を調べてみると,29.7℃である。それまで過ごしていた京都市も暑いといわれているが,京都市の2022年8月の日平均気温は29.0℃なので,それよりも高かった。2023年7月には,グテーレス(António Guterres)国連事務総長は,「地球温暖化は過ぎ地球沸騰の時代が来た」と発言した。地球の気温が上昇しているのは間違いないであろう。今回紹介する本は,尾上哲治著「大量絶滅はなぜ起きるのか 生命を脅かす地球の異変」で,三畳紀末に起きた生物の大量絶滅の謎について記載されている。この時代の特徴は,あらゆる生物が小型化していること,また小型化した生物が例外なく直後に絶滅していることである。隕石衝突や火山噴火など,さまざまな状況証拠を一つずつあげ,絶滅との因果関係を探偵が謎解きするように書かれている。なかでも小型化の原因が二酸化炭素による温暖化によるものであるのは興味深い。これまでの大量絶滅は,いくつかのティッピングポイント(不可逆的で危険な地球環境の状態)を経ながら,数十〜百万年間での環境変化のもとで起きた。後半部分では科学的な根拠が乏しいと述べながらも,現在の地球環境の変化は,三畳紀末に起きたものと共通しており,それはこれから来る地球沸騰の時代への警告であろう。
     本書は,講談社のブルーバックスシリーズであり,最新の科学を分かりやすく書かれている。著者の尾上氏は地質学者であり,地質学者が何をしているのか,どのように考えているかを,著者は「推理小説に登場する探偵は、ある事件現場に残された時間の断面から、犯行の一部始終を推理する。地質学者は、事件現場の時間をもどしたり、あるいは進めたりしながら、何が起こったかを突き止める、と言ってもけっして大げさではないだろう。」と表現している。これから地質学をめざす人はもちろん,現在の地球温暖化に興味がある人にもお薦めする本である。

  • 2024/01/11 Books
    飢えと豊かさと道徳 / ピーター・シンガー著 ; 児玉聡監訳

    教員おすすめ本(医学部)

    推薦者名:神徳 和子

    自分が果たすべき道徳的義務について考えたことはありますか?道徳的義務というと、固く感じますが、2018年に話題となった“君たちはどう生きるか"という漫画のような問いだと思えば、分かりやすいでしょう。本書は、豊かな国に生まれた私たちに、どのように考え行動すれば、効率的に世界をよりよくできるか、ということを論理的に説明してくれます。

    昔から“どう生きるか"を考える習慣があった私にとって、本書は衝撃でした。なぜなら、この「飢えと豊かさと道徳」は、著者本人も指摘しているように、私たちのうちで十分に道徳的な生活を送れている者はほとんどいないという居心地の悪い結論へと至るからです。そして、利己的で、狭い価値観や道徳観だけで他人を批判していた私自身を恥じたほどでした。

    本書の著者である、ピーター・シンガーはアメリカ合衆国の私立大学であるプリンストン大学(Princeton University)の生命倫理学教授です。本書はそのシンガーが発表した1972年の「飢えと豊かさと道徳」、1999年発表の「世界の貧困に対するシンガー流の解決策」、2006年の「億万長者はどれだけ寄付をするべきかーそしてあなたは?」の3編の論文から構成されています。最初の論文が書かれてから50年近くたちましたが、その内容が色褪せることはなく、今でも大量消費社会にいる私たちへ 、“その買い物は本当に必要なものなのか?"と訴え続けています。本書は、世界が抱えている問題の一つである飢餓救済論が中心のテーマでしたが、2024年の今、本書を読むことで、終わりの見えないウクライナ侵攻の問題やパレスチナのガサ地区で暮らす子どもたちのことへ関心が向く人も多いのではないでしょうか。シンガーの言う通り、自分の果たすべき道徳的義務のために行動しなければ、“目の前で溺れる子どもを救ったことにはならない"、という気持ちにさせられます。

    自らの態度や生き方を見直すことができるだけでも、本書には一読の価値があると思います。

  • 2023/12/27 Books
    医の変革 / 春日雅人編

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者:安野 哲彦

    本書は、2023年に東京で開催された第31回日本医学会総会を記念して企画されたものである。AI、IoT、ロボティクスなどの技術革新を核としたデジタル革命は、社会のあり方、医学・医療のあり方に根本的な変革をもたらすことが予想されている。コロナ禍を経験し、少子超高齢化社会を迎えている日本では様々な問題をかかえている。患者さんとともに豊かな人生100年時代を目指すために、日常の医学の勉強ばかりでなく、時代の流れに乗り遅れることなく、今後広い視野をもつために是非手にとって欲しい一冊である。
    Ⅰ部は「医学・医療を変えるテクノロジー」と題してAI、ウェアラブル・デバイス、遺伝子治療をとりあげ、その現状と詳細について解説されている。Ⅱ部の「未解決の健康課題」では、がん、新興・再興感染症、生活習慣病について過去、現在、未来について語られている。Ⅲ部の「医療は社会をどう変えるか」では、コロナ社会における医療、科学の進歩と倫理、地域医療について論じられている。各分野のエキスパート達が、専門的な内容はより分かりやすく解説しており、医師を目指す学生以外に、薬学、工学を学ぶ学生にも読んでもらいたい内容である。

  • 2023/12/21 Books
    仙厓百話 / 石村善右著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:森田慶子

    「江戸時代にも漫画はあった!」
    全国各地で美術館や音楽ホールを手がけてきた前川國男の建築が福岡市で鑑賞できます。大濠公園横の福岡市美術館です。ここには博多の聖福寺の住持を務めた江戸時代の禅僧「仙厓義梵」の作品も所蔵されています。彼の作品はまさに漫画の世界。この世界はどうやって生まれたのか、この仙厓さんがどんな人だったのかがこの仙厓百話で計り知ることができます。へそ曲がり和尚の逸話が100編。いや面白い。この本を読んでから、ぜひ福岡市美術館と仙厓の作品も楽しんでみて欲しいと思います。

  • 2023/07/19 Books
    小さな家 : 1923 / ル・コルビュジエ著 ; 森田一敏訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:野田 りさ

    本書は近代建築3巨匠のひとり、ル・コルビュジェの著書です。著者が示したモデュロールや近代建築の5原則(ピロティ、屋上庭園、水平の連窓、自由な平面、自由なファサード)は今なお建築の世界において普遍的な概念のひとつです。ル・コルビュジェが両親の老後の家として設計した「小さな家」について語っており、近代建築の5原則に通じる萌芽性が随所にみてとれます。本人のスケッチとともに気軽に読める本書は、ル・コルビュジェや近代建築の入門書としておすすめです。

  • 2023/07/19 Books
    次の震災について本当のことを話してみよう。 / 福和伸夫著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:吉澤 幹夫

    平成の時代に日本は阪神淡路大震災と東日本大震災の二つの大震災に見舞われました。また熊本地震などの内陸地震、新燃岳や御嶽山などの噴火が頻繫に発生し、大地が激動の時代に入ったように見える現在の日本は、過去の南海トラフ地震の時代と酷似しています。南海トラフ地震は東側から東海地震、東南海地震、南海地震と呼ばれています。三つが同時に発生したのは1707年の宝永地震。東海地震と東南海地震が一緒に起きて32時間後に南海地震が起きたのは1854年の安政地震。1944年には東南海地震が単独で起き、2年後に南海地震が起きました。これら過去の南海トラフ地震の前後には内陸で多くの地震が起きました。宝永地震では49日後に富士山が大噴火しました。過去の南海トラフ地震の間隔は歴史的に100年~150年です。近い将来日本は南海トラフ地震に必ず見舞われると考えるべきです。21世紀を生きる皆さんに、本書を読んで地震防災への意識を高揚していただくことを期待します。

  • 2023/07/19 Books
    偏差値「10」の差を逆転する : 時間と努力の投資理論 / 山崎元著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    本書は、経済評論家である著者が金融・経済に関係なく、大学で修得するべき社会で必用なスキルについて自身の経験を基に事細かく説明している指南書である。是非とも文系・理系問わず早い学年で読んで貰いたい一冊である。

  • 2023/07/19 Books
    窓のふるまい学 / 塚本由晴, 能作文徳, 金野千恵著 ; 東京工業大学塚本由晴研究室編

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:四ヶ所 高志

    窓の周りには物語が溢れている。窓を通して光や風、熱や音、風景が行き交うから、窓辺には、日差しを取り込んで食事をしたり、風にあたり昼寝をしたり、遠くの景色を眺めたりと人のアクティビティが喚起される。窓は,それが置かれた環境や、人のふるまいと連動し、大きさや形を様々に変えるから、世界中に多様な窓のふるまいを見ることができる。この本は、そうした多様な窓のふるまいを収集したカタログで、ページをめくるごとに世界各地を旅行した気分になれる。建築を構成する要素のひとつに過ぎない窓でさえこれだけ豊かなのだから、建築のデザインには無限の可能性があるのではと、ワクワクさせられる一冊だ。

  • 2023/07/19 Books
    景観のなかの暮らし : 生産領域の民俗 / 香月洋一郎著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:野口 雄太

    民俗学者が描く景観論です。人間と環境の関わり方の目に見える部分が景観であり、それは人々がそこで暮らすことを通して生み出されるということを、たくさんのエピソードとともに素描しています。人々の生活の場を構想する人間として、私たちが住まいや景観を考える時のモノサシの1つを提供してくれると思います。そして、本書を読んだあとで散歩や旅に出かけると、風景の見え方の変化に驚くことでしょう。

  • 2023/07/11 Books
    13歳からのアート思考 : 「自分だけの答え」が見つかる / 末永幸歩著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:遠藤 正浩

    これからの時代は自分なりのものの捉え方ができて自分なりのアイデアを出せることがいよいよ大切になる。しかし、あなたはそれができるであろうか。多くの場面で答を自分で作り出せずに他から得ようとしていないだろうか。例えば美術館に行って絵画を前にして「自分なりの考え」で鑑賞できず、つい解説を見て納得して安心してはいないか。そんな人が、これからますます複雑化する激動の現実世界の中で果たして何か新しいものを生み出したりできるだろうか。この本は美術とその鑑賞方法について書かれているが、単にアートについて詳しくなるための知識本やハウツー本ではない。この本の価値は、人生を活き活きと過ごすために重要な「自分だけの考え方」が見つかる点にある。「すべての子供はアーティストである。問題なのは、どうすれば大人になったときにもアーティストのままでいられるかだ」はパブロ・ピカソの有名な言葉である。13歳の中学生ですっかり美術嫌いになった人は、そこで貴重なアート思考を失ってしまったかも知れない。美術はいま「大人が最優先で学び直すべき教科」とこの本は訴える。気楽にどんどん読み進められる本であるが、読後には思考OSが「13歳」以前の美術が好きであった頃の思考にアップデートされていることに気づくであろう。美術館で絵画鑑賞が楽しめるようになるだけでもこの本を読む価値がある。

  • 2023/07/11 Books
    子育てしながら建築を仕事にする / 成瀬友梨編著 ; アリソン理恵[ほか]著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山 峯夫

    この本では、ゼネコン、アトリエ、組織事務所、ハウスメーカー、個人事務所他、異なる立場で子育て中の現役男女各8名の体験談が掲載されています。建築という仕事に限りませんが、仕事と子育ての両立は試行錯誤の連続です。しかし、得られる発見や喜びは想像以上に大きいはずです。建築業界で働き続けることに不安を持つ学生たちにとってリアルな将来像を描くための参考になると思います。

  • 2023/07/11 Books
    今あるもので「あか抜けた」部屋になる。 / 荒井詩万著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:楠本 彩七

    今、自分の部屋をぐるっと見渡してどういう印象を持ちますか?ものが溢れていたり、逆に殺風景だったり、なんとなくイメージ通りじゃないと思うことはありませんか?作者の荒井詩万さんは、部屋づくりにはルールがあり、それを知れば誰でも簡単にあか抜けた部屋が作れる、そう主張し、20のルールを紹介しています。「“自分らしさ”はルールのあとにやってくる」という一節がとても響きました。インテリア系の雑誌を眺めて真似できないと悩むなら、まずはルールに則りレイアウトを考え、そのあとに自分らしい部屋や理想の部屋に変えていってみてはいかがでしょうか。

  • 2023/07/11 Books
    宇宙を解く唯一の科学熱力学 / ポール・セン著 ; 水谷淳訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:宮田 一司

    熱力学は、化石燃料などが発する大きな熱エネルギーをいかに効率よく動力に変換するかという問題を解決するために生まれた学問である。しかしながら、熱力学から生まれた多くの知見は、その普遍性から多くの学問分野に波及し、役立てられている。本書は、熱力学の発展に貢献した天才科学者たちの暮らしぶりや人間関係までも伺える非常に興味深い一冊である。学部を問わず、熱力学を学んだ方々、熱力学に触れてみたい方々に是非一読いただきたい。

  • 2023/07/11 Books
    Passive design : 見えないデザインで決まる、住まいの本質 / 野池政宏監修編集

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:穴井 謙

    自然エネルギーを活用した家づくりについて,温熱環境性能の世界基準を満たす5つの実例を紹介しながら,解説されています。美しい建築写真と伴に「光と風をデザインする・断熱をデザインする・省エネをデザインする・自然素材をデザインする・愉しむをデザインする」という5つのキーワードが示されていて,建築環境学を本格的に学ぶ以前でも楽しく読めます。いつか住んでみたい,そして設計してみたい空間が見つかるかも知れませんよ。

  • 2023/06/12 Books
    失敗の科学 : 失敗から学習する組織、学習できない組織 / マシュー・サイド著 ; 有枝春訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:小栁 康子

    人と組織は、失敗を隠したがる。しかし、個人と組織が失敗を隠ぺいする姿勢では、回避可能な事故さえも繰り返してしまう。既にわかってはいることであるが、医療事故、航空機事故、企業などのミスのエピソードを読みすすめるうちに自分事として身につまされてくる小説のような本である。小さな偶然が重なりあって患者が死亡する医療ミスの事例など、ハラハラドキドキしながら引き込まれ、あっという間に読み終えることができる。
    私たちは、失敗を避けたい。しかし、失敗を避けるだけではミスは必ず起きる。大切なことは、失敗したら、何が問題でどうしたら改善ができるかを考えることである。しかし、頭ではわかっていても実際にできているだろうか。組織における失敗は、個人攻撃や犯人探しに陥りやすい。その重圧から逃れたくなる。
    この本を読めば、失敗をネガティブにとらえるのではなく、失敗から個人と組織が学ぶためにはどうしたらよいかが理解できる。興味のある方はぜひ手に取って欲しい。

  • 2023/06/12 Books
    ケアする人の対話スキルABCD / 堀越勝著者

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:中島 充代

    本書には、ケアにおける対話について、知識だけでなく実践に役立つテクニックまで記載されています。著者は、よいケアは対象者を思う気持ちだけでは不十分だといい、カウンセリングやコーチングとは異なる、ケアの対話に焦点を当てて述べています。本書を読んで、まずは自分の対話スタイルを知り、著者がいうABCDの型を学び、日常生活で練習し、実践レベルまで高めていきましょう。そうすれば、対象者を理解することにつながり、よいケアの実践に役立つと思います。

  • 2023/06/12 Books
    戦後日本の夜間中学 : 周縁の義務教育史 / 江口怜著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:添田 祥史

    夜間中学を知っていますか?夜に授業をする公立中学校です。戦後の混乱期に、貧困や家庭の事情で昼間は仕事や子守で学校に通えない子どものためにつくられました。現在では、学齢を超過した義務教育未修了者や外国にルーツのあるひとたちが生徒層の中心になっています。国は都道府県と政令市に1校以上の夜間中学設置を表明しています。九州は、長らく夜間中学の灯が途絶えてましたが、2022年4月に福岡市立福岡きぼう中学校が開校し、来春には、北九州市、宮崎市、佐賀県、熊本県が夜間中学の開校を表明しています。そもそも夜間中学とは、なぜ、どのように誕生したのでしょうか。
    本書は、夜間中学の歴史研究の金字塔との評価を得ています。先行研究を丁寧に整理したうえで、全都道府県をまわって独自に史料を収集し、関係者への聞き取り調査を重ね、夜間中学の成立と変遷の過程を周縁社会との関係で描き出しています。重厚な研究書でありながら、どこか温かい不思議な魅力をもった本です。

    第8回生存学奨励賞 、第11回東京大学南原繁記念出版賞を受賞。

  • 2023/06/12 Books
    誤解の心理学 : コミュニケーションのメタ認知 / 三宮真智子著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:中島 充代

    本書は、普段、私たちの日常生活に起こるコミュニケーションの誤解について、心理学の視点からメタ認知を取り上げ、実例を含めて書かれています。例は実際に起こった、笑って済ませられる誤解と、そうでない誤解を取り上げ、ときにクスっと笑えます。ただ、私たち医療従事者は、誤ったメッセージを送ったり受け取ったりするコミュニケーションエラーが、医療事故の要因の一つであることに敏感でなければなりません。予防・対策についても記載されていますので、誤解のないコミュニケーションを目指していきましょう。

  • 2023/05/31 Books
    対人援助の現場で使える質問する技術便利帖 / 大谷佳子著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:中島 充代

    私たち医療従事者は、傾聴と共感を大切にしなさいといわれてきました。ただ、対象者を理解するためには、話を「聴く」だけでは不十分で、もう一つの「訊く」も必要になってきます。また、私たちは、対象者を自分本位の質問で誘導したり、「なぜ」・「どうして」と尋問したりしないようにしています。本書は、援助場面で具体的にどういった質問が効果的なのか、例を挙げて書かれていますので、きっと質問力の向上に役立つと思います。本書のワークシートを活用しながら、楽しく学んでいきましょう。

  • 2023/05/26 Books
    隠されている狂牛病 / シェルドン・ランプトン, ジョン・ストーバー共著 ; 荒木創造訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    タイトルにある様にウシのプリオン病である牛海綿状脳症(狂牛病)を中心として描かれた書籍である。その原因は何か?世界中でのリスク?など危険性について述べているお薦めの本である。

  • 2023/05/26 Books
    人と動物のプリオン病 / 品川森一, 立石潤, 山内一也監修

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    プリオン病を歴史、疫学、臨床、基礎研究など多方面からの情報を記載した学術専門書であるが、和文であるため大学生にも読みやすくなっている。プリオン病研究に少しでも興味を持った方は、是非手に取って欲しいお薦めの本である。

  • 2023/05/26 Books
    薬剤師の管理職とは何をするべきか、どうあるべきか / 宮本誠二著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    本書は、薬剤師となり、キャリアを重ねる上での働き方、薬局内でのキャリアアップ時の苦悩など多くの人が悩む内容に応えてくれる構成となっている。主に薬局薬剤師の管理職に必要な業務・要件について紹介しているものであり、気軽に読める内容である。薬剤師として働くことを志す方にはお薦めの本である。

  • 2023/05/26 Books
    薬剤師として働いていることに希望を持てるように / 宮本誠二著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    薬剤師を目指す上で、コミュニケーション、勉強方法などから、薬剤師になった後の業務に対する心構えについて紹介しており、堅苦しくなく気軽に読める内容である。総じて、社会に出る上で誰もが持つべき共通した心構えにも通じている入門書である。特に薬学部生にはお薦めの本である。

  • 2023/05/24 Books
    日米地位協定 : 在日米軍と「同盟」の70年 / 山本章子著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:生田敏康
    現在、日本国内には多くのアメリカ軍の基地(在日米軍基地)が存在する。そして在日米軍の航空機・ヘリコプター等による事故や軍人および軍属(軍によって雇用されている者)による犯罪は後を絶たない(とりわけ基地が集中する沖縄において深刻な問題である)。これらの事故や犯罪が多発すること自体も問題であるが、これらが日本の国内法によって規律され、公平に裁かれているかといえば、実態はそうではない。その理由は、日米地位協定によって在日米軍および軍人等の特権的地位が認められているからである。
    日米地位協定(1960年以前は日米行政協定)は、日米安全保障条約(安保条約)に基づき、在日米軍や軍人・軍属の日本国内における法的地位に関して日本とアメリカの間で締結された協定である。本書は、在日米軍の駐留という観点から、戦後日米関係の歴史を振り返りながら、日米地位協定の理解を目指すものである。
    本書は、日米地位協定締結に至る過程とその後の運用をたどり、日本と同様に米軍基地を有する外国(ドイツやイタリア)の事情と比較することにより、在日米軍の特権的な地位の多くが、協定の条文自体ではなく、近年まで非公開だった「日米地位協定合意議事録」に基づく運用から生じたものであることを暴く。こうした状況のもとアメリカが在日米軍の既得権益を維持しようと腐心し、日本政府も日米地位協定の改定に消極的な姿勢をとり、この問題を沖縄基地問題に矮小化する実態が描かれる。
     本書は、日米地位協定の考察を通じて戦後史、日米関係および沖縄問題について問題提起をし、新たな知見を提供する点で有益な文献であり、かつ、このテーマに関する数少ない普及書である。ただ、本書を理解するためには、戦後の日本政治史や日米関係に関する基礎知識が必要である。こうした知識がない人は、日本史や政治・経済の高校教科書で関連する部分を復習してから本書を読むとよい。憲法や政治そして沖縄に関心をもっている人に一読をお奨めしたい(本書は2020年石橋湛山賞を受賞した)。

  • 2023/05/24 Books
    古代ギリシアの民主政 / 橋場弦著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:生田敏康
    古代ギリシア人が2500年前に生み出した民主政は、成年男子市民全員に等しく一票の投票権を与え、国家の意思を全体集会の多数決で決定し、任期1年の役人をくじ引きで選ぶ、という徹底した直接民主政であった(アリストテレスによれば民主政とは「順ぐりに支配し、支配されること」である)。本書は、最新の研究成果に基づき、その歴史としくみを述べるものである。
    本書は、古代ギリシアにおける市民参加のメカニズムを詳細に紹介するとともに、民主政の誕生、試練と再生、成熟、衰退を描き、後世における古代ギリシア民主政に対する評価の変遷をたどる。とりわけ、直接民主政を実現するために極めて巧みで徹底した手法が執られていたことに驚かされるとともに、民主政がかなり後世までしぶとく生きながらえていたことが近年の研究から明らかにされる(民主政の衰退時期と考えられていた紀元前4世紀が実は民主政の成熟期であり、紀元前1世紀のローマによるアテナイの陥落まで民主政の命脈は保たれていた)。しかし、古代ギリシア民主政に対する後世の評価は低いものであった。いわゆる「衆愚政」のレッテルが貼られたのである。民主主義が普遍的な価値として認められるようになったのは、せいぜい第2次大戦後以降にすぎず、近代民主主義の歴史は意外と底が浅いと著者は言う(これに対して古代ギリシア民主政は400年以上の命脈を保った)。
    もちろん、(わが国を含めた)今日の民主主義は古代ギリシアの直接民主政と全く違う。市民一人一人が政治権力を行使するのではなく、代表者に権力をゆだねる代表民主制(間接民主主義)がとられていることは周知のとおりである。しかしそれゆえに、主権は国民にある(国民主権)といっても、抽象的で空虚な理念になりがちであることは否定できない。その意味で市民全員が政治に参加し、政治権力を行使した古代ギリシアの民主政は、市民が真に政治に参加し、「分かちあう」ことが求められる現代社会に一つの示唆を与えるものではないだろうか。

  • 2023/05/24 Books
    サラ金の歴史 : 消費者金融と日本社会 / 小島庸平著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:生田敏康
    本書は、いわゆるサラ金(サラリーマン金融=消費者金融)のその前史から現代にいたる100年間の歴史を考察するものである。なぜ営利企業であるサラ金は貧困層に貸し付けたのか、いかにサラ金が貧困層を金融包摂(金を貸して所得を増やす機会を提供すること)してセイフティネットを代替することができたのかという問題を解明するため、本書は「金融技術」と「人(サラ金創業者の個性・創造性)」に視点を充てる。
    一般にサラ金というと、借りる側の窮状に付け込んで暴利をむさぼり、強引な取り立てにより多くの家庭を崩壊させたという非人道的な側面が強調されがちであるが、本書はサラ金の経済的・経営的合理性を内在的に理解しようと努める。著者みずから述べるように、サラ金が成長した歴史的背景を、利用者とサラ金業者の双方の資料を突き合わせて跡づける作業はこれまでほとんどなされていなかった。
    本書は経済学者(経済史)によるものであるが、利息制限法と貸金業法という消費者法の観点から見ても興味深い材料を与えてくれる。サラ金というこれまで本格的な研究の対象とされていなかったものを扱った点で斬新であり、読み物としても大変面白い。本書は、テーマの選定と方法論において社会科学を学ぶ者にとって手本となるものである(本書は2021年サントリー学芸賞を受賞し、2022年新書大賞第1位になった)。

  • 2023/05/22 Books
    希望の一滴 : 中村哲、アフガン最期の言葉 / 中村哲著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 大倉 義文

    「中村 哲」先生の名前を一度は聞いたことがある学生さんも多いのではないでしょうか。この本は、干ばつと戦乱で荒廃したアフガニスタンの復興支援に尽力され、65万人の生活を支える堰や用水路の建設や、生活基盤を奪われていたアフガニスタンの人々との温かな関わりを大事にされていた中村先生の想いの数々を伝えるために、現地で凶弾に倒れた2019年12月までの寄稿連載を西日本新聞が再編集して刊行したものです。中村 哲先生(1946 – 2019年)は福岡県生まれの医師で、日本国内での病院勤務を経て、1984年に国際NGO「ペシャワール会」現地代表としてパキスタンに赴任し、医師の立場からパキスタン人やアフガニスタン難民のハンセン病や腸管感染症などの治療に携わっておられました。しかしながら、2000年にアフガニスタンで大干ばつが発生して以降、現地での井戸の掘削や灌漑(かんがい)用水路の建設にも尽力されました。中村先生が「医療活動から生活基盤の安定化の取組へ」と活動を拡大されたのは、「ほとんどの病気は十分な食べ物と清潔な飲料水があればかからない。飢えや渇きというのは薬では治せない」ことに気づいたことがきっかけと言われています。実際、中村先生は、衛生的な飲み水や農業用水の確保など生活基盤の安定化に尽力され、自ら土木用重機を用いて用水路建設にも従事されていました。ややもすれば、わたしたちは理論や議論を大切にし過ぎてしまい、また、目の前にある不条理から目を逸らしてしまうことも多々ありますが、中村先生は『見捨てられた小世界で心温まる絆を見いだす意味を問い、近代化のさらに彼方を見つめる』姿勢を持ち続けながら、単に理想を語るだけではなく実際に行動し続けられました。豊かな日本に暮らすわたしたちに、ものごとに取り組む際の心構えにも通じる大切なことを教えてくれるお薦めの一冊です。

  • 2023/05/22 Books
    もう牛を食べても安心か / 福岡伸一著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    著者は、ブルーバックス「プリオン説はほんとうか?」で、プリオン研究の世界におけるプリオン説の"危うさ"について一石を投じている。その著者が、世界中を震撼させた狂牛病の視点から、病原体プリオンについて論述したお薦めの本である。

  • 2023/05/22 Books
    プリオン病の謎に迫る / 山内一也著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    獣医学を専門とする東京大学の研究者による病原体プリオンについて解説された本である。ウシのプリオン病である狂牛病(BSE)を主体としてプリオン病の問題点などについて記載しているお薦めの本である。

  • 2023/05/22 Books
    プリオン病とは何か / ピエール=マリ・ジェド著 ; 桃木暁子訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    新興感染症の話から新たな"プリオン"という病原体の定義やプリオンの生体内での分子メカニズムについて基礎的なことを解説されており、狂牛病による社会的影響についても記述されているお薦め本である。

  • 2023/05/22 Books
    眠れない一族 : 食人の痕跡と殺人タンパクの謎 / ダニエル・T.マックス著 ; 柴田裕之訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    タイトルから推察できるように、致死性家族性不眠症という遺伝性のプリオン病患者の話を軸として描かれた小説だが、プリオン病と名付けられる以前の歴史から、狂牛病の話しなどを順を追って学ぶことができるお薦め本である。

  • 2023/05/22 Books
    脳とプリオン : 狂牛病の分子生物学 / 小野寺節, 佐伯圭一著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    ヒトおよびウシや他の動物におけるプリオン病について概説しており、ヒトのプリオン病における遺伝子や病理学的知見など専門的な研究について説明しているが、ボリュームは少なめなので手に取りやすいお薦めの本である。

  • 2023/05/22 Books
    プリオン病の謎に挑む / 金子清俊著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    プリオン仮説でノーベル賞を受賞したプルシナーの研究室で研究した著者が、プリオンの概略から研究データ、治療薬開発などについて解説しているお薦めの本である。

  • 2023/05/22 Books
    プリオン病 : BSE (牛海綿状脳症) のなぞ / 山内一也, 小野寺節著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    東京大学にて獣医学を専門にする研究者の著者らにより作られた人獣共通感染症の視点から論述された専門書である。専門書ながら読みやすく記述されているお薦めの本である。

  • 2023/04/26 Books
    努力する人間になってはいけない : 学校と仕事と社会の新人論 / 芦田宏直著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:山口 幸生

    新たな一歩を踏み出した今、読むべき本

    なんと大胆な書名だろう。芦田は「がんばり屋で目標を達成できない人」を組織で最も有害な人材と断言する(詳細は一読を)。また「学校は生意気な自立志向を粉々にくじくために存在する」とまで言う。過激な表現ではあるが興味をそそられる。この本は10年前に出版され、副題が「学校と仕事と社会の新人論」となっている。そう、新入生や新社会人に向けられたメッセージがあふれているのである。ぜひ一読を。

  • 2023/04/20 Books
    「シェア」の思想 : または愛と制度と空間の関係 / 門脇耕三 [ほか] 執筆

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:四ヶ所高志

    モノや情報,空間とあらゆる事柄を「シェア」する力が社会を動かしつつある。「シェア」する感覚は,人と人の関わり方(「愛」)や,社会をコントロールするための仕組み(「制度」)、制度が現実化することで現れる建築や都市(「空間」)にも変化を与え始めている。本書は、今まさに起こりつつある社会の変化に対し、どのような建築,都市をデザインするべきかを、若い建築家たちが互いに議論し、問いかけるものだ。学生にとって「シェア」という感覚には馴染みがあるだろうし、比較的近い世代の建築家たちの考え方も共感しやすいだろう。

  • 2023/04/20 Books
    現代住宅研究 / 塚本由晴, 西沢大良著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:四ヶ所高志

    この本は、20世紀後半に建てられた住宅のカタログである。およそ50年分の建築雑誌に掲載された約350の住宅作品を、「窓」や「寸法・距離」、「配置」といった作品を特徴づける50のキーワードによって分類し、それぞれに共通するところ、違うところを評論している。このカタログを読み解けば、年代や作者の違いを超えた住宅デザインの切り口がどの辺りにあるのか見えてくるかもしれない。いずれにしても、全ての住宅の図面が1/400のスケールに揃えて掲載されているため、眺めているだけでも楽しい一冊で、学生の頃から今までずっと私の愛読書であり続けている。

  • 2023/04/17 Books
    筋トレが最強のソリューションである : マッチョ社長が教える究極の悩み解決法 / Testosterone著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:古賀 恵

    騙されたと思って読んでほしい、そのような一冊です。
    読み終えた後に「筋トレ」のモチベーションが上がることはもちろんですが、この本の最も注目すべき点は、著者が「筋トレ」に確固たる信念を持っていることです。「筋トレ」を中心に生活が回っており、著者にとって欠かせない人生の彩りなのです。
    大学生という自由に溢れた環境の中、自分がどうしたいのか、どうありたいのかという「自分軸」を見つけられずに学生生活を送っている人もいるかと思います。そのような人にこそ、ぜひ読んでほしいです。皆さんの自己肯定感を高めるきっかけになればと思います。

  • 2023/04/17 Books
    スタンフォードの心理学講義人生がうまくいくシンプルなルール = Lessons to achieve great results / ケリー・マクゴニガル著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:古賀 恵

    「上手くいかないのはどうしてだろう」そう感じたことはありませんか。
    この本には、物事を上手く成し遂げるためのルールが多く書かれています。日常生活の様々な場面に沿って書かれているので、きっと皆さんの為になるようなルールを見つけられるはずです。
    深い内容というよりも幅広く紹介している本になるので、興味を持った内容を深掘りしてみるのも良いと思います。是非、読んでみてください。

  • 2023/04/13 Books
    大学生の文章術 : レポート・論文の書き方 / 旺文社編

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:小笠 希将

    文章の書き方を学びましょう

    大学生になって初めてやることに卒業論文というものがあります。
    これまでスポーツにだけ打ち込んできた人も、勉強を頑張った人もみんな平等に行わなければならない共通の課題です。
    初めてなので仕方ないですが、最初は文章の書き方すらもわからず混乱するかと思います。そこで、この本を読んで予習をしてみるのはいかがでしょうか?
    この本を読めば卒業論文だけでなく、普段のレポートでも高評価がもらえるようになるかもしれませんよ。

  • 2023/04/13 Books
    私のEメール書き方・転送・整理・保存なんでもござれ事典 : Eメールの使い方ひとつで、ビジネスの質とスピードが向上する。 仕事が進むEメール達人の技術 / 岩井洋著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:小笠 希将

    メールの出し方を学ぼう

    「先生、今日の授業をやすみます」
    この文章は、私が担当しているクラスの学生から送られてきた文章です。
    スポーツ科学部の学生の良いところは、抜群のコミュニケーション能力ですが、対面で出会う機会が減っている近年では、メールでコミュニケーションをすることが増えてきました。そういった中でこんなメールを送っては、強みを生かすことなく、ダメだという烙印を押されてしまいます。
    そんな残念な社会人にならないためにも、この本を読んで、メールを出すときの最低限のマナーなどを学んでみてください。入門編としてはわりとおすすめです。

  • 2023/04/06 Books
    音のなんでも小事典 : 脳が音を聴くしくみから超音波顕微鏡まで / 日本音響学会編

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:穴井謙

    建築空間をつくるときに音のことを考えないわけにはいきません。しかし,あまりに身近すぎて,その性質や心理的効果を意識する機会は少ないため,音のことって意外と知らないですよね。建築にまつわる音の話しばかりではありませんが,この書籍では音の基礎から先端技術への応用まで紹介されています。小事典なので,始めのページから読み進める必要はありません。気になる項目を見つけて気軽に拾い読みしましょう。

  • 2023/04/04 Books
    スティグリッツPROGRESSIVE CAPITALISM = プログレッシブキャピタリズム / ジョセフ・E.スティグリッツ著 ; 山田美明訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井敬亮
    行き過ぎた資本主義による弊害が、金融危機、格差問題、環境問題、戦争など、さまざまな場面で見られるようになってきた昨今、あらためて資本主義について考える必要があるのではないでしょうか。本書の著者スティグリッツは、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者であり、アメリカの経済政策にも深く関わってきた人物です。本書でスティグリッツは、資本主義の問題点を指摘するとともに、その解決策についても議論しています。議論のポイントは、資本主義を諦めるのではなく、その枠組みの中で、どのようにして現状を改善していくのか、という点にあります。本書のタイトルにもなっている「プログレッシブ キャピタリズム」とはいかなるものであるのか。本書を手に取って、ぜひその意味について考えてみましょう。

  • 2023/04/04 Books
    自由論 / J・S・ミル著 ; 関口正司訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井敬亮
    ここ最近、迷惑行為がSNS上にアップされ、炎上・社会問題化するケースが後を絶ちません。その行為が法に反する場合は、当然、法によって処罰されることになりますが、他方、法に反しないからといって好き勝手やってもいいということにはなりません。例えば、路上喫煙が禁止されていないところでの喫煙を考えてみましょう。禁止されていないからといって、周りに歩行者がいる中で喫煙することが、果たして許されるのでしょうか。この問題は、言い換えると、「個人の自由はどこまで認められるのか?」ということになります。この問題を考えるにあたり、J. S. ミルの『自由論』(特にその中の「他者危害の原則」の話)は大変参考になります。ぜひ本書を手に取り、この問題について考えてみましょう!

  • 2023/04/04 Books
    アダム・スミス : 『道徳感情論』と『国富論』の世界 / 堂目卓生著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井敬亮
    アダム・スミスは『国富論』(「神の見えざる手」)によって「経済学の父」として知られていますが、スミスの名を一躍有名にしたのは、先に書かれた『道徳感情論』によってでした。かつては、「道徳(公益)を説くスミス」と「経済(私益)を説くスミス」、どちらが本当のスミスなのかという問題(「アダム・スミス問題」)がありましたが、今では両者に矛盾はないとする解釈が主流になっています。それでは、道徳と経済はどのように結びついているのでしょうか。本書は、『道徳感情論』と『国富論』のエッセンスを分かりやすく解説しながら、両著作の整合的な解釈を提示しています。もしかすると、スミスを自由放任主義者と理解している人もいるかもしれませんが、本書を読むことによって、それとは違ったスミス像が見えてくると思います。

  • 2023/03/29 Books
    成熟スイッチ / 林真理子著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:森田 慶子

    成熟とはいったいなんだろうか。おそらく失敗を繰り返し、悩んで答えをつかんだかどうか。そのヒントがこの本に込められていると思う。その答えはおそらく万人にはあてはまらないが、そんな風に考えても良いのではないかと気が楽になるはず。この本をおもしろいなと感じたら、次には林真理子のデビュー作「ルンルンを買っておうちに帰ろう」にも手を伸ばしてみて欲しい。

  • 2023/03/29 Books
    施工がわかるイラスト建築生産入門 / 日本建設業連合会編 ; 川﨑一雄イラスト

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:森田慶子

    これは建築を学ぶ人たちのための絵本である。
    建築の着工から完成、維持・保全までのプロセスが実践に基づいたストーリー仕立てで解説されている。800点以上のイラストと解説文が現場の雰囲気を疑似体験させてくれる内容となっている。

  • 2023/03/29 Books
    「新訳」経験経済 : 脱コモディティ化のマーケティング戦略 / B・J・パインII, J・H・ギルモア著 ; 岡本慶一, 小高尚子訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:村上剛人

    これからのマーケティングにとって重要な経験価値をいかに考えるか?
    パイン&ギルモアの共著である経験経済の著書が1999年に刊行され、その後、流通科学大学出版から電通「経験経済」研究会の翻訳書が上程されたのですが、その後重要な部分の新訳として本著書が刊行されています。これまでモノやサービスをいかに差別化するのかということにフォーカスしていた企業のマーケティング活動でしたが、2000年を境にそれを超えてユーザーが体験することに価値があるといった新しい見方を提示し、マーケケティングの研究分野に刺激を与えています。現在、「コト」マーケティングや「エモ」マーケティング(エモーショナルマーケティング)など人々が行うことや感じることに価値があるという見方からユーザーの活動を再点検し、企業の戦略を見直していくことが求められています。まさにその経験価値を考えていくヒントをたくさんくれるのが本著書です。講義の中でも考えてもらっていますが、ショッピングセンター価値を経験価値から考えたらどんな取り組みができるのか、そうしたことを考えるヒントがたくさん紹介されています。商学部の学生の皆さんは、一度は読んでみて、企業の活動のあり方を考えてみてください。

  • 2023/03/29 Books
    社会的共通資本 / 宇沢弘文著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:野口雄太

    もし「社会的共通資本」という言葉をここで初めて見たという学生がいたら,騙されたと思って本書を手にとって見てください。私が推薦するのが烏滸がましいほど,読んでおくべきものとして広く知られた本です。公共施設や商業ビル,果ては個人の住宅に至るまで,私たちが設計者・計画者として関わる建築は,どのようなものであっても社会的共通資本の1つです。(目先の)利益や施主の(独善的な)要望に応えるだけではなく,社会に生きる一人として,どのようなものを設計すべきか考えさせられます。

  • 2023/03/29 Books
    「いい建築」をつくる構造設計のエッセンス / 深澤義和著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:倉富洋

    いい建築をつくるためには、構造がしっかりしていなければなりません。大学の講義では、建築の構造について多くのことを学びます。特に,構造力学には、いい建築をつくる上で重要な基礎知識が多く詰め込まれています。構造力学を苦手とする学生が多いようですが、構造力学が実際の構造設計でどう活かされているのかを知ることによって、愉しく学べるはずです。本書は,構造力学と構造設計を結びつけ、構造についてわかりやすく丁寧に説明されていますので、是非手にとって読んでみてほしいと思います。

  • 2023/03/29 Books
    民家は生きてきた / 伊藤ていじ著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:野口雄太

    1963年に出版された民家研究の名著の復刻版です。1950年代後半,建築写真家・二川幸夫を伴って各地の民家を訪ね歩いた伊藤ていじは,今に比べればはるかに「民家が生きている」時代にあって,しかし確かに聞こえつつあった「民家が生きていない」時代の足音とともに,本書を残しています。また,民家すなわち住まいは,人々の生活の延長に形を結ぶものであると本書は教えてくれます。今を生きる私たちの住まいは,私たちの生活の形だろうかという問いも浮かびます。二川幸夫の写真集も一緒にどうぞ。

  • 2023/03/29 Books
    建築を語る / 安藤忠雄著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:吉澤幹夫

    大学から社会人になる20代は長い人生の中でも最も重要な時期です。この重要な時期に、建築を生業として志す学生の皆さんに読んでいただきたいのが本書です。建築を独学で学び、コンクリート打放しの建築作品を次々に発表して世界的に著名な建築家の一人となった安藤忠雄氏が、東京大学大学院教授として1998年に建築学専攻の学生を対象に行われた全5回の講義を集成した内容の書籍で、建築と人生を語っています。特に若い世代に向けて、20代でやっておくべきことや今を真剣に生きることを説いており、学生の皆さんに読んでいただいて自分の人生と今やっておくべきことを考えるきっかけになれば幸いです。

  • 2023/03/29 Books
    ピーター・ライス自伝 : あるエンジニアの夢みたこと / ピーター・ライス著 ; 太田佳代子, 瀧口範子訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:吉澤幹夫

    ピーター・ライスは世界最大のエンジニアリング組織であるオブ・アラップ・アンド・パートナーズの構造エンジニアとして、1970年以降、シドニー・オペラハウス、ポンピドゥ・センター、ルーブル美術館、関西国際空港などの優れた建築作品を有能な建築家達との協働により世界中に残しました。1992年に57歳という若さで脳腫瘍により亡くなりましたが、本書はピーター・ライスが闘病中に残された最後の時間で執筆した自伝です。建築家とともに思い描いた夢、その夢の実現のために構造エンジニアとして、一人の人間として考え、常にエンジニアリングに革新的に取り組み続けた軌跡が綴られており、一読をお薦めします。

  • 2023/03/29 Books
    アルプスの少女ハイジ / ヨハンナ・シュピリ [著] ; 松永美穂訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:鈴川 一己

    今でもTVCMでお目にかかるアニメの原作である。アニメは昔、日曜日夜7時半に毎週欠かさず見ていたが、小学生当時は本を読もうとは思わなかった。ふと「大人になった今、原作を読んだらどう感じるだろうか」と思い立った。調べてみると2021年に新訳が出版されている。私は松永美穂氏の翻訳を読んだ。読んでみるとアニメは子供向けに話が変更・編集されていることに気づく。しかしながら、読み終えた後の感動はアニメ以上であった。デジタル時代の今こそ読むべき本であると思う。読み終えたあなたはアルムの山を訪れてみたくなること間違いなしである。

  • 2023/03/29 Books
    進化するブランド : オートポイエーシスと中動態の世界 / 石井淳蔵著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:明神 実枝

    本書のテーマは「日本特有のブランドはどのように生まれたか」です。欧米の著名なブランド研究者は、日本のブランドが欧米のそれとは異なると指摘します。ヤマハの名前の下にバイクもピアノも売られていること、ソニーの名の下に映像・音響機器、生命保険、音楽、映画、ゲームソフト等が売られていることは、私たちにとっては当たり前ですが、欧米のブランドにはあまり見られない現象のようです。
    本書は、日本語の中動態に潜んでいる思想を尋ね、生物・生命の働きを説明するオートポイエーティック・システムの助けを借りて、日本特有のブランドの誕生と成り立ちを明らかにしようとしています。ブランド・ビジネスに関心のある上級者向けの1冊ですが、言語文化に詳しい人文系学部の皆さんや、生物・生命に造詣の深い理系学部の皆さんが読まれると、より深い理解に到達されるのかもしれません。

  • 2023/03/29 Books
    理科系の作文技術 / 木下是雄著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:吉澤幹夫

    大学でのレポートや論文、社会人になってからの出張や業務の報告書などでは、書いている自分と読んで頂く他人が同じ内容で理解できる文章を書くことが大切です。このような点でバイブルとなる図書として本書を推薦します。物理学者である著者が、理科系の研究者・技術者・学生のために論文・レポート・ビジネスレターについて明快で簡潔な表現を追求して分かりやすい文章を書くノウハウを実例に沿って解説しています。さらには学会講演の要領として講演での心構えからスライドの原稿や手持ち用メモの内容に至るまでも解説しており示唆に富んだ書籍です。パソコンが普及していない1981年に出版されていますので時代錯誤な箇所もありますが、本書で解説されている思想や精神は現在でも十分に有用であると考えます。

  • 2023/03/29 Books
    建築・都市のユニバーサルデザイン : その考え方と実践手法 = Universal design for architecture and city environment / 田中直人著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:野田りさ

    ユニバーサルデザインという概念は、文具などのプロダクトデザインから椅子などのインテリアデザイン、サービスに至るまで、今や色々なところで普遍的な概念のひとつになりました。地域や社会には様々な人が共生し暮らしています。主観的な視野や観点ではなく、多様な人を知り、理解するところから新しい発想や創造は生まれます。建築空間や都市空間におけるユニバーサルデザインとは何かを考える基礎的専門書として活用してほしいと思います。

  • 2023/03/29 Books
    街づくりのマ-ケティング / 石原武政,石井淳蔵著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:杉本宏幸

    みなさんの周りに商店街はあるでしょうか?
    令和3年6月時点で福岡市には136の商店街「組合」が存在します(令和3年度 福岡市商店街実態調査報告書)。福岡市による再開発促進事業「天神ビッグバン」を使って複合商業ビルに変わる予定(2023年3月時点)の新天町商業協同組合の名前を聞いたことがある人は多いかもしれません。他にも、福岡市科学館と裁判所ができて大きく街が変わった中央区の六本松商店連合会、主に鮮魚の卸売と小売を担う中央区の柳橋連合市場、「博多の台所」である博多区のみのしま連合商店街振興組合、主にアジア地域での多文化共生を掲げる博多区の吉塚市場リトルアジアマーケット、リヤカーでの販売形態が特徴的な早良区の西新商店街連合会など、際立った活躍が目立つ商店街組合が福岡市は少なくありません。複数の小売店が集まって商店街組合をつくるのは、「協同して経済事業を行なう」(商店街振興組合法 第一条)ことがお店にとっても、それらを支援する行政にとっても合理的だからです。しかし、ルールを作って組合ができればそれが機能するかというと現実は違います。なぜなら、商店街と地域を動かすのは「人」だからです。
    本書は、商店街(組合)における活動、組織、そして人について、学会をリードする研究者達によって調査報告されたものです。私は本書を1993年に読み、2018年に(福岡市で)商店街とかかわりましたが、商店街の現場で活躍なさる皆様から初めてお聞きすることの多くはどこか既視感がありました。それは多くが本書に書いてあったからです。それほど本書は、商店街問題の本質的な部分を捉えています。商店街に関心がある方、これから関わろうとなさる方みなさまに一読をお勧めします。

  • 2023/03/29 Books
    1からのデジタル・マーケティング / 西川英彦, 澁谷覚編著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:明神 実枝

    LINEでクーポンを手に入れた、インスタグラムに商品の画像をアップした、という時に、私たちは既にデジタル・マーケティングに関わっています。ただし、関わっていても、それらの仕組みは知らないのではないでしょうか。そして、知りたいと思っても、市場の変化が著しく新しい概念や理論が次々に登場するので、初学者には難しいようです。
    本書は基本が分かるよう概念と理論が選ばれ、内容に偏りがなく、体系的にデジタル・マーケティングを理解できる標準的なテキストです。アマゾンや食べログ、メルカリ、無印良品などの身近な事例が紹介されているので、楽しく理解できます。デジタル・ビジネスの構築を期待されている若い世代の皆さんに、ぜひ手に取ってもらいたい一冊です。本書は「日本マーケティング本大賞2019 大賞」を受賞しています。

  • 2023/03/29 Books
    陰翳礼讃 / 谷崎潤一郎著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:野田りさ

    高校生のとき、著者・谷崎潤一郎の作品に触れた方も多いのではないでしょうか。建築の専門家ではない著者が語る、陰翳のうちに美を発見し、美の目的に寄り添うように陰翳を利用する日本人ならではの感性を通して、建築や都市の美しさについて考える機会にしてほしいと思います。現在の私たちの生活環境とやや馴染みのない側面も感じられますが、美に対する本質的なことは今も昔も大きく違うことはないと考えさせられる作品です。

  • 2023/03/29 Books
    復刻デザイン・サーヴェイ : 『建築文化』誌再録 / 明治大学神代研究室, 法政大学宮脇ゼミナール編著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:野口雄太

    『建築文化』という雑誌に1968年から1973年にかけて掲載された2つの研究室の「デザイン・サーヴェイ」を1冊にまとめた本です。神代研は漁村を,宮脇は宿場町や門前町,農村を対象に,伝統的に生み出された建築の美しさや,人々が集まって住むこと(集落・都市)の論理を捉えようと,各地を採訪し,図面として写し取っています。宮脇の教えに『目を養い手を練れ』ともありますが,本書は,読むあなたの目から鱗を落としてくれると思います。見て楽しむもよし,自分の設計の表現の参考にしても良し。

  • 2023/03/29 Books
    アフターデジタル : オフラインのない時代に生き残る / 藤井保文, 尾原和啓著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:村上剛人

    これからの社会のインフラはどう変わるのか
    新型コロナが広がる2019年に出版されたのが本著書です。この本はこれからデジタル社会へ転換する中で、企業や私たちユーザーがどのように対応していく必要があるのか、現在のリアルで展開されているアナログの部分とインターネットを活用しているデジタルの部分の関係をいかに考えていくべきなのか、問題提起を行っています。マーケティングの分野で小売企業の戦略としてオムニチャネルが挙げられています。これはアナログとデジタルの2つの部分を融合させる方法として登場してきていますが、今後益々アナログの部分にもキャッシュレスに見られるように、デジタルの取り組みが浸透してきています。これからの私たちの社会のあり方、さらには企業戦略を考えていく上において、重要な見方を提示しています。ぜひ、これからの社会を深く考えてみようと思っている学生の皆んは是非手に取って読んでみてください。事例も豊富に入れて説明されているので興味深く読める本です。

  • 2023/03/29 Books
    地理学で読み解く流通と消費 : コンビニはなぜ集中出店するのか / 土屋純著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:杉本 宏幸

    コンビニがある場所に集中的に出店すること、百貨店や商店街がかつてのように繁栄しにくくなっていることを目にしたことはないでしょうか?本書は、地理学の立場から(都市や地域がどのようにあるかという観点から)こうした問題を説明しようとしています。福岡市で目立った動きがある商店街は、地域住民や企業、文化とつよく関わりながら様々な取り組みをしています。流通や消費は、都市や地域のあり方と密接に関わるわけです。本書をお勧めしたいのは、流通に関心がある方、流通のことを少し学んだ学生さんです。参考文献もきちんと記されていますから、卒業論文でこうした課題を扱うための入口にしたいという学生さんにもお勧めします。高校までの学習で見聞きした用語も出てきますが、特に高校で地理を選択していなくても読み進められると思います。
    私は流通・マーケティング(商学)を専門にしています。私が専門にしている分野では、主に「取引」や「企業間関係」から流通を見ます。しかし、海外(例えば、イギリス)では、流通の研究が地理学と不可分になされています。地理学を基礎にした流通および消費の知見は極めて重要です。特に、本書が扱っている人口減少地域や災害時におけるライフラインとしての流通という問題は現代的な課題です。自分が住んでいる地域の小売店、商店街、スーパー、百貨店などがどのようなものか考えながら読み進めてみると得られるものが多いと思います。一読をお勧めします。

  • 2023/03/24 Books
    物理の散歩道 / ロゲルギスト著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:田中照久

    物理に苦手意識のある学生や高校時代に物理を履修してこなかった学生に読んでもらいたいと思い選びました。一般に、物理学というと、数学を使った難しい学問と受け取られがちですが、本書では、日常見られる現象に潜む面白さを書き記しているのが特徴です。例えば、有限の空間にどれだけモノを詰め込めるかを考える「つめこむ」の話、豆腐はどのくらいの大きさまで作れるのかを論じた「丸ビル大の豆腐」、電気カミソリはなぜ痛いのか、消しゴムで消した後に出る細長いカスの話、立っている姿勢に働く力のかかり方など。一見物理とは何も関係ないような話題を取り上げ、日常のよくわかっていると思われる現象の奥に潜む真の原因を突き止めたり、詳細な観察でより深い原因を説明したり、知識の盲点を突く以外な発想などがわかりすく述べられています。

  • 2023/03/24 Books
    シャーロック・ホームズの冒険 / アーサー・コナン・ドイル著 ; 小林司, 東山あかね訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:渡部智也
    シャーロック・ホームズは、イギリスの作家サー・アーサー・コナン・ドイルが生み出した、世界で最も有名な「架空の」探偵です(こう書くと、熱心なホームズファンに怒られるかも知れませんが)。最近では人気のスマートフォン向けゲーム、Fate Grand Order にも重要キャラクターとして登場しますので、作品を読んだことがなくても、名前だけは知っている、という人も多いでしょう。また、多くの学生さんになじみの深いコナン君(名探偵コナン)も、この作者ドイルの名前からとったものです。ドイルはホームズの登場する作品を、短編 56 作、長編 4 作の合計 60 作生み出しました。本書は、そのうち最初に世に出た「短編集」です。一口にホームズ作品と言っても実に様々で、非常に面白いものもあれば、率直に言ってつまらないものもあります。この短編集は、ホームズ作品の中でも出来が良く、かつ知名度の高い作品が多く含まれており、ホームズ入門としては最適です。名前だけは聞いたことがあるが、ホームズの原作を読んだことがない、という方に、最初に読むべき一冊として強く推薦します。

  • 2023/03/24 Books
    読んでいない本について堂々と語る方法 / ピエール・バイヤール著 ; 大浦康介訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:須藤 圭
    本を読むこととは、いったい、どういうことでしょうか?本に書かれている文章を正確に理解することでしょうか?それとも、書かれていない行間を読み解くことでしょうか?この本は、ちまたにあふれるハウツー本ではなく、「読書」という行為の実態と本質について、真面目に問いなおした一書です。わたしが、この本から学んだことは、ひとつの本を完璧に理解することは、どこまで行っても絶対にない、という事実です。本を何十回、何百回と読んだとしても、一字一句完璧に覚えることはできませんし、その本を書いた著者と同じ能力を身につけることもできません。そして、このことと同時に、「何かを完璧にこなそう」とか、「これだけは完璧にやろう」とか、そのように思ったとしても、完璧にやることは絶対に不可能だ、ということも学びました。ひとつの本を完璧に理解することができないように、私たち人間は、たったひとつの物事でさえ完璧にやりとげることは絶対不可能で、誰しも不完全なものなのだ、ということです。「朝、起きられない…」「課題を忘れてしまう…」「本の内容も覚えていない…」でも、それでもよいのではないか。人間なんて、所詮、不完全なものなのだから。そのように考えられることを、この本から学びました。以上、もっともらしく、『読んでいない本について堂々と語る方法』の書評を書いているわたしも、もしかしたら、この本を読んでいないのかもしれません。気になる方は、ぜひ、この本を手にとってみてください。

  • 2023/03/24 Books
    シャーロック・ホームズ絹の家 / アンソニー・ホロヴィッツ著 ; 駒月雅子訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:渡部智也
    シャーロック・ホームズは、イギリスの作家サー・アーサー・コナン・ドイルが生み出した、世界で最も有名な「架空の」探偵です(こう書くと、熱心なホームズファンに怒られるかも知れませんが)。最近では人気のスマートフォン向けゲーム、Fate Grand Order にも重要キャラクターとして登場しますので、作品を読んだことがなくても、名前だけ知っている、という人も多いでしょう。ドイルはホームズの登場する作品を、短編 56 作、長編 4 作の合計 60 作生み出しました。これらはホームズファンの間では「正典」と呼ばれています。別の言い方をすれば、「オリジナルの作品」です。ですが、ホームズが登場する作品はこれだけではありません。ドイル以外の、そして彼より後の時代の作家たちが生み出したホームズの活躍する作品、いわゆる「パスティーシュ」(模倣)作品と呼ばれるものは無数に存在します。前述の Fate Grand Order に登場するホームズ及び彼に関連して描かれるエピソード(1.5 部の新宿編など)も、パスティーシュの一種と考えて良いでしょう。そのような作品の中で、コナン・ドイル財団がお墨付きを与えている数少ないパスティーシュ作品の一つが、この『絹の家』です。推薦者は本書が出版されて間もない頃、原書で読みましたが、ホームズシリーズの雰囲気を余すところなく伝えるとともに、その内容に感動したことを今でもよく覚えています。『シャーロック・ホームズの冒険』を含むホームズの正典をあらかた読み、次にパスティーシュに手を出したいと思った方に勧めたい一冊です。

  • 2023/03/24 Books
    歴史学者という病 / 本郷和人著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:福嶋寛之
    本書は、著書本郷氏による「余はいかにして歴史学者となりしか」を、自身の幼少期から現在に至るまでの知的遍歴・人的交流の模様を交えながら、どのように歴史学研究へとたどり着いたのかを述べた、自分語りの作品である。実のところ評者は、大学で受けた最初の歴史学の授業に際し、衝撃的なつまらなさを感じた経験をもっている。その後、こちらに理解できるほどの素地がなかったことに一因あると気づくのだが、そのときは、歴史学という営みに対し研究者は一体どう理解しているのか誰か説明してくれと思ったものである。この点は歴史学研究にとどまらないだろう。様々な学問に出会う学生時代の入口において、既にそうした経験に遭遇している人もいるのではないか。その意味でも、本書はなぜ、そしてどのようにその分野にたどり着いたのか、思索の過程が語られており参考になる。もっとも本書がフィットする解答を与えてくれるかは別問題である。評者が最も反応したのも歴史学云々とは関係のない以下のような箇所だった。著者本郷氏は高校時代、本物の秀才たちに囲まれる経験のなかから以下のような思いへと至ったという。「「自分には誇るべきものがない」……「自分にはできないことがある」とはっきり自覚したからこそ始まる人生もある、……わかった、それじゃどうするかこそが本当に大事なのだ私は言いたい」(50頁)。評者も青年期、同じことを思ったことがある。世の中、同じことを考える人がいる。そうした出会いも読書の醍醐味だろう。

  • 2023/03/24 Books
    成長の限界 : ローマ・クラブ「人類の危機」レポート / ドネラ・H・メドウズ[ほか]著 ; 大来佐武郎監訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:宮崎慎也

    1972年に発刊された書籍で、地球の資源は有限であり、このまま幾何級数的な成長がつづけば、成長の局面が今後100年続くことはできないと主張しています。これは,システムダイナミクスというシミュレーション技術に基づいたもので、世界に強い影響を与えました。本書は,人口問題や環境問題の時間軸変化を扱う複雑系ネットワーク技術の応用編としても良いですし、環境問題の思想書としても読んでみても良い本です。地球環境分野の書籍としては、すでに古典的な地位を確立しています。

  • 2023/03/24 Books
    論文はデザインだ! / 渡邉研司編著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:塚越雅幸

    卒業設計と比べると卒業論文は地味かもしれません。しかし、製図が上手ければ論文など書けなくても建築は設計できるのでしょうか?本書の中で「論文は、言葉でつくられた建築だ」と説いています。設計や仕事の進め方も論文の執筆とプロセスはとても似ている点があります。建築設計のプロセスと対応させながら、文章執筆のためのノウハウが解説あれており、設計にも論文(レポートや報告書)作成にも役立つ内容です。

  • 2023/03/24 Books
    飛躍する構造デザイン / 渡辺邦夫著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:田中照久

    学生時代に、建築構造の面白さと魅力を感じさせてくれた一冊の本です。一年次に「構造力学の基礎Ⅰ」という授業がある。恐らく、大半の学生が、おもしろくない、計算が面倒くさい、何のために計算するのかイメージが沸かないなどの感想をもつでしょう。私も最初はそう感じた一人ですが、この本と出会い、いかに構造力学が大切かを思い知らされました。設計事例をいくつか取り上げ、無数の考え方、手法が存在する構造デザインと力学、材料、施工、空間との関係について具体的で解りやすく述べられています。建築の構造への興味のきっかけになればと思います。

  • 2023/03/24 Books
    空間としての建築 / ブルーノ・ゼーヴィ著 ; 栗田勇訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:趙翔

    建築に関連する知識や内容は非常に多く、この領域に足を踏み入れたばかりの学生にとってはなおさらそうです。1980年代にこの本を読んだおかげで、空間の要素は建築物の主役であることをきちんと認識できただけでなく、建築に関する様々な話題をしっかりと選別、整理することができました。著者ブルーノ・ゼーヴィによる建築に関する9つの解釈は、ごちゃごちゃとなっていた私の考えをはっきりと整理してくれました。上下2冊ありますが、文庫版であるため、読みやすい本です。

  • 2023/03/24 Books
    丹下健三 : 戦後日本の構想者 / 豊川斎赫著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:太記祐一

    東京オリンピックが何かと話題になっていますが、昭和39年の東京オリンピックの準備で大活躍したのが丹下健三でした。広島平和記念公園、代々木競技場(前のオリンピックの体育館)、EXPO’70こと大阪万博、そして新旧両方の東京都庁。戦後とか昭和とかそういう時代を、文字通り築いた建築家で「世界のタンゲ」と賞賛されました。その巨匠の実像を、若い建築史の研究者が描き出したのが本書です。作品だけでなく都市計画や研究、人物像、弟子との関係など重要な事柄が次々と手際よく説明されます。入門書としてわかり易いだけでなく、新しい視点も盛り込まれています。丹下健三ってダレ?という人も、そうとう詳しく知っているつもりの人も、みな必読の一冊と言えるでしょう。

  • 2023/03/24 Books
    建築は詩 : 建築家吉村順三のことば100 / 吉村順三[著] ; 吉村順三建築展実行委員会編

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:松永一郎

    「建築家として、もっとも、うれしいときは」で始まる本書は、人間の暮らしを大切にしながら、品のある美しい建築をつくり続けた建築家・吉村順三の語録集です。本書では、すまい、火と水と植物、まちと都市などにまつわる100のことばを通して、それぞれ1頁ずつ、スケッチをまじえながらわかりやすい言葉で、建築や設計の本質・原則などが語られています。そこからは人間のすまいのプロトタイプを実践的に追求し続けた建築家・吉村順三のあつい思いが伝わってきます。吉村氏にかぎらず、皆さん自身で好きな建築家を見つけ出し、その建築作品とことばをできるだけたくさん集めて、その建築家の思いを読み解いてみてはどうでしょう。

  • 2023/03/24 Books
    代謝建築論 : か・かた・かたち / 菊竹清訓著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:宮崎慎也

    著者はメタボリズムの中心人物の一人であり、2011年12月に亡くなるまで、多数の作品を発表し続けた日本を代表する建築家です。本書は著者の設計理論「か・かた・かたち」の紹介から、メタボリズム,代謝建築論に至るまで、多岐にわたる視点でまとめられています。生物学的な視点を都市計画や建築計画に導入するメタボリズムの理論は、近年改めて関心が持たれています。著者の作品をより深く理解するために読んでも良いですし、60年代の日本の建築界の状況を知るための歴史書として読んでみても面白い本です。

  • 2023/03/24 Books
    面白いほどよくわかる建築 : 住宅から高層建築・伝統建築まで…建築のすべてがわかる / 樫野紀元著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:本田悟

    建物はどのように造られているか、良い建物はどのようなものか、その要点を図表とともにわかりやすく解説している建築入門書である。木造建築物、鉄筋コンクリート造建築物、鉄骨造建築物、超高層建築物の建て方、設計と施工のしくみなど様々な内容が収録されている。また、一般の民家、マンションや高層建築物、寺院をはじめとした伝統建築など、さまざまな建築物の疑問に答え、歴史に裏打ちされた建築の不思議を楽しむ本である。

  • 2023/03/24 Books
    光の教会 : 安藤忠雄の現場 / 平松剛著 ; 石堂威編集

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:太記祐一

    これは有名な建築家○○が設計した作品だ・・・という話を、建築学科にいるとよく耳にします。しかし作品のすばらしさやデザインした人のすごさは注目されても、実際に仕事をすすめていく様子を紹介したものは、意外と少ないのではないでしょうか。この本は、安藤忠雄−日本を代表する世界的建築家−が「光の教会」を作っていく過程を、ていねいにえがいていきます。そのようすは建築を専門にしない人でもたいへんおもしろく、第32回大宅壮一ノンフィクション賞を取りました。さらに建築のことがある程度わかってから読むと、今度は安藤忠雄と周囲の人々のプロとしてのすごさがわかり、二度楽しめる内容になっています。

  • 2023/03/24 Books
    自然な建築 / 隈研吾著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:太記祐一

    今、日本でもっとも活躍している建築家は?そう問われたら必ず名前が挙がるのが、隈研吾さんです。海外でも大作を次々と設計し、数多くの賞を受賞(おまけに東大教授!)。身近な所で話題になったのは、太宰府天満宮近くの国際的コーヒーチェーン店です。「イケてる」と書いたら、何か失礼な感じでさえあります。その彼が自分の作品を解説しつつ、建築のあり方を論じ、現代建築の問題点を抉り出したのが、この本です。豊富な知識と明快な理論がセンスの良さとあいまって、建築デザインの最前線で何が起っているのか、わかりやすく教えてくれます。ただし、写真が白黒なのと、少し専門用語が多いのが残念。

  • 2023/03/24 Books
    ニッポン景観論 / アレックス・カー著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:松永一郎

    日本に住んでいる私達には普通に見えても、外国人には奇異に映る景観も少なくないようです。著者は日本に滞在して40年近くになるアメリカ人の東洋文化研究者です。「美しき日本を求めて」というテーマで長年行ってきた講演活動を本にまとめたもので、日本の各地で採集した景観破壊の現場を多数の写真を使って紹介します。日本を賞賛する本とは異なりますが、日本を愛する故に、時に風刺を交えながら、日本の景観について率直な批評が展開されています。かつての美しい景観をどうやって取り戻せばよいのか、本書を読んでその手掛かりを探してみましょう。ビジュアル版新書ですので、気軽な気持ちで、写真だけでも楽しめます。

  • 2023/03/24 Books
    時がつくる建築 : リノベーションの西洋建築史 / 加藤耕一著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:太記祐一

    歴史をどう捉えるのか、歴史をどう考えていくのか、そういう大きな枠組が組み変えられる瞬間というのは、100年に一度あるかないかの事だと思います。つい最近こうした大事件が起こりました。舞台は西洋建築史です。その衝撃作が本書です。日本建築学会賞、建築史学会賞、サントリー学芸賞と関連する賞を総なめにした事からも重要性がわかります。これまでの建築史のテーマは、ある時代(たとえば古代ギリシャ)の最新の作品(たとえばパルテノン)がどう作られてきたのか、でした。しかし若くして東京大学建築史研究室を引き継いだ気鋭の著者は、その時代が既存の建築をどのように扱ってきたかに注目していき、まったく新しい歴史の物語を紡ぎ出したのです。リノベーションを通して2000年を超える西洋建築の歴史を再検討した先には、未来の建築のあり方がほのかに垣間見えているのではないでしょうか。

  • 2023/03/24 Books
    集落の教え100 / 原広司著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:宮崎慎也

    世界中の集落への旅を通して、そこからエッセンス(集落の教え)を抽出し、短い言葉で簡潔にまとめています。世界の集落の写真も添えられており、文化や風土によって様々な住居形態があることを改めて思い知ることができます。集落は百年単位で生き続けているものであり、持続可能な強固なシステムと高度な構想力に支えられているものです。ここから、現代建築に通じる有用な示唆が得られることは間違いありません。

  • 2023/03/24 Books
    住宅巡礼 / 中村好文著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:太記祐一

    建築家ときいて、どんな人を想像しますか?もしあなたが、建物が好きで人間が好き、何でも作ってみんなを喜ばせるちょっとオシャレで、すこしフシギな人…を想像するならば、この本はおすすめです。手描きのスケッチと自分で取った写真、それにわかりやすい文章が紹介するのは九つの作品です。どれも建築学科の学生なら知っておいてソンはない巨匠たちの傑作。それも簡単には行けない海外の住宅ばかりです。すこし値段は高いですが、カラーで読みやすさはバツグン。読んで行った気分になるのか、それとも本当に行きたくなってしまうのか、は読んだ人におまかせします。

  • 2023/03/24 Books
    宇宙船地球号操縦マニュアル / バックミンスター・フラー著 ; 芹沢高志訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:宮崎慎也

    著者はジオデシック・ドームやダイマクシオン・ハウスなどで知られ、思想、技術、発明、デザイン、著述など、様々な分野で幅広い活動を行いました。このような多岐に亘る活動の源となる著者の思想が、本書では述べられています。表題の通り、本書では地球をひとつの宇宙船と見立て、この操縦法を説明するという形で、地球単位でエネルギーや富の分配を考える必要性、サスティナブルなシステムを構築する必要性を主張しています。地球という普遍的な単位を念頭に、デザインや技術開発を考えたところが極めてユニークで、後に続く建築家にも強い影響を与えています。

  • 2023/03/24 Books
    絵でわかる地球温暖化 / 渡部雅浩著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:西 憲敬

    地球温暖化についての本は、さまざまな分野の専門家が数多く執筆しており、この「教員お薦めの本」にも何冊かすでに収録されている。気象学としてみた地球温暖化については、メカニズムとしては雲の寄与などまだ不明なこともあるとはいえ、ここ10年でほぼその姿がわかってきたと言ってよいと思う。この本は、その(おそらく)正しい地球温暖化の実態を、とてもわかりやすく説明した本である。温暖化の理解のための基礎知識から、最新の温暖化予測技術まで、多くの図版やイラストを使いながら、正確に記述がなされている。関連した話題として、異常気象についてもわかりやすい説明があり、その地球温暖化との関係についても良い説明がある。現象としての地球温暖化の入門書としてお薦めしたい。

  • 2023/03/24 Books
    ヤクザと日本 : 近代の無頼 / 宮崎学著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:福嶋 寛之
    ヤクザは一般に暴力団として単純化され理解されている。しかし法や秩序からはみ出るアウトローだとして、なぜそうした存在が生まれたのか、あるいは生み出さざるを得なかったのか。それは日本の近代社会のあり方と深く関わるものであった、というのが本書の主張である。いわゆるヤクザは土木・炭鉱・港湾での荷役など、不安定な下層労働者が集う場で生まれた。ヤクザは資本家に対し労働力の供給業者として結びつきつつ、下層労働者を搾取しながら保護もする「親分」として存在した。それは公的扶助の仕組みが未熟で法の保護も十分に及ばない、日本が近代国家としては後発であったことに由来する。労働者からすれば「親分」は職と貴重な日銭をもたらす存在だった。資本家も「親分」を介して労働者を確保し、国家権力もアウトローとしての彼等に警察的な役割を担わせた。ヤクザはまさしく明治以来の日本の近代化・資本主義化を下支えする存在であった。転機は1960年代の高度経済成長期に訪れる。機械化に代表される労働の急速な近代化、そして資本家・会社による全労働者の一元的把握がなされることで、ヤクザの「親分」としての役割は低下する。かくしてヤクザは厄介視・不要視されていく。考えてみればヤクザは堂々と事務所まで構えていたように、本当に非合法な存在なのか頭をかしげてしまう。実際、マフィアを連想する欧米人からすると、かなり奇異に映るらしい(1959年、山口組組長は神戸市にて「一日署長」を務めたという。242頁)。しかし今や、平成の暴力団対策法によって、いわゆる「反社」として叩かれるに至る。別に擁護するわけではないが、本書で描かれた、ヤクザを生み出さざるを得なかった日本社会のメカニズム、下層労働者の問題はむしろ深刻になっている。ヤクザを放逐すれば済む話ではない。かつてヤクザが活動の舞台とした世界は、かえって制御者不在の混沌状況になっているのかもしれない。

  • 2023/03/24 Books
    人を助けるとはどういうことか : 本当の協力関係をつくる7つの原則 / エドガー・H・シャイン著 ; 金井真弓訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:坂本 憲治

    この本の著者エドガー・シャインは、私が尊敬する、大好きな援助者のひとりです。シャインはシカゴ大学で社会学を専攻し、スタンフォード大学・ハーバード大学大学院で心理学を学びました。アービン・ゴフマン(社会学の大家)、ゴードン・オールポート(パーソナリティ心理学の大家)、クルト・レヴィン(社会心理学の大家)という錚々たる研究者たちから社会科学を学び、かつ、精神分析的サイコセラピストとしての正当な訓練も受けている稀有な存在です。まさに「個人」と「集団・組織」を熟知したエキスパートといえるでしょう。その彼が「人助け」をどのように考えているか、大変興味深いと思いませんか。教育・心理・福祉といった対人援助職を目指す学生、こうした領域を視野に入れて就職活動をする学生にぜひ一読していただきたい本です。

  • 2023/03/24 Books
    読んでいない本について堂々と語る方法 / ピエール・バイヤール著 ; 大浦康介訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:須藤 圭
    本を読むこととは、いったい、どういうことでしょうか?本に書かれている文章を正確に理解することでしょうか?それとも、書かれていない行間を読み解くことでしょうか?この本は、ちまたにあふれるハウツー本ではなく、「読書」という行為の実態と本質について、真面目に問いなおした一書です。わたしが、この本から学んだことは、ひとつの本を完璧に理解することは、どこまで行っても絶対にない、という事実です。本を何十回、何百回と読んだとしても、一字一句完璧に覚えることはできませんし、その本を書いた著者と同じ能力を身につけることもできません。そして、このことと同時に、「何かを完璧にこなそう」とか、「これだけは完璧にやろう」とか、そのように思ったとしても、完璧にやることは絶対に不可能だ、ということも学びました。ひとつの本を完璧に理解することができないように、私たち人間は、たったひとつの物事でさえ完璧にやりとげることは絶対不可能で、誰しも不完全なものなのだ、ということです。「朝、起きられない…」「課題を忘れてしまう…」「本の内容も覚えていない…」でも、それでもよいのではないか。人間なんて、所詮、不完全なものなのだから。そのように考えられることを、この本から学びました。以上、もっともらしく、『読んでいない本について堂々と語る方法』の書評を書いているわたしも、もしかしたら、この本を読んでいないのかもしれません。気になる方は、ぜひ、この本を手にとってみてください。

  • 2023/03/24 Books
    ゼロからトースターを作ってみた / トーマス・トウェイツ著 ; 村井理子訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:開田 奈穂美

    ありふれた安価な工業製品であるトースターを、ひとりで原材料から作ることは可能なのか、実際にやってみた過程を記したノンフィクション作品です。「ゼロから」というタイトルのとおり、まず鉄の部品を作るために鉄鉱山に行くところから始まるから驚きです。しかも作者はお金も機械も持っていない芸術系の大学院生。あきらかに無茶なことを、だましだましやっていく過程で見えてくるのは、私たちが今暮らす、高度化し細分化された社会のあり方です。平易な言葉で書かれているにもかかわらず、芸術・科学技術・環境や近代社会など幅広い分野への示唆を含んでおり、特に新入生におすすめです。

  • 2023/03/22 Books
    建築学生の「就活」完全マニュアル : 100年に一度の不況に負けるな! / 星裕之著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山峯夫

    建築学科に入学してきたばかりの学生に「就職活動(就活)」の本を紹介するのも変かもしれませんが、理由があります。やはり建築学科の学生としてゴールである就職を見据えることは、学生のうちにしておかないといけないことが理解できると思うからです。ゴールが見えないと寄り道が増えてしまいませんか。この本では就活以外にも大学院進学とか建築士の資格などについてもまとめられています。

  • 2023/03/22 Books
    自助論 / S・スマイルズ著 ; 竹内均訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山峯夫

    原著は1858年に著され、明治4年には「西国立志編」として出版。明治の青年たちに「学問のすすめ」(福沢諭吉)と並んで広く読まれました。今から150年も前に書かれた本は古くさくて読めないと思うかもしれませんが、だまされたと思って読んで下さい。「天は自ら助くる者を助く」で始まる本書を読めば、大学生活をどう過ごせばいいか、良い指針になることでしょう。

  • 2023/03/22 Books
    思考の整理学 / 外山滋比古著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山峯夫

    本書は建築とは直接関係がありませんが、その書名のとおり著者の体験に則して独自の思考のエッセンスを紹介したものです。知識を「覚える」ことではなく、「考える」とはどういうことかを考える格好の入門書といえます。いま読み返すと少々古い内容、時代に合わない点も少しありますが、考えるということの本質を探ることには役立つと思います。本書は「東大・京大で一番読まれた本」(2008年大学生協調べ)となっています。是非一読をおすすめします。

  • 2023/03/22 Books
    沈黙の春 / レイチェル・カーソン著 ; 青樹簗一訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山峯夫

    本書は、自然を破壊し人体を蝕む化学薬品の乱用の恐ろしさを告発しており、刊行から40年を経過しているものの衝撃的な内容です。地球環境問題はますます重要な課題となっています。みなさんもご存じのとおりマイクロプラスチックや地球温暖化などの問題は聞いたことがあるでしょう。建築を創るということは地球環境に少なからず影響を与える行為です。環境問題に関心をもつきっかけになる一冊だと思います。

  • 2023/03/22 Books
    建築家になりたい君へ / 隈研吾著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山峯夫

    本書では著者の幼少期から大学を卒業して自分の設計事務所をたちあげるまでの歴史(自伝)が紹介されている。建築家を目指した理由やどういう建築を目指してきたかといったことが、近代建築の歴史を背景にして語られており、とても読みやすい。「恥をかくことを恐れずに質問することが、挑戦の第一歩です。「そんなこと知らないんですか」と言われても、一向にめげません。恥をかくことを避けようとしている限り、今までのディテール、デザインをただ繰り返すことになります。現場では、恥をかくことが一番大事です」。

  • 2023/03/22 Books
    ビルはなぜ建っているかなぜ壊れるか : 現代人のための建築構造入門 / 望月重著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山峯夫

    本書は建築の構造をわかりやすく解説したもので、建物が重力、地震、台風、大雪に耐えるメカニズムを理解できるようになっています。「建築構造」というと力学理論や数式による説明がなされることが多くなります(当然ですが)。新入生でも建築構造・力学が難しいと感じることも多いようですが、本書では数式をできるだけ用いないで、できるだけ優しい言葉で、実際の建物の例をあげて説明している点に特徴があります。新入生(だけでなく一般の方々も含め)が建築の構造、仕組みやその安全性について理解するのに役立つと思い、推薦します。

  • 2023/03/22 Books
    建築の難問 : 新しい凡庸さのために / 内藤廣 [著]

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山峯夫

    本書では建築の難問に著者が答えるという形式で構成されている。例えば、「建築の定義」。architectureとbuildingをまぜこぜにしてしまったのが建築の基本的な問題だといいます。「建築」という概念はbuildingという狭い範囲にとどまるものではなく、建築家が独占しているものでもありません。より広い意味でとらえると、都市計画も建築だし、土木にもその側面が色濃くあるし、もちろん国土計画も建築になります、という。建築は誰のためにあるのか、都市は誰のためにあるのか、建築家とは誰なのか、がくり返し問われています。

  • 2023/03/22 Books
    ようこそ建築学科へ! : 建築的・学生生活のススメ / 松田達 [ほか] 編著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山峯夫

    本のタイトルをみれば本書の内容は想像がつくと思います。大学でどのように建築を学ぶのか、ということに始まって、学生生活のアドバイスも豊富にまとめられています。ほかにも、有名建築家がどのような学生生活をおくっていたかがインタビュー形式で載っていて参考になります!

  • 2023/03/16 Books
    地震と建築 / 大崎順彦著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:堺純一

    建築構造物は地震のときにどうなるのか?日本は地震国家と云われるぐらい世界でも屈指の地震が多い国です。大地震が襲っても倒壊しない建築構造物はどのようにしたら設計できるかについて、建築構造設計の要点を平易に書かれた本です。建築構造力学の知識はなくても十分納得して読み進むことができると思いますが、建築構造力学の知識を如何に構造設計に使って行くのかを読み取っていただきたく思います。私が学生時代に読んだ本ですので、かなり昔の本ですが、耐震設計の考え方がこの本でわかります。

  • 2023/03/16 Books
    日本語の作文技術 / 本多勝一著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:橋本彰博

    答案やレポート,就職活動で必須となるエントリーシート等,学生時代に文章を書く機会はたくさんある.最近はSNSで自分の意見を発信する人が多いが,肯定的・批判的何方にもとられる文章をよく目にする.日本語は助詞一つ異なるだけで読み手の印象が大きく異なる.本書にある通り,「読む側にとってわかりやすい文章をかく」ためには技術が必要である.多くの例文を取り上げて,なぜ「わかりにくい」のか検討し,どうすれば「わかりやすい」文章になるのかについて詳しく解説している.

  • 2023/03/16 Books
    建築構造のわかる本 / 大成建設建築構造わかる会編著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:堺純一

    「建築の構造設計って何をするの?」について分かりやすく書かれた入門的な本です。建物に作用する様々な外力を如何に地盤に流していくか、合理的に力を流すためにはどうすればよいのかなど、構造設計の基本的な考え方がまとめられた内容となっており、優れた建築物をつくるには、構造力学の基礎知識が重要であることがわかります。特に、本書の後半では世界中の有名な建物が如何に力学的に合理的に設計されているのかが説明されていますので、ここだけでも、読む価値があります。

  • 2023/03/13 Books
    街並みの美学 / 芦原義信著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:池添昌幸

    建築と都市の間の空間スケールである街並みについて、理論と実践の両面から丁寧に解説されています。街並みは都市によってなぜ違うのか、その違いが人間に対してどのように作用するのか、西洋に比べ日本の街並みはどう評価できるか、これらについて具体的な空間事例を通じて分析されています。様々な都市の街並みが図や写真とともに解説されており興味がわきます。1979年に発刊された名著で、計画設計に携わる者は必ず知っている基本文献です。

  • 2023/03/13 Books
    建築MAP九州/沖縄 / TOTO出版企画・編集

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:池添昌幸

    書名の通り、九州・沖縄の建築作品を紹介するガイドブック。建築を創造するためには、実際の建築作品を見て空間を体験することが大切です。建築を学ぶ者は建築を訪れるための旅行をしますが、そのガイドブックとして欠かせない本です。福岡で紹介されている建築は是非訪れてください。現代の建築だけでなく、名建築と呼ばれる作品や伝統的な建築物も紹介されています。

  • 2023/03/13 Books
    プレ・デザインの思想 : 建築計画実践の11箇条 / 小野田泰明著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:池添昌幸

    プレデザインとは、建築設計におけるデザインの前段階の行為のことを指します。日本語では、建築設計の前段階は「建築計画」という行為です。建築計画とは、建築を造るための様々な条件を整理し、その建築に最適な空間のモデルや型を示すことです。著者は、建築計画の研究者であり実践者で、最適な空間を導くための考え方とその方法が11の原則に分けて示されています。初学者には少し難しい内容ですが、大学で建築計画の講義を受けた人には、建築計画の理論と技術が実践にどのように適用されるのかを理解するために、是非読んで欲しい本です。

  • 2023/03/09 Books
    トポロジーの発想 : ○と△を同じと見ると何が見えるか / 川久保勝夫著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:坂田繁洋

    本書は「トポロジー」とよばれる数学の紹介をしています。高等学校までに学習してきた数学とは趣の異なる数学の世界を知れる面白い本です。数学の研究の具体例を知ることができます。本書を読むために、数学の知識はあまり必要ありません。

  • 2023/03/03 Books
    エネルギーの人類史 / バーツラフ・シュミル著 ; 塩原通緒訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:宮田 一司

    人類の歴史を考えるとき,はじめに様々な民族・国家の興亡が浮かぶのではないだろうか.しかしながら,別の視点,すなわち人類がいかにしてエネルギーを利用し発展してきたのかを考えると,驚くほどシンプルに人類の歴史を辿ることができる.本書は,膨大な参考文献を基に,先史時代から現代にいたるまでの人類のエネルギー利用の歴史がまとめられており,一読すれば,狩猟にはじまり農耕・工業におよぶ様々な技術発展の歴史を俯瞰できるだけでなく,民族・国家の興亡の理解にも大いに寄与する.

  • 2023/03/03 Books
    目玉の学校 / 赤瀬川原平著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:平松信康

    著者の赤瀬川原平(1937-2014)は、前衛芸術家、イラストレーター。見る・見えるの物理や心理をやさしい疑問から考え、話題は絵画や写真の芸術論へと昇華する。尾辻克彦『父が消えた』(1981)で芥川賞作家でもある著者の文章は簡潔・軽妙で、一気に読むことができる。柔軟な発想が求められ、考えあぐねて苦しんでいるとき、この本は勇気を与えてくれる。僕も私も何かやってみようと思わせてくれる楽しい本である。

  • 2023/03/03 Books
    ゼロからわかる量子コンピュータ / 小林雅一著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:大橋正良

    本書は、タイトル通り量子の知識を持たない読者に量子コンピュータとは何かとの説明を試みている。おそらくこれで何かを全部理解できる読者は多くないと思うが、一体量子コンピュータって何なの?と思っている読者にはぼんやりとイメージを与えられるのではないか?加えて現代の量子コンピュータ開発競争、量子暗号の動向などいくつかのトピックも盛り込まれており、軽く読むのに勧めます。

  • 2023/02/27 Books
    にじ / さくらいじゅんじ文 ; いせひでこ絵

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:平松信康

    前出の『目玉の学校』(赤瀬川原平著)を読んで、私も何かやってみようと思った人は、たとえば、この絵本を出発点としてはどうだろう。「読んであげるなら4歳から、自分で読むなら小学校初級向き」と表紙に記されているが、大人が読んで考えるに十分な内容である。出てくる疑問に正確に答えられる人は少ない。いせひでこの絵もすばらしい。にじの科学のかなたに夢や芸術が展開されることを願いつつ、推薦したい1冊である。

  • 2023/02/17 Books
    激動日本左翼史 : 学生運動と過激派1960-1972 / 池上彰, 佐藤優著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:篠原 正典
    本書に,「新左翼系の党派に入るという少なくとも東京では『市民社会から降りる』ということ」とある。このことは,私が学生時代であった90年代もそうだったように思える。90年代はカルトともいえる新興宗教が流行った時代でもあり,やはりそのような宗教にのめりこむことは「市民社会から降りる」ことでもあった。本書には,「左翼というのは始まりの地点では非常に知的でありながらも,ある地点まで行ってしまうと思考が止まる仕組みがどこかに内包されている」とあるが,本書を読みながら宗教も同じような所があるように思えた。いや,特定の思想を現実社会に適用する際には,必ず起こることなのかもしれない。だからこそ,学生運動が華やかなりし時代の雰囲気・動静を知ることは,将来に出会う政治・宗教・教育などに関する思想にどう向き合えばいいのか,考える契機になるのではないかと思う。
    本書は,学生運動が一番激しかった時代を取り扱っているため,伝説ともなりえる有名な名前が多く出て,彼らにまつわる端的な説明も本書の面白さの一つである。さらに,学生運動を経験してもなお,事業などで成功している方々の紹介もあり,その方々の能力の高さにも驚かされる。

  • 2023/02/17 Books
    超ひも理論をパパに習ってみた : 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義 / 橋本幸士著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:江田 孝治
    「異次元空間なんかないよね?」という美咲とその父親である浪速阪教授の会話から始まる超ひも理論の物語です。天才物理学者でもある浪速阪教授が、美咲に毎晩ちょっとずつ、10分だけ異次元の研究について教えることで、一週間で異次元の気持ちがわかるようになると言います。
    「超ひも理論」は、この世のすべては小さな「ひも」から出来ているという仮説です。現代物理学の基礎理論は「相対論」と「量子論」ですが、この二つを同時に使うことができる量子重力理論を完成させる方法の一つとしても研究されています。私たちが日常的に感じることができるのは3次元空間ですが、4次元以上の空間とはどのようなものでしょうか?また、なぜ空間が3次元であるとわかるのでしょうか?浪速阪教授の手書きのイラストを見ながら、美咲になったつもりで読むと、目で見ることのできない異次元の気持ちがわかるようになるかもしれません。

  • 2023/02/14 Books
    ポピュリズムとは何か : 民主主義の敵か、改革の希望か / 水島治郎著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田久代
    21世紀の世界はポピュリズムの時代を迎えたかのようだと言われます。実際、世界各国で、既存のエリート支配の政治を批判し、自らが民衆の声を直接代弁する者として民衆からの熱狂的な支持を獲得するポピュリストと言われる政治家やポピュリズムと呼ばれる政党や政治現象が躍進しています。しかし、「ポピュリズム」あるいは「ポピュリスト」についての説明を求められると、なかなか厄介です。というのも、ポピュリズムは、そもそも「人民(people)」という言葉から派生した言葉で、ポピュリズムと民主主義と決して相いれないわけではないからです。本書は、タイトルが示す通り、ポピュリズムとは何かについて、政治学的に解説しています。サブタイトルに、ポピュリズムについて「民主主義の敵か、改革の希望か」とあるのは、ポピュリズムが、民主主義に内在する矛盾を内在させているからでもあります。民主主義にとっての改革の希望というのは、ポピュリズムが、人民の立場から閉塞状況を打破し改革する運動となりえる側面があるとみるからです。しかし、一般的に、ポピュリズム現象が危惧されるのは、各国のポピュリズム現象において、移民やマイノリティへの排除等弱者の権利をあからさまに無視する言動が人気を集めているように、健全な民主主義を阻害する要因があるからです。ポピュリズムとは何かについて関心のある方に、お勧めしたいのが本書です。

  • 2023/02/14 Books
    キャンセルカルチャー : アメリカ、貶めあう社会 = CANCEL CULTURE / 前嶋和弘著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田久代
    タイトルの「キャンセルカルチャー(cancel culture)」とは、これまでの文化や伝統、歴史を否定する風潮を揶揄し、今日のアメリカ社会の分断を象徴する言葉です。この言葉は、米ドナルド・トランプ大統領が、奴隷所有を理由とした建国の父祖の記念碑撤去に対して、これまでの文化を否定する行為としてキャンセルカルチャーと批判し、リベラルな観点からの歴史の見直しに批判的な保守派に広がったと言われています。歴史的記念碑の問題は、その国の歴史とともにその歴史の延長線上にある現代をどのように捉えるかという論争的かつ一筋縄ではいかない問題を含んでいますが、キャンセルカルチャーという言葉を通して、保守派とリベラル派との間の対立がより鮮明になりました。本書は、キャンセルカルチャーをキーワードに、BLM(ブラックライブズマター:黒人の命も大切だ)運動、同性婚、人工妊娠中絶問題、移民、銃規制等現代のアメリカ社会を二分する対立の現状とその背景についてわかりやすく解説しています。トランプ大統領以降のアメリカ社会をより深く知るための一冊です。


  • 2023/01/30 Books
    相対論の意味 / アインシュタイン著 ; 矢野健太郎訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:端山和大
    「相対論の意味」はアインシュタインが1921年5月にプリンストン大学で行った講義録を元にしており、特殊相対性理論と一般相対性理論について、理論的な枠組みとともに理論形成に至る思想について書かれている本である。その内容は数理的にも完全に理解しようとしても高校の微分積分の知識があれば十分に読み進められるものになっている。現在、相対性理論について解説する本は、光の速度が止まっている人から見ても電車に乗っているような動いている人から見ても同じであるという衝撃的な内容にフォーカスしてできるだけ数学を用いない初等的なものから、相対論の舞台となる時間と空間を擬リーマン多様体として理論を展開する高度なものまで、多くの本が出版されている。そうした本では相対性理論を学ぶ上で多くの初学者がぶつかるであろう内容をかみ砕いて説明をしていたり、相対性理論をより現代的な枠組みの中に落とし込んで説明がなされている。そうした中で1921年に書かれた本書は相対性理論の創始者によるもので、その内容は、理論的な枠組みを説明するとともに、相対性理論が誕生した思想的なモチベーションに多く触れられており、哲学、特に科学哲学的にも勉強になるものになっている。現在物理学は、力学、熱力学、電磁気学など、教科書で学ぶとすでに完成されているように思うかもしれない。しかしそうした知識を使ったとしても、例えば宇宙はどのように始まったのかなど、我々には解き明かせないことの方が多い。そうした疑問を明らかにするために、今後、物理学はさらに発展していかなくてはならない。その過程で新しい理論的な枠組みが必要になると考えている。その時、相対性理論という枠組みはどういう背景で、どのような思想の下で生み出されたのかを、創始者が語る言葉は新しい理論の構築のために大きな助けになるに違いない。また物理学だけではない。何か新しいことを行うときにもきっと役に立つに違いない。私は本学学生にはぜひ自分なりになにか新しいことをやってもらいたいと思っている。そのために、本書は役に立つと信じ、推薦したい。

  • 2022/12/26 Books
    貨幣改革論 ; 若き日の信条 / ケインズ [著] ; 宮崎義一, 中内恒夫訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

    ケインズは20世紀を代表すると言われる偉大な経済学者である。1930年代の世界的な不況の只中で、それまでの経済学が見出せなかった不況脱却の処方箋を書いた。その後で、ケインズは若い日々を振り返って、当時を知る友だちに向かってクラブで朗読したのが、後に『若き日の信条』として出版された文章だった。ケインズがケンブリッジ大学の学生だったころだから、ちょうど皆さんと同じような年ごろである。当時彼は、経済学ではなくて倫理学に熱中していた。ケンブリッジ大学と言えば、イギリスの歴史ある名門大学。ケインズ自身も語っているように、彼と彼の友人は鼻持ちならないプライドの塊であった。若い倫理学の教師ジョージ・エドワード・ムーアの思想にケインズたちは夢中になった。ムーアは善というものが、決して言葉で定義できないとしていた。ムーアによれば、善を理解するのは色を理解するようなものである。生まれたときから目が見えなかった人に、黄色の色を言葉で教えることは不可能だ。だから、黄色の把握は言わば直感的なものだ。善も一緒であって、直観によってしか判断することはできないのである。しかし、現実問題として人間の直感の正しさを絶対的に信じることができなかったムーアは、次善の策として伝統的な道徳に従うことを勧めた。それが若いケインズたちには我慢ならなかった。若いエリートたちは、世間の道徳や因習をバカにしていたのである。このことをケインズ自身が印象的なフレーズで振り返っている。「私たちはムーアの宗教を受け入れて道徳を拒絶したのだ」と。若いケインズたちにとって、世の中の道徳は金銭的な損得勘定のように感じられた。しかし、この文章を読み上げたときの、老成したケインズは振り返っている。私たちは文字通り危険な若者であったと。そして、それからの長い歳月のなかで、社会のなかで育まれてきた習慣や考え方のなかにも、本当に大切なものがあると気が付いたと。私もそうであったが、君たちも世の中に反発したい若さを今持っている。一度本書を読んで、ケインズはこう考えたが、自分は将来、今の自分をどう思い返すだろうかという空想に耽ってみるのも面白いかもしれない。

  • 2022/12/23 Books
    倫理学 / 和辻哲郎著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山﨑 好裕

    和辻哲郎は倫理学者であるが多彩な業績を残した著述家だ。世界各国の人々の生活をその土地の自然から説明した著作『風土』は、今なお読み継がれる名作である。また、若き日の著作『古寺巡礼』は珠玉の紀行文である。それでも、やはり、彼の研究の中心は日本の倫理思想であった。日本人はどのようなことを正しいと考え、どのようなことをしてはいけないと戒めてきたのか。和辻の研究成果は、岩波文庫から4分冊で出ている『倫理学』で読むことができる。長い著作にはなるが、和辻の文章は平明で誰にでもわかりやすいので、読むのに困難はないであろう。和辻は、一人であっても人間とは言うが、元々人の間ということで人間社会を指す言葉であることに注目する。個人があって社会があるという西洋的な考え方は日本には馴染まないのではないか。日本人は世間に見られる人間関係、つまり、間柄(あいだがら)を第一に考えてきたのではないかと思い至ったのである。つまり、社会的な関係性こそが根源的であって、個人の独立性は二次的なものであるということだ。こういう考え方に基づいて、和辻は家族という最小の単位から国家に至るまでの理論を著作にまとめた。同じようなことを試みた哲学者にドイツのゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルがいる。彼も家族から著述を始めているが、その家族は個人として独立した男女から成る近代的なイメージで語られている。それに比べると和辻の家族のイメージは、戦前の日本で見られた大家族である。個人は大家族のなかの一員として、その中に埋没している。全体として和辻は個人の独立性よりも共同体の一体性を強調している。それは古い戦前の考え方だと言ってしまえばそれまでだが、現在も保守政治家や某宗教団体が伝統的な家族倫理を主張していることを考えると現在ともあながち無縁とは言えないのかもしれない。そうした保守的な倫理観がどこからやってきているのかを考える上でも、今一度和辻の著作を読んでおくのは無駄ではないだろう。それが批判的な読書というものではないだろうか。若い人たちには世間に蔓延する考え方を鵜呑みにせず、一度自分で考えてみることをお薦めしたい。

  • 2022/12/23 Books
    善の研究 / 西田幾多郎著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山﨑 好裕

    日本で最初の独創的な哲学者・西田幾多郎が世に出るきっかけとなった著作『善の研究』は、私が中学生のときの文字通り座右の書であった。中学生の私は寝るときに枕元に必ず文庫版のこの本を置いて読み、眠くなると灯りを消していた。だから、高校時代も最後の最後まで、西田が教鞭を執った京都大学に進学して哲学を専攻しようと思っていた。しかし、私の高校の教員から、東京大学を受験してくれないかと頼まれ(これ、ホントの話)、東京大学の経済学部で学ぶことになった。だから、こうして経済学者として本学の経済学部として教えているのである。この本はとても古い本である。現在の東京大学教養学部にあたるのが、戦前の旧制第一高等学校である。今の東京大学の新入生も全学部とも教養学部で1・2年生の時期を過ごすからだ。その時代に一高生たちがよく読んだ著作のリストにこの本は入っていたはずだ。その意味で私は中学生時代、半世紀ほど遅れてきた一高生だった。ただ、今でも思うが、この著作は現在も若い人であれば直面する、自分と世間、自分と他人とを折り合わせることの難しさに焦点を当てている。だから、今の若い人が読んでも何か心打つものがあるのではないかと思い、読書を勧めているわけだ。若い人は自意識が旺盛なので、他人と自分を比べて悩んだり、他人のことがよく理解できないと苦しんだりする。西田という明治の青年も同じように苦しんでいたようだ。西洋の哲学を学んだり、自分でも思索をしたりして(西田は額に脂汗を浮かべながら苦悶の表情で思索したという!)、西田はある真理に到達する。それは「我あって経験あるに非ず、経験あって我あるなり」というものだ。自意識を忘れてあることに熱中したり、風景に埋没したりするとき、人々は自由になれる。この状態を西田は純粋経験と呼ぶ。この純粋経験を後で振り返ったときに初めて、自分という存在が確認できたり、他人という存在を認識できたりするというのだ。だから、自意識の呪縛に悩む必要はない。自分自分と思わずに、他人と自分を包み込むより大きな自分になることが大事だ。私自身、こう思って本当に安心できたことを記憶している。ませガキだね。

  • 2022/12/22 Books
    プリオン説はほんとうか? : タンパク質病原体説をめぐるミステリー / 福岡伸一著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    プリオン病について、その基礎知識、歴史から始まり、国内外の研究施設の実験データを紹介し、病原体プリオンの実態および問題点は何なのかをわかりやすく論述している。

  • 2022/12/22 eBook
    プリオン病とは何か

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    微生物におけるウイルス、細菌などとは異なるプリオン病における病原体プリオンの特徴や、ヒトだけでない人獣共通感染症について記載している。幅広くプリオン病の背景・基礎知識を取得する上ではお薦めの一冊である。

  • 2022/12/22 Books
    ジェノサイド / 高野和明著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    現在、タンパク質の立体構造情報を元にスパコンを使って薬を開発する「インシリコ創薬開発」が盛んに進められている。本書はその「インシリコ創薬」を軸に、様々なドラマが巻き起こる内容であり、インシリコ創薬とは何かをイメージする上でお薦めする本である。

  • 2022/12/22 Books
    死の病原体プリオン / リチャード・ローズ著 ; 桃井健司, 網屋慎哉訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    プリオン病における最初のノーベル賞を受賞したカールトン・ガジュセック博士を中心に、ウイルスなのか細菌なのか分からないその時代の未知病原体の探索研究に関して、世界規模で研究が進められてきた内容が詳しく書かれている。プリオン病の原点を知る上でお薦めする一冊である.

  • 2022/12/22 Books
    狂牛病 : 人類への警鐘 / 中村靖彦著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:石橋 大輔

    2000年始めに世界中を震撼させた感染症の狂牛病(ウシのプリオン病)について時系列を追って詳しく説明されている。またその狂牛病からヒトへの感染し変異型クロイツフェルトヤコブ病を発症するという深刻な問題について解説している。社会問題となった「狂牛病」について情報を得るにはお薦めの一冊である

  • 2022/10/21 Books
    チョコレートはなぜ美味しいのか / 上野聡著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:渡辺 啓介

    舌触りがよく,口溶けのよいチョコレートは,どのようにしてできているのか?著者は,食品物理学者であるが,本書に数式はなく,科学になじみのない人にもわかりやすく,チョコのおいしさの秘密を解きほぐすように書かれている.文系学生にもチョコレートを通じて,科学の素養を身につけるのに丁度いい内容となっている.もちろん,理系の学生にとっても,チョコの味と日頃学ぶ抽象的な事柄が,どのように結びつくのかという意味で別の味わいがある.「チョコレートは食べる結晶である」 このシンプルな命題に込められた深い意味は,読みすすめるうちに明らかになる.チョコレートは油脂でできた結晶であるが,そもそも結晶とは何なのか?結晶とは,ダイヤモンドのようなきらびやかな宝石をイメージするかもしれないが,鉛筆やシャーペンの芯に含まれる黒鉛も結晶である.どちらも炭素原子が密集した状態であるが,炭素原子の配列に違いがある.これを結晶多形という.チョコレートも結晶多形であり,油脂の配列の違いによって,食感の違いが生まれる.人間の舌には,分子配列の違いを感知できるすばらしい機能が備わっていることには驚かされる.手作りチョコにトライしたことのある女の子は,チョコが白くかたまり,がっかりした経験があるだろう.このブルームと呼ばれる現象は,油脂結晶の粗大化であり,かわいくもおいしくもない残念なチョコレートの結晶である.この美味しくない結晶を除去し,かわいくもおいしいチョコを作り出すショコラティエの技についても,明快な説明がなされている.通常この手の表向きは一般向けに書かれた科学本は,歴史的背景に偏っていたり,成分を羅列していたり,測定機器のすばらしさや,研究の苦労話に花を咲かせて,著者のナルシズムを感じさせる本も少なくないが,本書はその限りではない.地理や歴史的背景と,食品物理学の専門性がバランス良く網羅されていて,様々な背景の読者にも飽きさせない内容となっているので,すべての学部学科の学生へおすすめしたい.後半は,油脂の結晶化という共通のキーワードによって,チョコレートだけでなく,マヨネーズやマーガリンへ話が展開される.福岡は食の街と言われるが,本書を読み,福岡の食文化に科学的なリテラシーを編み込むのも悪くないだろう.

  • 2022/08/01 Books
    なぜ「やる気」は長続きしないのか : 心理学が教える感情と成功の意外な関係 / デイヴィッド・デステノ著 ; 住友進訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:山口幸生

    教育現場で教師は「感謝」「思いやり」「誇り」の大切さを強調してきた。しかし多くの人は、これらの感情を「人間関係の潤滑油」以上の役割を持つものとして捉えているだろうか?本書はこれら3つの感情の役割について、豊富なエビデンスを元に新しい光をあてている。シンプルに言えば、これらの感情は「やる気」を長続きさせる。本書では、理性や意思力、やり抜く力の重要性を否定しているわけではない。しかしそれらは比較的もろく、維持するのが大変で、時には有害でありうる、と著者は表現する。AIの登場で、職場環境や人間関係がダイナミックに変化しつつある。この新しい時代において「感謝」「思いやり」「誇り」の感情を高めることが、人生の成功に不可欠なものである、と言うのが本書の主張である。ぜひ、我慢が足りず、三日坊主で終わりがちな人(あぁ、私だ)に一読してほしい。

  • 2022/06/23 Books
    風のことば空のことば : 語りかける辞典 / 長田弘詩 ; いせひでこ絵

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 安元 佐和

    2015年に亡くなった詩人の長田弘氏が残した「ことばの束」に、絵本作家のいせひでこさんが絵を描き出版されました。長田弘さんのことばと、いせさんの描く空や植物、こどもの姿が、読む人の心に優しく語りかけてきます。生きていくのに疲れた時、開いてみると心が洗われます。そばに置いておきたい一冊になるでしょう。医学部分館に置かれていますので、どうぞ手にとってみて下さい。

  • 2022/06/23 Books
    雪の花 : ロシアのお話 / セルゲイ・コズロフ原作 ; オリガ・ファジェーエヴァ絵 ; 田中友子文

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 安元 佐和

    ロシアのセルゲイ・コズロフの戯曲 「雪の花」をモチーフにオリガ・ファジェーエヴァが絵を描きおろし絵本になりました。大晦日の夜、ハリネズミは高い熱を出した大切な友達のクマくんを救うため、どこにあるかもわからない「雪の花」を夜中森の奥深くまで探し回ります。「雪の花」は見つかるのでしょうか。 医学部分館に置いている大人も癒やされる絵本です。                 

  • 2022/06/23 Books
    ちいさなあなたがねむる夜 / ジーン・E・ペンジウォル文 ; イザベル・アルスノー絵 ; 河野万里子訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 安元 佐和

    北国の寒い夜、家の中で毛布に包まり眠るあなたのように、静かに降り積もる雪は大地を包みます。幻想的な絵とことばの深い優しさに読む人も包まれるでしょう。

  • 2022/06/14 Books
    What (ホワット) is (イズ) life (ライフ) ? : 生命とは何か / ポール・ナース著 ; 竹内薫訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 石井 一成

    「生命とは何か?」という大きな質問をタイトルとする本書は、ポール・ナース博士による一般向けの本です。博士は、酵母の分裂を対象にした研究でノーベル医学・生理学賞を受賞した生物学者です。この本は、細胞の発見から最新の医学知識まで網羅しながら表題である「生命とは何か?」という問いを解き明かそうとするものです。さて、学生の皆さんはここまで聞くと、「難しい本なのでしょ?」と思うかもしれません。しかし、この本は決して難しい本ではありません。語り口は教科書と全く異なっていて、優しい文体で書かれており、生物学、医学の初学者から読める本になっています。それでいて、専門家も読めば考えさせられる内容となっているのは流石です。そして、なにより博士の根底にあるすべての生命に対する深い愛情、慈しむ心を感じます。まずは手にとってゆるりと読んでみてください。

  • 2022/06/03 Books
    狩りの思考法 / 角幡唯介著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:原 圭一郎

    かつて犬橇探検家として名を馳せた植村直己さんがグリーンランド最北の村・シオラパルクを探検のベースとしていたことを,今でも,シオラパルクを拠点として犬橇を使って生活や探検をする日本人が複数名いることを知っていますか?角幡さんはその中の一人で,1年の半分近くを現地での活動に費やし,犬橇探検や狩りをしています.現地での狩猟・探検活動や現地の人々(イヌイット)との交流で,彼が感じたこと,思ったことを読みやすくまとめられています.都会生活に馴染んでしまい,次の予定を常に考えてしまう日本人と,狩猟者であり,死との距離が近いイヌイットの物事の捉え方・考え方の違いがそこにある.明日のことを聞かれたら・・・「ナルホイヤ(わからない)」だ.「ナルホイヤ」であることにも理由があり,必然なのだ.エッセーとして,紀行文として,文化人類学として,哲学として・・・色々な視点から読める内容です.

  • 2022/06/03 Books
    侵食される民主主義 : 内部からの崩壊と専制国家の攻撃 / ラリー・ダイアモンド著 ; 市原麻衣子監訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    著者であるラリー・ダイアモンドは、世界各国の民主化および民主主義を長年にわたり研究してきました。私たちは世界的に民主主義が後退あるいは衰退し、自由が脅かされている危険な時代に生きていると、ダイアモンドは言います。民主主義の後退は、新興民主主義国家だけでなく、アメリカ合衆国をはじめ安定的な民主主義国家においても見られます。なぜ民主主義が大切なのか。国内外からの脅威から民主主義を守り維持していくために、政府は何をすべきか、というダイアモンドの問題関心は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、よりリアルです。(原著刊行は2019年です。)

  • 2022/06/03 Books
    侵食される民主主義 : 内部からの崩壊と専制国家の攻撃 / ラリー・ダイアモンド著 ; 市原麻衣子監訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    著者であるラリー・ダイアモンドは、世界各国の民主化および民主主義を長年にわたり研究してきました。私たちは世界的に民主主義が後退あるいは衰退し、自由が脅かされている危険な時代に生きていると、ダイアモンドは言います。民主主義の後退は、新興民主主義国家だけでなく、アメリカ合衆国をはじめ安定的な民主主義国家においても見られます。なぜ民主主義が大切なのか。国内外からの脅威から民主主義を守り維持していくために、政府は何をすべきか、というダイアモンドの問題関心は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、よりリアルです。(原著刊行は2019年です。)

  • 2022/05/24 Books
    すばらしい人体 : あなたの体をめぐる知的冒険 / 山本健人著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 四元 房典

    本書の著者は、消化器外科専門医であると同時に1000万ページビューを超える医療情報サイトを運営し、医学の歴史だけでなく、現代医療にまつわる意外な常識を紹介する著書も多数出版しています。本書は人体の構造や仕組みだけでなく、なぜ人は病気になるのか、医学史における大発見のエピソードなど、医学の奥深さが分かりやすく面白く解説されており、医学を学ぶことの楽しさを教えてくれる一冊です。医師を目指す学生はもちろん、これから社会で活躍する本学全ての学生に医学入門編の本として是非お薦めします。

  • 2022/05/24 Books
    ポリヴェーガル理論入門 : 心身に変革をおこす「安全」と「絆」 / ステファン・W・ポージェス著 ; 花丘ちぐさ訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 安元 佐和

    自律神経機能は、人の心身の健康を守るために交感神経と副交感神経がバランスを取りながら機能していることが知られています。この本の著者は、副交感神経である迷走神経系には、解剖学的に2つの経路があり、その一つは乳幼児期の愛着形成の中で、対人関係や社会性の機能と関連して育まれること、過度のストレス状態やトラウマで生じる自律神経系の破綻は、人の心理的、社会的行動と密接に関連していることを述べています。この本は、心と身体の関係、人の行動を理解する上で役に立ち、特にストレスケアやトラウマケアの裏付けになる理論と言えます。対人支援を行う人に大切な気づきを与える一冊です。

  • 2022/05/24 Books
    極北クレイマー2008 / 海堂尊 [著]

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 坂田 直昭

    主人公である外科医師が北海道の極北市民病院に赴任するところから物語が始まる。病院の杜撰な実態と一癖も二癖もある同僚に翻弄されつつも地域医療に奮闘する主人公の姿が描かれている。この小説の核は同僚の産科医師が遭遇した医療事故であるが、これは実際にあった「福島県立大野病院産科医逮捕事件」が下敷きになっている。本作品は娯楽小説として一級であると同時に、地方病院で勤務する医師のリアリティーを知る教材でもある。医療事故に対して警察が介入することの是非を考える良い機会にもなると思う。続編の「極北ラプソディ2009」と併せてお薦めしたい。

  • 2022/05/24 Books
    アイデアのつくり方 / ジェームス・W.ヤング [著] ; 今井茂雄訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 大倉 義文

    「下手の考え休むに似たり」という格言がありますが、少ない知識と浅い考えではなかなか良いアイデアは生まれてこないという教えで、私が子どもの頃父が折に触れ教えてくれました。
    私自身、小学校の頃 本を読むのはとても好きでしたが「読書感想文」がとても苦手でした。
    良い切り口(論点)のアイデアが見つからず、思いついたことを書き連ねても論理構成がまとまらず、思うような手応えがありませんでした。
    さて、そんな苦い経験のある私が、内科研修医の頃に出会ったのが,この本です。
    ゆっくり読んでも1〜2時間くらいで読み切れます。(私の場合は読みながら興味深い箇所に横線を入れて読み進めました)
    理工系・医学看護・薬学系の学生さんにも、人文系の学生さんにもクリエイティブなアイデア・発想の基礎体力をつけたい学生さんにお薦めの一冊です。

  • 2022/05/24 Books
    老いる意味 : うつ、勇気、夢 / 森村誠一著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 小栁 康子

    高齢社会において、患者の加齢に伴う変化を理解することは、治療の前提として必要である。本書は、著者自身が高齢期にうつ病を発症し、文章が書けずに追い詰められる状態から、治療を支えに立ち直っていくプロセスを描いている。最も印象に残るのは、著者が患者として医師に出した手紙に表れる苦悩と、乏しくなった表現を補うかのように詩情が湧き、新たな写真俳句という分野を拓いたことである。老いる意味には、プラスの変化もある。老いの理解だけでなく、高齢期の挑戦の姿に勇気をもらう。肩の力を抜いて読める一冊である。

  • 2022/05/13 eBook
    心理学,認知・行動科学のための反応時間ハンドブック

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:小笠 希将

    スポーツを見ていて、「この選手の反応早いな~」なんて思ったことありませんか?もちろん日常でも、ふとした瞬間に、「反応はやっ!!」と言ったり、思ったりすることもあります。
    でも本当の意味で反応が早いとはどういうことなのか考えたことがあるでしょうか?
    そもそも反応とは何を意味していて、どうやって測定するのか?また、本当に反応が早いってのはどれくらいの時間で反応することを指すのだろう?など、よくよく考えてみるとわからないことが意外に多いことに気づかされます。
    皆さんもこの本を読んで、反応のエキスパート(のタマゴ)を目指しましょう。そして、言葉の意味を正しく理解して使えるカッコ良い大学生になりましょう。
    スポーツ心理学を学んでみたいな、と思っている大学生、大学院生には必読書となっています(笑)。

  • 2022/05/13 Books
    いろいろ / 上白石萌音著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:光冨 省吾

    女優・歌手の上白石萌音のエッセイ集。タイトルの『いろいろ』は特にテーマを決めないで、さまざまなことを題材にしているという意味であるが、上白石の関係者が彼女を色にたとえてみるという意味もある。読んでみて、ことばの使い方に繊細であること、教養豊かな女性であることが伝わってくる。NHKラジオ英会話のテキストに『赤毛のアン』を翻訳し、プロの翻訳家から添削してもらうという連載もしていた。登場人物の心理を表現するように心がけた内容だったと思う。

  • 2022/05/02 Books
    わかりあえないことから : コミュニケーション能力とは何か / 平田オリザ著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:山口 幸生

    コミュニケーションに悩む全ての人へ

    世の中、どこもかしこもコミュニケーション能力が求められている、と言われている。ではコミュニケーション能力って何だろうか?学生に聞いてみると、なんとなく説明できるが、あまり深掘りできていない場合が多い気がする。本書では極めて重要なキーワードとして「対話」「冗長率」という用語が登場する。世の中に溢れかえる様々なコミュニケーション技法の習得に馴染めない人は、ぜひ本書を手に取ってほしい。

  • 2022/04/04 Books
    Humankind希望の歴史 : 人類が善き未来をつくるための18章 / ルトガー・ブレグマン著 ; 野中香方子訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    経済学では、〈人間の利己性〉(=合理的経済人)を前提にして、個人や企業の経済活動をモデル化して説明します。この考え方は、17世紀の思想家トマス・ホッブズの『リヴァイアサン』にも見られますし、「経済学の父」アダム・スミスは、『国富論』において、〈人間の利己性〉を社会の利益と結びつけて体系的に説明しています。他方で、私たちは、日常生活のなかで、ある人が自己犠牲を払って見知らぬ人を助けたという話やニュースをしばしば耳にします。利己的に振る舞う人間と利他的に振る舞う人間、どちらが本来の人間の姿なのでしょうか。著者のブレグマンは、「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」と答えます。この主張を裏づけるブレグマンの議論はとても興味深いものであり、〈人間の利己性〉を前提にした現代社会の在り方を見つめ直すよいきっかけを与えてくれるのではないかと思います。上巻を読み終わったら、ぜひ下巻も読んでみましょう。

  • 2022/04/04 Books
    悪意の心理学 : 悪口、嘘、ヘイト・スピーチ / 岡本真一郎著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    ちょうどこの書評を書いているときに、アメリカのアカデミー賞授賞式で、俳優のウィル・スミスが、プレゼンターを務めたコメディアンのクリス・ロックを平手打ちするという事件が起きた。事の発端は、クリス・ロックが、ウィル・スミスの妻であり俳優のジェイダ・ピンケット・スミスの髪形をいじったジョークを飛ばしたことだった。ジェイダは円形脱毛症に悩んでおり、このジョークを侮辱と受け取ったウィル・スミスが、檀上でクリス・ロックを平手打ちしたのである。おそらく、クリス・ロック自身は侮辱するつもりはなく、その場を盛り上げるために飛ばしたジョークだったのだろうが、ウィル・スミスの受け取り方はそうではなかった。言葉は意図的に相手を傷つけるために用いられることもあれば、今回のように、意図せずに相手を傷つけることもある。本書は、言葉の使用やその作用について、心理学的な側面から分かりやすく説明している。日本においても、昨今、SNS上での誹謗中傷が問題視されているが、こうした問題を考える上でも、本書は大いに役に立つだろう。

  • 2022/04/04 Books
    カフェと日本人 / 高井尚之著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    17世紀半ばから18世紀にかけて、イングランドではコーヒーハウスが流行し、社交場として賑わいをみせていました。人々はそこで、雑談や議論をしたり、噂話を聞いたり、情報を仕入れたりしていました。そして、コーヒーハウスは、人と情報が集まることから、投資や保険、郵便などのビジネスの場としての役割も担っていました。現在の日本に目を向けると、街中のいたるところにカフェや喫茶店を見つけることができます。日本の場合、最も古いカフェは1888年の「可否茶館」と言われています。私がよく行く喫茶店では、コロナ禍の影響もあり、リモートワークをしたり遠隔授業を受けていたりする光景をよく目にしますが、現在にいたるまで、私たちの日常生活におけるカフェや喫茶店の役割はどのように変化してきたのでしょうか。お気に入りのカフェや喫茶店で好きなコーヒーを飲みながら、ぜひ考えてみてはいかがでしょうか。

  • 2022/04/04 Books
    教育格差 : 階層・地域・学歴 / 松岡亮二著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    著者によれば、この社会には「出身家庭と地域という本人にはどうしようもない初期条件(生まれ)によって教育格差がある」という。この教育格差は、「最終学歴に繋がり、それは収入・職業・健康など様々な格差の基盤」になるという。そして、著者は「20代前半でほぼ確定する学歴で、その後の人生が大きく制約される現実が日本にはある」と断言する(15頁)。つまり、親が高卒なのか大卒なのか、また、都市在住なのか地方在住なのかが、子の学歴や職業、収入等に影響を与える、ということである。この著者の主張に対して疑問をもった人にこそ、本書を読んで欲しい。著者は、様々なデータを用いて、このことを実証しているからである。現在、日本において格差が問題とされているが、正しい現状認識をもたなければ、効果的な解決策を提示することはできない。本書を読むことによって、いまの日本が置かれている状況をぜひ知ってもらいたい。

  • 2022/04/04 Books
    恋愛と贅沢と資本主義 / W・ゾンバルト著 ; 金森誠也訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    かつて、マックス・ヴェーバーは、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』において、カルヴァンの予定説にもとづく(救済の確証を得るための)質素、倹約、勤勉さ(=禁欲精神)が、資本蓄積を可能にし、それが後の経済発展につながったこと、そして、資本主義を生み出したことを論じました。ところが、ヴェーバーと同時代のドイツの経済学者ヴェルナー・ゾンバルトは、禁欲精神ではなく、奢侈(贅沢)が資本主義を生み出したと論じました。人々が奢侈品(生活必需品以上の財)を消費することによって、経済が発展(=資本主義が誕生)したとするゾンバルトの説は、近年の経済史研究によっても実証されています。ゾンバルトの考えは、資本主義の成り立ちについてだけでなく、現在の経済政策について考える上でも、大いに参考になると思います。ぜひ一度、本書を手にとって読んでみてはいかがでしょうか。

  • 2022/03/31 Books
    超国家主義の論理と心理 : 他八篇 / 丸山眞男著 ; 古矢旬編

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:生田敏康

    戦後日本を代表する政治学者・思想家である丸山眞男の名を一躍世に知らしめた同名の論文を含む、1946年から1957年までに発表された丸山のファシズムに関する論文9編を集めたもの。丸山は日本が無謀な戦争に突入していった原因を軍人・政治家などの戦争指導者の精神構造を分析することにより究明しようとするが、ここで展開される「無責任の体系」などの丸山の独創にかかる日本の政治や社会を読み解くキーワードは、今日でもその意義・有効性を失っていない。丸山の政治学に関する論文を集めた『政治の世界』も岩波文庫(2014年)から刊行されているので、併せて読んでみたい。

  • 2022/03/31 Books
    デュアル・ブランド戦略 : NB and/or PB = Dual brand strategy : NB and/or PB / 矢作敏行編著

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:杉本 宏幸

    私達の身の回りには、セブンプレミアムやローソンセレクト、トップバリュなどといった商品があります。これらはコンビニエンスストアのセブンイレブン、ローソン、スーパーマーケットのイオンによる商品で、プライベートブランド(以下、PB)と呼ばれます。PBは流通企業(小売企業や卸売企業)によるブランドです。

    同様に、カルビーポテトチップスなどといった商品もあります。これらは製造企業のカルビーによる商品で、ナショナルブランド(NB)と呼ばれます。NBは製造企業によるブランドです。

    コンビニエンスストアやスーパーマーケットといった流通企業が自分のブランドであるPBを持つのは何故でしょうか? 流通企業はメーカーが製造したもの(主にNB)を仕入れ、それを消費者などの顧客に販売する仕事をしてきました。それが流通企業の仕事だからです。自分のブランドを持つのは過去の流通に関する常識を覆しています。

    普段行っているお店がいつも同じでは飽きてしまわないでしょうか? 新しいブランドがあれば普段とお店の雰囲気も変わりやすく、私達消費者が関心をもったり、買ってみようと思うかもしれません。しかし単にお店の雰囲気を変えるためであれば、お店の配置やプロモーションを変えたり、違う商品(NB)を置いたりすれば良さそうです。流通企業が自分のブランドであるPBを持つのは、異なる自事情がありそうです。

    現代は、PBとNBが絡み合って市場に存在しています。実務的にも理論的にもPBとNBの双方を扱わざるを得ないといえます。本書を読み進めると、普段考えたことが無い流通や取引の世界に一歩足を踏み入れることができるでしょう。本書を是非お勧めします。

  • 2022/03/31 Books
    マックス・ヴェーバー : 主体的人間の悲喜劇 / 今野元著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:生田敏康

    本書(本書は「ウェーバー」ではなく「ヴェーバー」と表記する)は、ウェーバー研究の「伝記論的転回」と呼んでいるように、ウェーバーの美化・聖人化を排除し、政治好きで愛国主義者であり、複雑な多面性をもった存在としてのウェーバーを批判的に描いている点で異色の伝記である。(妻以外の)女性関係やナチズムとの親和性など従来のウェーバー研究ではあまり触れられてこなかった部分について言及している点も面白い。

  • 2022/03/31 Books
    法と社会科学をつなぐ / 飯田高著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:生田敏康

    本書は「法学によらない法学入門」と謳っているように、経済学・社会学・心理学という法学以外の社会科学の切り口から法および法学にアプローチするものである。法と経済学、ゲーム理論、行動経済学、認知心理学などの手法を用いながら法の意義・法の役割・法の限界などに取り組む本書の叙述は、伝統的な法学(法解釈学)を学ぶ者にとって新鮮かつ有益な示唆・提言を与えてくれる。本書刊行からやや時が経過しているが、参考文献を豊富に掲載しており、より深く学びたい読者の学習にも役に立つ。

  • 2022/03/31 Books
    マックス・ウェーバー : 近代と格闘した思想家 / 野口雅弘著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:生田敏康

    少しでも社会学ないし社会科学に関心があれば、(社会学というより)社会科学の巨人であるマックス・ウェーバー(Max Weber,1864~1920,「ヴェーバー」とも表記される)の名を知らぬ者はいないだろう。このウェーバーに関して没後100年を契機に日本人研究者による2つの伝記(野口・中公新書および今野・岩波新書)が刊行された。ある人物・事象に対する評価は唯一絶対的なものではなく、評価する者や時代・地域によって相違・変化するものであり、このウェーバーに関する2つの新書を比較して読んでみることも無益ではないだろう。本書(野口・中公新書)は、「ヨーロッパ近代を素描した人という側面」に注目しながらウェーバーの哲学的・政治的プロフィールを描くことをコンセプトとしている。丸山眞男や大塚久雄などの日本人研究者を含め内外の多くの思想家とウェーバーを関連づけて叙述しているのが特徴である。

  • 2022/03/31 Books
    日本軍兵士 : アジア・太平洋戦争の現実 / 吉田裕著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:生田敏康

    悲惨な敗北に終わったアジア・太平洋戦争を、兵士の目線から凄惨な戦場の現実を描く。国家の誤った意思決定によりいかに兵士を含めた多くの民衆が犠牲になったか、絶望的な状況の中でなぜ無残な死(それも戦闘による「戦死」ではなく餓死や病没などの「戦病死」が圧倒的に多い)を遂げざるを得なかったかを問う。古参兵による私的制裁(リンチ)の横行とその黙認・隠蔽、捕虜になることを事実上禁ずる軍の方針に起因する自殺(自決)の強要、足手まといになる傷病兵の処置(殺害)など不条理かつ非人間的な戦場の実態が描かれる。

  • 2022/03/31 Books
    法窓夜話 / 穂積陳重著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:生田敏康

    わが国の民法典の起草者の1人であり、明治・大正の法学界の大御所といわれた穂積陳重のエッセー集である(初出は1916年)。古今東西の法律事情に通じ博覧強記の著者によるエッセーはいずれも短く読みやすいが、法学を学ぶ者にとって興味深い題材に満ちている。たとえば「大津事件」「法典実施延期戦」「民法編纂」などは法学部の学生にもなじみ深いテーマであろう。岩波文庫版における福島正夫の解説も充実していて参考になる。なお、本書の続編として『続法窓夜話』がある(岩波文庫1980年)。本書を読んで著者に興味をもった人は、穂積の人生を辿ることによりわが国の法学の創成期を描いた内田貴『法学の誕生』(筑摩書房2018年)も一読してほしい。

  • 2022/03/28 Books
    中内功 : 生涯を流通革命に献げた男 / 中内潤, 御厨貴編著

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:杉本 宏幸

    ダイエーという会社(小売企業)を創り上げた故・中内功氏、その関係者に語ってもらったオーラルヒストリーの本です。

    「流通」という分野を学ぼうとする初学者にとって、その範囲の広さに戸惑うことがあるのではないでしょうか?
    小売企業(や卸売企業)といった企業や事業所に着目することだけでは、システムである流通のある部分しか理解できないためです。

    例えば、ダイエーは消費者に向け、セービング等の低価格ブランド(プライベートブランド)を展開してきました。
    これは、取引先企業との関わりの中でできたものです。では、それができるまでにどのような現実があったでしょうか?

    低価格ブランドを展開するにあたって、メーカー(製造業)とは深刻な対立に至っています。
    メーカーと対立してまで小売企業が自社ブランドを展開してきた経緯はどのようなものでしょうか?

    「主婦の店」であるダイエーを立ちあげた故・中内功氏は、第二次世界大戦後、闇市から出発なさっています。
    私たちの多くは見ていない第二次世界大戦に何を見出されたのでしょうか。

    新型感染症、自然災害、紛争など、不安定な社会情勢になることが少なくない昨今です。
    そうしたとき、流通が不安定になりやすくなります。流通が不安定になると人々の生活は脅かされます。
    いま一度、流通について理解を深めるため、戦後日本の流通における偉人である故・中内功氏が語る本書をお勧めします。

  • 2022/03/28 Books
    古典ギリシア / 高津春繁 [著]

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

    古代ギリシア文化あるいはヨーロッパ文化一般に興味のある人に、お薦めしたい一冊です。ヨーロッパ文化は、古代ギリシア文化の延長線上にあります。初版は1946年なので少し古い本ですが、古代ギリシア世界を、まるで実際に見てきたかのように生き生きと描写しています。塩野七生『ギリシア人の物語』(新潮社) よりも、ずっとコンパクトに読むことができます。
     本書によれば、「ギリシア人は都会生活者であった。彼らの生活は都市を中心として動いている。」そうです。一方「ローマ人は生まれながらの田舎者であるから、都市に住んでいても常に田舎に郷愁をもっている。」そうです (ローマ人に対する悪口ではありません)。本書を読んで、古代ギリシア人が (いい意味でも悪い意味でも) どのような点でクールであったのかを感じてみてください。なお著者は、インド・ヨーロッパ比較文法学者としても有名です。

  • 2022/03/28 Books
    鉄筋コンクリート建築の考古学 : アナトール・ド・ボドーとその時代 = The archaeology of reinforced concrete in modern architecture : architect Anatole de Baudot and his era / 後藤武著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:太記 祐一

    「ヴィオレ・ル・デュクとフランク・ロイド・ライトをつなぐ存在?」

    現代の日本では大きな建物を立てるとき、鉄筋コンクリート造の柱や梁で支える方法が一般的です。この方法が一般的になるのは20世紀初めのことですが、その前の19世紀後半のヨーロッパでは多くの人々が鉄筋コンクリートの様々な使い方を模索していました。本書はその一人アナトール・ド・ボドーの研究書で、2021年の日本建築学会著作賞を受賞した名著です。忘れ去られた天才ともいうべき人物を通して、当時の建築界の活気に満ちた様子が説明されていきます。新しい技術と古い伝統を結び付けようとする試行錯誤、そこから生まれた新しい鉄筋コンクリートの使い方、そしてそれが時代と共に忘れ去られていく様子、そうしたダイナミックな流れが豊富な事例をもとに説き明かされていきます。19世紀の建築から現代の建築がどのように生まれて来たのか、近代の建築の歴史に関心がある人にお勧めの一冊です。

  • 2022/03/28 Books
    建築の聖なるもの : 宗教と近代建築の精神史 / 土居義岳著 = The sacred in architecture : religion and modern architecture as a history of ideas / Yoshitake Doi

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:太記 祐一

    「近代社会における宗教建築とは?」

    本書は2021年の日本建築学会賞を受賞した、かなり専門性の高い研究書です。19世紀から20世紀にかけてのフランスを舞台に、政教分離が教会建築にどのような影響を与えたのかを考えていきます。「聖なるもの」という考え方が誕生してくるフランス革命前後に注目するところから始めて、現代における国家とモニュメントの関係にまで論を展開させていこうという意欲作です。なぜ文化財建造物は国が管理するのか、教会建設は公共サービスの一環なのか、などといったテーマが、政治と宗教・社会と文化・制度と建築といった関係から論じられていきます。その視野の先には、例えば靖国神社の様な、日本の事例も見据えられているように思われてなりません。建築を政治・社会・制度などとの関係で考えてみたい人は必読でしょう。

  • 2022/03/24 Books
    姑獲鳥(うぶめ)の夏 / 京極夏彦著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:勝本 之晶

    おどろおどろしい表紙の「姑獲鳥」本をミステリの棚で見つけたときの感想は,妖怪はミステリの題材になり得るのかという,なんとも凡庸なものだった.ミステリは好きな方だ.シャーロック・ホームズ,エルキュール・ポワロ,明智小五郎,金田一耕助,コロンボ,… 探偵は,巧妙に隠された悪事を,ほんの少しの手がかりと強力な論理的思考で暴いていく.事実の断片が小さければ小さいほど,手がかりが少なければ少ないほど,後に開示されるストーリーには一貫性と論理性が求められる.推理小説はロジカルであればあるほど楽しいと思う.妖怪など前近代的な人間の妄想か子供騙しだ,と誤解していた当時の僕には,論理と妖怪につながりがわからなかったのである.
    今は違う.「姑獲鳥の夏」は,世界を一変させる強烈な読書体験だった.憑物落としになりたい——なんてことを真剣に考えてしまうほどに.在るものが見えてなかったのか,それとも無いものを見るようになってしまったのか,問題はその点にある.妖怪は,果たして論理たりえるのだろうか.
    ミステリはカラクリを楽しむものだと思う.事件の不可能性を信じこませる舞台と,一旦暴かれれば事の発端と終端が見事に連鎖する機械仕掛けがある.「姑獲鳥の夏」では妖怪と殺人という仮想と現実が交錯する舞台に,機械仕掛けとして人類の知の結晶が惜しげもなく組み込まれる.脳科学と認知科学,宗教学,量子力学のコペンハーゲン解釈,ラッセルの世界5分前仮説,柳田國男の民俗学,レヴィ=ストロースの神話の構造...大学生が教養科目で聞きかじったであろう叡智の数々が,エンターテイメントのカラクリとして登場する.これを極上と言わずしてなんと言えよう.
    そうそう,本書は本学では中央図書館の他に医学部分館にも置いてある.うぶめは産女だからお産の話が中心にある.子供が生まれた後に読み返してみて初めて気づいたのだが,僕は現代の産婦人科で確かに——妖怪を見ていた.妖怪は,我々の生の一つの側面である.それは,人が人として世界を理解しようとする限り変わらないのだ.——この世には不思議なことなど何もないのだよ,関口君.京極堂の聲が聞こえる.

  • 2022/03/23 Books
    雨の科学 / 武田喬男 [著]

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:西 憲敬

    昨今、線状降水帯ということばがよく聞かれる。これは、数kmスケールの雨雲が、細長い形をしたほぼ同じ場所で次々と発生しては移動することを繰り返すために、その場所での雨量が膨大な量になるような現象をいう。このことばは、2010年以降に使われるようになった比較的新しいことばである。しかし、このようなシステムによる豪雨は、当然のことながら、ずっと昔から研究されてきた。この本は、線状降水帯、ということばがこの世に出る前に書かれた本なので、そのことばは当然出てこないのであるが、線状の形態をもつメソスケール降水システム、とよばれて、気象学者がずっと気になっていた豪雨発生のしくみについて、とてもよくわかるように書かれている。雨が降る仕組みから、雨の気候における役割まで、バランスの良い記述がされている、雨を知りたい人への格好の入門書である。

  • 2022/03/23 Books
    Optimal control and viscosity solutions of Hamilton-Jacobi-Bellman equations / Martino Bardi, Italo Capuzzo-Dolcetta

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:柳 青

    本書は,最適制御問題に応用される偏微分方程式論を詳しく紹介する優秀な教科書であり,一階完全非線形方程式に関する粘性解理論の入門書でもあります.粘性解とは,1980年代初頭にP. L. Lions氏とM. Crandall氏によって,非線形偏微分方程式の一種の弱解の概念として導入されたものです.最適制御や微分ゲームなどの分野に現れるHamilton-Jacobi方程式を考察するには,粘性解を用いた手法が非常に有効とされます.本書では,最適制御の問題設定や一階Hamilton-Jacobi方程式の導出,そして最適制御による粘性解の表現公式などが詳細に説明されています.粘性解の基本性質や比較定理など一般論に関する結果は本書の第2章にまとめられています.第3章と第4章では動的計画法を介した様々な最適制御問題との関連について述べられています.第5章以降はより高度な内容と数値計算などに関する議論となっています.各章がある程度独立したスタイルで構成されているので,読者の個人の興味に応じて関連部分を選んで読んでも良いと思われます.

  • 2022/03/22 Books
    移動祝祭日 / ヘミングウェイ著 ; 福田陸太郎訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:樋渡 真理子

    私には20代の頃から何度も読み返す本が数冊あります。気に入った本を年月を超えて何度も読み返すとその本の中に新しい発見をすることが何度もあり、その過程をとても気に入っています。何度も読み返すその本のうち、必ずペアで読むのはアーネスト・ヘミングウェイの『移動祝祭日』と『日はまた昇る』の2冊です。このコラムでは前者を紹介します。
    『移動祝祭日』は1921年から6年間、ヘミングウェイ(22歳から27歳)が文学修行に励んだパリでの生活の回想録で、彼が亡くなる年の1961年に完成し、1964年に出版されます。まだ駆け出しの20代の新聞記者であった彼が、1番目の妻(彼は4回結婚しています)ハドリーとの新婚生活を営みながら、パリのカフェで執筆したり、同時代の作家であるフィッツジェラルド(『グレート・ギャツビー』を書いた天才です)と旅をするようすなどのパリでの生活が描かれています。第一次世界大戦の後、信仰への揺らぎや社会風俗の変化に伴う1920年代のパリで、文学や絵画をはじめとする芸術が「モダニズム」という新たな表現方法を見出しつつある時代背景を読み取ることも本書を読む楽しみの一つです。しかし、この回顧録の最大の面白さは、60代になったヘミングウェイが自らの迫り来る死を意識しながら人生でおそらく最も輝いていたパリ時代を書いたこと、そしてそのパリでの文学修行を支えてくれた最初の妻ハドリーと自らの不倫が原因で離婚するに至ったことに対する「お詫び」の気持ちがこの回想録には溢れているという点です。感情的な表現を一切削ぎ落として「ハードボイルド」な文章を鍛え上げた職人ヘミングウェイが60代になって文体や表現方法が変わっていくようすは、前述した『日はまた昇る』(1926)と比較するとまた味わい深い読書経験につながります。

  • 2022/03/22 Books
    陸軍将校の教育社会史 : 立身出世と天皇制 / 広田照幸著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:福嶋 寛之

    昭和日本の戦時体制を推し進めた陸軍将校。彼らのなかで「滅私奉公」という公的イデオロギーと「立身出世」という世俗の論理はどのように関係づけられていたのか。今日の我々からすれば両者は矛盾するほかない。しかし本書は、陸軍将校の卵たちの日記などを分析することにより、両者は矛盾しないどころか最も「滅私奉公」が叩き込まれていた陸軍将校の世界でさえ、「立身出世」を媒介として「滅私奉公」が受容されていたという(そして指導する側もそれを問題視していなかったという)。「私はエラくなって天皇陛下に奉仕する!」というわけである。かくして「担い手」たちは増殖した。1997年刊行本の待望の文庫化。

  • 2022/03/22 Books
    陸軍将校の教育社会史 : 立身出世と天皇制 / 広田照幸著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:福嶋 寛之

    昭和日本の戦時体制を推し進めた陸軍将校。彼らのなかで「滅私奉公」という公的イデオロギーと「立身出世」という世俗の論理はどのように関係づけられていたのか。今日の我々からすれば両者は矛盾するほかない。しかし本書は、陸軍将校の卵たちの日記などを分析することにより、両者は矛盾しないどころか最も「滅私奉公」が叩き込まれていた陸軍将校の世界でさえ、「立身出世」を媒介として「滅私奉公」が受容されていたという(そして指導する側もそれを問題視していなかったという)。「私はエラくなって天皇陛下に奉仕する!」というわけである。かくして「担い手」たちは増殖した。1997年刊行本の待望の文庫化。

  • 2022/03/22 Books
    蜜蜂と遠雷 / 恩田陸著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:坂本 憲治

    国際ピアノコンクールを舞台に15〜28歳の青年たちの成長・葛藤を描いた長編小説。音楽経験のある人にもない人にもおすすめの一冊です。

    音楽経験者としての感想
    ・なんと、「音」は活字にできたのか!
    ・私の師事した先生の言葉が思い出されました。
     「音『楽』は聴衆側の体験。演奏側は音『苦』なのだ。君が楽しちゃいけない」

    カウンセリング/心理学者としての感想
    ・登場人物たちの「もがき」が織りなす一回性の産物が視えた。見事!

    本書は視点により異なる読み方ができます。青年らの苦悩を「図」に、背景を「地」にする読み方がオーソドックスですが、図地反転させてもおもしろいです。青年らをとりまく大人たちの心の機微に触れ、思いを馳せてみてください。私は、世代継承性、教育、師弟関係について深く考えさせられる一冊になりました。本書のスピンオフ短編小説『祝祭と予感』もお勧めです。みなさんはどのように読みますか?

  • 2022/03/22 Books
    日の名残り / カズオ・イシグロ著 ; 土屋政雄訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名: 井石 哲也

    この小説は1958年のイギリスの地方に位置する「カントリー・ハウス(大邸宅)」が主な舞台です。貴族や上流階級層に仕える「執事」(英語でバトラー)という職業を立派に全うしながらも、年老いても消えることのない、同僚であった女性への思慕と、彼女と衝突を繰り返したことの悔いとのあいだで葛藤する男の半生を描いた、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの名作(1989)です。また,作品の大ヒットにより製作された映画版(1993)では,主演のアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンによる主人公たちの感情表現が、原作とはすこし違った,深く強い印象を残すことでしょう(アカデミー賞ノミネート)。

    物語の結末部分、後年、歳を重ねたふたりが再会したとき、お互いの立場を気遣い、また激しく湧き上がる感情を抑えながら交わす会話の重さ、せつなさ、美しさは観る者を涙させずにはおかないはずです(これぞ「大人の恋」!)。

    一読、一見を強くお薦めします。「読んでから観るか、観てから読むか」、どちらが先でも感動ものです。

  • 2022/03/22 Audio Visual
    The remains of the day = 日の名残り / directed by James Ivory ; based on the novel by Kazuo Ishiguro

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:井石 哲也

    この小説は1958年のイギリスの地方に位置する「カントリー・ハウス(大邸宅)」が主な舞台です。貴族や上流階級層に仕える「執事」(英語でバトラー)という職業を立派に全うしながらも、年老いても消えることのない、同僚であった女性への思慕と、彼女と衝突を繰り返したことの悔いとのあいだで葛藤する男の半生を描いた、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの名作(1989)です。また,作品の大ヒットにより製作された映画版(1993)では,主演のアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンによる主人公たちの感情表現が、原作とはすこし違った,深く強い印象を残すことでしょう(アカデミー賞ノミネート)。

    物語の結末部分、後年、歳を重ねたふたりが再会したとき、お互いの立場を気遣い、また激しく湧き上がる感情を抑えながら交わす会話の重さ、せつなさ、美しさは観る者を涙させずにはおかないはずです(これぞ「大人の恋」!)。

    一読、一見を強くお薦めします。「読んでから観るか、観てから読むか」、どちらが先でも感動ものです。



  • 2022/03/22 Books
    給食の歴史 / 藤原辰史著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:福元 健之

    給食が、学校でのほぼ唯一の楽しみだった。大好きだったあの味を思うと、いまでもお腹が減る。あるいは、食べるペースが遅くてひとりポツンと取り残されたり、苦手なメニューがあったりしてちょっと嫌だった。ひとそれぞれに給食の思い出があると思います。
     このように誰もが身近に感じられる経験を入り口にして、この本は、日本の給食がどのように成立し、発展してきたのかを明らかにしています。
     本をひらくと意外に思うかもしれません。じつは、給食の歩みはたくさんの災害や戦争、貧困問題とともにありました。そして、学校の先生や生徒だけではなく、医者や官僚、調理師、GHQの幹部といった様々な人びとが、給食史において不可欠の役割を果たしました。いまや自明の制度になっている「給食」というテーマから歴史を深く耕す発想、膨大な情報を力強くまとめ上げて豊饒な物語にする構想、給食の過去と現在の中に胚胎する未来へ伸びゆく想像、すべてにおいて著者のセンスが光る、コンパクトながらひじょうに読み応えのある逸品。お薦めです。

  • 2022/03/17 Journals
    Newton : graphic science magazine = ニュートン / 教育社 [編]

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:林 長軍

    「ゼロからわかる人工知能 仕事編 増補第2版」(Newtonの別冊) 2020年12月5日発行

    人工知能(AI)とは何ですか。人工知能は、現在めまぐるしい勢いで我々の社会に進出していることを知っているでしょうか、私たちの社会でどのように活躍していますかかつ私たちの生活にどのように影響していますか、将来どこまで発展していきますかなどについて、みんなも知りたいでしょう。上述の設問を理解するために、ここでは、「ゼロからわかる人工知能 仕事編 増補第2版」という書籍をお薦めします。雑誌ニュートンの別冊ですが、本書では、自動車、会話、災害防止、医療、ビジネス、芸術などの八つの部分に分けて、人工知能の現状および近い将来の発展などについてわかりやすく紹介しています。ぜひご閲読ください。

  • 2022/03/14 Books
    マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術 / 澤円著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:宮田 卓哉

    プレゼンに関する基本的な考え方はもちろんのこと、準備や構成段階でどのようなことに注意すべきかが丁寧に記されています。
    また、スライドの作成方法や、立ち振る舞い、声の出し方といったプレゼン中の細かいテクニックに関しても記されており、本書を読むことにより、周囲の標準的なプレゼンレベルは軽く突き放せると思います。
    将来的に人前で話す仕事がしたい学生や、限られた時間と空間で相手を説得したい!納得させたい!
    という方に是非読んほしい一書です。

  • 2022/03/02 Books
    方法序説 / デカルト著 ; 谷川多佳子訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:鈴川 一己

    正式なタイトルは「理性を正しく導き、学問において真理を探究するための方法序説」。近代科学の源流になったあまりにも有名な本である。物語として読んでみると結構おもしろい。「人に騙されないために数学を勉強するのか」とか、「要は数学がすべての基礎なんだな」とか勝手に解釈している。中には「これって証明できるの?」ということも書いてある。
    様々な訳者の本が存在するが、140頁程度の薄っぺらな文庫本である谷川氏のものが大変気に入っている(訳注が本文の1.5倍もある本もある)。これならポケットに入れても邪魔にならない。ちなみに数学や科学などの問題に対する心得としてデカルトが書いた未完の書「精神指導の規則」(岩波文庫、時々重版される)も「解法の探求」を連想させるユニークな本である。

  • 2022/03/02 Books
    僕は君たちに武器を配りたい / 瀧本哲史著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:鈴川 一己

    この本は社会に出る若者に向けて書かれた本である。もちろん本物の武器を配るわけではない。現在進行中の「コモディティ化」する社会で生き残るための助言が書かれている。まだAIの脅威が話題になる前の東日本大震災直後(2011年)に出版された本であるが、内容はそのままAI時代を生き残る方法として通用する。就活を始める学生に読んでほしい。
    さらに意欲のある学生は、この本の実践事例集として、藤原和博著「リクルートという奇跡」文芸春秋(2002)、大西康之著「起業の天才!」東洋経済新聞社(2021)をお薦めする。

  • 2022/02/17 Books
    「疑う」からはじめる。 : これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉 / 澤円著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:宮田 卓哉

    世間や身の回りには、私たちが生まれた時からある考え方や固定観念、ルールや慣例、前例や過去の価値観など、言わば押し付けのような「同調圧力」が多く存在しています。実はその中のほとんどに明確な理由はなく、仮にあったとしても時代の流れで状況が変わっているものが多いのが現状です。
    一方日本では小学生の頃から学校やクラスのルールを厳守することを徹底され、「いったん決められたことに異を唱える」という発想そもそもが生まれにくくなっています。

    たった1冊の本ですが、今後社会で活躍する皆さんが、働きやすい・活躍しやすい未来を築く上で、大きな財産になり得ると思います。

    「常識」に縛られたら成長はストップします。
    『「疑う」からはじめる。』是非読んでみてください。

  • 2022/02/14 Books
    平和を考えるための100冊+α (プラスアルファ) / 日本平和学会編

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:豊 嘉哲

    平和の反対語は何か?この問いがほんの少しでも気になった人は、本書で取り上げられた75冊の書名を見て下さい(出版社のリンクを参照)。
    https://www.hou-bun.com/15mokuji/03566-0_mk.pdf
    実際に本を手に取ってみたくなるものはありませんか?ちなみに、書名が『平和を考えるための100冊+α』であるにもかかわらず、目次に75冊しか掲載されていない理由は本書の「まえがき」に書かれています。
    「平和を考えるための名著を紹介した書評集の決定版!」として、出版社は本書を推しています。14のサブテーマに区分けされて並べられた書名から分かるとおり、多様な分野から選書されています。書評の執筆陣の専門分野もまた、多岐にわたっています(国際関係学、政治学、社会学、法学、文化人類学、歴史学、教育学、哲学、経済学、文学・・・)。その理由は、おそらく「そもそも、平和という漠然とした価値について、何を何からどのように考えてゆけばいいのか、それ自体が難問である」(まえがき)という事実に由来するでしょうし、「本当に平和を考えるためには、できるだけ多くの学問分野が協働して事に当たらなければならない」(同)からでしょう。
    ということは、理系であれ文系であれ、どの学部の学生にとっても本書は読むに値すると言えるのではないでしょうか。それぞれの書評の分量は、A4一枚または二枚です。短めの文章でありながらも、どれも記述は濃密です。一人でも多くの学生が図書館に足を運び、本書を手に取ってくれることを望みます。
    最後にもう一度「まえがき」から引用しておきます。「平和がもつ本当の意味は、それを破壊する戦争や暴力の経験から鮮明に浮かび上がってくるだろう。つまり、平和を考えるためには、まずは平和とは反対の戦争や暴力の現実について、じっくりと考えることから始める必要がある」。

  • 2022/02/04 Books
    Life 3.0 : 人工知能時代に人間であるということ / マックス・テグマーク [著] ; 水谷淳訳

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名: 岡 陽子

    原著:Life 3.0: Being Human in the Age of Artificial Intelligence (2017)

    20年ほど前、人間のエゴから人間を癒すためだけに作られたA.I.の、しかしそのA.I.に感情があるために悲劇の結末となるスピルバーグ監督の「A.I.」という映画があった。S F(サイエンス・フィクション)映画は「来そうで来ない未来」という確信があるからエンターテイメントとして成り立つのだな、と改めて確信したのがこの「LIFE 3.0」である。
    この「LIFE 3.0」は、物理学者の著者が世界中のAI研究者の知見を網羅しながらA.I.の行き着くところの危険性と、危険/安全関係なくA.I.発展は止められない現状の人間の好奇心などを踏まえ、今後A.I.が発展し、ますます「人間」に近づいていった場合の様々なシナリオを読者に提供する。どれも全て起こり得そうなことばかり。しかも物理学者だけあってその根拠の説明にも驚くほど説得力がある。
    その中でIntelligence(インテリジェンス)に人間の身体はもはや必要ないと言い切る著者。それでもA.I.が人間のような判断を下せるようになり、人間を支配するまでには「意識」というものを解明するハードルが残っており、今後それは時間の問題なのか、それとも不可能なのか。それも科学者の間で意見が分かれているというところは何故か読んでいてホッとするのは私だけだろうか。
    読み終わる頃には「今後A.I.はどこまで発展していくのか?」という疑問より、むしろ私たち人間は「今後A.I.の発展と向き合いながらどのように生きていくべきなのか?」という一人一人の死生観が問われているような気がしてならないリアル・サイエンス・フィクション(Oxymoron?) とでも呼ぶべき良書である。

  • 2022/02/04 Books
    レゴはなぜ世界で愛され続けているのか : 最高のブランドを支えるイノベーション7つの真理 / デビッド・C・ロバートソン, ビル・ブリーン著 ; 黒輪篤嗣訳

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:杉本 宏幸

    みなさんは、LEGO(レゴ)と聞いて何を思い浮かべるでしょうか? オモチャとしてのLEGO、LEGOで遊んだ経験がある人もおられるでしょう。また、LEGOが学校教育や会社研修で活用され、創造性を高めるために活用されていることをご存じかもしれません。
    企業としてのLEGOは、株式会社ナムコ、カバヤ食品株式会社、コカコーラ社、那須ハイランドパーク、王子ネピア株式会社、株式会社良品計画、株式会社タカラトミーアーツ、昭和シェル石油株式会社など様々な企業とコラボレーションし、多くの事業を手がけています。多くの事業をてがけるLEGOですが、企業として華々しい成功ばかりをあげてきたわけではありません。それが描かれるのが本書です。

    LEGOは何度となく苦境に陥りました。しかし、問題点に目をそむけず社内で認識し、それらを直視しました。アクションプランを示し、イノベーションを起こせる組織に造りかえていきました。

    現代日本の我々に対し、LEGOの経験は多くを訴えています。昨今、財務的な基盤が弱くなり、苦境に陥っている日本の企業や組織は少なくありません。企業だけでなく、多くの組織で次のような悩みを聞くことがあります。
    「私たちは何もしていないわけではない。多くのメンバーも現状に強い危機感を持っている。このため様々な策を講じて実行に移している。しかし、成果が出ない。」

    経営やマーケティングに限らず、所属する部活動やサークル、アルバイト先の人間関係(組織)でも妥当するでしょう。私たちを取り巻く閉塞感や私たちを阻む壁を打破するヒントは本書にあるかもしれません。皆さんに是非ご一読をお薦めいたします。

  • 2022/02/01 Books
    倭国の時代 : 現代史としての日本古代史 / 岡田英弘著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:篠原 正典

    「日本は明治までは鎖国状態であった」,「元寇・鉄砲伝来などの突発的な出来
    事はあったが,日本はほとんど外国からの影響は受けなかった」となんとなく思って
    いた。
    ところが,広域な政治形態としての日本成立は隋の建国というインパクトがあったと
    いう。
    それどころか,邪馬台国,奴国など古代においても,中国との関係を抜きに考えられ
    ない。
    他国との関係性の中で日本は古代より成立しているという当たり前といえば当たり前
    のことがよくわかる。
    日本史は東洋史の一部であることが理解でき,今や世界史の一部であることを考えさ
    せられる。

  • 2022/01/17 Books
    建築の難問 : 新しい凡庸さのために / 内藤廣 [著]

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山峯夫

    本書は、およそ1年にわたって月に1度のペースで真壁智治さんからの質問に内藤廣氏が答えた内容をまとめたものとなっています。建築の難問に答えるために、観念的な言葉も使い、わかりにくいところもあると著者自身が書いているように、少し難しく感じるところもあります。しかし、建築の分野がそれだけ複雑で、「技術」と「社会」と「文化」が入り乱れているからだ、と説明しています。
     難問をいくつか紹介しましょう。
     最初は「建築の定義」についてです。architectureとbuildingをまぜこぜにしてしまったのが建築の基本的な問題だといいます。「建築」という概念はbuildingという狭い範囲にとどまるものではなく、建築家が独占しているものでもありません。より広い意味でとらえると、都市計画も建築だし、土木にもその側面が色濃くあるし、もちろん国土計画も建築になります。ですから、ここのところは本来グレーのままで放置すべきではないでしょう。基本的には、「人間が生きていく世界をどう構築するか」という話で、これからは「構築する意志」の総称を「建築」と呼んで、それをベースに各分野の垣根を解いていくべきです。
     次は、「架構について」で、ここでは建築の構造や骨組について述べられています。構造技術が進化すると構造自体もなんでもありになってしまい、力の流れがますます見えにくくなっていき、構造を成り立たせている本質が見えにくくなっている、といいます。続いて「材料・構法・構造」では、最近はやっている木材・木造について触れて、最近は木造建築が注目されていますが、木というのは非常にデリケートでむずかしい材料だともいいます。
     「3・11と建築」では、建築家が東日本大震災の復興から排除されたことに対して、建築界の限界が露呈した、建築と都市・土木との断絶に起因している、と述べています。防潮堤で津波を完璧に防ぐのではなくて、住まいのほうも多少は工夫する必要があった。3・11では建築と都市と土木がもっと一体になってやるべきだったといまでも思っています、とも述べています。
    本書では、建築は誰のためにあるのか、都市は誰のためにあるのか、建築家とは誰なのか、がくり返し問われています。建築を学ぶ学生は本書を手にとって、ぜひこうした問いについて考えてみてほしいと思います。

  • 2022/01/11 Books
    薬がわかる構造式集 / 林良雄, 青柳裕, 飯島洋編

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    医薬品の化学構造から薬を理解することを意図した教科書である。薬の本質である化学構造に基づいて医薬品情報を発信できる臨床薬剤師になるための入門書。薬の化学構造を知る副読本としても利用できる。薬につながる生体分子,基本となる有機化合物,構造から学ぶ医薬品の3つの章からなり,薬効毎に分類された医薬品の化学構造や名称,構造式の覚え方を記載している。分子構造に則って,薬の作用機構や代謝を学ぶ内容になっている。

  • 2022/01/11 Books
    カラー図解分子レベルで見た薬の働き : なぜ効くのか?どのように病気を治すのか? / 平山令明著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    飲んだり、注射したり、貼ったりした薬は、どのように体に作用し、病気を治すのだろうか?20世紀後半に急速に発展した生命科学は、「薬の働き」の理解を大きく進展させた。薬が効くメカニズムを分子レベルで理解することは、より効果的で、安全な薬の発見につながるだけでなく、「生命の働き」そのものを理解することでもある。薬を理解するために必須の50種類の医薬分子のメカニズムを網羅。

  • 2022/01/11 Books
    新しい薬をどう創るか : 創薬研究の最前線 / 京都大学大学院薬学研究科編

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    一つの新薬の誕生が不治の病から世界中の患者を救うかもしれない。薬学の研究者はこれを「ファーマドリーム」とよぶ,化学,分子生物学,薬理,薬剤などたくさんの学問が絡み合う新薬創製は,そんな夢を追う努力の積み重ねでもある。創薬の基本的な考え方からドラッグデリバリーシステム,ゲノム創薬など最新の研究まで幅広く紹介している。

  • 2022/01/11 Books
    ゲノム編集とは何か : 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 / 小林雅一著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    ゲノム編集に注目しているのは,製薬・化学メーカーだけではない。グーグルやアマゾンまでもがそのビジネス・ポテンシャルに魅かれ,巨額の投資を始めている。この史上空前の技術,そしてそれが私たちの人生や暮らしに与えるインパクト等をわかりやすく解説するとともに,科学者に群がる巨大企業の実態にも迫る。

  • 2022/01/11 Books
    薬学教室へようこそ : いのちを守るクスリを知る旅 / 二井將光著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    薬の飲み方,薬の副作用・代謝,創薬について知りたい,薬剤師を目指したい,薬剤師になりたい,その人たちのための入門書。自然の恵みから始まったクスリについて理解し,私たちが出会うクスリのしくみ,創薬の研究の過程や,高齢社会とクスリの問題について考える。医療に関わる薬剤師になるために。何を学び,どうすればよいのか指南しながら,生物学や化学がいかに創薬に貢献しているか,またクスリが人類の生存にとっていかに大切かを解説している。様々な例を紹介し,クスリについての正しい理解を深めていきます。クスリを知ることは,未知の病に備える最大の防御となる。

  • 2021/08/25 Books
    見えないスポーツ図鑑 / 伊藤亜紗, 渡邊淳司, 林阿希子著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:山本 泰暉

    スポーツについて新しい視点が得られる
    スポーツを専門としない3人の筆者らが、視覚障害者にスポーツを伝える方法を吟味していく過程を描いていて非常に興味深かった。特にスポーツ科学部の学生には、「スポーツの魅力を人に伝えるにはどうすればいいのか」ということを考えるきっかけになってくれればと思いました。ただ、本書・筆者らの取り組みだけではまだ、いまひとつという部分と感じる部分もあるので、本書を「きっかけ」に自分なりの言葉で自分の運動・スポーツ体験や経験を読み解いていけばより面白くなるのかなと思いました。

  • 2021/06/29 Books
    精神力動的精神医学 : その臨床実践 / グレン・O.ギャバード著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 衞藤 暢明

    アメリカ精神医学会の診断・統計マニュアルであるDSM-5に準拠した精神力動的(精神分析的)理解をまとめた著書です。神経症やパーソナリティ障害のみならず、精神障害全般に関して扱われています。精神医学と精神分析が重なる結節点から見た精神疾患の見方を余すところなく伝えており、単に精神疾患をカテゴリーに分けていくという以上に、精神疾患を持つ人がたどってきた歴史や、理解のための基礎となる理論について詳しく伝えるものとなっています。世界の多くの精神医学を学ぶ人が影響を受けた著書の最新版です。

  • 2021/06/16 Books
    八甲田山死の彷徨 / 新田次郎著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 坂田 直昭

    天はわれ等を見放した−この名台詞で今なお知られるこの小説は、日本陸軍青森歩兵第5連隊が日露戦争前に行った八甲田山での雪中行軍において多くの犠牲者を出した山岳事故の顛末を描いた、限りなくノンフィクションに近いフィクションである。冬の八甲田山の過酷さの描写は凄まじく、その猛威の前にひとり、またひとりと斃れていく様の表現は悲惨の一言につき、本小説を読むたびその臨場感にただただ圧倒される。一方、この事故は、行軍の際に雪山案内を立てなかったこと、雪山に対する知識・準備が不足していたこと、指揮系統の不統一など、様々な要因が重なったことによって発生した人災の側面があり、本小説においてもそのことが強調されている。リスクマネージメントとは何か。組織として行動する上で重要なことは何か。これらを学ぶ上においても本小説はまごうことなき良書である。将来の社会の担い手である本学の学生に本書を是非お薦めしたい。

  • 2021/06/16 Books
    さい果ての原野に生きて : 開拓保健婦の記録 / 大西若稲著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 古賀 佳代子

    明治時代から昭和20年代までの長い間、結核は「国民病」と恐れられ国をあげて予防や治療に取り組み死亡率は100分の1までに減少しました。その時代に大きく活躍した保健師の姿が描かれています。今、新型コロナウイルスで医療のみならず保健所も逼迫しています。看護職の成果はすぐには表れませんが、この本から看護職として「生命を大切にするとは」、「意識の改良とは」と看護職の役割を再確認していただきたい。更に、自分達の仕事に自信をもっていただきたいと思い紹介させてもらいました。是非一度読んでみてください。

  • 2021/05/26 Books
    シグナル&ノイズ : 天才データアナリストの「予測学」 / ネイト・シルバー著 ; 川添節子訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:山口 幸生

    スポーツ選手の才能を評価したい人へ
    近年、様々な分野でデータアナリストが注目されている。スポーツの世界でも大学生が将来やりたい仕事の中にデータアナリストが登場してくるようになった。しかし、実際にやってみるとわかるが、これはとても困難な作業である。客観的なデータを集めて分析すれば、高い精度でスポーツ選手の成功を予測できるとは限らない。データが多いからといって予測精度が上がるわけではない。集めた情報を適切に評価することも重要だ。またある有名なスカウトは、「準備と仕事に対する姿勢」「集中力」「競争力と自信」「ストレス管理と謙虚さ」「適応力と学習能力」の5つが重要であると主張している。しかしこれらを含めた分析を行うには、長い時間をかけて選手を観察するスカウトとデータアナリストの協働が必要だ。そして「創造性」「知性」が何よりも必要になる。スポーツ分野に限らず、近い将来、予測ビジネスに関わりたい全ての大学生に読んでもらいたい。

  • 2021/04/08 Books
    健康を食い物にするメディアたち : ネット時代の医療情報との付き合い方 / 朽木誠一郎 [著]

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:岩崎 領

    近年、健康に関する情報がネット上にあふれている。皆さんは、その大量の情報からどのように正しい情報を選択していくでしょうか?
    著者は、2016年に社会問題となった医療デマを寄せ集めた情報サイトの告発を行った張本人でもある。情報が氾濫する社会において、命に関わる健康や医療の情報にデマは許されない。
    本書では、告発に至った経緯や、健康情報の選択について記されている。自分は大丈夫、と思っている人にこそ読んで欲しい本である。

  • 2021/04/01 Books
    「科学的思考」のレッスン : 学校で教えてくれないサイエンス / 戸田山和久著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    今日、コロナ禍にあって、科学的思考の重要性がますます増してきています。例えば、「このワクチンは100%有効である」という言明は、科学的と言えるでしょうか。私たちは、安心を求め、科学に100%の正しさを求めがちですが、これは科学とは言えません。科学とは、仮説と検証を繰り返しながら、理論の信頼性を可能な限り100%に"近づけていく"営みです。もちろんそのためには、きちんとした仮説の立て方や検証の仕方があります。本書は、そうした科学の営みについて分かりやすく説明しているだけでなく、日常生活において、科学的に考えることの大切さを教えてくれる格好の本だと思います。本書を読めば、普段、見聞きする新聞やテレビのニュースやコメントも、また違ったふうに見えてくるはずです。

  • 2021/04/01 Books
    火山に魅せられた男たち : 噴火予知に命がけで挑む科学者の物語 / ディック・トンプソン著 ; 山越幸江訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:三好 雅也

    火山が噴火して犠牲者が出た、というニュースが時々あります。その度に、どうして予測ができなかったんだろう?と思う人が皆さんの中に居るかもしれません。実際は、火山活動にはわからないことがまだまだたくさんあるのです。そんな中において、噴火による犠牲を可能な限り小さくしようと懸命に噴火予測に挑む火山研究者達がいます。本書は、20世紀最大規模のピナツボ火山、セントへレンズ火山の噴火をはじめとした複数の災害事例を取り上げ、その背後での火山研究者の活躍を描いたノンフィクションです。普段あまり知る機会のない火山研究者の観測の様子や、熱意、使命感、そして葛藤を垣間見ることができます。「火山大国」日本に暮らす者として、読んでおきたい一冊です。

  • 2021/04/01 Books
    コーヒー・ハウス : 18世紀ロンドン、都市の生活史 / 小林章夫[著]

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    みなさんは、コーヒー・ハウスと聞いて何を思い浮かべるでしょうか。コーヒーを飲みながら、ひとり読書に耽ったり、あるいは、友達とおしゃべりしたり、そういう場所を思い浮かべる人もいれば、スターバックスやタリーズのようなコーヒー・チェーンを思い浮かべる人もいるかもしれません。しかし、そうしたイメージは、17・18世紀のイングランドのコーヒー・ハウスには必ずしも当てはまりません。当時のコーヒー・ハウスは、今の私たちが想像する以上に重要な役割を担っていました。例えば、当時の情報源は新聞や雑誌ですが、みんながそれを購読できたわけではありません。そこで、コーヒー・ハウスに出かけて行き、置いてある新聞・雑誌に目を通したり、あるいは、居合わせた人から内容を聞いたりして、情報を入手していました。また、そこで得た情報をもとに、投資をしたり保険取引をしたり、あるいは、政治論議に花を咲かせたりもしていました。こうした営みが次第に公共圏を形成していくことに繋がっていきます。本書を読んで、当時の新聞・雑誌に興味をもった人は、併せて、以下のデータベースから、実際に当時の新聞・雑誌を読んでみましょう。
    17th and 18th Century Burney Collection Newspapers
    17th and 18th Century Nichols Newspapers Collection

  • 2021/03/30 Books
    伝え方が9割 / 佐々木圭一著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:池田隆太郎

    気付けば読み終わっていました。
    ほとんどの人が行うであろう就職活動における面接、就職後の大事なプレゼンや接客、身近なところで言えば友人への依頼から告白まで。
    伝える機会は枚挙にいとまがないほどあるはずです。ただ、本書のタイトルにもある「伝え方」をきちんと学んだ経験は私自身なかったように記憶しています。みなさんはどうでしょうか。
    本書にはみなさんも何気なく使っているものから話上手な友人が使う言い回し、はたまた「そんなふうに言われたら確かに響くなぁ」と思わされる伝え方の技術が分かりやすく書かれており、数多くの気づき・学びがあるはずです。ぜひご一読ください。

  • 2021/03/30 Books
    寛容についての手紙 / ジョン・ロック著 ; 加藤節, 李静和訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    日常生活の中で、些細な意見の対立がより大きな争いを生むことも少なくありません。しかし、ただ意見の対立をなくせばよいというわけでもありません。なぜなら、自分と異なる意見とぶつかったときに、自分の意見を押し通したとしても、あるいは、相手の意見を受け入れたとしても、いずれにしても、争いの火種がなくなることはないからです。必ずどちらかに不満が残ってしまいます。本書を執筆したロックが念頭に置いていたのは宗教の問題でしたが、異なる(多様な)意見を認めつつ、社会の調和をいかに達成するのかは、依然として現代社会の大きな課題となっており、ロックの寛容思想は、そうした課題に応えるヒントを与えてくれるでしょう。

  • 2021/03/30 Books
    フィッシュ・アンド・チップスの歴史 : 英国の食と移民 / パニコス・パナイー著 ; 栢木清吾訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:磯田則彦

    日本でも有名な「フィッシュ・アンド・チップス」。イギリスの「国民的な料理」としての認識が一般的なのではないでしょうか。本書は、フィッシュ・アンド・チップスの歴史とアイデンティティについてまとめたものです。著者はロンドン生まれの歴史学者パニコス・パナイーであり、移民史や食文化史など、ヨーロッパ史を専門としている方です。本書はその訳書であり、第1章と第2章がフィッシュ・アンド・チップスの歴史ついて、第3章以降がそのアイデンティティについて記述しています。歴史的な各種資料をもとにした手堅い分析と、移民史研究や食文化史研究で培った歴史学者の鋭い視点からの考察が本書の特徴の一つとなっています。フィッシュ・アンド・チップスというひとつの料理からイギリス社会が詳細に論じられていることに驚かされます。まさに、研究の醍醐味といったところでしょうか。
    翻って、日本の「国民的な料理」を考えてみると何が思い起こされるのでしょうか?とりわけ、フィッシュ・アンド・チップスに相当するようなそれとは何なのでしょうか?その食から日本社会の歴史やその背景にあるアイデンティティを考察してみるのも一案です。本書からは、ものごとを考えるときの多角的な視点としっかりとした方法論を学ぶことができます。

  • 2021/03/30 Books
    ドイツの国民記念碑1813年-1913年 : 解放戦争からドイツ帝国の終焉まで / 大原まゆみ著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:落合 桃子

    近代ドイツでは、ナポレオンの支配からの解放戦争(1813-14年)の前後より国民意識が急速に高まり、1871年にドイツ帝国が建国されますが、この時期にはドイツ各地に数多くの記念碑が建立されています。本書はタイトルにあるように、解放戦争が始まる1813年から一世紀の間にドイツで建てられた国民記念碑についての本。デューラー記念碑やケルン大聖堂など、今日も残る代表的な作例8点が取り上げられ、基礎的なデータを踏まえた上で、制作の経緯や造形的特徴、政治的背景などが詳細に論じられています。筆者の大原まゆみ先生は明治学院大学名誉教授で、日本におけるドイツ近世近代美術史の第一人者です。120頁ほどの本ですが、きわめて情報量が多く、巻末の充実した参考文献表と共に、学生はもとより先生方の知的関心をも満たすことでしょう。

  • 2021/03/30 Books
    読書と社会科学 / 内田義彦著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    例えば、高校の数学であれば、教科書を読んで公式を身につけ、その公式を使って問題を解くわけですが、同じことが社会科学についても当てはまります。法学や政治学、経済学など、私たちは、理論(著者はそれを概念装置と呼びます)を学び、その理論を使って、現実の社会問題について解決策を考えます。それでは、どのようにしたら理論を身につけることができるのでしょうか。本書は、経済学者の内田義彦が、読書論を通して、そのための方法を分かりやすく解説している内容になっています。本書を読めば、これまでとは違ったふうに社会が見えてくるはずです。

  • 2021/03/30 Books
    道徳感情論 : 人間がまず隣人の、次に自分自身の行為や特徴を、自然に判断する際の原動力を分析するための論考 / アダム・スミス [著] ; 高哲男訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    経済学の父と呼ばれるアダム・スミスは、『国富論』の著者として知られていますが、当時、彼を一躍有名にしたのは、(『国富論』より前に書かれた)『道徳感情論』の方でした。つまり、スミスは一流の経済学者である以前に、一流の道徳哲学者だったのです。スミスは、同書の冒頭で、「いかに利己的であるように見えようとも、人間本性のなかには、他人の運命に関心をもち、他人の幸福をかけがえのないものにするいくつかの推進力が含まれている」と言います。ここからスミスは、自己利益を追求する人間を前提にしながら、社会の調和がいかにして達成されるのかを論じています。現在、経済的利益の追求が引き起こす格差の問題が深刻化していますが、こうした問題を考える上でも、スミスの議論を大いに参考になると思います。

  • 2021/03/30 Books
    人口変動と家族の実証分析 / 津谷典子 [ほか] 編著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:磯田則彦

    本書は、日本社会を中心に韓国・台湾社会を含めた東アジアにおける人口変動と家族に焦点をあてた実証研究の成果です。12名の執筆者は人口学・経済学・社会学などの研究者であり、行政職に携わる方やジャーナリストの方も含まれています。本書のキーワードは、超低出生社会と家族。人口減少に直面する日本社会をはじめ、これに対する危機感を共有する東アジアにとって有益な情報を数多く含んでいます。家族に着目し、働き方やキャリア形成、夫婦の生活時間に関する実証分析を行っているところに本書の特徴の一つがあります。近未来の日本社会や身近な東アジアを考えるうえで示唆に富む専門書となっており、少子・高齢社会や人口減少社会に関心がある方にぜひ読んでいただきたい文献といえます。

  • 2021/03/29 Books
    「空気」を読んでも従わない : 生き苦しさからラクになる / 鴻上尚史著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:須藤 秀平

    「空気」を読むのは日本人だけ?
    自分の考えや行動を決めるとき、なんとなく周りの目が気になってしまう――そんな「空気」を読むことに疲れた人のための人生相談本のような本書ですが、面白いのは「空気」への対処法だけでなく、その「空気」がなぜ、どのようにして生じるのかを考察し論じている点にあります。本書によれば、「空気」はとても日本的なもので、海外にはありません。ここには日本的な「世間」と西洋的な「社会」の違いが関係しています。「社会に出る」という言葉はありますが、本当の意味での「社会」は日本には存在しないのです。このことがわかると、普段の生活での周りの目が怖くなくなるだけでなく、この先「社会」で生きるために本当に考えるべき問題が見えてきます。
    ちなみに、この本の「元ネタ」に、阿部謹也という西洋史家の『世間とは何か』『学問と「世間」』があります。こうした影響関係を「ディグる」のも、本を読む楽しみの一つです。

  • 2021/03/29 Books
    どんどん話すための瞬間英作文トレーニング : 反射的に言える / 森沢洋介著

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:伊豆 久

    あなたは英語を話すことができますか? 「中学・高校と6年以上英語を勉強してきたけど、英会話は全然!」という人も多いと思います(私もそうでした)。そんなあなたにお薦めなのがこの「瞬間英作文」です。難しいことは全くありません。出てくるのはThis is a good book.といった中学英語だけです。この本に書いてある通りに毎日30分トレーニングすれば(「勉強」ではなく「トレーニング」です)、1カ月後には「あれ、もしかしたら、ちょっと話せるかも!」となり、1年たつとスピーキングについては英検1級レベルになります。さ、だまされたと思って、今日から始めてみませんか(ただし、本がすぐにボロボロになりますので、図書館の本で少し試したあとは、自分で買ったほうがよいと思います)。

  • 2021/03/29 Books
    完全な人間を目指さなくてもよい理由 : 遺伝子操作とエンハンスメントの倫理 / マイケル・J・サンデル著 ; 林芳紀, 伊吹友秀訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:倉岡 功

    皆さんは、自分に満足しているでしょうか?もう少し身長が高かったら、二重だったら、スタイルが良かったら、もっと頭が良かったら、そんなことを考えたりしないでしょうか。
    最新の遺伝子工学技術は人の体を改良する事が可能になっています。それは自らの体をより改良することで筋力やその人の能力を強化することのみならず、生まれてくる自分の子供を自分が好きに改良すること(デザイナーベイビー)ができる。そんな技術にまで到達しています。それは人が理想とするより完全な人間になる技術でもあります。
    しかし著者は、その必要性を否定します。その理由を知りたいと思った人は一度この本を手に取って読んでもらえたら嬉しいです。

  • 2021/03/29 Books
    権威と権力 : いうことをきかせる原理・きく原理 / なだいなだ著

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:伊豆 久

    「なぜ、親や先生の言うことを聞かないといけないのか?」と疑問に思ったことはありませんか。「ある!」という人は、ぜひこの本を読んでみてください。タイトルは難しそうですが、クラスがまとまらないことに悩むクラス委員(高校生)が、精神科医でもある<私>に相談するところから始まる、対話形式の、いわば雑談をそのまま活字にしたのがこの本です。「クラスをまとめるにはどうすればいいか」から話は少しずつ広がって、ひとがひとの言うことを聞くってどういうことか、ノーベル賞学者に権威があるのはなぜか、そして権威と権力はどう違うのかと、二人は考えていきます。読者も、二人の対話を追いながら、自然に自分で考えることになります。本書は、<個人と社会>をめぐる著者の深い洞察を平易な言葉で語りながら、同時に、自分で考えることの楽しさと大切さを私たちに教えてくれているのだと思います。

  • 2021/03/29 Books
    フランケンシュタイン / シェリー著 ; 小林章夫訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:倉岡 功

    フランケンシュタインって、知っていますか?例の人造人間のことか~っと思っている人は多いのではないでしょうか?
    実は、フランケンシュタインっていうのは、人造人間を作った研究者の名前です。人を作るぐらいですから超大天才的な科学者なのです。しかし、その一方作られたこの人造人間は、超人的な運動能力に、知性も高く、はるかに人間を超えた存在、そうこの超天才フランケンシュタイン以上の存在になります。ではあるのですが、とても醜くく恐ろしい姿をし、誰からも愛されないそんな存在となります。
    この醜い人造人間は、愛してもらえるもう一人の人造人間を作ってもらえるように、フランケンシュタインに求めます。
    さあフランケンシュタインは、どうするのか?
    それは読んでいただきたいです。
    ちなみにこの作者は女性で、その経緯を知ることも非常に興味深い。またサブタイトルの現代のプロメテウスと言うのも非常におもしろいと思います。SFの世界でありながら、人が人を愛するということが人でないものが人に愛されようとすることによってなんとなくわかりそうな気になります。

  • 2021/03/29 Books
    八月十五日の神話 : 終戦記念日のメディア学 / 佐藤卓己著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:須藤 秀平

    「作られた」終戦記念日
    みなさんは太平洋戦争の終戦日がいつか知っていますか? 8月15日と考えた人は、残念ながら「作られた歴史」を生きている人です。世界中のどの歴史教科書を見ても、終戦日が8月15日と書かれたものはないのです。では、日本の教科書はウソをついているのでしょうか? そもそもなぜ8月15日が終戦記念日なのでしょうか?
    本書はそんな「作られた国民の記憶」の問題に、メディア史という研究方法でメスを入れていきます。メディア史の観点から見れば、「国民」というもの自体、新聞・雑誌あるいはラジオやテレビといった「メディア」によって作られた共同体と言えます。歴史を学ぶことはとても大事なことです。しかし、これまで当たり前に信じてきた歴史とは別の真実があるということを知る体験は、未来を考えるためにはもっと大事なことかもしれません。幻想でも捏造でもない本当の歴史を考えたい人に、そのためのヒントを教えてくれる一冊です。

  • 2021/03/29 Books
    八月十五日の神話 : 終戦記念日のメディア学 / 佐藤卓己著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:須藤 秀平

    「作られた」終戦記念日
    みなさんは太平洋戦争の終戦日がいつか知っていますか? 8月15日と考えた人は、残念ながら「作られた歴史」を生きている人です。世界中のどの歴史教科書を見ても、終戦日が8月15日と書かれたものはないのです。では、日本の教科書はウソをついているのでしょうか? そもそもなぜ8月15日が終戦記念日なのでしょうか?
    本書はそんな「作られた国民の記憶」の問題に、メディア史という研究方法でメスを入れていきます。メディア史の観点から見れば、「国民」というもの自体、新聞・雑誌あるいはラジオやテレビといった「メディア」によって作られた共同体と言えます。歴史を学ぶことはとても大事なことです。しかし、これまで当たり前に信じてきた歴史とは別の真実があるということを知る体験は、未来を考えるためにはもっと大事なことかもしれません。幻想でも捏造でもない本当の歴史を考えたい人に、そのためのヒントを教えてくれる一冊です。

  • 2021/03/26 Books
    戦国日本と大航海時代 : 秀吉・家康・政宗の外交戦略 / 平川新著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:山田 貴司

     我々が住んでいる世界は、歴史上もっとも諸地域間の政治・経済・文化的な交流が高まっている状況にある。グローバリゼーションというやつである。そうした地球規模の交流の広がりは、皮肉なことに、コロナウイルス感染拡大という問題を通じ、改めて目の当たりにすることとなっている。
     日本の歴史を振り返ると、現代以前にも世界の諸地域との交流が盛んに行われた時代があった。戦国時代から桃山時代にかけてである。戦国大名が割拠し、その後、織田信長や豊臣秀吉、徳川家康といった統一権力者があらわれたこの時代には、従来からの朝鮮や中国に加え、アジアに進出したヨーロッパ勢力との交流も生まれていた。
     この当時、ヨーロッパでは、オスマン帝国による地中海制海権の制圧、プロテスタントとカトリックの対立激化の中、スペイン・ポルトガル両国による新航路の開拓と「世界征服事業」が進められており、彼等は先進的な火器を有する武力、教線拡大を狙うカトリック教会の先鋒・イエズス会を二本柱に、アジアにもやってきた。その後、スペインと対立していたイギリスやオランダもここに到達する。世界史的にみれば、日本の戦国時代は大航海時代であった。
     本書は、このような世界史的な視点から、戦国日本の権力者(信長、秀吉、家康、そして伊達政宗)とヨーロッパ勢力の交流・交渉の軌跡を追うものである。戦国乱世が続いていた日本を、ヨーロッパ勢力は軍事大国とみなしており、逆に戦国日本の権力者(信長、秀吉、家康、そして伊達政宗)は、ヨーロッパ勢力それぞれの事情や特徴、対立関係をみきわめ、秀吉に至っては武力行使をちらつかせつつ、関係を築こうとした。イエズス会関係史料等により活写される両者の関係は、侵略・征服に発展しかねないじつに緊張感を孕んだもの。読後には、戦国日本の権力者像やヨーロッパの諸勢力に対する見方がきっと変化するであろう、刺激的な一書である。

  • 2021/03/26 Books
    韓国文学を旅する60章 / 波田野節子, 斎藤真理子, きむふな編著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:柳 忠熙

    「韓国・朝鮮文学への気楽な旅立ち」
    私は福岡大学人文学部東アジア地域言語学科で専門科目として韓国・朝鮮文学を教えている。また共通教育の「アジアの文学」で韓国・朝鮮文学を教えている。授業を準備するとき、私はいつも困っていた。それは韓国・朝鮮文学をあまり接したことのない受講生たちに興味を引き起こせる本が、これまであまりなかったことである。近年のK文学のブームの流れのおかげなのか、お勧めできるK文学の概説書がコロナ禍で猛威を振るった2020年に「いよいよ」出た。それが波田野節子ほか編『韓国文学を旅する60章』(明石書店、2020年)である。
    まずこの本で目に付くのは、韓国・朝鮮文学に関する多様なテーマである。総合芸術形式と言われるパンソリをはじめとした古典文学、その後の近現代は詩人・小説家などの作家を中心にその作家の作品を紹介している。韓国・朝鮮の近代文学の祖とも言われる李光洙(イ・グァンス)をはじめとして、植民地期(1910~1945)の近代文学、解放後に起こった朝鮮戦争(1950年勃発~1953年休戦)を経た混乱の時期から復興の時期(独裁政権時期)、民主化後の1990年代から現代に至る時期の韓国現代文学を扱っている。これら作家論に加え、ハングルと韓国・朝鮮文学との関連性、翻訳・翻案の問題、フェミニズム文学など、各テーマに関するコラムも用意されている。
    この本は単に韓国・朝鮮文学を概説するものではない。上で述べた作家論・テーマ別のコラムは文学と「場所」という共通の認識に基づいたものである。編者たちの「はじめに」は次のように始まる。「文学と旅はよく似ている。本を開き、私たちは日常から解き放たれた旅に出る。とくに外国の文学作品との出会いは、見知らぬ土地への旅立ちにも似ている。」(「はじめに」『韓国文学を旅する60章』、3頁)この本を手に取るあなたは、植民地期の京城(現在のソウル)の風景、そして福岡と最も近い韓国である釜山など、朝鮮半島の昔と現在の「場所」を文学とともに、疑似体験することになる。
    これまで堅苦しい形で紹介をしてきたが、この本を手に取るあなたは自分が気になるテーマ・作家・作品あるいは「場所」のところをめぐり、ただ気楽に読めばいい。その気楽な旅のなかで、あなたが気に入る韓国・朝鮮の文学そして朝鮮半島の場所にめぐり会ってほしい。

  • 2021/03/22 Books
    特別な才能はいらない自分にしかできないスクールリーダーになろう / 中竹竜二著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:太田 七瑠

    「どんな人でもリーダーはできる」
    部活動に励んでいる学生、教員を目指している学生にはぜひ読んで頂きたい。
    本書の中には、参考になる事例や考え方もあるが、全く共感できない内容もあるだろう。
    それぞれの場面で自身に問いかけながら本書と対話するように読み進めていくとたくさんのヒントを得ることができる。

  • 2021/03/17 Books
    流れのふしぎ : 遊んでわかる流体力学のABC / 日本機械学会編 ; 石綿良三, 根本光正著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:安東 洋一

    空気や水は色を持たず、形を自由に変え流れていきます。それらは「流体」と呼ばれ、我々の生活には欠かせない存在なのですが、意識しないと存在を忘れがちになります。流体の動きを観察すると一般的な感覚からすると不思議な現象を見ることができます。本書ではそれらの現象をわかりやすく説明されています。工学を学ぶ学生、特に流体を学び始める学生は本書とともに専門科目を履修すると、「流体」をよく理解できると思います。

  • 2021/03/17 eBook
    マンガでわかる流体力学

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:安東 洋一

    我々の生活には欠かせない存在である空気や水は色を持たず、形を自由に変え流れていきます。それらは「流体」と呼ばれ、意識しないと存在を忘れがちになります。一般的な感覚からすると流体の動きのなかには不思議な現象があります。本書ではそれらを「マンガ」でわかりやすく説明されていますので、「流体」の運動に興味がわくことと思います。

  • 2021/03/17 Books
    高校数学でわかる流体力学 : ベルヌーイの定理から翼に働く揚力まで / 竹内淳著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:安東 洋一

    空気や水、それらは「流体」と呼ばれ、我々の生活には欠かせない存在ですが、形を自由に変えるため流れの様子を直接見ることは困難です。本書では「流体」の運動の様子を数学を用いて表す方法を解説しています。「偏微分・複素関数」の概念が少し必要ではありますが、概ね「高校数学」で理解できますので、流体力学を学び始める学生には十分読み解ける内容となっています。

  • 2021/03/16 Books
    誰のためのデザイン? : 認知科学者のデザイン原論 / D.A.ノーマン著 ; 野島久雄訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:中 貴一

    認知科学者であるD.A.ノーマンによる,デザインについての非常に有名な書籍です。D.A.ノーマンは心理学を専攻した学者で,またアップルなどで開発業務にも携わった経歴があります。認知科学研究に基づきながら,デザインを行う上で重要な人の特性について多くのことが書かれています。非常にボリュームのある書籍ですが,デザインに携わる人は一読することをお薦めします。

  • 2021/03/16 Books
    パロマーの巨人望遠鏡 / D.O.ウッドベリー著 ; 関正雄, 湯澤博, 成相恭二訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:大槻 かおり

    望遠鏡の性能は、口径でほぼ決まると考えて良い。日本が持つ最大口径の光学望遠鏡は、口径8mのすばる望遠鏡である。
    現在ハワイのマウナケア山頂には10メートルクラスの望遠鏡が連立し、国際協力のもと、口径30メートルの望遠鏡が実現しようとしている。
    しかし20世紀初頭には口径1メートル程が限度だった。この本には、当時不可能だといわれていた口径5メートルの光学望遠鏡が実現するまでの道のりが書かれている。科学者たちは、目的のために何度も壁にぶつかりながらそれを乗り越えていく。実直に悪あがきする姿は、時にコミカルでさえあって、文系の学生にも楽しめる物語だと思う。
    もしヘールや彼を継ぐ科学者たちがどこかであきらめていたら、今の天文学の発展はなかった。
    人生には引き際の大事な場合も多々あるが、いつか皆さんが壁にぶつかったときには、この科学者たちの往生際の悪さを少し思い出してみて欲しい。

  • 2021/03/16 Books
    セックスはなぜ楽しいか / ジャレド・ダイアモンド著 ; 長谷川寿一訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:山本 泰暉

    注意・奇抜なタイトルとは異なります。
    奇抜なタイトルとは全く異なり、「人間の性(セクシュアリティ)」について人間以外の多種多様な動物と比較しながら考察をしていく非常に興味深い作品です。
    比較をする中で、大多数のひとが当たり前と思っていることが、自然界では独特や奇抜であることを再認識させられます。

    高校までとは異なり、大学では専門的な事象や用語を学びます。そして、それら一つ一つを並べたときにどのような見方(ストーリー)ができるのか考察していくところに学びの面白さがあると思います。
    自身の学問範囲(学部)だけで物事を考えずに、「人間」として考えると、一つ一つの事象はどういう意味を持つのか?これまでとは異なる見方ができるのではないか?そんな風に広い人間的な視野で考えるきっかけにこの本がなってくれればと思います。
    作者である「ジャレド・ダイアモンド」は著名な人類学者で他にも面白い作品があるので、興味を持った方はぜひ読んでもらいたいです。

  • 2021/03/16 Books
    哲学思考トレーニング / 伊勢田哲治著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:中 貴一

    科学的思考法に関する書籍です。「思いやりの原理」など,クリティカルシンキングをする上で重要なポイントがわかりやすく解説されています。望ましい思考や議論の作法を身につける事は,研究はもちろん,日常生活においても重要です。インターネット上などに多くの情報があふれている近年,ぜひ一読をお薦めしたい書籍です。

  • 2021/03/12 Books
    卒論・修論を書き上げるための理系作文の六法全書 / 斎藤恭一著 ; 中村鈴子絵

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:新戸 浩幸

    卒業論文・修士論文を書く予定の理系学部4年生・大学院修士1年生、研究内容を学会発表する予定の理系学生さんにお薦めします。
    本書を読めば、良い理系文書とはそもそもどのようなものなのか、良い理系文書作成のための方向・方法を理解できます。

  • 2021/03/12 Books
    人生を変える80対20の法則 / リチャード・コッチ著 ; 仁平和夫, 高遠裕子訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:伊藤 奨

    この本で取り上げられている80対20の法則は「原因と結果」「努力と報酬」にはどうにもできない不均衡があり、「原因の20%が結果の80%を生み出す」「努力の20%が報酬の80%を生み出す」という法則です。この法則はビジネスの世界のみならず、勉強、スポーツ、研究、私生活といったあらゆるものに応用可能な法則です。80対20の法則についてグラフや表を用いながらわかりやすく解説されています。「時間の使い方がわからない」「頑張っているのに結果が出ない」といった悩みを持つ方にお勧めです。是非一度手に取って、80対20の法則を私生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?

  • 2021/03/10 Books
    イラストレイテッド光の実験 / 田所利康著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:文仙 正俊

    美しい光の実験と詳細な解説。
    身の回りにあるものや比較的手に入りやすい機材で行うことができる光の実験が、詳細な解説と美しい写真やイラストとともに紹介されています。
    光学には素晴らしいテキストがいくつもありますが、この本も併せて読むとさらに興味や理解が深まるのではないでしょうか。
    姉妹書であるイラストレイテッド光の科学と併せてお薦めします。

  • 2021/03/04 Books
    「新」地球温暖化とその影響 : 生命の星と人類の明日のために / 内嶋善兵衛著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高村紀充

    1996年に刊行された「地球温暖化とその影響」の新版で、その後の研究の進展や、2005年2月に発効された京都議定書をめぐる国際的な動向など、2005年時点における情報が満載の一冊です。まず、地球温暖化のしくみが地球史的な観点から説明され、続いて、気象、生態系、農業、健康と人間社会などへの影響について、わかりやすく紹介されています。地球温暖化問題やエネルギー問題に適した入門書です(裳華房ホームページより一部引用)。

  • 2021/02/22 Books
    Give & take : 「与える人」こそ成功する時代 / アダム・グラント著

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:大上麻海

    他人に優しくありたい。社会の役に立ちたい。でも、この好意を誰かに搾取されたらどうしよう?そのような不安に気鋭の社会心理学者が回答する一冊です。筆者の調査研究の経験から、ビジネスで成功している人はギブアンドテイクではなくギブをより多く行っていることが明らかになりました。他人に対するギブが巡り巡って「自分へのギブ」として還ってくるのです。本書では研究論文には載らない「テイクされずに他人にギブする方法」が具体的に紹介されています。愛他的・向社会的に生きることで人的ネットワークを構築したい人に向けた具体的な指南書です。

  • 2021/02/22 Books
    「会社人間」の研究 : 組織コミットメントの理論と実際 / 田尾雅夫編著

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:大上麻海

    ひとくちに「会社人間」といってもそこには三種類の意味が含まれています。会社に愛着を持ち会社で起きることを自分ごととしてとらえる人、転職が困難で今の会社にしがみついている人、そして「会社は辞めないのが普通」だから居続けている人です。本書では国内外の研究をつぶさにあたることによって三種類の違いを明確に導き出しています。また、この三種類が組織に与えるプラス/マイナスの影響についても詳細に明らかにされています。一般には否定的な意味でのみ用いられる「会社人間」という言葉について多様な視点を与えてくれ、自身の職業生活についてじっくりと考える一助となる一冊です。

  • 2021/02/12 Books
    洗脳するマネジメント : 企業文化を操作せよ / ギデオン・クンダ著 ; 樫村志保訳

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:樋口 あゆみ

    日本語訳のタイトルから、悪い印象を抱いてしまいがちな本ですが、企業エスノグラフィーの最高峰といって過言ではない素晴らしい本です。著者はアメリカのハイテック企業に入り込み、そこで人々がどのように仕事に熱中するように企業側が組織文化を創り上げているのか、そしてまた同時に、その代償として一部の人々が燃え尽きて言ってしまうのかを綿密な調査から説得的に、そしてなによりも小説と見まごうほどに活き活きとした描写で描き出しています。

  • 2021/02/12 Books
    創造的経験 / M・P・フォレット著 ; 齋藤貞之, 西村香織, 山下剛訳

    教員お薦めの本(商学部)

    推薦者名:樋口 あゆみ

    経営学といえばドラッガーを知らない人は少ないと思いますが、そのドラッガーをして「マネジメントの予言者」と言わしめた女性がいます。それが本書を著したメアリー・パーカー・フォレットです。その考え方は、専門化が進んだ現代であっても十二分に読む値のある本です。次の箇所を挙げるだけでも十分でしょう。「社会関係の法則として、妥協や支配よりもむしろ統合を受け容れる人々は、結合の方法を探すであろう。統合における第一段階は、全体を解体することである。即ち、分解・分析すること(analyze)、相異性を認識すること(differenciate)、そして相異性を理解すること(discriminate)である。……ビジネスにおいて成功した人々は、競争相手を全体として見てはいない。彼らは、多くの諸活動のすべてを見て、そしてこれらの一つ一つと競い合っている、協働が競争よりも利益になるであろうと判断される場合、そうである理由は、常に、まずなんらかのそれぞれの相異性の認識が最初になされているからである。」(p.172-174)
    そして、なにより、まだまだ男性が大勢を占める日本の産業界、経営学領域において、その初期から女性が活躍していたという事実もまた、多くの学生を力づけてくれるのではないでしょうか。

  • 2021/02/09 Books
    Partial differential equations / Lawrence C. Evans

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:柳 青

    本書は、海外では多くの大学に偏微分方程式の教科書として採用され、偏微分方程式を専門とする研究者や学生の必読書とされています。様々な方程式の解析理論を幅広く解説していますので、内容がとても豊富です。第1章と第2章は初学者に適した内容であり、偏微分方程式に関する基本事項、分類及び典型的な線形偏微分方程式の解き方などについて詳細に説明しています。各種の手法の特徴に注意しながら読むことをおすすめします。第3章以降ではより複雑な線形と非線形方程式に対する手法が紹介されています。徐々に高度な内容になっていきますが、変分法も含めて偏微分方程式論の発展に興味を持つ読者にとっては最も読み応えのある部分だといえるでしょう。充実した内容のみならず、洗練された文章の書き方も本書を薦める理由の一つです。数学の論文を執筆する際にも大変参考になる書籍です。

  • 2021/01/26 Books
    ペインティッド・バード / イェジー・コシンスキ著 ; 西成彦訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:坂井隆

    ひたすら「陰惨」ですが、読み応えのある小説です。昨年、映画版が『異端の島』という邦題で日本でも公開された話題作でもあります。辛酸をなめ続ける、6歳の少年(主人公で語り手)の様が延々と描写され、かなりグロテスクな描写が含まれます。また、そのように迫害され続ける少年が、他者を支配する「権力」に魅了されるという、心理的にドキッとさせる場面もあります。

    英語が得意な方は、原書にも挑戦してみてはいかがでしょうか?かなり重い内容の割には比較的平易な英語で書かれています。

  • 2021/01/22 Books
    スマホ脳 / アンデシュ・ハンセン著 ; 久山葉子訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    デジタル社会が拡大していく中で、睡眠不足や運動不足、SNSとの関わりは、人々のストレスを増大させ、国によっては9人に1人がうつ病を患っているというデータもあります。なぜ人間はこのデジタル化社会でストレスを抱えているのか。それは、人間の脳が、生物学的に一万年も変化していないからだそうです。精神科医であるハンセンは、様々なエビデンスを挙げ、人間の脳が現代のデジタル化社会に不適応を起こしていることを示しています。例えば、人間の脳は、一部の例外的な人を除いて、マルチタスクには向いていないこと、あるいは、人間が実際に認知可能な交流人数は150人程度であり、不特定多数とのSNSは、逆に、他者との比較や嫉妬で、人生における自らの満足度を下げ、人を孤独にする結果を招いている等が指摘されています。本書末には、人間がデジタル化社会で健全に生きていくためのアドバイスがまとめられています。そこで、ハンセンは、スマホ等の利用時間を制限する、スマホを常に手元に置かない、また、適度に運動する時間を設ける、SNSは積極的に交流したい人とのみに限定する、といったちょっとしたこと(しかし、脳にとってはとても大切なこと)を通して、日常生活におけるデジタルデバイドとの関係を見直し、より健全な生活を採り戻すことを提言しています。

  • 2021/01/22 Books
    グローバル時代のアメリカ : 冷戦時代から21世紀 / 古矢旬著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    本書は1970年代に始まりトランプ政権に至るまでのアメリカ現代史を扱っています。ポスト市民権運動(公民権運動)、ポスト偉大な社会、ポスト・ニューディール・リベラリズムの時代という繁栄の時代を過ぎたアメリカ政治社会の変容とその変容の底流にある構造的な変化が本書の中で丹念に読み解かれています。アメリカ現代史における構造的な変化を理解すると、白人保守派に支持された2016年トランプ大統領の誕生は、アメリカ社会の長期的なトレンドの一つの帰結であったことが理解できます。もちろん、大統領選挙におけるトランプ氏の勝利は、短期的には前大統領であるオバマ政権に対する反発から生じていた点は否定できません。しかし、より重要なことは、アメリカ政治の構造的な変化(グローバル化、新自由主義、多文化主義的傾向の行き詰まりと、これらのトレンドに対する反動)の中から生じている点です。本書は2020年大統領選挙前に刊行されているため、当然ながら、民主党のバイデン氏の勝利およびトランプ政権の任期終了直前に起こった連邦議会議事堂襲撃事件までを扱ってはいません。しかし、本書を最後まで読んだとき、現代アメリカ政治における民主主義の危機の深刻さについて考えさせられることでしょう。

  • 2021/01/22 Books
    なぜ歴史を学ぶのか / リン・ハント著 ; 長谷川貴彦訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    本書の第1章冒頭で、「どちらを向いても、歴史が争点化している。政治家は歴史的事実について嘘をいい、歴史的記念碑の撤去や存続をめぐって衝突する集団もある。役人は歴史の教科書の内容について絶えず監視をおこない、真実和解委員会が地球規模で急増している。歴史博物館の急速な増大が示しているように、私たちは歴史に取りつかれた時代に生きているのだ。」とハントは述べています。歴史は、語る側の政治的な立場一つで、解釈が異なり、異なるストーリーで語られます。解釈を伴うがゆえに、時代によって歴史についての真実が変わります。ソ連崩壊後、スターリン像が撤去されるという事例がありましたが、これは、ソ連時代では考えられなかったことです。権力者が変われば歴史的事実が変わる良い例です。いずれにせよ、歴史はつねにその時代の政治と深く結びついています。そのことを理解した上で、私たちは、その出来事が事実かどうか、真実かどうかを常に検証していく必要があり、そこに学問としての歴史学の重要性があります。本書を通して、歴史を学ぶことの意義とともに、歴史を実証的に研究していくことの大切さについて痛感させられるのではないでしょうか。

  • 2021/01/22 Books
    アメリカ大統領選 / 久保文明, 金成隆一著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    アメリカ大統領選挙は、常にアメリカ社会の今を象徴します。本書は、アメリカ大統領選挙を切り口にしつつ、多角的にアメリカ大統領選挙とアメリカ政治を扱っています。扱っているテーマは幅広く、大統領制の特徴、大統領候補を決定する予備選挙も含めた大統領を選出するための大統領選挙制度の仕組み、大統領選挙の歴史、さらには、昨今の有権者の投票行動と選挙情勢および進行しつつあるアメリカ社会の変化について、と盛沢山の内容です。ところで、2021年1月6日、トランプ大統領の熱狂的な支持者による連邦議会議事堂襲撃事件が発生しました。トランプ氏は2020年大統領選挙でバイデン氏勝利の選挙結果を不正として認めず、次期大統領への政権移行を拒否し続ける最中に起こったこの事件は、アメリカ民主政治の歴史の汚点として記憶に残ることでしょう。本書に収録されているスティーブン・レビツキー教授へのロングインタビュー「アメリカの民主主義と大統領選」は、トランプ政権およびトランプ大統領誕生が象徴するアメリカ民主主義の危機を語っていますので、おすすめです。

  • 2021/01/22 Books
    アメリカの政党政治 : 建国から250年の軌跡 / 岡山裕著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    アメリカ合衆国の二大政党制について関心のある方におすすめしたいのが本書です。新書版で手に取りやすいということもありますが、新書版という制約がありながら、アメリカ合衆国の政党および政党制を総体的に学べるからです。現代の民主党と共和党との二大政党制となるのは、1860年のリンカーンが大統領選挙に勝利して以降のことです。それ以前の二大政党制の形成、民主党と共和党による二大政党制時代における政党と支持層の変化、アメリカ政治における第三党の存在等、本書は建国期から現代までのアメリカの二大政党制の流れを概観できます。また、保守とリベラルとの間でイデオロギー的に分極化が進む現代のアメリカ政党政治が抱える問題点についても、ニュートラルな立場から最新の学術的知見に触れられており、特に、アメリカの政党政治についてより学びたいと思っている方には、ぜひ読んでほしい本です。

  • 2021/01/13 Books
    新しい薬をどう創るか : 創薬研究の最前線 / 京都大学大学院薬学研究科編

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    第一線の研究者たちが語る、新薬創製の今。1つの新薬の誕生が、不治の病から世界中の患者を救うかもしれない。薬学の研究者はこれを『ファーマドリーム』と呼ぶ。化学、分子生物学、薬理・薬剤学などたくさんの学問が絡み合う新薬創製は、そんな“夢”を追う努力の積み重ねでもある。本書では、創薬の基本的な考え方から、ドラッグデリバリーシステム、ゲノム創薬など最新の研究まで幅広く紹介していく。

  • 2021/01/13 Books
    薬学へのいざない / 鎌滝哲也著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    薬学部は6年制の薬学科、4年制の薬科学科に分かれ、講義内容が大きく変化しました。本書では6年制と4年制の違いをはじめ、共用試験や長期実務実習などの複雑な新制度、入学から就職まで薬学部生活の一部始終をわかりやすく解説します。高校生の進学手引きや薬学部新入生のガイダンスに大変便利です。

  • 2021/01/13 Books
    渡辺淳一

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    学問好きの娘は家門の恥という風潮の根強かった明治初期、遠くけわしい医学の道を志す一人の女性がいた――日本最初の女医、荻野吟子。夫からうつされた業病を異性に診察される屈辱に耐えかねた彼女は、同じ苦しみにあえぐ女性を救うべく、さまざまな偏見と障害を乗りこえて医師の資格を得、社会運動にも参画した。血と汗にまみれ、必死に生きるその波瀾の生涯を克明に追う長編。

  • 2021/01/12 Books
    日本科学の先駆者高峰譲吉 : アドレナリン発見物語 / 山嶋哲盛著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    アドレナリンとタカ・ジアスターゼの発見で、いまなお人類がその恩恵をこうむっている高峰譲吉(1854~1922)は、幕末の金沢に生まれ、国際結婚、アメリカの学界ではサムライ化学者とよばれた、その独創的な研究生活、常に実用を忘れぬベンチャービジネス精神のおりなす波瀾に富んだ生涯を描く感動的な評伝。

  • 2021/01/12 Books
    創薬科学入門 : 薬はどのようにつくられる? / 佐藤健太郎著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    創薬とは、新しい薬を生み出すプロセスのこと。本書は薬学部の学生さんをはじめ、創薬の基礎を学ぶ方々に向けた書籍です。基礎編では、創薬の基礎知識をわかりやすくかみ砕き、読み物風に解説しています。応用編では、現代の重要疾患に対する創薬がどのように行われているのかを疾患ごとに説明。創薬について科学的な理解が深まるとともに、開発ストーリーやビジネスとしての創薬についても理解できます。改訂2版は、社会にインパクトを与えた新しい医薬品、「C型肝炎治療薬ソホスブビル(ソバルディ)」や「抗がん剤ニボルマブ(オプジーボ)」なども登場、さらにAI(人工知能)を使ったこれからの創薬についても解説しています。

  • 2021/01/12 Books
    新型コロナウイルス : 脅威を制する正しい知識 / 水谷哲也著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    正しい知識が私たちの身をまもる。未知のウイルス感染症の脅威に直面したとき、不要なパニックを起こさず被害を最小限にするには、脅威の正体を見極める目をもたなければならない。
    新型コロナウイルスについて私たち一人一人が学び、いま起こっていることを正確に理解し、さらなる感染に備えて冷静に対処することが重要である。

  • 2020/07/08 Books
    プロフェッショナルの条件 : いかに成果をあげ、成長するか

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 吉川 千鶴子

    組織と個人の在り方を、さまざまな分野の例を示しつつ解説しています。ここでは、病院の事例を用いているところを抜粋して紹介します。
    「新任の病院長が最初の会議を開いたときに、あるむずかしい問題について全員が満足できる答えがまとまったように見えた。その時一人の出席者が、“この答えにブライアン看護師は満足するだろうか”と発言した。再び議論が始まり、やがて、まったく新しい解決策ができた。ブライアン看護師は、普通の古参の看護師で、特に優れた看護師でもなく、師長を務めたこともなかった。しかし、彼女は病棟で何か新しいことが決まりそうになると、“それは患者にとって一番いいことでしょうか”と必ず聞くことで有名であった。事実、ブライアン看護師の病棟の患者は回復が早かった。病院全体に「ブライアン看護師の原則」ができ、「患者にとって最善か」を常に考えるようになった。」
    社会の変化とともに医療も見直すべきことが多々あります。しかし、既成概念に捉われて、変わろうとしない現実があるのも事実です。学生にも医療者にもお勧めしたい本です。

  • 2020/07/08 Books
    脳梗塞からの"再生" : 免疫学者・多田富雄の闘い / 上田真理子著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 浦 綾子

    多田富雄先生は、わずか36歳で「抑制T細胞」を発見し、世界的な免疫学者でした。学術的な功績にくわえて、能や狂言にも造詣が深く、とても人間的な魅力をもつ人物でした。67歳で脳梗塞を患い、右半身麻痺、嚥下・発声障害と闘いながら執筆活動を続け、たくさんの本を遺されています。この本は、「鈍重な巨人」という多田先生の手記を補足する形で、NHKディレクターの著者が、療養生活に密着して綴られた一冊です。脳梗塞に倒れた直後からリハビリに取り組む日々、身体に起こった変化と心情を学べるお薦めの本です。

  • 2020/07/08 Books
    The discoveries : great breakthroughs in 20th-century science, including the original papers / Alan Lightman

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 久冨 智朗

    科学作家のアラン・ライトマンは、相対性理論からDNAの構造のマッピングまで、20世紀の科学に関する24の素晴らしい発見を記録しています。発見に至る物語や人間模様、発見の持つ意義が活き活きと綴られています。医師として科学者として、これから活躍する皆さんに医学の持つ奥深さと可能性に挑戦してもらいたいと思います。

  • 2020/07/08 Books
    The eyes : 眼の収斂進化 / 堀内二彦著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 久冨 智朗

    眼科医の著者が様々な生物の眼の構造に興味を持ち、科学者として向き合った読みやすい本です。著者は眼の進化に興味を持って探っていく過程で、種の進化にとどまらず、異なった系統から進化しながら高い類似性をもつ収斂進化、果てはカンブリア期の爆発的生物多様性まで思いを馳せて行きます。あらためて医師は科学者であるべきだと思わせる楽しくなる著書です。

  • 2020/07/08 Books
    看取りケアの作法 / 村瀬孝生著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 春田 京子

    日本は世界でもトップクラスの長寿国です。患者の過半数を65歳以上の高齢者が占めています。臨床の場では認知症があり、治療の目的が十分理解できないまま治療を受け、治療後に安静にできないことで拘束をせざるをえないという現実があります。誰のための治療なのか。そのようなジレンマを抱えている時に出会った本です。これまでのような「予防する」「治す」という価値観だけではなく、「老いに寄り添う」ということに価値を置くことが必要ではないでしょうか。
    将来、医療を提供する側となる学生にぜひ、読んでもらいたい1冊です。

  • 2020/04/10 Books
    理不尽に勝つ / 平尾誠二著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:下園 博信

    2019年ラグビーワールドカップ日本大会の興奮は記憶に新しい。ラグビー日本代表は、格上のアイルランド、スコットランドに勝利し、ワールドカップ初のベスト8入りを果たした。遡ること20年、1999年に36歳で日本代表を率い、世界に挑戦したのが著者の平尾誠二氏である。「ミスターラグビー」と呼ばれ、日本のラグビー界をけん引してきた。彼が、2012年に著した本である。グランド内外での華麗な立ち振る舞いや、効率的な練習法を数多く残した平尾氏が「理不尽」というテーマで、人生の色々な場面を語っている。「あらかじめ結果がわかっていることに、人は興味を持てない。おもしろくないからだ。・・」私も困難や問題を抱えたときに、そう考える・・学年を問わず、手に取ってもらい、何かの参考にしてもらえればと思う。尚、平尾氏は2016年10月20日、ワールドカップ日本大会を見ずに53歳という若さで病に倒れ、逝去された。

  • 2020/04/10 Books
    超一流になるのは才能か努力か? / アンダース・エリクソン, ロバート・プール著 ; 土方奈美訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:山口 幸生

    著名な心理学者によるやる気をかき立てられる一冊。この本は30年に渡りあらゆる分野の達人を研究してきた成果に基づいている。冒頭にでてくる「絶対音感は練習で身につけられる」のところから、常識が覆された。もちろん、遺伝的資質を否定しているわけではないが、「限界的練習」こそが最も重要であると主張している。教育に携わるものは必読すべき本である。

  • 2020/04/10 Books
    いい言葉は、いい人生をつくる / 斎藤茂太著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:安部 七波

    まず最初に、タイトルの言葉に惹かれました。私も、”言葉”が大好きで、よく”言葉の力”というのを感じていました。不思議なことに、落ち込んでいる時も楽しい時も、その時の自分にぴったりな言葉があるんですよね。そして、この本を読んでさらにその思いは強くなり、私もいい言葉を見つけるとその都度手帳にメモするようになりました。今では、「1日1ついい言葉に出会う」というのを目標にしています。いい言葉に出会うためには、言葉を探しにいかなければなりません。その方法はたくさんあります。本を読んでその中に書いてある言葉を見つけるのでもいいし、映画を見てその中のセリフを書き留めるでもいい、テレビを見て俳優さんやスポーツ選手の言葉をメモするのでもいい、街中のポスターに書いてあるキャッチフレーズでもいい、漫画の中のキャラクターのセリフでもいい、方法や場所はなんでもいいんです。大事なのは自分の心に響いた言葉に出会えるか。そしてせっかく出会えたのなら、忘れないようにメモしてください。きっとその言葉は、あなたの人生にプラスになります。私がこの本の中で出会った好きな言葉はイギリスの詩人W・H・オーデンの「君の心の庭に辛抱を植えたまえ。その根は苦いが、実は甘い。」という言葉です。これから先、困難や壁にたくさんぶつかると思います。けれど、そういう時にじっと辛抱し、下に下に根を伸ばし地を固めてください。そうすれば、きっと、いつか大きな花が咲きます。皆さんの人生を変える言葉に出会えますようにー。

  • 2020/04/10 Books
    羊どろぼう。 : Sheep thief. / 糸井重里著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:山口 幸生

    「安心」が何よりも求められる時代に、著者の言葉はすっと心に入り込んでくる。しかし、その意味を理解するにつれて、グサッと胸に突き刺さり、自分のふがいなさを実感する、でも勇気づけられる。そんな言葉がちりばめられている。誰にでも書けそうで、でも人間観察の達人である著者にしか表現できない、秀逸な表現に出会うことが出来るだろう。そばに置いて、本当に困ったときに開いてみる、そんなふうに長く付き合える本である。

  • 2020/04/07 Books
    暗号解読 : ロゼッタストーンから量子暗号まで / サイモン・シン[著] ; 青木薫訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:竹立 新人

    人類はその歴史の中で、自身やその周りの人々を守るために‘暗号(コード)’を用いてきました。歴史の経過とともにそれは発達・複雑化し、それを生み出す知識をもとに、コンピューターをはじめとする多くのツールを創りあげました。さらに生物が‘遺伝子(コード)’をもとに成り立っていることを鑑みれば、現在のサイエンスという分野は、自然が創り出したコードを読み解く作業といっても過言ではありません。
    このように人々の生活に密接な関係性をもちながら、その特性から歴史で語られることのない‘コード’に焦点を当てた逸品です。

  • 2020/04/07 Books
    深夜特急 / 沢木耕太郎著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:倉岡 功

    旅をするもののバイブルとして、この本は長く読み伝えられている。ここで改めて紹介したい。著者は、「インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスがある」ということを聞き、それを確かめるべく旅にでる。言うなればこの本は一つの旅行記である。飛行機で世界一周が容易な時代はではあっても、旅が人に与えるその力は絶大なものであることを感じる。日常と非日常の間にあるそのGAPを、この本によって感じてもらえれば幸いだ。また、冒険したい!という気持ちを持つ学生さんたちにもお勧めの本です。

  • 2020/04/07 Books
    花神 / 司馬遼太郎著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:竹立 新人

    日本人は英語が話せない、とよく言われます。英語は現在、世界のビジネス、研究など多岐にわたる分野での公用語として扱われています。ところが実際、約75%の日本人が英語を用いた意思疎通ができず、世界の2%未満の人しか話せない日本語に依りながら、このグローバル化した社会を生きています。
    なぜそれがダメなのか?ダメだとしたらどう対処すればいいのか?そんな疑問を持つ人に、この作品をお勧めします。言語は情報を呼びこむツールであり、文化や社会の仕組みを変える原動力となる、そんなことを思い知らされる作品です。

  • 2020/04/06 Books
    アンリ四世の青春 / ハインリヒ・マン著 ; 小栗浩訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:堺 雅志

    作者はノーベル賞作家トーマス・マンの実兄で、第一次、第二次世界大戦に対してペンで抵抗した闘う文士、本作は近世のフランス史に取材したドイツ文学です。史実にはかならずしも忠実というわけではありません(どこが違うかを探すのもおもしろい)が、危機的状況に直面したとき、人はどんな決断を迫られ、またどう決断しうるかが生き生きと描かれています。本作は千ページを超える作者の最長編小説です。気になる作家のもっとも長い小説に挑戦してみるのも読書のたのしみのひとつだと思います。

  • 2020/04/06 Books
    アルプスの少女ハイジ / ヨハンナ・シュピリ [著] ; 関泰祐, 阿部賀隆訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:倉岡 功

    アルプスの少女ハイジは、日本人ならおそらくどんな人も見たことがある名作アニメだろう。では、あなたはその原作を読んだことがあるだろうか?アルプスの少女ハイジの原作名ハイジは、女性作者ヨハンナ・シュピリによって書かれた児童文学作品である。
    話の大筋はほとんどアニメのものと同じように思う。僕がここでオススメしたいのは原作とアニメの違いを感じていただきたい。ハイジが多くの人々を変えていく。アニメはアニメの良さがあるとは思うけど、原作はそれを超えていると思う。自分が変わりたい、自分を変えたい、そう思う人にちょっとお勧めの本です。

  • 2020/04/06 Books
    人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ / ロバート・フルガム著 ; 池央耿訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:倉岡 功

    私たちは何を学ぶべきだろうか?そう考えたときにちょっと立ち止まるに良い本かもしれない。だからと言って、仰々しく読む必要はない。読んだ内容はどこかできっと思い出すことができるものになると思う。エッセイ集のようなもので、たわいもない日常の中にある誰もが経験し、見ている事実の中から、それとなく驚きの発見を作者は紹介している。本屋で手に取って見てもらって気に入ればちょっと立ち読みで触れてみればいい。あくまでも気楽に呼吸するように読んでいただけると良いと思う。本当に必要なものは、幼稚園で学べるなら、大学では何を学ぶべきだろうか?

  • 2020/04/06 Books
    アンリ四世の完成 / ハインリヒ・マン著 ; 小栗浩訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:堺 雅志

    作者はノーベル賞作家トーマス・マンの実兄で、第一次、第二次世界大戦に対してペンで抵抗した闘う文士、本作は近世のフランス史に取材したドイツ文学です。史実にはかならずしも忠実というわけではありません(どこが違うかを探すのもおもしろい)が、危機的状況に直面したとき、人はどんな決断を迫られ、またどう決断しうるかが生き生きと描かれています。本作は千ページを超える作者の最長編小説です。気になる作家のもっとも長い小説に挑戦してみるのも読書のたのしみのひとつだと思います。

  • 2020/04/04 Books
    場所はいつも旅先だった / 松浦弥太郎著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:西田 智

    著者本人が、若かりし頃に旅をした時のエピソードを綴ったエッセイです。とにかく、風景描写が秀逸で自分も旅をその土地を旅しているようなワクワク感を感じさせてくれます。私自身、学生時代にこの本を通じて”自分らしく”生きることの素晴らしさを教わりました。本当に”自分らしく”いられるのはどんな時ですか?その答えを探す旅を、この本から始めてみてはどうでしょう。

  • 2020/04/02 Books
    時がつくる建築 : リノベーションの西洋建築史 / 加藤耕一著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:太記 祐一

    これまで建築史のテーマは、ある時代(たとえば古代ギリシャ)の最新作(たとえばパルテノン)がどう作られたのか、でした。しかし本書は、ある時代が過去の建築をどのように扱ってきたのか、に注目することで、この考え方を根本から変えてしまいました。これが単なる思い付きではないことは、本書が高い評価を得て、様々な賞を受賞したことからもわかります。これからの建築や芸術を考えるうえで、必読の一冊といえるでしょう。

  • 2020/04/01 Books
    西洋美術解読事典 : 絵画・彫刻における主題と象徴 / ジェイムズ・ホール著 ; 高橋達史[ほか]訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:落合 桃子

    最近のゲームや漫画には、ギリシア・ローマ神話の神々や英雄の名前を持つ人物が登場することもあるようです。また、いろいろなものを擬人化したキャラクターもしばしば目にします。「ゼウス」とはどんな神で、どのような姿で表されてきたのか?「死」はどう表現されてきたのか?「蛇」は何を意味しているのか?こうしたことを知りたい時には、ぜひ本書を手に取ってみてください。
    この本は、ヨーロッパの絵や彫刻の主題に関する事典です。西洋美術においても古代から、ギリシア・ローマ神話は聖書と共に重要な主題でありましたし、都市や自然、概念などを人の姿で表す擬人化も行われてきました。本書には神話や聖書の主題や人物、概念、動植物、事物などがアイウイオ順に掲載されており、それらが何を意味しており、どのように表現されてきたのかを調べることができます。イラストやマンガなど創作活動をされている方々にも大いに参考となるでしょう。ちなみに人文学部の浦上雅司先生が翻訳に参画されています。

  • 2020/04/01 Books
    人口半減社会と戦う : 小樽からの挑戦 / 小樽市人口減少問題研究会著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:磯田 則彦

    今世紀初頭より日本は人口減少社会となった。多くの自治体がその対策に本格的に着手し始めたことはよく知られている。本書は、北海道の小樽市の事例である。
    運河と歴史的建造物を特徴とする情緒あふれる街並みで有名な同市の地域ブランドは高く、年間の観光客数も全国有数である。このような街にも人口減少の波は着実に押し寄せている。本書は、市と小樽商科大学の共同プロジェクトの成果をまとめたものであり、地方自治体と国立大学の連携として注目を集めている。巻頭の市長による「刊行に寄せて」、副学長による「序」に本問題への力の入れようがわかる。行政と大学の知を結集し、科学的に人口減少問題に対応しようとする地方都市の姿を見つめていただきたい。将来、行政職を志す学生諸氏にもお薦めの著書である。

  • 2020/04/01 Books
    エコロジカル・デモクラシー : まちづくりと生態的多様性をつなぐデザイン / ランドルフ・T・ヘスター著 ; 土肥真人訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:柴田 久

    実は著者のランドルフ・T・へスター氏は、私が10年前に留学した際の恩師でもあるのですが、米国の著名なランドスケープ・アーキテクトとコミュニティ・デザイナーという2つの顔を持ち、その活動は世界中で支持されています。本書ではエコロジーとデモクラシーが結びつくことによる都市への多大な影響とその重要性が論じられ、そのための理論「3つの都市形態」と「15のデザイン原則」が豊富な事例とともに述べられています。地球温暖化や異常気象など、環境保全に対する意識の高まりやSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」などが盛んに議論されていますが、そうした時代を前に、今後の都市デザイン、まちづくりが進むべき道を考えるヒントがたくさん詰まっています。ランディが描くスケッチの絵の素晴らしさだけでも読む価値ありです。

  • 2020/04/01 Books
    数 / 安野光雅編

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:中西 恒夫

    ソフトウェアに関する仕事に関心のある人は,この本に収録されている寺田寅彦作の「数学と語学」を読んでもらいたいです。5分で読めます。今はピンと来なくても、ソフトウェアの世界でキャリアを積めば、この作品にソフトウェアの本質が記述されていることに気づかされると思います。(ちなみに寺田寅彦は、本業は随筆家ではなく物理学者で、明治~昭和初期の人です。)

    数学と語学(『数 / 安野光雅編』収録)

  • 2020/04/01 Books
    フランスの同性婚と親子関係 : ジェンダー平等と結婚・家族の変容 / イレーヌ・テリー著 ; 石田久仁子, 井上たか子訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:磯田 則彦

    今世紀に入ってから、ヨーロッパを中心に同性婚を法制化する社会が次々に現れた。フランスもそのひとつである。本書では、2013年5月17日法(通称「みんなのための結婚法」)が取り上げられ、同社会の変化がジェンダーや親子関係などの点から詳細に論じられている。
    著者であるイレーヌ・テリーさんは、フランス国立社会科学研究院研究指導教授であり、法社会学を専門としている。同国における結婚・家族・ジェンダー研究の第一人者である。フランス社会を見つめる視点の鋭さや合理的な考察はもちろんのこと、考え方の柔軟性に驚かされる。
    本書の内容を具体的にみると、第1章のジェンダー関係アプローチを軸に、後続の章において、性的平等と結婚の変貌や「みんなのための親子関係」などが詳しく論じられている。理論的な構成に加えて、フランス法に関する知識を必要とされる箇所も少なくなく、読み進めていくには、それなりの知識と集中力(忍耐力?)が求められるかもしれない。しかしながら、この本を読み終えたときに、フランス社会の結婚や家族に関する多くの疑問が解消されるはずである。
    また、訳書である本書を読み進めていくうちに、原文から日本語に訳していく過程でのさまざまな注意事項についても学習できるはずである。たとえば、今日のフランス社会において、親子関係を語るうえで重要な概念となっているキーワードを(そのような概念が定着していない)日本語にどのように訳せばよいのか、などの問題である。演習(ゼミ)での学習方法の習得にも役立つと思われる。

  • 2020/04/01 Books
    アフター・ビットコイン : 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者 = After bitcoin / 中島真志著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:廣重 法道

    「ビットコイン」には胡散臭いというイメージがくっついてしまいましたが、学生の皆さんが社会の各分野で活躍される頃には「仮想通貨」をどう取り入れ、利益確保のスキームどう構築するかが隆盛の分かれ目になると予想します。例えば、最近ApplePay, PayPay,xxPayなるものが乱立していますが、それはそれだけオイシイからです。同様のことが仮想通貨の導入にも当てはまると思います。
    正直ビットコインは失敗ですが、その原因は何かを情報技術者の観点から理解することは、将来皆さんの大きなアドバンテージになると思います。

  • 2020/04/01 Books
    人口政策の比較史 : せめぎあう家族と行政 / 小島宏, 廣嶋清志編著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:磯田 則彦

    本書は、日本経済評論社によるシリーズ「家族研究の最前線」の第4巻である。近世から戦前・戦後にかけての国や地方の人口政策や(比較的)近年の少子化対策の展開、および諸外国・地域の人口政策などがまとめられている。
    比較家族史学会(監修)による学際的な特徴をいかした研究成果であり、多くの専門家の論稿により構成されている。

  • 2020/03/31 Books
    すべては「好き嫌い」から始まる : 仕事を自由にする思考法 / 楠木建著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:廣重 法道

    「好き嫌い」の対義語は「良し悪し」です。「良し悪し」には、標準値がありそれより上か下かで判断できます。つまり論理的な世界です。一方「好き嫌い」は感情的な世界です。あなたが俳優のXXさんを好きだとして、それは好きだから好きであって、「ある数値を見た場合、俳優XXさんがMAXだったから私はその方を好きです。」ではないですよね。
    この世の中は基本的には「良し悪し」を求められる世界です。社会は法律・社会ルール・コンプライアンスなどをベースとしますし、大学では先生の好みではなく試験で成績判断します。でないと社会は混乱します。
    しかし、人間の行動には必ず「好き嫌い」が入り込みます。「理由はないけど、俳優XX好きなんだよね」でいいんです。
    この本で、「良し悪し」の世界と「好き嫌い」の世界とのバランスについて考えてみると、ビジネスにおいても、自分自身の生活においても多くのヒントを得られるのではと思います。

  • 2020/03/31 Books
    楽しく学ぶアルゴリズムとプログラミングの図鑑 / 森巧尚作 ; まつむらまきお絵

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:廣重 法道

    「プログラミングに挫折した人」にお勧めです。特にアルゴリズムについて、平易に説明されていて理解しやすいのではと思います。
    それから、「複数のプログラミング言語に接する人」にもお勧めです。C/C++、Javaなどのオブジェクト指向言語、Pythonなどのスクリプト系などなど多様多種の言語があり悩まされますが、これらの言語には関連性や繋がりがあります。本書では、JavaScript/PHP/C/Java/Swiftなどの言語を横ぐしを通すような説明があり、これが結構役に立つのではと思います。

  • 2020/03/30 Books
    日本経済の事件簿 : 開国からバブル崩壊まで / 武田晴人著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:本村 希代

    私たちの日常は政治・文化・社会など、いろいろな要素が関係しあって成り立っています。経済ももちろんその一つです。近代日本の出発点である幕末の開港をはじめとする17の出来事をとりあげ、これらを経済史的な視点から読み解いています。明治14年政変や大正政変、2.26事件などの政治史的な出来事も、経済的な側面から見ることで、また違った姿にうつることでしょう。

  • 2020/03/30 Books
    歴史を考えるヒント / 網野善彦著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:本村 希代

    歴史は昔に起った出来事なのだから、変わりようがないと思っていませんか。教科書などで知ることができるのは、歴史のほんの一部分にしかすぎません。これまでクローズアップされてこなかった側面から歴史を見てみると、また違った歴史像が見えてきます。そもそもいま私たちが知ることのできる歴史は、誰がどのようにして後世に残したものなのでしょう。「日本」という国名はいつからどういう理由で使われているのか、「百姓」=「農民」なのかなど、日本史をもう一度見つめなおす一冊です。

  • 2020/03/30 Books
    マクベス / シェイクスピア著 ; 安西徹雄訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

    最近、たまたまなのですけれど、ウィリアム・シェイクスピアの『マクベス』を取り入れた小説を二冊続けて読みました。伊坂幸太郎『あるキング』(2009年初版) と早瀬耕『未必のマクベス』(2014年初版)です。フィクションであってもノンフィクションであっても、古典と呼ばれる文献は、想像力や創造力の源となるようです。
    これを機会に、シェイクスピアの『マクベス』本編を読み返してみたくなりました。この作品は、シェイクスピアの四大悲劇のひとつです。マクベス将軍は、魔女に唆されて王様を殺してしまいます。

  • 2020/03/27 Books
    完訳統治二論 / ジョン・ロック著 ; 加藤節訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    ジョン・ロックという名前は、高校の世界史や公民の授業で聞いたことがあるかもしれません。ただ、ロックが実際にどういう思想の持ち主であったのか、憶えている人はそう多くはないでしょう。その思想は、政治、経済、宗教、教育、哲学と多岐にわたりますが、本書は、その後の民主主義の成立・発展に大きな影響を与えた本のひとつになります。プロパティ(生命・自由・財産)の保障、同意にもとづく統治、政府が信託(≒国民との約束)に違反した場合の抵抗権、といった考え方は、依然として重要であり続けています。民主主義とは何か?そのことが問われている現在、今一度、出発点に立ち返り、本書を読んでみてはいかがでしょうか。

  • 2020/03/27 Books
    ご冗談でしょう、ファインマンさん / R. P. ファインマン著 ; 大貫昌子訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:武井 敬亮

    一生のうち何度も読み返す本にはそうそうお目にかかれません。本書は(少なくとも私にとっては)そうした本の一冊になります。本書をはじめて読んだのは高校生のときで、以来、現在に至るまで繰り返し読んできました。著者はリチャード・P・ファインマン。ノーベル物理学賞を受賞した物理学者です。本書は物理学の概説書などではなく、ファインマンが自身の人生をユーモラスに語ったエッセイ集です。本書の随所にみられる彼のものの見方・考え方は、物理学に馴染みのない読者であっても、大いに惹きつけられることでしょう。

  • 2020/03/26 Books
    ザ・ナイン : アメリカ連邦最高裁の素顔 / ジェフリー・トゥービン著 ; 増子久美, 鈴木淑美訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:下田 大介

    アメリカの連邦最高裁は、9名の裁判官で構成される。本書は、判事ら「ザ・ナイン」が、妊娠中絶や同性愛など、アメリカ世論を二分するようなテーマにかかわる法律問題に取り組む姿を追ったノンフィクション作品の翻訳版。原書は2009年出版であり、国際的にも注目された大統領選(ブッシュvsゴア)の再集計問題も取り上げられている。また、「ザ・ナイン」の人柄やそれが形成された経歴・エピソードも綴られており、判事ごとに好感を持ったり、嫌悪感を抱いたりと、読者を感情移入に誘う。個性豊かな「ザ・ナイン」の繰り広げる対立、駆け引き、調整や妥協の様子が「事実は小説より奇なり」を地で行く筆致で描かれており、ノンフィクション作品でありながらドラマティックですらある。アメリカの司法制度をよく知らなくとも、おもしろく読めるであろう。
    以下は、推薦者の個人的な感想。「ザ・ナイン」はいずれも“キャラ”がたっており、魅力的ではあるものの、法的判断において、各判事の政治信条が前面に出すぎているようで、公正・中立な裁判とはいいにくいようにも感じた。司法部門における影響力を強めるため、時々の政権(保守党または民主党)が、そのイデオロギーに近い、というよりむしろ、偏った人物を、連邦最高裁に送り込もうとする選任手続に、その要因があるのかもしれない。それでも、穏当な判決とすべく奮闘する判事もいることは、救いのようでもあるが、それもひとつの政治信条とみれば、皮肉のようでもある。「法治主義」とか「法の支配」とか、高らかな理念を叫んでも、人がその担い手である以上、結局、「人治(主義)」の部分は拭えないのかなぁ。翻って、わが国の最高裁も、違憲判決こそ少ないものの、法解釈を通じて制定法の条文を事実上死文化させることがある(例えば、平成18年改正前の利息制限法1条2項・貸金業法43条)。
    形骸化が指摘されている国民審査以外には、民主的なコントロールに服さない裁判官が、国民の代表である国会議員が可決した法律を死文化させてよいのだろうか(裁判官って、そんなに偉いの?)違憲審査という正攻法ではなく、法解釈の形式をとっているため気づきにくい分、アメリカよりたちが悪い(?)などと、うっかり思いを馳せてしまった。そのようなわけで、読後感は、ややモヤモヤ・・・。

  • 2020/03/26 Books
    これは水です : 思いやりのある生きかたについて大切な機会に少し考えてみたこと / デヴィッド・フォスター・ウォレス著 ; 阿部重夫訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:遠藤 正浩

    アメリカのポストモダン作家、ウォレスが2005年にカレッジの卒業式でスピーチした内容。社会に出た若者が日常経験する退屈と苛立ちは、すべての人の心に初期設定として組み込まれている自分中心世界に起因する。本当に大切な自由とは、しっかり自意識を持ち、よく目を光らせ、真に他人を思いやり、努力を怠らず、規律を守り、ささやかな行いを毎日続けることである。シンプルであるが本質をついた内容であり、自分の世界を変える大きな一歩になる。読後に英語版のYouTubeをチェックすると楽しい。

  • 2020/03/23 Books
    中央銀行 : セントラルバンカーの経験した39年 / 白川方明著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:猿渡 剛

    日本銀行総裁時代にはデフレーション(物価の持続的下落)を放置し、無策だと非難を浴びせ続けられてきた著者が、自身の考えや行ってきた決定、その背後にあった判断と根拠を抑制的な筆致で綴っています。生産性の低下や一向に進まないイノベーション、高齢化・少子化の帰結である労働人口の減少は、日本の経済成長率低下をもたらしました。金融政策だけで対応できる問題では決してなかったはずですが、いわば責任を一方的に押し付けられた著者が、魅力のある財・サービスの創出、現役世代や若い世代にとって有利となる長期的な成長促進策、そしてこれらを可能にする制度や施策の必要性をあらためて訴えています。これからの日本経済を支える若い人にこそ読んでほしい本です。

  • 2020/03/23 Books
    アジア経済とは何か : 躍進のダイナミズムと日本の活路 / 後藤健太著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:猿渡 剛

    かつては世界市場で高いシェアを誇っていた産業において、コスト上昇に悩まされた日本企業は輸出から現地生産へと相次いで切り替えてきました。その過程で、韓国や中国、東南アジア諸国などに生産工程が分散し、これらの国で生産活動が行われるようになりました。そのうち地場企業が製品の付加価値を高め、機能の高度化を果たすようになると、ついには日本企業よりも高い競争力を有するようになりました。この一連の流れをコンパクトにまとめた一冊です。現代のアジア経済や貿易、直接投資に興味がある学生に、是非ともお薦めします。

  • 2020/03/19 Books
    芝園団地に住んでいます : 住民の半分が外国人になったとき何が起きるか / 大島隆著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:磯田 則彦

    「芝園団地に住んでいます」、この本のタイトルを見てまず思うことは、「誰が?」ということではないでしょうか。次に、サブタイトルを見て、「ああ、なるほど」と納得する方が多いかと思われます。
     芝園団地は埼玉県川口市にある大型団地で、高度経済成長期後に完成したものです。当時の住民は、都心へ通う若い日本人ばかりでした。進展する少子高齢化のもと、住民の高齢化が進むとともに、国際化、グローバル化の影響を受けて、この団地は日本を代表する外国人が多くを占める大型団地へと変貌していきます。
     あることがきっかけとなり芝園団地に住むことになった著者が見た団地の変化と、変わりゆく日本社会が本書では鋭く描写されています。著者の大島 隆さんは国際経験豊かなジャーナリストです。客観的、中立的に芝園団地が経験してきた変化を記述しているところに好感が持たれます。また、団地の変化と重ね合わせた日本社会の変化と近未来の姿には説得力があります。
     本書は、全体的にわかりやすい文章表現で書かれており、盛り込まれたトピックスも豊富で、気が付くと一気に読み進めていたというところがあります。著者(ジャーナリスト)のコミュニケーション能力、(一種の)取材能力の高さと、視点の鋭さ、行動力に改めて驚かされます。読み終えてみて、個人的には、映画化(ドラマ化)できるのではないかと思うくらいです。
     一方、著者自身が最後に述べているように、出版物としての本書のオリジナリティは、「外国人住民が増えた地域で暮らす日本人の「感情」に焦点を当て、掘り下げようと試みたことにある」と考えられます。まとめの章にあたる第6章「芝園団地から見る日本と世界」は、さすがです。学術的な内容も豊富に記載されており、ぜひ学生諸氏に読んでいただきたいと思いました。日本社会の現状と近未来を、皆さんはどのように分析しますか?

  • 2020/03/03 Books
    サピエンス全史 : 文明の構造と人類の幸福 / ユヴァル・ノア・ハラリ著 ; 柴田裕之訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:岡 陽子

    ネットであらゆる「情報」が手に入る現在、常になんでも知っている、と過信していると本当の「知性」は磨かれなくなると危惧します。「情報(information)」は、データ(DATA)以上にはなり得ません。それを「Intelligenceにするため(「知性」を磨く)」には、「情報(information)」を「知性(intelligence)」へと昇華させる必要があります。それには分析力、判断力、想像力、創造力など人間の持ち得るあらゆる能力を結集する必要があります。(日本語では両方とも「情報」と訳されてしまっていますが、実際はニュアンスが異なります。良い例がアメリカのCIA (Central Intelligence Agency)という政府機関名の訳です。日本語訳は「中央情報局」ですが実際には「information」ではなく「intelligence」という単語が使用されています。これはニュアンスとして「informationをintelligenceへと発展させるための機関」、という意味に捉えると近いのではないかと思います。)
    この3冊は、歴史、文化、政治、経済だけでなく、私たちの生活に影響を及ぼす身近な社会問題に至るまで、あらゆる分野についてその始まりから現在起きていることまでを、様々なデータ (Information)から理論的に分析し、解釈を加え、さらにそれらを俯瞰しながら今後の世界を考えようとする(Intelligence)、まさしくそれぞれ分野の違う著者が(政治学者、歴史学者、心理学者)informationをintelligenceに昇華させようと試みた大作です。その過程もよくわかる3冊。ぜひ読み比べてみてください。

    1「文明の衝突」 サミュエル・ハンチントン著 ; 鈴木主税訳
    2「サピエンス全史 : 文明の構造と人類の幸福」 ユヴァル・ノア・ハラリ著 ; 柴田裕之訳
    3「21世紀の啓蒙 : 理性、科学、ヒューマニズム、進歩」 スティーブン・ピンカー著 ; 橘明美, 坂田雪子訳

  • 2020/03/03 Books
    21世紀の啓蒙 : 理性、科学、ヒューマニズム、進歩 / スティーブン・ピンカー著 ; 橘明美, 坂田雪子訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:岡 陽子

    ネットであらゆる「情報」が手に入る現在、常になんでも知っている、と過信していると本当の「知性」は磨かれなくなると危惧します。「情報(information)」は、データ(DATA)以上にはなり得ません。それを「Intelligenceにするため(「知性」を磨く)」には、「情報(information)」を「知性(intelligence)」へと昇華させる必要があります。それには分析力、判断力、想像力、創造力など人間の持ち得るあらゆる能力を結集する必要があります。(日本語では両方とも「情報」と訳されてしまっていますが、実際はニュアンスが異なります。良い例がアメリカのCIA (Central Intelligence Agency)という政府機関名の訳です。日本語訳は「中央情報局」ですが実際には「information」ではなく「intelligence」という単語が使用されています。これはニュアンスとして「informationをintelligenceへと発展させるための機関」、という意味に捉えると近いのではないかと思います。)
    この3冊は、歴史、文化、政治、経済だけでなく、私たちの生活に影響を及ぼす身近な社会問題に至るまで、あらゆる分野についてその始まりから現在起きていることまでを、様々なデータ (Information)から理論的に分析し、解釈を加え、さらにそれらを俯瞰しながら今後の世界を考えようとする(Intelligence)、まさしくそれぞれ分野の違う著者が(政治学者、歴史学者、心理学者)informationをintelligenceに昇華させようと試みた大作です。その過程もよくわかる3冊。ぜひ読み比べてみてください。

    1「文明の衝突」 サミュエル・ハンチントン著 ; 鈴木主税訳
    2「サピエンス全史 : 文明の構造と人類の幸福」 ユヴァル・ノア・ハラリ著 ; 柴田裕之訳
    3「21世紀の啓蒙 : 理性、科学、ヒューマニズム、進歩」 スティーブン・ピンカー著 ; 橘明美, 坂田雪子訳

  • 2020/03/03 Books
    文明の衝突 / サミュエル・ハンチントン著 ; 鈴木主税訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:岡 陽子

    ネットであらゆる「情報」が手に入る現在、常になんでも知っている、と過信していると本当の「知性」は磨かれなくなると危惧します。「情報(information)」は、データ(DATA)以上にはなり得ません。それを「Intelligenceにするため(「知性」を磨く)」には、「情報(information)」を「知性(intelligence)」へと昇華させる必要があります。それには分析力、判断力、想像力、創造力など人間の持ち得るあらゆる能力を結集する必要があります。(日本語では両方とも「情報」と訳されてしまっていますが、実際はニュアンスが異なります。良い例がアメリカのCIA (Central Intelligence Agency)という政府機関名の訳です。日本語訳は「中央情報局」ですが実際には「information」ではなく「intelligence」という単語が使用されています。これはニュアンスとして「informationをintelligenceへと発展させるための機関」、という意味に捉えると近いのではないかと思います。)
    この3冊は、歴史、文化、政治、経済だけでなく、私たちの生活に影響を及ぼす身近な社会問題に至るまで、あらゆる分野についてその始まりから現在起きていることまでを、様々なデータ (Information)から理論的に分析し、解釈を加え、さらにそれらを俯瞰しながら今後の世界を考えようとする(Intelligence)、まさしくそれぞれ分野の違う著者が(政治学者、歴史学者、心理学者)informationをintelligenceに昇華させようと試みた大作です。その過程もよくわかる3冊。ぜひ読み比べてみてください。

    1「文明の衝突」 サミュエル・ハンチントン著 ; 鈴木主税訳
    2「サピエンス全史 : 文明の構造と人類の幸福」 ユヴァル・ノア・ハラリ著 ; 柴田裕之訳
    3「21世紀の啓蒙 : 理性、科学、ヒューマニズム、進歩」 スティーブン・ピンカー著 ; 橘明美, 坂田雪子訳

  • 2020/01/23 Books
    夢をかなえるゾウ / 水野敬也 [著]

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    成功法則書を読んでも人が成功しないのはなぜか?この疑問に対する1つの解答を用意したのが本書です。主人公と神様の漫才のような掛け合いで、「成功するためにはどうしたらいいか?」「そもそも成功とは?」という自己啓発書のメインテーマを説いていきます。2007年8月29日に刊行。2012年に第2弾『夢をかなえるゾウ2 ガネーシャと貧乏神』、2014年に第3弾『夢をかなえるゾウ3 ブラックガネーシャの教え』が発売されている。

  • 2020/01/23 Books
    有機化学の理論 : 学生の質問に答えるノート / 山口達明著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    有機化学を学び始めた学生さんの質問に答える形式で構成されており、有機化学の理解を深める助けになる。

  • 2020/01/23 Books
    会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ / 齊藤正明著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    マグロ船という小さな世界で、40日以上も陸に戻ることができない過酷な空間で生活する漁師たちが対人関係のストレスをためていないのは、なぜか?「ストレスをためない方法」と「ヒトとのコミュニケーション術」が紹介されている。

  • 2020/01/23 Books
    インターネットはからっぽの洞窟 / クリフォード・ストール著 ; 倉骨彰訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:藤岡 稔大

    早くからコンピュータネットワークを利用してきた著者がもつ現在のインターネットブームに対する鋭い指摘が込められている。これらの指摘には、パーソナルコンピュータやインターネットを初めて本格的に使い始めると思われる大部分の新入生に対して有益な内容を含んでいると思われる。

  • 2020/01/23 Books
    論語 / [孔子著] ; 金谷治訳注

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:西條 尚

    古代中国の大古典「四書」のひとつで、孔子とその弟子たちの言行を集録したものである。古い道徳主義のイメージをもつ人もあろうが、人間として守るべき、また、行うべき、しごく当り前のことが簡潔な言葉で記されている.正しい人間の生き方、リーダーシップ論や処世訓の理論が非常に参考になる。

  • 2020/01/08 Books
    閉じこもるインターネット : グーグル・パーソナライズ・民主主義 / イーライ・パリサー著 ; 井口耕二訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    インターネットが社会に普及し、SNSが急速に発展し始めた当初、物理的空間を越えた公共空間の新たな可能性が注目されました。しかし、あふれんばかりの情報の海の中で、実際に私たちは関心のある情報世界から外に出ることはなく、人によっては、自ら好む情報世界の中にいることすら自覚しないまま生きています。しかも、今日のインターネット社会は、AIのアルゴリズムが個々の求める情報を先読みし、同じキーワードを入力しても、各々の選好に応じた検索結果をもたらします。人々が異なる情報空間に閉じこもり、議論の共通基盤が整わない中で、私たちは果たして有意義な議論ができるでしょうか。議論は言い争いになるか、議論そのものをあきらめるかになりそうです。インターネットの発達がもたらす技術革新は、コミュニケーション手段の進歩ですが、一方で、民主主義の社会的基盤の退化を招きます。2011年に出版されたものですが、インターネット社会の根本的な問題点についての分析は、今もなお有益です。

  • 2020/01/08 Books
    ラストベルト再訪 / 金成隆一著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    本書は、2016年米大統領選挙時にトランプ氏に投票したラストベルト(製造業が衰退した地域)の労働者、新南部のキリスト教保守派、都市郊外に住む中産階級の人たちへのインタビューを通して、アメリカ社会および政党政治内部で起こっている変化を描き出しています。著者は、トランプ支持者だけでも450人もの人々にインタビューしており、本書からアメリカ人の肉声が生き生きと伝わってきます。インタビューを通して、私たちはトランプ氏支持層の根底にある思いに気づかされます。それは、色々な立場や考え方があるにせよ、職を得て働きたい、働けば生活ができる社会であること、そして、社会の一員として地域社会に貢献したいと思っていることです。一見突拍子もない言動で知られるトランプ氏ですが、既存の政治家たちが取り上げなかった問題に焦点を当て、一般の人々の本音に寄り添うことでいかに支持され続けているのかを教えてくれるのが本書です。『ルポ トランプ王国―もう一つのアメリカを行く』(岩波新書、2017年)の続編です。

  • 2020/01/08 Books
    失われた民主主義 : メンバーシップからマネージメントへ / シーダ・スコッチポル著 ; 河田潤一訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    「ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへの転換」は、農村共同体から利益共同体あるいは機能分化社会への転換として近代化における社会の変化および人間関係の変化を説明する有名なフレーズです。本書は、アメリカ合衆国内の地域社会における自発的結社の衰退とともに、現代ではそれに代わる機能を利益団体が担うようになった過程を分析しています。しかし、利益団体のような機能的な関係性だけでは、地域社会の中で自発的結社が持っていた社会関係資本(ソーシャルキャピタル)を代替することは困難です。本書は、かつての階級区分を越えた市民社会が失われた現代における民主主義の危機について警鐘を鳴らしています。

  • 2020/01/08 Books
    楽しくなければ仕事じゃない : 「今やっていること」がどんどん「好きで得意」になる働き方の教科書 / 干場弓子著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    「キャリアプラン」、「効率」、「好きなことを仕事にする」、「夢をかなえる」、「ロールモデル」、「ワークライフバランス」、「嫌われてはいけない」、「リーダーシップ」、「自己責任」、「自己成長」という言葉の数々は、私たちの日常生活あるいは仕事の中で何かしら影響を与えているのではないでしょうか。一般的に好ましいとされるポジティブな言葉ですが、正直なところ、これらが金科玉条のように掲げられる今日の風潮は、とても息苦しいと思わざるをえません。人の価値観や生活・仕事のペースはそれぞれ異なりますし、状況に合わせて目標も変わります。そうした違和感を見事に表現してくれているのが、本書です。干場さんは、先述の言葉を、働く人を惑わす10の言葉と痛快に批判します。そして、それぞれの言葉のもつ功罪の、特に、罪な部分を自らの人生経験から卒直に述べています。本書は、私たちの思考をより自由にしてくれます。確かに、就職活動や働く場では、こうした言葉が求められることもあるでしょうが、くれぐれも絶対視は禁物です。

  • 2020/01/06 Books
    單子論 / ライプニツ著 ; 河野興一譯

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

    ライプニッツはニュートンとともに、経済学部生にはお馴染みの微分法を発明した17世紀の哲学者である。彼は世の中の事物を細かく分けていけば、単子と呼ばれるこれ以上分けられないものになると考えた。単子が大きさを持たないことは微分における無限小量と似ている。単子はお互いに全く異なっているが、一つ一つの単子はそのなかに世界を映し出している。しかし、単子は自立していて、お互いに直接関係しないという意味で「窓がない」。それでも単子は予めきちんとした調和を保っている。論理的ではあるが、抽象的で無内容な議論に見えるかもしれない。だが、100年後、アダム・スミスが明確にした近代的個人として単子をイメージするなら、この本は全く異なる相貌を現すだろう。

  • 2020/01/06 Books
    格差社会 : 何が問題なのか / 橘木俊詔著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

    10年以上前の本であるが、この本によって日本中に格差社会という言葉と問題意識が広まったと言ってもいい。著者はもっと前に書いた本で、日本においてジニ係数が上昇しており、日本人の平等神話が崩れたことを指摘していた。ジニ係数というのは、完全に平等なときに0になり、格差が拡大するにつれて1に近づいていくような指標である。これに対して他の経済学者から、ジニ係数の上昇は人口構成の変化によって比較的低所得の高齢者が増えているためであるという反論が寄せられた。本書はその批判を受け入れた上で、新しい貧困問題として、高齢者と若年層の貧困、非正規雇用の拡大をあげている。学生諸君には、本書はをあらためて読み、解決どころか深刻化しているように見える、それらの問題に思いを巡らせてほしい。

  • 2020/01/06 Books
    入門数理マルクス経済学 / 山崎好裕著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

    私の18冊目の新刊本である。19世紀の社会主義の思想家カール・マルクスの経済学研究は、20世紀にその名を冠した経済学者の集団を生み出した。日本の大学でもかつては盛んに研究や教育がなされていたものである。その際、日本は数学を用いた研究で世界の潮流をリードした。本著は、その成果を、正確かつわかりやすく叙述している。特に行列と微分に関しては考え方の基礎から説明しており、学生諸君には経済数学の入門書としても役立ててもらえるだろう。数年前、トマ・ピケティが21世紀に入ってから世界的に所得格差が拡大している事実を指摘する本を書いてベストセラーとなった。本書はピケティの指摘が、マルクスによって搾取と呼ばれ、既に明言されていたことを初めて示している。

  • 2019/07/12 Books
    第三の波 / アルビン・トフラー [著] ; 鈴木健次 [ほか] 訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者 :芝口 浩智

    一昨年亡くなった未来学者Alvin Tofflerの先見性に溢れた著書「第三の波」です。今日の情報革命(第三の波)の到来とインターネット普及/情報伝達コスト低下に伴う一極集中から多様化への移行を、過去に人類の経験してきた大きな変化、農耕革命(第一の波)と産業革命(第二の波)の生まれた背景とその社会・経済への影響や世の中の変革を分析し近未来として予測しています。驚くのは発表から40年経った現在、著作中の近未来社会が情報化社会として現実のものとなり、未だその只中にあるということです。温故知新の実例といえ文系理系問わず今でも示唆に富む内容です。

  • 2019/06/26 Books
    民間防衛 : 日本版 / 濱口和久, 江崎道朗, 坂東忠信著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者 : 志村 英生

    永世中立国であるスイスでは、強力な軍隊と徴兵制による国民をあげての防衛体制を築いており、これが中立を守ってきた。決して平和を唱えることで永世中立になっているわけではない。スイスは国民に対しての防衛手引き書として民間防衛という本を配って有事に備えている。日本では平和憲法9条によって平和が保たれているなどという戯言を信じている国民が多いが、それに対する日本人のための民間防衛の手引き書である。
    内容は第1章 テロスパイ工作、第2章戦争、第3章自然災害、第4章移民侵略、第5章インテリジェンスと、現実的な日本への脅威を現実に即して説明して分かりやすいものとなっている。内容は現代物なので、すでに工作を受けている日本人の目を覚ます内容が多数あり、今を理解する上で役にたとう。家庭や学校において皆で読んでみるのが、強くて平和な国を維持するのに役立つだろう。

  • 2019/06/26 Books
    Learn better : 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ / アーリック・ボーザー著 ; 月谷真紀訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 安元 佐和

    インターネットから簡単に知識や情報を得ることが出来るようになった現代に、深い学びを得るための学習方法を修得することは、「究極のサバイバルツール」となる。そして知識の習得とは、頭の中で何かと何かを結ぶリンクを作る作業であり、ある事実や概念についての考え方を変化させ、思考の体系を学ぶことにある。学習する上で、間違いや苦労は、避けられない一部でありその事に備えておく必要がある。
    大学における成人学習とは何かを理解するのに適した著書です。

  • 2019/06/26 Books
    直感と論理をつなぐ思考法 : Vision driven / 佐宗邦威著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 安元 佐和

    ネット時代に生きる我々現代人は「他人モード」になりがちな思考から離れにくい状況にあります。著者は「直感と論理をつなぐ思考法 Vision Driven」を鍛える具体的な練習方法を紹介し、アナロジー思考、あえて手を使って考え表現することの反復、表現の余白など、「妄想」からスタートして世界を変えることできる可能性を述べています。

  • 2019/06/26 Books
    日本のIT産業が中国に盗まれている / 深田萌絵著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者 : 志村英生

    ファーウェイ(HUAWEI)の問題でアメリカと中国が貿易戦争を始めている。8年も前から著者はファーウェイの危険性を訴えてきたらしい。また、中央集権国家の中国はアメリカの世界戦略を打ち倒すために一番重要な情報の分野を制覇しようとしてきたらしい。筆者の会社も何度もいろいろな妨害にあったという。舞台は台湾というのも面白い。日本と台湾と中国の電脳機器の開発争いを通して今を理解するのに必読の本とおもう。

  • 2019/06/26 Books
    理想はいつだって煌めいて、敗北はどこか懐かしい : 100歳の台湾人革命家・史明自伝 / 史明著 ; 田中淳構成

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名 : 志村 英生 

    100歳を超す台湾革命家「史明」の波乱に満ちた自伝だが、本当かなと思うくらいの波瀾万丈の人生。大東亜戦争の頃から現在まで日中台を舞台にした活動を語っているが、日本統治の頃の台湾に生まれ、日本の早稲田大学に留学して、そこで中国共産党のスパイから誘われて反日闘争をするために中国に渡る。日本の敗戦後も中国で国民党との内戦でスパイとして活躍した。その共産党の理想と現実の余りの違いに幻滅して故郷台湾へ戻るが、蒋介石の独裁に対抗して暗殺を計画。
    発覚して戦後の日本へ亡命、日本で中華料理店を開業していたが、台湾の民進党の台湾独立活動を支援するためまた台湾へ戻り、現在の蔡英文の政権を支えている。それぞれも面白いが、その当時の思想や実態をいろいろ語っており、ドラマみたいに面白い。今、台湾は中国に軍事侵攻も辞さないと脅されており、日本の重要性が増している。いろいろな考えを整理するにも有用な本である。

  • 2019/05/15 Books
    脳が壊れた / 鈴木大介著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:青木 光希子

    少なくとも医療にかかわる人はみんな読んだ方が良いと思います。気づきが本当に多い本でした。
    言葉のプロが文字通り死ぬ気で言語化してくれたリアルな世界。鈴木さん、ありがとうございます。
    健康第一に、医師として自分にやれる精一杯の仕事を、感謝をもってやり、自分の理解できない言動をとる人への見方を変えようと思います。

  • 2019/05/15 Books
    死すべき定め : 死にゆく人に何ができるか / アトゥール・ガワンデ [著] ; 原井宏明訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:青木 光希子

    外科の先生からおすすめされて読みました。
    「死はいつもそこにあることを最も認識していなければならないからこそ、死にゆく人に私達は何ができるのか。」「私はどんな死の瞬間を迎えたいのか。」
    中堅以上の医師にも読むことを薦めたい一冊です。

  • 2019/04/11 Books
    稀少資源のポリティクス : タイ農村にみる開発と環境のはざま / 佐藤仁著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:林 裕

    「森林保全」「地球環境保護」という掛け声の陰で、「豊かな森に暮らす貧しい人々」を作り出す動態を見事に切り出す刺激的な一冊です。

  • 2019/04/02 Books
    湯川秀樹 : 旅人 : ある物理学者の回想 / 湯川秀樹著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:宮原 慎

    日本人として初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹先生が自身の前半生について綴った回想録。物理学の世界に進み、中間子論に至るまでの日々について、美しい文章で記されている。自身の思い出を振り返り、その歩いて来た道を、優しく客観的な文章で語っており、読後に爽やかな心地良さを与えてくれる良書である。当時の京都の街の描写もすばらしい。

  • 2019/04/02 Books
    絵とは何か / 坂崎乙郎著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:落合 桃子

    美術に関するエッセイ集で、筆者も「あとがき」に書いているように、ぜひ若い皆さんに読んでいただきたい本です。坂崎乙郎(1927―1985)は早稲田大学政経学部教授であった西洋美術史研究者で、美術評論家として多くの著作を残しています。
    本書には講演などに基づく6つのエッセイが収められていますが、白眉はやはり本のタイトルにもなっている「絵とは何か」でしょう。絵とは「想像力」であり、「個性」であり、「感覚」である、と筆者は言います。本当の絵描きとは、現実世界の外側に、自分の一つの世界、すなわち想像力の世界を築くことができる人のこと。ゴッホは、周囲との関係においては不幸であったかもしれないけれど、想像力の発露としての絵を残した幸せな画家でした。人間の短い一生を、感覚を大事にしながら、想像力のために使うことができたら、こんな幸せな生き方はない、と書いています。
    本書は1976年に刊行されたやや古い本ですが、2012年より河出文庫(新装版)として出版されています。本書のメッセージは今なおアクチュアルなものとして、若い人たちの心に響いてくるはずです。

  • 2019/04/02 Books
    ギリシア・ローマ神話 / ブルフィンチ作 ; 野上弥生子訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名: 堺 雅志

    「ムーサたちはゼウスとムネモシュネ(記憶の女神)の娘でありました。彼らは歌謡をつかさどり、また記憶を励ましました。九人の女神の群で、その一人一人が文学、美術、または科学というふうに、部門を分けてつかさどっていました。」(野上弥生子訳)ムーサは英語式に言えばミューズで,彼女らのいるところが博物館,美術館(ミュージアム)の語源です。
    山びこやこだまを意味するエコーもギリシア神話の女神の一人で,身勝手な青年ナルキッソスとのかなしい物語のヒロインでもあります。ちなみにナルキッソスは,自己愛を花ことばとする水仙の語源となっています。
    ヨーロッパ各国のことばに今なお保存されている古代ギリシア,ローマの人びとの思考の源泉を,『ギリシア・ローマ神話』に訪ねてみませんか。

  • 2019/03/29 Books
    「物理・化学」の単位・記号がまとめてわかる事典 / 齋藤勝裕著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名: 松隈 洋介

    物理や化学に出てくる単位を理解することは工学を学ぶ人にとって、一番重要なことですが、意外とよく分かっていないことが多くないですか?。本書は、イラストなどをふんだんに使って、単位の意味とどのような時に使うかを分かりやすく解説しています。「事典」となっていますが、分かりやすい読み物として最初から読み進めても面白いです。
    また、この他に、「「数学」の公式・定理・決まりごとがまとめてわかる事典」と「「物理・化学」の法則・原理・公式がまとめてわかる事典」も図書館にあります。

  • 2019/03/29 Books
    分子図鑑 : 世界で一番美しい / セオドア・グレイ著 ; 武井摩利訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名: 林田 修

    セオドア・グレイによる「世界で一番美しい元素図鑑」の続編です。前作では科学とアートの融合による元素の世界に驚愕しましたが、今作も圧倒的なビジュアルとユーモア溢れる語り口で、分子の世界をわかりやすく解説しています。私たちが普段の生活で目にする身の回りの物質の多くは分子からできています。分子の構造式や美しいグラッフィクスが印象的でわかりやすく、身の回りの物質について分子の観点から楽しく学べます。

  • 2019/03/29 Books
    直感を裏切る数学 : 「思い込み」にだまされない数学的思考法 / 神永正博著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名: 西田 貴司

    日常生活やニュースでいろんな数字の情報が入ってきます。
    例えば、平均寿命や平均所得、交通渋滞の距離などで広く社会の状況を知ったり、もっと身近には平均点とか入試倍率とか言われて不安になったりしますね。でも、それは正確に状況の把握ができているのでしょうか?もしかしたら誤解や見落としがあるのでは?そんな例を教えてくれるのがこの本です。
    小話形式で統計、確率などの20テーマで読みやすく解説されています。例えば、レジの数を1つ増やすだけで待ち行列が消えてしまう話、23人いれば同じ誕生日の人がいる確率が50%もある話、モンティ・ホール問題というゲームで起こりがちな錯覚の話、などです。
    1話1話が短く数式も必要最小限なので空いた時間などに気軽に読んでいける書籍です。電子ブック(Maruzen eBook Library)もありますのでご活用ください。

  • 2019/03/27 Books
    ホモ・デウス : テクノロジーとサピエンスの未来 / ユヴァル・ノア・ハラリ著 ; 柴田裕之訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名: 磯田 則彦

    本書は、世界的なベストセラーとなった『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』に続くもの。「デウス」とは「神」を意味し、近未来に出現する可能性のある存在である。AI(人工知能)の登場とそれが人間の知能を超えようとしている今世紀前半、実に興味深い内容となっている。
    イスラエルの歴史学者である著者は、本書の中で近未来の予言をしているわけではなく、どのような可能性を有しているのかのいわば選択肢を提示している。現代社会においては、数年後を予測することは可能であるかもしれないが、数十年後、100年後を予測することは不可能である。皆さんは、本書から何を学び、未来をどのように予測しますか?

  • 2019/03/27 Books
    「社会調査」のウソ : リサーチ・リテラシーのすすめ / 谷岡一郎著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名: 實原 隆志

    「社会調査」は世界中で行われており、皆さんもいろいろな調査結果を耳にしたことがあると思います。この本ではそうした調査の方法や調査結果の分析のあり方を、具体的な調査とその分析に対する歯切れのよい批判も行うことを通じて論じています。やや古い図書ではありますが、政府の統計が問題となっている昨今において読む価値のある図書だと思います。また、データの分析手法を知ることで、野球やサッカーのような、スポーツの戦術的なデータ分析の場面でも役立つと思います。

  • 2019/03/27 Books
    荒れ野の40年 : ヴァイツゼッカー大統領演説全文 : 1985年5月8日 / ヴァイツゼッカー [述] ; 永井清彦 [訳]

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名: 實原 隆志

    ドイツの戦後40周年という節目に、ドイツの過去を振り返る演説です。この演説ではドイツの「過去」に触れることで、敗戦前後の市民の苦難、ドイツが諸外国に対して行ったこと、ドイツ政府がドイツ国内で行ったこと、そしてそれらの責任の所在(責任者)、を改めて思い起こそうとしているように思えます。日本で戦争、ないしは原爆投下のことが語られる際には、それによって大変な目に遭ったという話で終わってしまうことも少なくないことを考えると、文体・訳語の美しさも含めて、この本で示されているドイツ流の第二次世界大戦の振り返り方に、ぜひ触れてほしいと思います。

  • 2019/03/26 Books
    学生に与う / 河合榮治郎著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名: 野中 雄太

    戦闘的自由主義者と称される著者が学生に対し、学問や人生について語りかける名著。1940年発刊当時、左右の全体主義が猖獗する中で学問・言論の自由のために真っ向から戦いを挑み、遂には大学を追放される状況下で書き下ろされた。目次を見れば分かるように、学問や教育論のみでなく、親子関係、師弟関係、友情、恋愛などの人生観についても語られており、現代においても通用する内容になっている。テーマごとに計27節より成っており、興味あるテーマから読むことも出来、読みやすい本だと言える。学生生活を如何に送るかを考えるには最適の一冊と言えよう。

  • 2019/03/26 Books
    図解モチベーション大百科 / 池田貴将編著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名: 長江 信和

    「自分はなぜ大学に行くのか」と考える人と,「大学で何ができるのか」と考える人を比べた場合,どちらの方が学生生活を充実させることができるでしょうか。少なくとも何らかの行動を期待するのであれば,物事の理由よりも,具体的な手続きについて考える方が効果的と言われています。この本は,心理学の興味深い実験やその応用例を一般向けに紹介したものです。自分自身や周囲との関係を変えるきっかけが得られるかもしれません。

  • 2019/03/26 Books
    図説台湾の歴史 / 周婉窈著 ; 石川豪, 中西美貴, 中村平訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名: 野中 雄太

    近年海外旅行先として注目されている台湾。実際に親日的で、距離も日本から近くはじめての海外旅行としておすすめの国である。その際、より実りのある旅行にするためには台湾の歴史や社会背景を知ることが重要だろう。本書は台湾の歴史について簡単かつ詳細に描かれており、初学者にも読みやすい内容となっている。他国を知ることは異文化理解にも繋がり、また他国を知ることで自国についても客観的な視点を得られる。ぜひ読んでもらいたい一冊である。

  • 2019/03/26 Books
    やり抜く力 : 人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける / アンジェラ・ダックワース著 ; 神崎朗子訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名: 渡邉 孝士郎

    著者のアンジェラ・ダックワース氏は、米国内では「天才賞」とも称されるマッカーサー賞を4年前に受賞したペンシルベニア大学心理学教授である。彼女がその研究成果をまとめた『GRIT』。GRIT(グリット)は、Guts(度胸)、Resilience(復元力)、Initiative(自発性)、Tenacity(執念)の4つの要素からなり、「やり抜く力」を意味する。 才能がある人、知性がある人=GRITに関係がないということを研究結果をもとに、ビジネス界、スポーツ界、起業家、学者など様々な分野の成功事例を挙げて述べている。
    特に印象深かったのは、米国空軍の「ビースト」という過酷な訓練やアメリカ陸軍特殊部隊「グリーンベレー」のブートキャンプにおいて実施された共同研究の内容で、GRIT(やり抜く力)の数値が高いものが最終的に試験をクリアし、士官候補生となっていること。また、「ザ・ニューヨーカー」に2000回も作品を持ち込んではボツにされ、その後採用されたボブ・マンコフという漫画家が「漫画も人生もそうだけど、9割がたはうまく行かないからね」というアドバイスから、全力の1回よりも、何度もトライすることの重要性を知ることができた。その他にもアメリカ女子サッカー史上最多勝コーチの事例や、全米大学バスケットボール選手権で10回制覇の記録を打ち立てた伝説のバスケットボールコーチの目標設定の手法など参考になる部分も大いにある内容だ。
    当たり前のことを長期的に継続する能力の重要性。努力の価値なんて誰でも分かっている……と斜めに構えている人こそ、読んでみて欲しい本だと思う。

  • 2019/03/26 Books
    モチベーション3.0 : 持続する「やる気!(ドライブ!)」をいかに引き出すか / ダニエル・ピンク著 ; 大前研一訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名: 田方 慎哉

    「報酬には本来、焦点を狭める性質が備わっている。解決への道筋がはっきりしている場合には、この性質は役立つ。前方を見すえ、全速力で走るには有効だろう。だが、“交換条件つき”の動機づけは、ロウソク問題のように発想が問われる課題には、全く向いていない(本文より)。」
    モチベーションとは、人が行動を起こすときの原因、すなわち動機を意味しています。大学生になると、自ら選択して行動する機会が増えていく一方で、「何をしていいのかわからない」「何がしたいのか分からない」という状況に陥ることもあると思います。この本には、モチベーションのタイプを説明するとともに、いかに持続させていくかのヒントが詰まっています。

  • 2019/03/26 Books
    組織にいながら、自由に働く。 : 仕事の不安が「夢中」に変わる「加減乗除の法則」 / 仲山進也著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名: 伊賀 崇人

    働き方に悩んでいたり、今の仕事に不安がある人に読んでほしい一冊!!
    筆者の楽天株式会社楽天大学学長の仲山さんは、楽天株式会社の社員でありながら、「兼業自由、勤怠自由、仕事内容自由」という契約を手に入れ、自分の会社を経営したり、サッカーチームとプロ契約したり、自由すぎる働き方を提唱する第一人者です。
    仕事について4段階で進化を遂げる『加減乗除の法則』という独自の法則を提案し、段階ごとの仕事の内容や働き方を分かり易く紹介しています。
    やりたい仕事や自分の能力にあった仕事など、どのように仕事に就きたいか、また、仕事をしている中で今、自分がどの段階にいるかなど、自分の働き方を示してくれる一冊です。是非、手に取ってみてください!仕事への理解が深まり、見る見るうちに働き方が変わってきますよ!

  • 2019/03/22 Books
    A course in minimal surfaces / Tobias Holck Colding, William P. Minicozzi II

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名: 成瀬 慶明

    著者のT. Coldling氏とW. Minicozzi氏は、MITの教授で、数学の世界で偉い業績を挙げられた方々です。本書は英文で書かれた本ですが、ものすごく分かりやすいものです。本書では、極小曲面、第1変分公式と第2変分公式、Bochner技法及び最大値原理について詳細に書かれています。大学4年次生から大学院生までの幅広い学生が、興味を持って面白く読めるような内容となっています。卒業論文または修士論文の研究テーマを探している4年生または大学院生に一助になると思われます。ぜひとも一度読んでおくことを薦めます。

  • 2019/03/22 Books
    暗号通貨vs.国家 : ビットコインは終わらない / 坂井豊貴著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名: 森田 薫夫

    最近「第三者を介さない人から人への直接的な財・サービスの移転(peer-to-peer、以下P2P)」が注目されています。暗号通貨は銀行などの金融仲介機関を介さない消費者・生産者間の決算サービスと見なされることから、P2Pの一例とされています。そして、ビットコインは暗号通貨の管理主体の一つです。本書はそんな暗号通貨がどのように理解されるのかについて、適切な先行文献を挙げつつ議論しています。今後P2Pは私たちの生活にとってより身近なものになると考えられます。実際に国内外では自動車輸送サービスや宿泊サービスなどに関するP2Pが行なわれています。本書は暗号通貨を事例としたP2Pの入門書としても優れていると思います。

  • 2019/03/22 Books
    面接官の心を操れ!無敵の就職心理戦略 / DaiGo著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名: 遠藤 正浩

    彩り鮮やかな人生を実現するために働くことは不可欠です。だからこそ、すべての学生にとって就活と仕事選びは人生最大の課題でしょう。この本は一見軽いハウツー本に思われがちですが、私が就職の世話をしていて学生に伝えたかった本音の内容が満載です。他の就職攻略本とは一線を画するもので、簡単に読めるのに、読後にやるべきことがはっきり見えてきて勇気も湧いてきます。機械工学科の就職資料室にもおいてあります。

  • 2019/03/13 Books
    翻訳語成立事情 / 柳父章著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名: 林 信蔵

    現代を生きる我々にとってありふれたものである「社会」「個人」「近代」という言葉が、実は西洋の思想や制度を日本に紹介するために、幕末から明治にかけて作られた造語であった。大学における勉強の一つの目的は、当たり前だと思われていたことに批評的な眼差しを向ける態度を身につけることにある。この著作は、翻訳論に関する古典的著作であるというだけでなく、常識によって見えにくくなっているものに目を向ける態度の優れた実践例の一つであると言えるだろう。

  • 2019/03/13 Books
    アクティブラーニング型授業の基本形と生徒の身体性 / 溝上慎一著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名: 大江 賢治

    福岡大学でアクティブラーニングを耳にしたことのない人はいないでしょう。しかし、それが何なのか、どうやって参加・実践していけばよいのか、わからない人も少なくない。ぜひ一読してみよう。

  • 2019/03/13 Books
    創薬が危ない : 早く・安く・安全な薬を届けるドラッグ・リポジショニングのすすめ / 水島徹著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名: 大江 賢治

    一つの薬の開発に何年もかかり、費用も莫大である。ある疾患に効果のある薬が実は別の疾患にも効く。ドラッグ・リポジショニングである。創薬に興味のある学生さん、ぜひ一読を。

  • 2019/03/13 Books
    大学生活を楽しむ護心術 : 初年次教育ガイドブック / 宇田光著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名: 大江 賢治

    大学に入学すると、まず居場所がなく、高校までの受け身の教育との違いに驚かされ、適応できない学生も…。まず、大学生活を乗り切りたい。いろいろ基本的な考え方を学びましょう。悪徳商法などから身を守りましょう。

  • 2019/03/13 Books
    健康長寿のための食生活 : 腸内細菌と機能性食品 / 光岡知足著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名: 大江 賢治

    日本は超高齢社会を迎えて久しいが、健康長寿のためのノウハウなど、アジア各国のお手本となるよう、リードしていかないといけない。誰しも、死を迎えなければならないが、寝たきりは避けたい。高齢になってからでは遅いので、若い頃から規則正しい食生活を心掛けたいものだ。ぜひ、一読を。親にいただいた体を粗末にしていませんか?

  • 2019/03/13 Books
    史記 / 司馬遷著 ; 小竹文夫, 小竹武夫訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名: 米田 清

     司馬遼太郎という作家を知っていますか?その作品が好きな人には史記はおもしろいはずです。「司馬遼太郎」の意味は「司馬遷には遠く及ばない日本人」なのだそうで。
     高校の世界史には史記が紀元前に書かれたことが出てきます。漢文にも四面楚歌とか鶏鳴狗盗あたりが載っています。史記の前半は本紀、書、表、世家という区分からなり、後半は列伝という区分で個人の伝記集です。私はそれが2冊に分かれた本を持っていたのですけど、前半をなくしてしまい、今は後半の列伝編しかありません。列伝の方が前半よりおもしろいので、なくさないように気をつけたからです。
     列伝の最後が太史公自序で、司馬遷の自伝です。史記を著すに至った、やむにやまれぬ心情と、全体構成の説明があります。まずそこを読んで、おもしろそうなのはどこか、あたりをつけてください。そして拾い読みします。細かくまとまっているので、部分ごとに独立して読めます。
     たとえばベンチャー起業論の活動をしている人なら、貨殖列伝なんかどうでしょう。富豪が何のために、どんな手段で財をなし、どう生きたか。あるいは、経済政策やその思想に興味があれば平準書とか。地図と年表を見ながら読むと、わかりやすいです。
     列伝を読むと「いろいろな人生があり、選ぶのは勝手次第だ」という気分になれます。私は高校生のとき老子韓非子列伝を読んで、めんどうな人間関係をどうかしてやりすごしたい、と思いました。そのために考えた方策が人生設計になりました。
     史記には日本語訳がいくつかあります。小竹(おだけ)兄弟の訳は漢文の雰囲気を保っています。

  • 2019/03/13 Books
    まわしよみ新聞をつくろう! / 陸奥賢著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名: 大江 賢治

    九州人は、とかくコミュニケーションが下手である。まわしよみ新聞は、究極だが、とりあえず、同級生と会ったら、「昨日の新聞(Yahoo ニュース)見た?」と何か一つでいいから、コミュニケーションのネタを作っておけば、いつか必ず役に立つでしょう。

  • 2019/03/05 Books
    フランス現代史 / 小田中直樹著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名: 南 直樹

    第二次大戦後から現代フランスまでの変遷をやさしく教えてくれる本。

  • 2019/03/05 Books
    Factfulness : 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 / ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング, アンナ・ロスリング・ロンランド著 ; 上杉周作, 関美和訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名: 鈴木 慎也

    「現在,低所得国に暮らす女子の何割が,初等教育を修了するでしょう?」「A: 20%, B: 40%, C: 60%」例えばこのような問題にあなたは正解を出せるでしょうか?私は不正解でした。(笑) この本は,「10の思い込みを乗り越え,データをもとに世界を正しく見る習慣」をつけるための必読書で,是非ともおすすめしたいものです。やや種明かしになるかも知れませんが,「おわりに」の部分から読み始めてもよいかも知れません。涙なしには語れない感動の一冊でもあります。

  • 2019/02/25 Books
    統計でウソをつく法 : 数式を使わない統計学入門 / ダレル・ハフ著 ; 高木秀玄訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:和田 剛明

    統計データを読み解く・統計分析を行う際に注意すべき点が、分かり易く解説されています。紹介されている事例が海外のかなり古いものですが、タイトルどおり数式を使わずに説明する工夫がされているので、数学が苦手でも読みやすい本だと思います。

  • 2019/02/25 Books
    通信の世紀 : 情報技術と国家戦略の一五〇年史 / 大野哲弥著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:大橋 正良

    本書は明治以降の歴史の中で、これまでは技術としてのみ語られてきた通信を、外交、政治、経済との関わりで捉えた良書である。通信は目に見えない部分が多いため、なかなかこういった視点では語られてこなかったが、実際には列強諸国による支配拡大、利権確保のための重要な道具(invisible weapon)として利用され続けてきた訳で、まさに武器なき戦争であったといっても過言ではない。
    最近トランプが中国ファーウェイの機器使用を禁じようとしているが、この本を読むとこのような話は何も今に始まったことではなく、150年に亘って絶えず繰り広げられてきたことが良く理解できる。

  • 2019/02/25 Books
    経済学における諸定義 / マルサス著 ; 玉野井芳郎訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

    マルサスは、人口は等比級数的に増加するのに食糧は等差級数的にしか増加しないので、人類の歴史は定期的な戦争や疫病による人口減に見舞われるという『人口論』のテーゼを掲げ、若くしてヨーロッパの思想界に電撃的なデビューを果たした。本書は、その後、親友でライバルのリカードウとともに古典派経済学の体系を作り上げたマルサスの晩年、油ののりきった時期の著作である。書名の通り、経済学の用語を短い文章を箇条書きにして解説しているのだが、その含蓄は見た目以上に深い。たとえば、マルサスは本書で需要の「範囲」と「強度」を区別しているが、前者は需要量を、後者は需要の原因である限界効用を指していると解釈され、この意味でマルサスは右下がりの需要曲線の発見者である、という理解は、昨年私が学会で発表した新説である。

  • 2019/02/25 Books
    紙つなげ!彼らが本の紙を造っている : 再生・日本製紙石巻工場 / 佐々涼子著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:石川 友佳子

    『日本製紙石巻工場は、家族や知人、同僚たちを亡くし、家や思い出を流された従業員たちが、意地で立ち上げた工場だ。
    だが、読者は誰が紙を作っているかを知らない。』
    日本製紙石巻工場を舞台に丁寧な取材を行ったノンフィクション。石巻工場は、東日本大震災により壊滅的被害を受けながら、わずか1年で復興を遂げた。
    震災時の人々の行動、そして紙を作る彼らのプロ意識に感動します。また、何気なく手に取る文庫や教科書の紙に、ものすごい技術や工夫が詰まっていること驚きました。

  • 2019/02/25 Books
    経済数学の直観的方法 / 長沼伸一郎著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

    経済学部に入学してから、経済学がかなり高度な数学を使用することに驚いた人も多いだろう。経済学は近代以降理論物理学をお手本にして発達してきた。本書で取り上げている現代マクロ経済学は、微分を使って物体の運動やエネルギーの保存を分析する解析力学に対応するように作られている。それに確率的な変動を加えているところが物理学との違いである。確率と言えば、幾何ブラウン運動を使って金融派生商品の一つであるオプションの価格を求めるブラック=ショールズ式は、経済数学の難しさの象徴としてよく取り上げられ、本書でも扱われている。そうした経済数学の初学者には本書は勧められない。著者は理系出身のライターであり、経済学については素人であるからである。

  • 2019/02/25 Books
    カール・マルクス : 「資本主義」と闘った社会思想家 / 佐々木隆治著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

    カール・マルクスは20世紀の社会主義革命の源泉となり、旧ソ連、中国、北朝鮮は全てその思想の決定的な影響下で建国された。また、日本では学生運動のなかでその著作がよく読まれた。マルクスの研究者としてはたいへん若い世代である著者は、こうした歴史的背景とは無縁にマルクスの思想の真実に迫ろうとしており、好感が持てるだけでなく、読みやすく平明な紹介がされている。マルクスは人類の歴史を考えるとき、資本主義などの歴史の「形態」と、背後にある自然や人間の生活という歴史の「素材」を明瞭に区別していた。これまでマルクスが「形態」に重点を置いたとされてきたのは間違いで、マルクスは徹底して「素材」の思想家であったという指摘は新鮮である。著者はそこからエコロジーやジェンダーという現代的な問題への示唆を引き出している。

  • 2019/02/25 Books
    虚妄の成果主義 : 日本型年功制復活のススメ / 高橋伸夫著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:和田 剛明

    タイトルは過激ですが、単純な成果主義批判、年功制賛美の本ではありません。本書の主張は、「会社の業績が悪い→コストカットをしたい→成果を出せない社員のせいにして給料を下げる」という“成果主義の悪用”は止めよう。やる気がある社員にやりがいのある仕事を与え、会社が社員を育てる。そして、勤続年数が長い=育った社員が会社を支えるシステムとして、年功制が機能しうるといったものです。経営学、組織論、ワークモチベーションといった領域に興味がある学生にお薦めです。

  • 2019/02/09 Books
    ドキュメント戦争広告代理店 : 情報操作とボスニア紛争 / 高木徹著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:下田 大介

    ボスニア紛争を題材とするドキュメンタリー番組をディレクター自ら書籍化した本。国際世論を操作するPRのプロの手腕には脱帽しつつも、戦争とは、決して前線に立つことのないリーダーのわがままに、人々が知らず知らずのうちに付き合わされているにすぎないということに気づかされた。監視すべきは、敵対する隣国や隣人というより、自分んトコのリーダーの言動なのではないか。熱狂の中でも冷静でいられる(唆されたり、騙されたりしない)ように、現実をもっと知らなければと駆り立てられる。表層的で単純な構図ほど要注意! 丹念に調べて、自ら考え抜くことが大事! それは、どんな学問に取り組むときにも必要な姿勢。日々の学習の意義を見失いつつある学生にこそ、オススメの一冊。

  • 2019/01/31 Books
    「シェア」の思想 : または愛と制度と空間の関係 / 門脇耕三 [ほか] 執筆

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:四ケ所 高志

    21世紀のマーケット・トレンドは「シェア」であるとも言われていて、モノや情報,空間など、あらゆる事柄を「シェア」する力が今の社会を動かしつつあります。そして私たちの中にある「シェア」する感覚は,人と人の関わり方(愛)や,社会をコントロールするための仕組み(制度)、制度が現実化することで現れる建築や都市(空間)にも変化を与えるでしょう。本書は、今まさに起こりつつある社会の変化に対して、どのような建築,都市をデザインするべきかを、若い建築家たちが議論しあい、問いかけるものです。

  • 2019/01/15 Books
    プリンシプルのない日本 / 白洲次郎著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:井上 修

    プリンシパル(原則)は、物事の本質ともいえます。どんな時代でも変わらない原理原則を身に付けることが、これからの時代を生き抜くカギとなるでしょう。

  • 2019/01/15 Books
    国家と教養 / 藤原正彦著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:井上 修

    私たちが知っておくべき「常識」がたくさんつまっています。是非、教養の大事さ及び本を読むことの重要性を学んでください。

  • 2019/01/10 Books
    算数の先生 / 国元東九郎著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:田中 尚人

    むか~しの算数の本です。ただし、「教科書」ではなくて、当時の授業の様子や、先生と生徒のやり取りを通じて、読み物ふうに書かれています。現在、ほとんど数学と触れ合うことのなくなってしまった、文系のみなさんに、是非とも手に取ってもらいたい本です。この本には、あっちこっちに、日常生活で「あるある」な、具体的な問題が出てきます。先生が出した問題を、生徒たちが生き生きと取り組む様子が描かれています。最初から最後まで、隈なく読もう、なんて思わないで、気に入ったところを読んでみて、面白そうだな、と思った(問い)を、自力で解けるかどうか、挑戦してみてください。紙と鉛筆を用意して、書きながら考えてみてください。試験ではないので、時間なんか、気にすることはありません。どうしても行き詰まったら、視点を変えて、問題をながめてみてください。このように「ちょっと、物事の見方を変えてみる」ということは、日常生活でも、とても大切なことです。試行錯誤しながら、「あっ」と思って計算してみて、ついには問題が解けた時の、うれしさ、爽快感は格別です。ちょっと読んでは、紙に書いて考えてみる、という、本の読み方も、なかなかいいものですよ!

  • 2019/01/10 Books
    移民の日本回帰運動 / 前山隆著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:福嶋 寛之

    第二次世界大戦における日本の敗戦をむしろ日本の大勝利と信じ、敗北と認識した日本人同胞の殺害にまで至る、いわゆるブラジル日本人移民の「カチ組」に関する精神史的考察。現在からみれば日本大勝利など荒唐無稽なデマでしかないが、彼らにとってそれは生きるためにどうしても必要な真実だった。なぜそのようなものが必要とされたのか、彼らのおかれた精神的・社会的状況から深く迫った名著。「人は見ようとするものを見、聴こうとするものを聴く。(略)これは人間一般の本質であり、狂気などではない。」(219p)は至言。あわせて、8月15日で全てが終わったわけではないことも教えてくれる。

  • 2018/12/26 Books
    神話の力 / ジョーゼフ・キャンベル, ビル・モイヤーズ著 ; 飛田茂雄訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    何かを分析・考察するとき、比較という視点はとても有意義です。比較することで、相違点を通して分析対象の独自性が浮かび上がることもありますし、一方で共通点から普遍的な問題に気づくこともあります。今回お薦めの本は、比較神話学の世界的な権威、故ジョージ・キャンベルとジャーナリストであるビル・モイヤーズの対談集です。本書を読んで、単なる物語とみていた神話に対する見方が一変しました。世界各地の神話のエピソードやシンボルを縦横無尽に物語るキャンベルは、「神話は人間生活の精神的な可能性を探るかぎ」と捉えています。しかも、自分たちの神話ではなく他の神話を読むことで、神話がもつメッセージを受けやすくなるともいいます。様々な神話のエピソードやシンボルに対するキャンベルの解説にふれると、神話が私たちの体験を内面的にかつ社会的に意味づける社会的機能を果たしていることに気づかされ、とても興味深いです。

  • 2018/12/26 Books
    アメリカ大統領制の現在 : 権限の弱さをどう乗り越えるか / 待鳥聡史著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    アメリカ大統領制のイメージは、大統領権限が強く、行政首長である大統領がリーダーシップを発揮しやすい政治制度というものではないでしょうか。一方で、アメリカ合衆国憲法からは、アメリカの政治制度は、立法、行政、司法の三権力の抑制と均衡が最も徹底している制度であるともいわれています。この二つの文章は矛盾しないでしょうか。本来の憲法規定では権限が弱い大統領がいかにリーダーシップを発揮しうるのか、という著者の疑問を通して、制度と政治の関係について根本的な視点から考えさせられる良書です。

  • 2018/12/19 Books
    地球をめぐる風 : 私の気象物語 / 廣田勇著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:西 憲敬

    やや古い本ですが、気象学のみならず科学の考え方についてわかりやすく、しかも斬新な視点で書かれています。各章はわかりやすいお話が続くのですが、ひとつの章を読むたびに新しいことがひとつ身についていくような感じがします。もちろん気象の入門書として読んでも興味深いです。

  • 2018/05/16 Books
    君の膵臓をたべたい / 住野よる著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:大島 裕司

    なかなかギョッとするタイトルであるが、心がきゅんとする恋愛小説である。主人公である「僕」が病院で同級生の山内桜良が書いた「共病文庫」というタイトルの日記を偶然、拾ったことから物語が始まる。彼女は不治の膵臓の病に犯されており、その秘密を共有することとなる。彼女の死ぬ前までにやりたい事に付き合うことにより、お互い成長していく話である。2人で旅行する場面があり、福岡が取り上げられている。太宰府天満宮やヒルトンシーホークなどがでてくる。読み進めていくに従い、涙無くして読み終わらない小説である。

  • 2018/05/16 Books
    神経インパルス物語 : ガルヴァーニの火花からイオンチャネルの分子構造まで / Alan J. McComas著 ; 酒井正樹, 高畑雅一訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:上原 明

    若き医学生に是非読んでもらいたい啓蒙本ともいうべき図書を推薦します。
    生理学講義の核をなす神経生理学の黄金期を作った錚々たる学者たちの仕事を見事に追想した科学歴史本であり、素晴らしい感動が得られるはずです。

  • 2018/05/16 Books
    20代にしておきたい17のこと / 本田健著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:上原 明

    若き医学生に是非読んでもらいたい啓蒙本ともいうべき図書を推薦します。
    30代を超えたときに誰しもが「学業だけでなく人として20代にしておけば良かった」と後悔するようなことを教えてくれます。

  • 2018/05/16 Books
    心理面接の教科書 : フロイト、ユングから学ぶ知恵と技 / A・ストー著 ; 佐藤淳一訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:衛藤 暢明

    著者のアンソニー・ストーは、いくつかの訳書があり、わが国でよく知られている存在である。心理療法の基本的な設定、作法に関する一般的な知識について丁寧に説明されている。あるべき枠組みだけでなく、その中で起こる精神科(心理)臨床場面での展開や背景について触れられ、そこで何が体験されるかについて細やかに教えてくれる。記述はあくまで実践を指向しており、著者の臨床経験の広さと深さ、また思考の自由さが随所に披歴される。本書は、心理療法に関心を持つ初学者にとって重要な示唆を与え、他では得がたい手引きとなるであろう。

  • 2018/05/16 Books
    ゲーデル, エッシャー, バッハ : あるいは不思議の環 / ダグラス・R・ホフスタッター著 ; 野崎昭弘, はやしはじめ, 柳瀬尚紀訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:立花 克郎

    40年前にベストセラーになった哲学書である。ただ単に数学者、画家、音学家を面白おかしく結びつける軽い内容ではなく、”自己”、”魂”、”意識”など、本質的なことを徹底的に追求した本である。現代社会の人工知能や遺伝子解析に通ずるものを感じる。

  • 2018/05/10 Books
    知性の磨き方 / 齋藤孝著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:安元 佐和

    近代日本における知性の持ち主を例に挙げて、知性は訓練することが出来る能力であり、これからの時代の生存戦略として誰でも高められる能力であると書いてあります。知性を磨くためのロールモデルは読書を通して見つけることが出来ます。AI(人工知能)が人間の知能を凌駕するとも言われる時代を生き抜くためのヒントが得られる著書です。

  • 2018/05/10 Books
    戦地から愛のメッセージ : 400通の絵手紙にこめられた家族の絆、平和の尊さ / 伊藤博文編

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    筆者のおじいさんが戦地から家族へ送った絵はがきを集めたものですが絵の面白さや明るさなど、見ていても楽しいものでした。戦争と、兵隊とその家族の心のつながりや、愛情が伝わります。
    地元の人の本ですが、面白いので推薦します。

  • 2018/05/10 Books
    やり抜く力 : 人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける / アンジェラ・ダックワース著 ; 神崎朗子訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:安元 佐和

    副題にあるとおり、どのような分野においてもプロフェッショナルの域まで到達することができるのは、生来の才能だけではなく、自分には難しい課題であっても挑戦し、諦めずにやり続ける力Gritを持っていることが大事であると述べています。このことは、医師が生涯を通して成長し続けることと強く関連すると感じました。
    「今のままでも十分」と安住しがちなコンフォート・ゾーンから一歩踏み出し、自分の限界を超えることへ挑戦することで、これまで出来なかったことが出来るようになります。どのような分野であっても、やり抜く力Gritは、人を成長させ人生を拡げ、幸福にしていく力になりそうです。子育ての中でも、子どもたちの心にこのGritを育みたいですね。

  • 2018/05/10 Books
    アメリカン・スナイパー : クリス・カイルの伝説と真実 / マイケル・J・ムーニー著 ; 有澤真庭訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:木村 裕美

    2013年2月 アリーナ“カウボーイズ・スタジアム”にて一人の男の葬儀が行われ、多くの弔問客が集った。埋葬されたのは「クリストファー・スコット・カイル」享年38歳。カイルが参加したイラク戦争を通し、戦争とは、あってはならないものだ。そう感じる一冊。
    米軍史上最多、160人を狙撃——戦友には「伝説」と敬われ、敵からは「悪魔」と怖れられたエリートスナイパー。故人に近しい人々への取材を敢行し、アカデミー賞にノミネートされた 映画『アメリカン・スナイパー』では触れられていない、彼の死や葬儀の模様についても触れ、「伝説」と「真実」が描かれている。
    カイルはイラク戦争にて、イラク軍やアルカーイダ系武装勢力を160人殺害し、米軍におけるエリートスナイパーとして名を馳せた。2009年に除隊するまで4回イラクへ派遣された。しかし、精神を病むことになる。名誉除隊後は、リハビリ復帰し、PTSD に悩む帰還兵や退役軍人の社会復帰を支援するNPO団体を設立するなど、余暇の大半を慈善事業にあてていた。2013年2月2日、PTSD を患う元海兵隊員エディ・レイ・ルースに射撃訓練中に撃たれて死亡。

  • 2018/05/10 Books
    面倒だから、しよう / 渡辺和子著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:安元 佐和

    著者の渡辺和子先生は、2016年12月末に亡くなられましたが、たくさんの著書を残されました。どの本も生きていく上で糧となる本ですが、「この面倒だから、しよう」は、複雑な医療現場で、医療者が患者中心のチーム医療に貢献するために必要なことと実感します。面倒だなと思うことに心を込めることが、人工知能には出来ない、人間だけに与えられた能力かもしれません。

  • 2018/04/11 Books
    東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ / 遙洋子著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:谷川 和幸

    社会学の勉強を志した女性タレントが、東大の上野千鶴子先生のゼミに参加した体験を書かれたエッセイです。
    内容は社会学に関係するわけですが、このエッセイで書かれているのはむしろ、学問とは何か、研究とは何か、研究者とはどのような生き物なのか、何のために勉強するのか、といった普遍的な気づきです。
    とても面白く読みやすい文章で書かれていますので、大学で勉強する意味を見失ったときに気軽に手に取ってみるとよいでしょう。

  • 2018/04/11 Books
    イメージの歴史 / 若桑みどり著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:落合 桃子

    「美術史って、なんか古臭いし退屈そう…。」こう思っている方には、ぜひ同書を読んでいただきたいです。著者の若桑みどり氏(1935―2007年)は千葉大学などで教鞭を取った美術史家。同書はもともと放送大学の教科書として執筆・出版されました。
    本書で展開される「イメージの歴史」の対象は、狭い意味での「美術」(絵画・彫刻・建築)に留まりません。写真やマンガ、広告などの大衆文化(ポピュラー・カルチャー)、記念碑や庭園、祝祭など、人間を取り巻くさまざまなイメージが対象となります。そして、こうした視覚表象を研究するためには、美術史という学問領域を超え、歴史学や文化史、思想史、社会史といった広い学問分野の成果や考え方が必要になると言います。さらに、時代の世界観や歴史観、ジェンダー観といった大きな「枠組み」について考えることで、はじめて私たちは一つのイメージの意味を解釈することができるのだと、筆者は主張します。美術史というのは、イメージを取り巻く社会や人間、世界について考える、壮大でダイナミックな学問なのです。
    本書は序章を含めて計15章からなります。最初の5つの章では「理論編」として、「新しい美術史」、イメージ研究のための理論が展開されます。後半の10つの章は「実践編」です。古代ギリシャ美術や中世キリスト教の絵画、イタリア・ルネサンスの彫刻、フランス革命の寓意像やアメリカの自由の女神、日本の公共彫刻(公園などにある裸体の少女像など)などが取り上げられ、具体的な分析がなされます。
    西洋美術史に関心のある方は、同じ筆者による『イメージを読む : 美術史入門』(ちくま学芸文庫)や『絵画を読む : イコノロジー入門』(日本放送出版協会)も、ぜひ読んでみてください。

  • 2018/04/07 Books
    もっとも美しい対称性 / イアン・スチュアート著 ; 水谷淳訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:佐野 友二

    本書は対称性をキーワードに数学の世界がどのように広がっていくかを歴史の流れに沿って説明しています。高校や大学で学ぶ数学は、その定理がどのような経緯で発見・証明されたかという歴史的な視点からというよりも、論理的に理解しやすいように再構成された視点から紹介されます。しかし、教科書に理路整然と説明されていることでも、それを手に入れるために多くの紆余曲折があります。本書は数学の内容だけではなく、それがどのような人々によって発展してきたかを魅力的に描いています。古くはユークリッドから始まり、オイラー、ガウスやガロアと言った教科書にも出てくるような数学者やアインシュタインなどの物理学者までその人生と功績が紹介されています。数学に関する本ですが数式はほとんど出てきませんので(にも関わらず数学的内容は損なわれていません!)数学が苦手な人でも楽しめるかも知れません。数学が好きな人は是非大学で数学を学ぶ前に一度読んでおくことを薦めます。きっと大学の講義が魅力的に感じられるはずです。

  • 2018/04/07 Books
    数学受験術指南 / 森毅著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:御園 雅俊

    大学教員の立場、とくに入学試験の答案を採点する立場から書かれた受験技術の本。と書くと、すでに入試を終えて大学生となったみなさんには関係ない本だと思われるかもしれません。しかし、大学入試など30年以上前にクリアした私がいま久しぶりに読み返して、この一冊をぜひ若い皆さんに読んでほしいと思い、推薦することにしました。そもそも、野矢茂樹氏による文庫版解説にあるとおり、"率直に言わせてもらえば、本書は多くの学生諸君にとっては入試対策になっていない" のです。
    森毅先生は、画一的な根性第一の受験勉強を否定し、"精神主義というのは、技術の反対物であって、技術こそ個性的であり、そして、個性的であることによって、普遍的になれるものだ" と述べています。つまり、この本では、学ぶこと、生きることにどう向き合うべきか、この点についての普遍的な考え方を述べています。森毅先生一流のフニャフニャ軽薄で、それでいて実は堅固な骨格を持つ文章は読みやすく、あっという間に読み終えてしまうことでしょう。

  • 2018/04/07 Books
    自然な建築 / 隈研吾著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:太記 祐一

    今、日本でもっとも活躍している建築家は?そう問われたら必ず名前が挙がるのが、隈研吾さんです。いろいろと話題になった新国立競技場(2020年東京オリンピックのメインスタジアム)の最終案を設計したことで、ニュースでも取り上げられました。海外でも大作を次々と設計し、数多くの賞を受賞しています。さらに東大教授として教育活動、研究活動にも勤しんでおられ、まさに八面六臂の大活躍です。福岡にいる私たちに身近な所では、太宰府天満宮近くの国際的コーヒーチェーン店が有名でしょう。「イケてる」と書いたら、何か失礼な感じでさえあります。その彼が自分の作品を解説しつつ、建築のあり方を論じ、現代建築の問題点を抉り出したのが、この本です。豊富な知識と明快な理論がセンスの良さとあいまって、建築デザインの最前線で何が起っているのか、わかりやすく教えてくれます。もしかしたら人によっては、写真が白黒なのと専門用語が少し多いのは、残念なのかもしれません。

  • 2018/04/07 Books
    バランスシートで読みとく世界経済史 : ヴェニスの商人はいかにして資本主義を発明したのか? / ジェーン・グリーソン・ホワイト著 ; 川添節子訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:飯塚 雄基

    会計の基本は簿記です。会計はビジネスの言語といわれますが,簿記はその文法に当たります。簿記には様々な種類がありますが、その中心は複式簿記です。したがって、複式簿記を学ぶことがビジネスの言語である会計を理解するための第一歩であるといえます。しかし、複式簿記のテキストや授業は手続の説明が中心であり、無味乾燥となりがちです。複式簿記を理解するポイントは、複式簿記がなぜ生まれたのか、現在の経済にとってどのような役立ちがあるのかなど、複式簿記の豆知識のようなものを抑えることです。そのための格好の題材となるのが本書です。複式簿記を学びたいけれど、あまりモチベーションが湧かない人や、複式簿記の知識をさらに深めたい人にお薦めです。

  • 2018/04/07 Books
    イノベーションの理由 : 資源動員の創造的正当化 / 武石彰, 青島矢一, 軽部大著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:森田 泰暢

    これまで多くの画期的な商品が生まれてきています。画期的な商品は、アイデアが生まれた当初は同僚や上司に理解をされないものです。しかしその一方で、開発のための資金や仲間など組織内での大きな協力が必要です。つまり、画期的な商品の実現プロセスは、「周囲には理解されないものに対して協力してもらわなければならない」という矛盾を抱えています。良いアイデアを思いついてもなかなか実現されない背景にはこの矛盾を乗り越える大変さがあるわけです。この矛盾を乗り越えることを「創造的正当化」と本書では呼び、イノベーティブな商品が市場化されるプロセスについて事例を基に分析されています。良いアイデアを思いつくのは若手の開発者だが、若手の開発者ほど組織内の壁に勝てずにアイデアを実現化できないことが多いです。そのような若手開発者へのエールも込められた本です。どのような壁が現れ、どのように乗り越えていったのか、ぜひ読んでみてください。

  • 2018/04/07 Books
    会計不正はこう見抜け / ハワード・シリット, ジェレミー・パーラー著 ; 熊倉恵子訳 ; 細野祐二解説

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:飯塚 雄基

    会計を学ぶ人は基本的に「正しい会計の在り方」を学びます。しかし、世間で話題になるのは往々にして「正しくない会計」すなわち不正会計です。事実、昨今は毎年のように有名企業の不正会計が紙面を賑わせています。それでは、どのような会計が不正会計に当たるのでしょうか。また、不正会計はどのように予防・発見すればよいのでしょうか。これらの疑問点は具体例を交えながらわかりやすく学ぶ必要があります。本書はこの要望にぴったりの本です。是非ご一読ください。

  • 2018/04/07 Books
    なぜ人はゲームにハマるのか : 開発現場から得た「ゲーム性」の本質 / 渡辺修司, 中村彰憲著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:森田 泰暢

    学生の中には様々な形でゲームに没入してきた経験のある人も多いのではないでしょうか。私もその一人で、学生時代はサッカーゲームを、時間を忘れてプレイしていました。そして「なぜここまで人はゲームにハマるのか」という疑問が生まれるのではないでしょうか。そしてそもそもゲームとは何なのでしょうか。本書は、ゲームの定義、ゲームと身体、ゲームと視点、ゲームと世界、レベルデザイン、ナラティブ(語り)など様々な観点からゲームについて分析されています。福岡には多くのゲーム企業が存在しており今後産業として大きくなる可能性を秘めています。またe-sportsといった競技要素のあるゲーム大会も世界的に行われるようになってきました。ゲーム実況などひと昔では遊びとされていたものを仕事にする変化も起こっています。このような現代の変化に触れていくうえで、ゲームに関する基礎的な視点を本書を通じて獲得してみてはいかがでしょうか。

  • 2018/04/07 Books
    上田敏集 / 上田敏訳 ; 川戸道昭, 中林良雄, 榊原貴教編集

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:堺 雅志

    「秋の日の/ヰ゛オロンの/ためいきの/身にしみて/ひたぶるに/うら悲し。」(ポオル・ヱ゛ルレエヌ『落葉』より)
    「山のあなたの空遠く/「幸」住むと人のいふ。」(カアル・ブッセ『山のあなた』より)
    一度は目に、耳にした一節であると察します。1905(明治38)年に翻訳出版された西洋の詩のアンソロジーです。訳者の上田敏は、当時の人々にはまだなじみの薄かった外国文学を、これほどまでに美しく翻訳紹介し、それと同時に当時、口語と文語とのあいだで揺らいでいた日本語を、これほどまでに洗練しました。一度じっくりと時間をかけて鑑賞しましょう。フランス語やドイツ語を学んで、原詩と並べて味わうのも一興です。

    海潮音(『上田敏集』収録)

  • 2018/04/07 Books
    見方が変わるサッカーサイエンス / 浅井武, 布目寛幸著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:伊賀 崇人

    2018年W杯に向けて注目が高まりつつあるサッカー。そんなサッカーの人々を魅了する様々なプレーに対し、科学的に解明を迫る一冊です。
    なぜボールは曲がるのか、なぜ強いシュートを蹴れるのか、なぜボールを華麗にコントロールできるのか、サッカー選手の常識を超えたプレーについて、その動きがどのようなメカニズムで行われているか、その謎を解き明かし、サッカーの新たな魅力を提供してくれます。スポーツバイオメカニクスという力学的に動作を分析する手法を用いて、基礎的な内容から説明してあるため、スポーツを専門的に学ぶ学生から、パフォーマンスの向上を目指す選手、指導者、更にはスポーツが好きな方まで老若男女が楽しめる一冊です。

  • 2018/04/07 Books
    新しい道徳 : 「いいことをすると気持ちがいい」のはなぜか / 北野武著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:田場 昭一郎

    人は「先見の目」にも限界があるのかもしれないと思いつつ、物事を客観的にあらゆる角度から見定めることができるように努めているのだろう。買って欲しいとは思わないけど一度は読んで欲しい本。

  • 2018/04/07 Books
    ちょっとマニアックな図書館コレクション談義ふたたび / 内野安彦, 大林正智編著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:磯田 則彦

    「図書館に行けば、そこにはたくさんの本が並んでいる。」私たちは、それを当然のことと考えていませんか?ただ、ほんの少し考えてみればわかることですが、誰かが本を集めてこなければ、そこには本はありません。この著書は、本を、図書館をこよなく愛する人たちによって作成されています。わたしたちが普段何気なく目にしている書棚には、図書館スタッフの方々のアイディアと企画と愛情がぎっしりと詰まっていることが、この著書を読めば伝わってきます。本の分類はいずれの図書館でも行われていますが、書棚に並んでいる本には違いがあるのです。この違いが何を意味(意図)しているのか、思いを巡らせてみるのも楽しいかもしれません。本学の図書館にも実に多くの書棚があります。テーマに応じた展示スペースも各所にあります。この春、書棚をじっくりと見て、一冊の本を手に取ってみてはいかがですか?

  • 2018/04/07 Books
    フランス恋愛小説論 / 工藤庸子著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

    フランスの小説とくに恋愛小説に関心のある方にお薦めします。分析の対象となるのは主に次の五つの小説と、これらの小説が刊行された時代 (17世紀、18世紀、19世紀そして20世紀) の文化や風俗です。小説には関心がないけれど恋愛には関心があるという方にも、わりとお薦めです。
    ラファイエット夫人 (1678年)『クレーヴの奥方』
    ショデルロ・ド・ラクロ (1782年)『危険な関係』
    プロスペール・メリメ (1845年)『カルメン』
    ギュスターヴ・フローベール (1869年)『感情教育』
    コレット (1920年)『シェリ』

  • 2018/04/07 Books
    弓と禅 / オイゲン・ヘリゲル著 ; 稲富栄次郎, 上田武訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:田場 昭一郎

    スポーツにおいて「身体の力を抜く事」を実践することで成せる技術がある。その瞬間の選手の感情は様々で、いかなる感情においても結果的に勝つことを求められることが多い。しかし武道においては「身体の力を抜く事」「精神の力を抜く事」の双方が求められ、勝負事に勝っても奢らない、負けても腐らない、その狭間を精神が行き来してはならない。
    本書は、礼節を重んじる和の心を、武芸十八般の一つである弓道から、オイゲン・へリゲル氏が何を感じ、それをどう学んだのかが描かれている。筆者のドイツ語による著書を日本語に翻訳しているので、日本人と異なる独特な文章の言回しが新鮮に感じる。また幕末から明治時代にかけて急速に西洋の文化が日本に導入されたが、それに相反して日本の文化も諸外国の人々によって深く理解され、やがて欧米各国に日本文化が広まった趣がしみじみと伝わる。快と不快との間を右往左往する精神の離脱、筆者の禅(ぜん)と道(どう)の世界観における心の変化が詳細に書かれています。

  • 2018/04/07 Books
    かもめのジョナサン / リチャード・バック [著] ; 五木寛之訳 ; ラッセル・マンソン写真

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:野中 雄太

    他のかもめが生きるためにしか飛ばないのに対し、主人公のかもめジョナサンは「飛ぶ」ことに意義を見出し極限まで追求していく。ジョナサンのように、これからの大学生活の中で新しいことにどんどん挑戦していって下さい。

  • 2018/04/07 Books
    日本人の道徳心 / 渡部昇一著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:田方 慎哉

    「電車やバスに老人が乗ってきたら席を譲る―。困っている人がいれば手助けをする―。これは当たり前のことである」。(本文より)」
    みなさんにとっての「あたりまえ」とは何でしょうか?時代の流れは急速で、昔と比べるとずいぶん便利な世の中になっています。スマートホン1つで、世界中の人と繋がることも可能です。当然、今と昔で「あたりまえ」にも違いがあると考えることもできます。では、“日本人らしさ”とは何でしょうか?ぜひ、この本を読んでみてください。

  • 2018/04/07 Books
    賢者は強者に優る : ピート・キャリルのコーチング哲学 / ピート・キャリル, ダン・ホワイト著 ; 二杉茂 [ほか] 訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:田方 慎哉

    「コーチングとは、賢く行動できるように手助けすることでありスマートに物事を運ぶことである。特別なコーチが備える能力は、選手がやりたがらないことをさせる能力であり、さらにそれを上手く成し遂げてしまう能力である。(本文より)」
    実際にコーチをすると、コーチングとティーチングが混在してしまい、選手自身が賢く行動することよりも、言うことを聞かせることを優先してしまいがちです。戦術や戦略の模範となるような情報を簡単に入手できる時代だからこそ、コーチングの根本が大事になります。この本は、プリンストン大学バスケットボール部の名将、ピート・キャリルの実体験に基づいた内容でとても読みやすくなっています。これからコーチを志す学生には、ぜひ読んでもらいたいです。

  • 2018/04/03 Books
    中検準4級試験問題 : 解答と解説 / 日本中国語検定協会編

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:間 ふさ子

    今回わたしはあえて文学や哲学の書物ではなく、語学検定の問題集を推薦しようと思います。
    外国語を学ぶ際、自分の実力を確認する手段の一つとして語学検定がありますが、受験料に加え問題集や参考書を購入するとなるとそれなりの負担となります。人文学部東アジア地域言語学科では、検定を受験しようとするかたのために図書館からいただいている予算の一部を使って中国語と韓国・朝鮮語の検定問題集を購入し配架していただくことにしました。本学の学生ならどなたでも借りることができます。
    外国語を学ぶことの面白さや意義はすでに多くの方の語るところで、改めて繰り返す必要もありませんが、図書館には、みなさんの学びをサポートする機能もあるのだということをここでご紹介したいと思います。
    (図書館より)
    準4級、4級、3級、2級、準1級・1級は、中央図書館2Fの就職・資格・語学コーナーにあります。

  • 2018/03/30 Books
    津軽 / 太宰治作

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:安井 英俊

    なんか違う…。太宰らしくないなあ…。というのが、この小説を読み始めてすぐの私の感想であった。当時、私は大学1年生であったが、いろいろと上手くいかないことが続いており、太宰治に救いを求め、太宰の作品を読みあさっていた。『人間失格』や『斜陽』で知られる太宰治はダークサイド(暗黒面)の小説家である。そのダークな世界観は、敗者や挫折者の心に寄り添い、至高の救いとなる。
    芸人で芥川賞作家の又吉直樹さんも太宰を信奉しているし、ロックバンド・ポルノグラフィティも「太宰を手に屋上に上がり、この世などはと憂いてみせる」(「今宵、月が見えずとも」より)と歌っている。すなわち、世の中を斜めから見るようなニヒルな気分に浸り、太宰と同じ無頼派を気どることにより、ネガティブな出来事をスタイリッシュなものへ転換する。太宰の作品にはそんな効果があると思う。
    しかし、この『津軽』にはそんなダークサイドがない。それもそのはずで、『津軽』は、太宰が彼の生涯で最も明るかった時期に書かれた作品であり、タイトル通り太宰の故郷の青森県津軽地方の紀行文なのである。『津軽』は、『走れメロス』と同じく、太宰にしては珍しくライトサイドの作品である。当時の私は事前にそんなことも確認せずに読んでいたのだ。つまらないなあと思いながら最後まで読んでいくと、「さらば読者よ、命あらばまた他日。元気で行かう。絶望するな。では、失敬。」と、これまた太宰らしからぬ前向きなメッセージで締めくくられている。まあ、それはそれで元気をもらえるので、太宰の意外と明るい一面を知るには最適な作品であると思う。
    印象に残っているエピソードとして、太宰が彼の乳母をしてたおばあさんと再会する描写があり、太宰が本当に喜んでいることがよく伝わってくる。『津軽』執筆の4年後、玉川上水で愛人と入水自殺したこの無頼派の男は、本当はただの気のいい坊ちゃんだったのだろう。

  • 2018/03/30 Books
    政治的思考 / 杉田敦著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:菅原 和行

    著者によれば、政治とは「価値の複数性や多元性を前提としながら、いくつもの『正しさ』の間で調整や妥協を図る営み」(39頁)です。こうした定義を踏まえ、現代の政治を観察した際、私がとくに関心をもったのがポピュリズムとの関係です。著者によれば、ポピュリズムとは「多数派にとって不都合な問題をすべて外部に原因があるとすることで、真の問題解決を避ける政治」(98頁)です。民主政治では多数派の意見が尊重されるべきでしょうが、すべてを多数決に委ね、少数派との調整や妥協を放棄したとき、政治は本来果たすべき役割を果たしているといえるでしょうか。現代の政治が抱える問題について、いろいろ考えさせられる本です。

  • 2018/03/23 Books
    アメリカ短編ベスト10 / 平石貴樹編訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:樋渡 真理子

    日本に住んでいることで素晴らしいことの1つは、世界各国で書かれた小説の多くを日本語で読むことができることです。外国文学を読もうとするときには、「読みやすくてわかりやすく、自分と相性の良い」翻訳を選ぶと豊かな読書経験に繋がり、また、原書を読むきっかけにも繋がります。『アメリカ短編ベスト10』は、そういった意味で、外国文学初心者にとって翻訳も正確でわかりやすく、また、数ある短編の中からアメリカ文学研究者である訳者が厳選した短編が10編(次点も含めて実は11編)収められていますので、どの短編を読んでも考えさせられる内容で充実した読書経験になると思います。
    例えば、人生の優先順位と今後のライフスタイルについて考えたいならばハーマン・メルヴィルの「バートルビー」を、恋愛の終わりと友情と孤独について考えたいならばアーネスト・ヘミングウェイの「あることの終わり」を、また、貧困や人種差別、世の中の慣習について考えたいならば、ウィリアム・フォークナーの「あの夕陽」を、そして兄弟間の確執について考えたいならば、ジェイムズ・ボールドウィンの「サニーのブルース」を読んでみることをお薦めします。
    それぞれの作家によって描かれ、切り取られた人生の断面を読書を通じて追体験することで、いろいろな状況に置かれた人々の生き方を理解する手助けになってくれると思います。また、「あとがき」の解説も面白いのでぜひ読んでください。

  • 2018/03/23 Books
    三島由紀夫全集 : 決定版 / 三島由紀夫著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:坂井 隆

    あの三島由紀夫がUFOと宇宙人をテーマにした小説を書いています!信じられないと思う人は、一度、『美しい星』を読んでみて下さい。正確には「自分たちは宇宙人だと思い込んだ家族」の物語ですが、(人間的)高潔さとは何であるか、等々、読者を考えさせる小説です。

    美しい星(『三島由紀夫全集 : 決定版』10巻収録)

  • 2018/03/16 Books
    元素図鑑 : 世界で一番美しい / セオドア・グレイ著 ; 武井摩利訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:林田 修

    題名に違わず、本当に美しい元素の図鑑です。本書では、写真の美しさもさることながら、それぞれの元素に付された科学的な知見にもとづいた解説が秀逸です。それらはユーモアに溢れ、元素の発見の経緯、ユニークな性質や用途について、さまざまなエピソードや意外な物語を交えながら描写されています。これまで元素記号といえば、「暗記するもの」と考えていたような化学がちょっと苦手といった方にもお薦めします。本書を手にとって眺めれば、この世界にあるすべての物質を作っている元素に対する見方がきっと大きく変わります。

  • 2018/03/15 Books
    Unix考古学 : truth of the legend / 藤田昭人著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:佐藤 寿倫

    教員の昔話に付き合うための必読の書。これを読んでおけば教員のお気に入りになること間違いなく、薔薇色の卒研生活を送ることが出来るでしょう。

  • 2018/03/13 Books
    人口減少日本でこれから起きること / 河合雅司著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:鈴木 慎也

    かねてから「少子高齢化」の問題が指摘され、まるで合言葉であるかのように取り上げられています。ただし、その実態を正確に分かっている人は一体どれだけいるのでしょうか?「2024年:全国民の3人に1人が65歳以上」、「2033年:3戸に1戸が空き家に」、「2040年:自治体の半数が消滅」、・・・などと警鐘をならし、さらに日本を救うための処方箋を示してくれるのが本書です。

  • 2018/03/10 Books
    大気を変える錬金術 : ハーバー、ボッシュと化学の世紀 / トーマス・ヘイガー [著] ; 渡会圭子訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:久保田 純

    空気中の窒素からアンモニアを合成する技術は化学における人類最大の発明といわれます。現在、地球上に70億人以上の人類が生活していますが、その3/4の食料を支えているのは、この人工合成で得られたアンモニアから合成される化学肥料です。
    本書は約100年前にハーバーらが空気中の窒素からアンモニアを合成する方法を見出した社会的背景や、ネルンストやオストワルドなど著名な化学者との関わりを記したものです。新規の化学技術がどのように作り上げられたか、科学、国家、企業などの様々な関わりが詳細に述べられていて、化学技術者の卵である学生には是非薦めたい書です。また化学を専門としない学生にも、化学の専門用語はほとんどなく、巨大な科学技術の誕生の歴史を綴ったものですので、科学、工学を志す学生には読んでもらいたいと思います。

  • 2018/03/09 Books
    幸福論 / ラッセル [著] ; 安藤貞雄訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:大江 賢治

    不幸の原因、幸福をもたらすもの、参考になると思います。

  • 2018/03/09 Books
    データ分析の力 : 因果関係に迫る思考法 / 伊藤公一朗著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:森田 薫夫

    最近、経済政策に関する報道で「証拠に基づく政策立案」(Evidence Based Policy Making, EBPM)という言葉をしばしば見かけるように感じます。例えば教育分野では、児童の成績向上に効果が有るという証拠に基づいて、1学級あたりの児童数を少なくする政策を検討すべきという課題があります。ここで重要なのは「児童の成績が向上した要因が小規模なクラス編成であることをいかに正確に検証できるか」です。このように、ある政策手段とその効果の関係を検証することは、教育分野だけでなく、医療、政治、金融、または財政分野においても重要です。本書ではその検証方法について様々な事例を交えつつ分かりやすく述べられています。具体的な検証方法についてはペンと紙を隣に置きつつ読むと良いですが、事例については比較的気軽に読み進めることができます。収録されている事例の中には北九州市での実践もあり、身近に感じるものも含まれているでしょう。

  • 2018/03/09 Books
    やさしい電気・電子英語 / 青柳忠克著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:小浜 輝彦

    この本は、電気電子分野の基礎を学びつつ電気系英文の勉強ができるよう構成されています。よって初学者でも専門内容を理解し、同時に英語表現を学ぶことができます。英語に苦手意識がある人でも必要な基本文法(例えば、自動詞と他動詞の違いなど)をその都度理解しながら進めることができるので、電気電子系英語教材として最適な本です。

  • 2018/03/09 Books
    プリンキピアを読む : ニュートンはいかにして「万有引力」を証明したのか? / 和田純夫著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:岩村 誠人

    古典力学は、科学・工学全般の基礎であるため、工学部でも全学科で必修科目として学びますが、本書はその力学の創始者であるニュートンが1687年に出版した「プリンキピア」を分かり易く噛み砕いて解説した本です。力学の様々な難問を(微積分を用いずに)幾何学的に鮮やかに証明するニュートンの天才っぷりに惚れてしまうこと請け合いです。当時の時代背景やニュートンがなしとげたことなどが簡単にまとめられた第1部を読むだけでも力学に興味が湧いてくると思います。近代科学の出発点となったプリンキピアの醍醐味や科学的意義を肩ひじ張らずに気軽に味わうことのできる一冊です。

  • 2018/03/09 Books
    世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカの言葉 / 佐藤美由紀著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:大江 賢治

    ホセ・ムヒカ前ウルグアイ大統領が、2012年のリオ会議での感動的なスピーチが冒頭に全文掲載。ホセ・ムヒカ氏の思想と生き方に触れながら、消費社会に置かれている自分は本当に幸せなのか、考えさせられます。

  • 2018/03/09 Books
    廃墟建築士 / 三崎亜記著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:山下 慎一

    最初は、突拍子もない設定に少し驚きますが、読み進めていくうちに、他人のミスに対して不寛容で安易に処罰を求める感じとか、腰を据えて考えずにすぐに答を求めてしまう感じとか、不確かで微妙な問題を不確かなままに受け止めることを恐れているような感じとか、そんな現代の社会のありように対する静かな批判のようなものが感じられて、自分自身のありようについても、いま一度考えさせられます。

  • 2018/03/09 Books
    世論 / W.リップマン著 ; 掛川トミ子訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:櫛田 久代

    『世論』(原書1922年刊行)は、20世紀初期の民主政治と世論について考察しています。世論とは何なのか、という問いはもとより、大衆民主主義の時代において、世論が生まれる前提となる私たちの社会認識がいかに形成されるのか、さらに私たちはどのように外からの情報に接しているのか等が多角的に論じられています。情報というと、私たちが接する外からの情報の真偽や操作性等が問題にされがちですが、リップマンは情報を受け取る側の内側の心理・認識メカニズムも重視にします。メディア・リテラシーという言葉は比較的新しい言葉ですが、リップマンの『世論』を読むと、今日のメディア・リテラシーを先取りする内容に驚かされます。

  • 2018/03/09 Books
    正義論 / ジョン・ロールズ著 ; 川本隆史, 福間聡, 神島裕子訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

    アメリカで出版されるや異例のベストセラーとなった本書は、豊かさの量的な拡大を良しとする考え方に喝を入れた。社会は正義に貫かれていなければならず、その正義は最も恵まれていない人の境遇を最大限に高めることを本質とする。しかし、現代リベラリズムの背骨を形成するロールズの理論は左右両方からの批判を受けている。ロバート・ノージックらのリバタリアニズムは個人の自由へのいかなる規範による干渉も排除すべきとした。白熱教室で有名なマイケル・サンデルらのコミュニタリアニズムは規範が共同体ごとに異なると考えているのである。

  • 2018/03/09 Books
    経済学および課税の原理 / リカードウ著 ; 羽鳥卓也, 吉沢芳樹訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

    ちょうど200年前に出版された本書が今また注目を集めている。第7章では、国際貿易が双方の国に必ず利益をもたらすという比較生産費説が説明されていると言われ続けてきた。しかし、アンドレア・マネスキが、そこに現れる数値例は通常の解釈のように財1単位の労働投入を示すのではなく、実際の貿易量を労働量で表したものであると見られることを確認したのである。マネスキはこれをスラッファ=ラフィン解釈と呼んだが、日本でも行沢健三が40年前に同じ理解をしていた。また、数値例について通常の解釈をした場合でも、交易条件が決まらず、リカード・リンボーと呼ばれる幅を持ってしまう。私の友人である塩沢由典は長年の研究を経て、中間財貿易と技術選択がある一般的な条件の下で、財の数が国の数を上回る限り、交易条件が一義に決まることをついに証明したのであった。

  • 2018/03/09 Books
    君たちはどう生きるか / 吉野源三郎著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:大江 賢治

    漫画化され、昨年大ヒット。宮崎駿さんによる映画化も予定されている、その原作。世の中をどう生きていくか、千差万別であるが、勉強になります。

  • 2018/03/09 Books
    十歳のきみへ : 九十五歳のわたしから / 日野原重明著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:大江 賢治

    大切なことが書かれてあります。ぜひ、一読を。

  • 2018/03/09 Books
    「インターネット」の次に来るもの : 未来を決める12の法則 / ケヴィン・ケリー著 ; 服部桂訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:大江 賢治

    インターネット世代も驚く未来。無インターネット世代にとっては、予測できる未来なんてないと思われるが、大きなインパクトが来ることは間違いない。この本を読んで、準備だけはしておこう。

  • 2018/03/09 Books
    ミクロ経済学入門の入門 / 坂井豊貴著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:森田 薫夫

    本書はミクロ経済学の重要なトピックスを端的に説明している入門書です。ミクロ経済学の学習経験の有無にかからわず読むことをお勧めします。既にミクロ経済学の授業は受けた人は、本書を読んで新学期の講義に臨むことで、講義内容をより深く理解できると思います。特にミクロ経済学の授業を終えたばかりの1回生は是非手に取ってみてください。また、これからミクロ経済学を勉強する人にとっても予習の機会となり有益です。初見の内容についても、例を交えた説明が本文中では適宜なされていますので、すらすらと読み進めることができるでしょう。

  • 2018/03/09 Books
    「三方よし」の経営学 : 廣池千九郎の教え99選 / 廣池千九郎著 ; 廣池幹堂編

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:川上 義明

    企業が自社の利益ばかりを追求し、法や道徳に反することをし、社会の信頼を裏切ること―企業の不祥事―は日常茶飯事といってよいくらい絶え間なく起こっています。企業が行うビジネスは当事者(経営者、管理者、現場従業員)だけでなく社会全体の中で行われており、不祥事は最終的には社会の安定や発展に寄与することを忘れた結果だと言えるでしょう。
    ところで、古くは近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)という考え方・理念があります。近江商人はこの考え方・理念に基づいて商いに励み、全国各地で信頼を築き上げていったといいます。本書は、「三方よし」をさらに深め「七方よし」(経営者によし、従業員によし、仕入先によし、販売先によし、消費者によし、一般社会によし、〈税金を通じて〉国家〈国・地方自治体〉によし)を説いています。つまり、社会全体の安定、繁栄につながらないと企業の発展はないと言っているのです。
    本書は、経営学を学んでいない学生諸君でも肩が凝らずに手軽に読める本だと思います。

  • 2018/03/09 Books
    国力とは何か : 経済ナショナリズムの理論と政策 / 中野剛志著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

    著者は次のように語る。現在日本は経済のグローバル化に邁進している。安倍政権の推進するTPPもまたこの延長線上にある。しかし、グローバリゼーションのなかで企業の利益と国民の利益が背反する。国際競争力のための賃金切下げがデフレスパイラルを産み、日本の国力を弱体化させているのだと。経済学者である私の感想は、著者が経済学をよく理解できていないというものだが、同時に本書が強い説得力を持ってしまうのも事実だと思う。若い学生の皆さんには、是非自ら読んで正しい判断をしてほしい。

  • 2018/03/09 Books
    プロフェッショナルの条件 : いかに成果をあげ、成長するか

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:辻 聡史

    マネジメント思想の巨人であったドラッカーの著作の中から「個人の生き方、働き方」について抜粋、編纂されたものです。大学や職場で成果をあげるためには、まず自分自身をマネジメントすることが重要です。そのために参考となる一冊と思いますので、ぜひ読んでみてください。

  • 2018/03/09 Books
    宝くじで1億円当たった人の末路 / 鈴木信行著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:川上 義明

    本書は一冊すべてが「宝くじに当たった人の最後、末路はどうなったか」について書かれたものではありません。本書は、経済誌「日経ビジネス」の副編集長が「事故物件を借りちゃった人の末路」や「自分を探し続けた人の末路」「留学に逃げた人(学歴ロンダリングをした人)の末路」「外国人観光客が嫌いな人の末路」「禁煙にしない店の末路」等々を取り上げ、それぞれ専門家にインタビューしまとめられた本です。
    社会はこれまでいつだって流動的でした。今日だってそうです。私たちにとって不安の毎日です。私たちは増幅する不安を少しでも減らそうと何かを選択しなければならないのです。人類が歩んできた社会は、「狩猟社会→農耕社会→工業社会→情報社会」で、次に来るのは「スマート社会」だと言います(『平成28年版 科学技術白書』)。自分が必要とする情報は必要な時に必要なだけ手に入る社会に入りつつあるというのですが、情報をふんだんに集め、何かを選択してもその先はどうなるのでしょうか。
    結局、本書が言いたいのは「人生もビジネスもリスクをとってリターンを取りに行く作業の繰り返しであって、その際重要なのは目の前のリスクとリターンを可能な限り正確に見極めることである。このリスクとリターンを過大に評価してもあるいは過小に評価しても、人生やビジネスはろくな(碌な)ことにならない」というところにあるように思います。
    本書は、将来について不安や悩みの多い皆さんに大いに参考になるでしょう。

  • 2018/03/09 Books
    算法少女 / 遠藤寛子著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:田中 尚人

    「算法少女」とは、もともと江戸時代(安永4年、1775年)に町医者の千葉桃三とその娘あきによって書かれた算法(数学)の本のタイトルですが、ここで私がみなさんに紹介したいと思っている遠藤寛子著「算法少女」は、桃三とあきが、この本を書くまでのいきさつをモチーフにした、少年少女向けの歴史小説です。江戸時代に、お父さんに教わりながらとはいえ、町娘のあきちゃんが、それも「算法少女」という、今でも十分に通用する、可愛らしいタイトルの数学書を出版していたなんて、ちょっとびっくりですよね。読むのに数学の知識は一切いりません。はらはらどきどきしたり、ほろっとしたり、楽しませてくれます。
    桃三とあきが書いた「算法少女」にのっている数学の問題を解いてみたい、というみなさんには、小寺裕著「和算書「算法少女」を読む」がお薦めです。

  • 2017/04/12 Books
    世界でもっとも正確な長さと重さの物語 : 単位が引き起こすパラダイムシフト / ロバート・P・クリース著 ; 吉田三知世訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:武末 尚久

    本書には、長さや重さの単位をどう決めるか、という科学史が書かれています。皆さんご存知の長さと重さの単位となるメートルやキログラムは、従来では「原器」と呼ばれる人工物を基準としていましたが、長さの伸縮や重さの増減のために、信頼性が揺らいできました。長さについては光の速度を基準とすることが決まり、その方向性の枠組みはある程度決まりましたが、2014年11月の国際度量会議でキログラムを再定義することになりました。これは、原子レベルの測定をベースとするものです。本書の第12章の「さらばキログラム」は、キログラム原器との分離とキログラムの再定義を詳述しています。

  • 2017/04/12 Books
    芸術立国論 / 平田オリザ著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:坂井 隆

    現代の日本演劇を代表する劇作家による芸術政策論。「地域演劇」が、単に町おこしを意図した演劇ではないことが分かってきます。芸術の一極集中化(=東京中心主義)に少しでも違和感を感じている人にぜひ読んでほしい図書です。

  • 2017/04/11 Books
    グローバル・ヒストリー入門 / 水島司著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:西村 道也

    本書は、従来の世界史とは異なる「グローバル・ヒストリー」と総称される歴史学の新しい潮流についての入門書である。この新しい潮流に分類される研究テーマを、本書は便宜的に「ヨーロッパとアジア」「環境」「移動と交易」「地域と世界システム」の4つに分けて紹介する。これらの研究テーマは過去を扱うが、現在起こっている出来事も反映している。例えば、「ヨーロッパとアジア」という研究テーマは、20世紀後半から現在まで続くアジアの経済的な台頭という現実の影響を大きく受けている。その影響は、「進んだヨーロッパと遅れたアジア」のような従来のヨーロッパ中心主義的な世界観を大幅に見直す動きにつながっている。本書は、過去と現在だけでなく、我々が将来持ちうる観点を展望する際に有用だろう。

  • 2017/04/07 Books
    はじめての構造主義 / 橋爪大三郎著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

    人文社会科学系の学問領域に興味のある方にお薦めします。読みやすい入門書だと思います。構造主義は必ずしも「主義」や「主張」の問題ではありません。研究対象に何らかの構造があることが、事実そのものであることも少なくないからです。

  • 2017/03/31 Books
    ベーシック・インカムのある暮らし : 「生活本位制マネー」がもたらす新しい社会 / 古山明男著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:辻部 大介

    私の専門はフランス文学ですが、一生活者として、また一市民として、十年ほど前から「ベーシック・インカム」の可能性に注目し、少しずつ勉強しています。すべての人が、一生のあいだ、一定額のお金(たとえば毎月八万円)を、無償で受け取ることができる、というこの制度が、一日も早く実現することを願って、この本を推薦します。

  • 2017/03/31 Books
    経済学事始 / 幸村千佳良著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:藤野 真

     Twitterのタイムラインを見ていたら「LINEの田端信太郎さんがお薦めする本を読みたい・・・」というツイートに続いて、「田端さんが大学生の時に読んでいた本を知りたい・・・」とツイートされていたことが印象に残っています。LINEの田端さんほどの人間ではないけれど、僕が大学生の時に読んでいた本で印象深いものを紹介できればと思います。
     今回紹介する本は『経済学事始』です。もう専門が全く異なるので、この本が名著であるかどうかということは正直わかりません。この本は、僕が経済学部に入学して基礎ゼミ(僕が受講していたのは基礎経済学という科目名でした)で指定されていた教科書です。僕は経済学的なものの考え方、経済学の専門用語など経済学で必要とされている知識の多くをこの本から学びました。
     この本は大学1年生のときの勉強の伴奏者でした。ゼミのためにこの本の予習をして、授業の後はこの本の練習問題を解いて、この本のノートを作る。この本のわからないところを先生に質問するという付き合い方をこの本としたように思います。
     どんな難しいものでも一からコツコツとやる、根気強くやることを怠らなければまた違った世界を見ることができるのではないかと思います。みなさんはいまその扉の前に立っているのだと思います。騙されたと思って、自分の専門の最初の一冊を詳読してみてください。人生変わると思います。もちろんよい方向にです。
     経営学の本を紹介してほしいということであれば大学のどこかにいますので声をかけてくれればと思います。

  • 2017/03/31 Books
    ブラックスワンの経営学 : 通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ / 井上達彦著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:篠原 巨司馬

    ブラックスワンというのは、黒い白鳥のことです。黒い白鳥っていうのは普通ありえない事例でしょう。もし黒い白鳥を見つけ出せば白鳥は白いという通説を覆せるし、黒い白鳥に関する新しい研究が進展することになるでしょう。この本はそういうブラックスワンのような経営方法を見つけ出そうという研究ばかりを集め紹介した本です。もちろんむやみに探すということではなく事例を洞察し因果関係を類推したりという考え方が重要になります。そういった科学的な方法についても学べる上に、経営学のトップジャーナルAOM(アカデミーオブマネジメント)の最優秀賞を受賞したブラックスワンの事例を読むことができる良書です。

  • 2017/03/31 Books
    ハーバード流逆転のリーダーシップ / リンダ・A・ヒル [ほか] 著 ; 黒輪篤嗣訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:篠原 巨司馬

    タイトルはともかく、この本は集団として天才的なクリエイティビティを発揮するにはどうすればいいのかという研究を扱ったものです。例えば映画やゲームなどのクリエイティブ作品の制作については、宮崎駿監督などの天才的な才能がフォーカスされがちです。しかし、映画やゲームなどの作品は多くの人が集まって作ります。どのように個人の才能を作品に生かすべきでしょうか。例えばディズニーピクサーなどを事例にそういった問題について考える本です。また、クリエイティブ作品以外にもグーグルがサービスをいかに作り上げるかと言った事例も紹介されています。

  • 2017/03/31 Books
    お賽銭はいくらがいいのか? : ストーリーでよくわかる、経営と会計の実践 / 長谷川浩之 [著]

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:篠原 巨司馬

    誤解を恐れずに言えば、会計っていうのは金額単位で物事を見るということです。それは経営の意思決定をしたり、経営活動を振り返ったりするためには非常に有用な見方です。この本は金額単位で物事を見るというのはどういうことかをストーリーに沿って教えてくれるので入門書としてぴったりです。突然、あなたが親戚の会社を任されることになったらどうしますか?その会社は儲かっているかどうか判断できますか?本書では主人公が父親の会社を突然引き継ぐところからスタートします。

  • 2017/03/29 eBook
    肩と肘のスポーツ障害 ―診断と治療のテクニック―

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:秀 泰二郎

    スポーツ傷害(外傷及び障害を含む)を取り扱った専門書はたくさん存在するが、肩と肘に特化した専門書は珍しく思われる。投球動作を必要とする運動選手にとって肩や肘の怪我はよくみられるスポーツ傷害であるが、それらを回避するためには細かな解剖学的解説と動作学的理解が必要不可欠となってくる。またそれらの治療法やケアの仕方を理解することにより高い競技レベルを維持することが可能となる。
    本書は上記に挙げた肩・肘に関する解剖学的・動作学的解説、そしてスポーツ傷害発生のメカニズムやそれらに対する対処法を詳細に述べており、運動選手をサポートするアスレティックトレーナー(またはそれを目指す者)のみならず、指導者や選手自身にも手にとって頂き、自らの専門(または種目)に役立てて頂きたい。

  • 2017/03/29 Books
    黒書院の六兵衛 / 浅田次郎著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:久保 寛展

    本書は、もともと日経新聞の連載小説として公表されたもので、これが単行本化されたものです。法律に関係するものではなく、あくまでも小説ですが、非常に面白く、一気に読んだ本です。最終的に六兵衛とは何者だったのか、わからずじまいでしたが、それを解き明かす周りの者の行動が興味深かったです。本書は、ぜひお薦めです。

  • 2017/03/29 Books
    スポーツ・バイオメカニクス入門 : 絵で見る講義ノート / 金子公宥著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:伊賀 崇人

    スポーツ・バイオメカニクスとは、スポーツにおける様々な”動き”の仕組みを解き明かす分野であり、近年、注目が高まっています。スポーツにおける運動には、様々な力学的法則が関与しており、トレーニングを効果的に行うには運動や力の働きを理解することが重要です。
    この本では、バイオメカニクスの基礎的な内容を、イラスト用いて視覚的に分かりやすく説明してあります。また、“走る、跳ぶ、投げる、打つ、蹴る、泳ぐ、滑る”など、スポーツの様々な動きがどのようなメカニズムで行われているかが説明されており、スポーツの新たな魅力を提供してくれます。基礎的な内容から説明してあるため、スポーツを専門的に学ぶ学生から,パフォーマンスの向上を目指す選手、指導者、更にはスポーツが好きな方まで老若男女が楽しめる一冊です。

  • 2017/03/29 Books
    私の信じたバスケットボール / 吉井四郎著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:田方 慎哉

    「よきコーチたらんとするものは、よきコーチへと発達するために最も必要な根源的なもの、すなわち「競技」や「生徒」に対する愛情を深化することにまず努力しなければならない(本文より)」
    現在、インターネットやSNSの普及により様々な情報を簡単に手に入れることができます。その情報を取捨選択し、何を信じてコーチするか?のヒントが詰まっている書籍です。これから指導者を志す学生には、ぜひ読んでもらいたいです。

  • 2017/03/29 Books
    運動生理学20講 / 勝田茂, 征矢英昭編 ; 秋間広 [ほか] 著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:羅 成圭

    「運動生理学」のテキストといえばコレ。「運動生理学」という学問を20講に分け、各講を新進気鋭の研究者が丁寧にまとめている。内容は基礎から応用に至るまで多岐にわたり、運動生理学分野の研究者はもちろん、臨床や教育現場でも役に立つ内容構成となっている。2015年に改訂された第3版からは、本学スポーツ科学部の田中守先生、川中健太郎先生も執筆されている。

  • 2017/03/29 Books
    誰でもできる最新スポーツメンタルトレーニング : 図解でわかる!実力アップの新常識 / 笠原彰著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:花田 彬

    私がこの図書を推薦いたしました理由については、次のような理由があります。
    まず、第一にスポーツ指導の現場にて非常に有益な情報がこの図書には記してある点であります。近年、スポーツ現場において選手のメンタル面の教育・指導に力を入れている学校・クラブ等が多くみられます。その中で、私が専門としている体操競技は、特にメンタル面での成長が競技レベルに大きく関わります。選手は大会等で大きな緊張感の中、ただ一人で演技を行わなければなりません。その中で、技の正確性や難しさを競うという所では、かなりの精神力が必要です。本図書は、今現代の選手のパフォーマンス向上のためのメンタル強化のことについて、競技別に細かく書かれています。様々な競技のメンタル強化に繋がると思うため、私は本図書を推薦いたします。

  • 2017/03/29 Books
    偉大なる失敗 : 天才科学者たちはどう間違えたか / マリオ・リヴィオ著 ; 千葉敏生訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:武末 尚久

    学生の皆さんは、講義の演習、試験、実験、卒業研究などで、色々なミスをしてしまう場面が多々見られるようになってきますが、ミスが功を奏することもあるのです。実は、ダーウィンやアインシュタインなど、輝かしい研究業績を残した偉人たちは、大きなミスをしております。が、このことが、結果的に科学の発展の原動力となったり、後に誤りではないことが判明したりと、彼らのミスは彼らの業績同様に並外れていたようです。この本を読んで偉大なミスがあるということをを知ってください。

  • 2017/03/29 Books
    世界でもっとも美しい量子物理の物語 : 量子のモーメント / ロバート・P・クリース, アルフレッド・シャーフ・ゴールドハーバー著 ; 吉田三知世訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:武末 尚久

    理学部物理科学科では、大学の物理学を基礎から分かりやすく教えますが、学生皆さんの学年が進むにつれて、専門科目の勉強に、どうやら多大な労力を費やせざるを得なくなるようです。専門科目の中でも量子力学は、面白いが難しい、という印象を持つことでしょう。この本は入門書の入門書ぐらいの本で、量子力学を受講するにあたって、事前に読んでおくと、その基本的な考え方や、発展してきた歴史、そして将来像がつかめると思います。

  • 2017/03/23 Books
    歌謡曲が聴こえる / 片岡義男著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:遠城寺 宗近

    昭和の若者にも支持された人気作家が,戦後からの昭和を自分の人生と歌謡曲の関わりから興味深く語る。

  • 2017/03/23 Books
    罪の声 / 塩田武士著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:遠城寺 宗近

    あの未解決のグリコ・森永事件を題材として描かれた長編小説。内容の真実味と迫力に圧倒される。

  • 2017/03/23 Books
    みかづき / 森絵都著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:遠城寺 宗近

    直木賞作家の著者が,学習塾の創設期から現在までを舞台に,昭和(戦後ベビーブーム時代)~平成(ゆとり教育)の時代を描く長編小説。自分の時代とも重なり,内容があり,楽しめる。

  • 2017/03/23 Books
    Aではない君と / 薬丸岳著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:遠城寺 宗近

    江戸川乱歩賞の「天使のナイフ」でデビューして以降,ミステリーの良編を重ねていて,著者の作品には外れがない。

  • 2017/03/23 Books
    量子力学と私 / 朝永振一郎著 ; 江沢洋編

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:固武 慶

    著者は、電磁気学と量子力学を融合させた量子電磁気学における積年の問題であった発散の問題を克服する理論(繰り込み理論)を提唱し、ファインマン、シュウィンガーと共にノーベル物理学賞(1965年)を受賞した世界的な物理学者である。難解な繰り込み理論や、量子力学における観測の問題など、本書では対話形式で平易に解説されており、非常に興味深い。
    また、著者のドイツ留学時の日記が秀逸で、思うように結果を出すことが出来ない焦燥感、同僚たちの活躍に対する焦りなど素直に表現されており、壁にぶち当たったとき本書を読むと勇気づけられる。朝永クラスの天才でも悩んだんだから、ましてや凡人が大いに悩むことなく、少しでもインパクトがある仕事を成しえるはずが無いことを再確認できるからだ。

  • 2017/03/17 Books
    小倉昌男経営学 / 小倉昌男著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:二宮 麻里

    ご存じ、「クロネコヤマト宅急便」を生み出した経営者の一代記です。研究者と話していても、「あれはいい本だ」といまだに話題になります。どのように宅配便というビジネスを着想し、実行したのか、語りかけるような文体で解き明かされます。旧来の大口取引先との、安定しているけれど薄利だった取引をやめ、小口配送業へと乗り出し、国の郵便事業に対しても変更を迫ります。
    貫徹しているのは、ビジネスを支える論理です。ビジネスに不可欠なのは論理であり、その論理には思考が不可欠なのだと思います。

  • 2017/03/16 Books
    日本水没 / 河田惠昭著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:渡辺 亮一

    東日本大震災以降、災害に対する備えは非常に重要な喫緊の課題となってきている。よく言われる自助・共助・公助を実践し、助け合い、自然災害による被害を軽減していく努力はもちろん必要であるが、災害のメカニズムを理解し、自分の命を助ける行動を取れるようにすることはもっと重要であると考えられる。本書は、地震よりも恐ろしい豪雨による水害に対して縮災、すなわちレジリエンス性をいかに高めていくかが述べられており、防災省を新たに新設して防災教育を行うことで今後起こりうる国難に備えることが提案されている。

  • 2017/03/16 Books
    暴力の人類史 / スティーブン・ピンカー著 ; 幾島幸子, 塩原通緒訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:藤村 健一

     本書の著者ピンカーは、殺人・レイプ・虐殺・戦争などの暴力が、人類の歴史の中で全体として減少傾向にあることを示す。著者がとくに重視するのは、理性と啓蒙主義の時代と呼ばれる17~18世紀のヨーロッパで起きた、非暴力化のうねり(人道主義革命)である。その背景には、人々が他者の苦しみに関心を抱き、同情するようになっていたことがある。さらに第二次世界大戦後には、人々が女性や子ども、少数派の人々、動物の権利を意識し、これらに対する暴力を嫌悪するようになった(権利革命)。そして現在、われわれは歴史上おそらく最も非暴力的で平和な時代を生きている。
     このように要約すると、陳腐でありきたりな話に聞こえるかもしれない。だが実際に手に取って読んでみれば、著者が例証のために用いている豊富な統計データと多彩なエピソードに魅了されるだろう。異なる時代・地域の社会の相互比較を志す者にとって、その理論と方法は大いに参考になる。
     著者も指摘しているように、現代の思想家の間では啓蒙主義は概して評判がよくない。だが「反知性主義」が高まりをみせる今日、理性や知性を尊重した啓蒙主義が暴力の低減に寄与したことをいま一度思い起こすべきではなかろうか?

  • 2017/03/16 Books
    もう悩まない!論文が書ける統計 / 清水信博著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:鈴木 慎也

    大学生活の締めくくりは、卒業論文を執筆することです。研究データによっては、「有意差検定」などの統計学の知識を駆使した解析が求められることもあります。数多くの解析手法がありますが、「どの処理を選択したらよいのか分からない」、「こんな場合はどうする・・・」と、学生時代には何かと戸惑ってしまうことも多いはずです。本書は、そんなあなたにも分かりやすく統計解析の手順を紹介するための1冊です。

  • 2017/03/16 Books
    良いプレゼン悪いプレゼン : わかりやすいプレゼンテーションのために / 後藤文彦著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:千田 知弘

    社会デザイン工学科の卒業論文では、論文本体に加え、2ページの概要、卒論発表会用のプレゼン、の3つが必要となります。内容の中身は当然全て同じとなりますが、実は3つとも、それぞれに書き方、伝え方が全く異なると言っても過言ではありません。その中でも、意外と難しく、専門書がないのがプレゼンの作り方ではないでしょうか。本書は相手に分かりやすくプレゼンをする技術を、良い例と悪い例を図解で分かりやすく説明している、面白くもためになるお勧めの本です。

  • 2017/03/16 Books
    語源でわかった!英単語記憶術 / 山並陞一著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:小浜 輝彦

    英語は、もはや世界共通言語として認知され、日本でも一層重要性が増すでしょう。英語学習では、いかに語彙 (英単語)を増やすかが大切で高校時代に苦労した人も多いのではないでしょうか。本書は、語源を理解するアプローチからそれぞれの単語のもつ意味や感覚をつかむことができるように配慮された構成になっています。著者が言うには、100の語源さえ覚えればよいとのこと。値段も手頃で小さいので持ち歩いてすきま時間に読んでみるのもお薦めです。

  • 2017/03/16 Books
    地形から読む筑前の古地名・小字 / 池田善朗著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:花井 正広

    最近は危機管理を考えようと、あちらこちらで聞かれるようになりました。しかし、今自分が住んでいる場所が安全かどうかを考えている人がどれほどいるか疑問です。たとえば油山は油が採れるから油山?と言っているようでは身が守れません。地名はいろいろな意味で過去の事象を端的に著している場合が多いです。この本は、自分が滞在する可能性のあるところがどのような地勢であるかを知り危機管理を考えるきっかけになる本です。

  • 2017/03/16 Books
    若き数学者のアメリカ / 藤原正彦著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:岩村 誠人

    数学者でエッセイストとしても有名な著者が、青年時代過ごしたアメリカでの体験を知性とユーモア溢れる親しみやすい文章で綴った紀行文です。文化や習慣の違い、大学や学生の分析、学者世界の裏事情、著者が滞在中に味わった孤独感や苦悩、などが感性豊かに巧みな心理描写、情景描写で描かれています。40年前に書かれた本ですが全く違和感なく読め、挑戦することの大切さ、異文化理解の重要性などを教えてくれる素敵な1冊です。

  • 2017/03/16 Books
    星の王子さま / アントワーヌ・ド・サンテグジュペリ著 ; 池沢夏樹訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:麻生 裕之

    タイトルを知っていても意外と読んだことがない人が多いのでは?いまや身の回りにはあらゆるものが溢れ、何不自由なく日々を暮らせる皆さんの環境。『在ることが当たり前』になっていませんか?読む人の年齢や価値観によって全く異なる印象を与える本書は、大学生がいま読めば、きっと物事を考える視点が変わるでしょう。様々な翻訳者によって訳されていますが、他の翻訳版を読まれた方も、ぜひ一読してみてください。

  • 2017/03/16 Books
    進化する都市 : 都市計画運動と市政学への入門 / パトリック・ゲデス著 ; 西村一朗訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

    1982年に鹿島出版会から出版された名著の改訂版である。現代の都市が18世紀半ば以降の産業革命、その後の近代化・工業化の産物であることは周知の事実であるが、世界的な視野で、こうした現代都市のあり方を論じた書物は少ない。パトリック・ゲデスは近代都市計画の父と言われ、その後のL.マンフォードと並んで、都市計画思潮をリードしてきた。今回の出版では、同じ訳者によって旧版が丁寧に見直され、統一された文脈の元、分かり易い訳に仕上げている。環境教育を1915年という早い時期に説いたゲデスの功績は、大きいと言えよう。都市計画を学び始めた学生諸君にお勧めの1冊である。

  • 2017/03/16 Books
    老子・荘子の言葉100選 / 境野勝悟著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:松藤 康司

    ストレス社会の現代。忘れ去られている古典のなかにヒントがある。生きることに疲れてしまった心や、どうにもならない不幸な現実に悩み苦しんでいる心をそっと癒すヒントを教えてくれる1冊。座右の書としてお勧めです。

  • 2017/03/16 Books
    なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか? : 人気企業の「手口」を知れば、就活の悩みは9割なくなる / 海老原嗣生著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:内山 弘規

    この本には、インターンシップ、エントリーシート、履歴書、グループディスカッション、企業の選考基準、企業が面接で見ていることなど、様々な内容が書かれています。欄外には人事部のホンネや採用支援のプロの見解も示されています。基礎学力と人気ランキング100社の採用率について分析した結果も示されており、この本を読んで、人気企業に入社することの難しさが理解できると思います。参考になると思いますので、是非とも読んでみてください。

  • 2017/03/10 Books
    企業家たちの幕末維新 / 宮本又郎著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:二宮 麻里

    明治以降の日本を作り上げたのは、政治家だけではありません。鎖国から開国し、日本の産業革命を軌道にのせ、東洋の奇跡を達成したのは、数多くの革新的な企業家たちでした。強い使命感をもち、大胆に投資をおこなって派手に失敗する。苦心惨憺の中、多くの企業が近代的企業としての礎を築きます。岩崎弥太郎(三菱財閥)、伊藤忠兵衛(丸紅・伊藤忠商事)、福原有信(資生堂・朝日生命) 日比翁助(三越)…。その他にもこの人たちなしには、現在の日本経済はなかったといっても過言ではなかった人々が紹介されます。この時代にすでにベンチャーキャピタリストもいれば、社会的起業家もいることに驚かされるでしょう。

  • 2017/03/10 Books
    暖簾 / 山崎豊子著 . 華岡青洲の妻 / 有吉佐和子著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:二宮 麻里

    商学部で学ぶ「商い」。それは、ただ「安く仕入れて高く売る」という活動ではありません。天候は変動し、戦争がおこり、人心は絶え間なく移ろいます。そんな変化の中で何十年も継続して取引をおこなうということは、生半なことではできません。昔も今も、いくら情報技術が発達しようとも、取引とは、人と人とが取り結ぶ約束事なのです。
    昆布は高級品で、北海道からはるばる運んで全国に売捌いていたのが大阪の商人です。「がめつい」などと言われる大阪の商人ですが、その背後にあるすさまじい商人としての神髄を、この小説ではいききと描いています。
    新聞記者だった山崎豊子が一大決心をして、はじめて取り組んだ作品です。『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』と、いくつも有名な作品がありますので、それも合わせてお楽しみください。

    暖簾(『暖簾 . 華岡青洲の妻』収録)

  • 2017/03/08 Books
    食の日韓論 : ボクらは同じものを食べている / 八田靖史著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:安藤 純子

    日本では、キムチや焼き肉が一般的になり、韓国では、若者を中心に日本食が好まれています。でも、それらの料理は、どうやって日韓それぞれに浸透し、変化(進化)したのでしょうか。また、冷麺には、日韓+北朝鮮をつなぐストーリーがあるのを知っていますか?慰安婦、竹島、嫌韓、ヘイトスピーチ・・政治や歴史問題といった対立する問題に焦点があたりがちの日韓関係を、「食」をテーマに考えてみると、日本と朝鮮半島の「近くて親しい」関係が見えてくると思います。

  • 2017/03/03 Books
    じっくりまなぶ線形空間論 : 線形空間と内積空間の初歩理論 / 石川晋, 成慶明著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:成瀬 慶明

    本書は線形代数学の自習になることを目的として作成されている。原則として、まずやさしい例あるいは2次元や3次元のケースを紹介し、その後に理論的あるいは高次元のケースの解説している。
    第1部では行列の基本変形、行列式、固有値と固有ベクトルの計算及びその応用を解説している。特に、行列や行列式の理論面の解説を重視している。第2部では抽象的線形代数学の初歩理論を紹介している。線形空間の一般理論、線形写像の行列表現及び線形写像の固有値や固有空間理論を解説している。第3部では内積空間の一般理論および行列理論の応用を解説している。
    第1部の内容は理学系の大学初年度相当の学習内容である。第2部は抽象的理論を重視した抽象的線形代数学の解説であるが、解説内容をその入り口部分に限定しているので、理学系の大学2年次前学期相当の学習内容である。第3部は理学系の大学2年次後学期相当の学習内容である。

  • 2017/03/03 Books
    展望につながる線形代数学の発展理論 : 行列と線形空間と内積空間の応用理論 / 石川晋, 成慶明著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:成瀬 慶明

    本書は線形代数学の自習になることを目的として作成されている。原則として、まずやさしい例あるいは2次元や3次元のケースを紹介し、その後に理論的あるいは高次元のケースの解説している。
    第1部では行列の基本変形、行列式、固有値と固有ベクトルの計算及びその応用を解説している。特に、行列や行列式の理論面の解説を重視している。第2部では抽象的線形代数学の初歩理論を紹介している。線形空間の一般理論、線形写像の行列表現及び線形写像の固有値や固有空間理論を解説している。第3部では内積空間の一般理論および行列理論の応用を解説している。
    第1部の内容は理学系の大学初年度相当の学習内容である。第2部は抽象的理論を重視した抽象的線形代数学の解説であるが、解説内容をその入り口部分に限定しているので、理学系の大学2年次前学期相当の学習内容である。第3部は理学系の大学2年次後学期相当の学習内容である。

  • 2017/03/03 Books
    とことんわかる線形代数学の基礎理論 : 行列と行列式の理論 / 石川晋, 成慶明著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:成瀬 慶明

    本書は線形代数学の自習になることを目的として作成されている。原則として、まずやさしい例あるいは2次元や3次元のケースを紹介し、その後に理論的あるいは高次元のケースの解説している。
    第1部では行列の基本変形、行列式、固有値と固有ベクトルの計算及びその応用を解説している。特に、行列や行列式の理論面の解説を重視している。第2部では抽象的線形代数学の初歩理論を紹介している。線形空間の一般理論、線形写像の行列表現及び線形写像の固有値や固有空間理論を解説している。第3部では内積空間の一般理論および行列理論の応用を解説している。
    第1部の内容は理学系の大学初年度相当の学習内容である。第2部は抽象的理論を重視した抽象的線形代数学の解説であるが、解説内容をその入り口部分に限定しているので、理学系の大学2年次前学期相当の学習内容である。第3部は理学系の大学2年次後学期相当の学習内容である。

  • 2017/03/03 Books
    夜の樹 / トルーマン・カポーティ [著] ; 龍口直太郎訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:銅堂 恵美子

    トルーマン・カポーティは、映画「ティファニーで朝食を」の原作者として有名ですが、私がお薦めしたいのは、彼の短編です。彼の短編集である『夜の樹』の中でも、「ミリアム」という作品はお薦めです。人間の孤独や幻想と現実の狭間を描くこの作品は、とても短い作品ですが、彼の世界観が味わえる良い作品で、私も大好きな作品の一つです。是非一度、彼の作品世界に触れてみて下さい。

  • 2017/03/01 Books
    ドイツを変えた68年運動 / 井関正久著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:東原 正明

    ドイツの若者は自国が引き起こした第二次世界大戦とどのように向き合ったのか。敗戦前後に生まれ、1968年ごろに大学生となった若者たちによる学生運動が、環境・平和運動を経て、緑の党へと発展していく過程が描かれています。

  • 2017/03/01 Books
    自動車の社会的費用 / 宇沢弘文著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:東原 正明

    社会の様々な場面で生じる事故や公害などの外部不経済を社会的費用をコストに算入するとき、はたして私たちは今と同様の生活ができるのでしょうか。本書は、自動車を題材にこの問題を検討しています。社会の「豊かさ」について考えるきっかけとなるでしょう。

  • 2017/02/16 Books
    ある法学者の軌跡 / 川島武宜著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:久保 寛展 

    本書は、民法学・法社会学の泰斗である川島武宜先生の軌跡をたどった非常に興味深い本です。とくに戦中から戦後にかけてどのような研究生活を送ってきたのか、また「論文の書き方」で述べられていることは、私自身も非常に参考になりました。ぜひ一読を薦めます。

  • 2017/02/16 Books
    超・箇条書き : 「10倍速く、魅力的に」伝える技術 / 杉野幹人著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:赤羽根 靖雅

    ■この本を読み込んで、書かれていることを実践すると以下の5つの能力が向上します
    ●思考力up
    ・考えをまとめる力がつきます
    ●情報伝達力up(プレゼン力up)
    ・自分の考えや情報を他人に伝える能力が上がります
    ・つまり、プレゼン能力が上がります
    ●気配り力up
    ・良い情報発信のために相手の立場を考えます
    ・だから、相手に対して気遣う大切さを実感できます
    ●文章作成力up(論理力up)
    ・箇条書きはアイデア出しや文章の構成を考えるときに使えるテクニックです
    ・だから、文章を要領よく書けるようになります
    ・文章をうまく書ければ、論理力も上がるはずです
    ●理解力up(読解力up)
    ・情報発信の定型スタイルを学べます
    ・定型スタイルを分かってしまえば、他人の発信スタイルを簡単に理解できます
    ・だから、相手の考えを理解する力が上がります
    ・当然、文章読解力も上がります
    ■この本の効能は、次の2点にまとめられます。是非読んでください
    ●大学で学んでいく上での基礎の基礎が習得できます
    ●社会生活を送る上での基礎の基礎が習得できます

  • 2017/02/16 Books
    ガルブレイス : アメリカ資本主義との格闘 / 伊東光晴著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

     大病から生還した老経済学徒が彼の岩波新書3部作の最後のテーマに選んだのは、アメリカの経済学者ガルブレイスでした。ジャーナリスト出身のガルブレイスは、その文才を生かして、従来の経済学で扱えないアメリカ資本主義の問題点を解剖し、多くの一般読者の支持を集めました。自由競争と観念されている現実の市場は、実は大企業によって組織化されている。「消費者主権」は名ばかりで、消費者の行動は実は大企業の広告に依存している。読後に、著者とガルブレイスの生涯が重なる一書です。

  • 2017/02/16 Books
    フランス現代思想史 : 構造主義からデリダ以後へ / 岡本裕一朗著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

     戦後フランスの若者は政治的でした。彼らは実存主義の名の下に政治活動に自らを投げ出していきます。一方、人類学や児童心理学に端を発する構造主義の思想も浸透していきました。しかし、こうした政治の季節は1968年の「五月革命」をピークに終わりを迎えます。「1968年世代」は、政治とは別なかたちで権威に抵抗するポストモダンの思想を展開していくのです。一世を風靡した彼らの思想は「ソーカル事件」を機に急激に退潮して現在に至ります。デリダやフーコー、ドゥールーズが学生時代のヒーローだった私にとって、本書の愛情あふれる筆致は心休まるものでした。

  • 2017/02/16 Books
    一法学徒の歩み / 三ケ月章著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:久保 寛展

    本書は、民事訴訟法学の泰斗で法務大臣も務めた三ケ月章先生の研究人生が述べられた非常に興味深い本です。とくに留学生活での経験など、非常に興味深く読みました。

  • 2017/02/16 Books
    21世紀の資本 / トマ・ピケティ [著] ; 山形浩生, 守岡桜, 森本正史訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

     2013年にフランス語の原著が出され、翌年それが各国語に翻訳されると異例の世界的ベストセラーになった本ですので、皆さんも書名を聞いたことがあるかもしれません。日本でも経済学とは関係のない、実に幅広い世代の人々が本書を手に取るのを見て、私も驚いたことを記憶しています。ピケティは、21世紀に入って富の不平等が世界的に急激に拡大していることを、たった1本の不等式と15年に渡るビックデータの収集・分析に基づき、解き明かしていきます。私が2015年9月20日の『経済セミナー』増刊号で指摘した通り、従来の経済学は不平等の問題を扱うのがとても苦手だったのです。

  • 2016/06/23 Books
    カエルの楽園 = The paradise of frogs / 百田尚樹著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    もの悲しさの漂う寓話の世界。多彩な才能を持つ百田さんの最新作です。寓話なので平易な日本語であっという間に読了できます。内容は、今の世界と関連付けながら読んでいくと笑えない悲しい笑い話です。必読書で2時間で読めます。

  • 2016/06/23 Books
    「韓非子」を見よ! / 守屋洋著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    性善説を採る日本の教育からは、中国だけでなく多くの外国勢力の動きを理解することはできません。中国の古典「韓非子」はよく知られた戦略家ですが、基本は性悪説をとり、騙されない人間となり、生きていくことを主張します。こう生きていくかどうかは個人の哲学の問題でしょうが、社会人としての基本的な知識としては理解していなくてはなりません。

  • 2016/06/23 Books
    はなちゃんのみそ汁 / 安武信吾, 安武千恵, 安武はな著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:牧 香里

     「天国のママとの約束は、毎朝みそ汁を作ること」。この本は映画化もされ、多くの方がご存知かと思います。20代で乳がんを発症し、結婚・出産を経て肺に転移し、33歳で他界した千恵さんと家族の物語です。
     近年、子育て世代のがん患者が増えています。余命を覚悟した時に「親が子にしてやれること」は何でしょうか?母親である千恵さんは、「1人でも生きていく力を身につけて」と願い、愛娘のはなちゃんと毎朝みそ汁を作ります。自分の生命を脅かす“がん”と闘いながらも明るく強く母親としての役割を果たしていくことが、がん闘病の糧になっています。
     子育て中のがん患者とその家族の抱えているものを教えてくれる作品です。
     さらに、その後中学生になったはなちゃんのエッセイ&レシピ本「はなちゃんの12歳の台所」が2015年11月に出版されています。生きる力をしっかりと身に着けているはなちゃんの成長を感じることができます。

  • 2016/06/23 Books
    China 2049 : 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」 / マイケル・ピルズベリー著 ; 野中香方子訳 ; 森本敏解説

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    昨年話題になった本です。アメリカの高官が長年の対中外交を振り返って、現代の中国が長きにわたってその意図を隠してアメリカから科学、軍事、経済、政治を学んで、ついに覇権を唱え始めたと書いています。彼自身は長く中国の覇権意図を見抜けないまま、むしろ中国派(パンダハガー)だったことが今わかったと、間抜けな自分を書いています。2049年は中共の建国100周年であり(中共は建国1949年。建国の歴史の短い国で、終戦4年後に建国している若い国です)、ここまでに世界の軍事・経済・政治でトップになるとの目標をとなえていると書きます。日本人なら常識の中国古代の書物の格言を随所に使って書を進めています。え、今頃気がついたの?と思うところも多いですが、これが現実なんでしょうね。

  • 2016/06/23 Books
    英語化は愚民化 : 日本の国力が地に落ちる / 施光恒著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    施先生は福岡出身の九大の准教授ですが、福大にも講義に来ているそうです。日本人がみな英語が得意になることがグローバル社会に乗り出す日本には必要だとの意見があり、小学校からの英語授業が強化されていますが、その必要はないと主張しています。 江戸時代から開国を余儀なくされて世界に対処しなくてはならなくなったとき、多くの欧米の書物を日本語化したことが、国民の教養を高めて国力をトップにのし上げたと考えています。かつての欧米が行う植民地政策では、英語を通して特定の支配層だけの知識となり、その国を欧米の傀儡の支配層とそれに支配される愚民に分断したと言う歴史を考える必要もあります。当時日本人は多くの英語の概念を漢字に置き換え(漢字を創作し)日本語化して勉強しました。医学の漢字も経済学の漢字も日本製がたくさんあります。それがいま中国や台湾でも使われているのです。会話ができるくらいの英語力よりも、しっかりした日本語の読解力・思考力をまずは身につけて、必要に応じた英語教育を後からする方が良いと言います。日本を知らない日本人では英語は話せてもそれで何なのでしょうか。

  • 2016/04/11 Books
    産業革命 / 長谷川貴彦著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:西村 道也

    現代社会を楽観的に考えるのか、それとも悲観的に考えるのか。この問いに答えを出すことは簡単なようで難しい。現代社会の原点のひとつである産業革命についても、人々はこの問いをめぐる議論を続けてきた。本書では、産業革命に関して提示されたさまざまな議論がコンパクトにまとめられている。これまでとこれからの世界を皆さんが理解しようとするうえで、大きなヒントを与えてくれるだろう。

  • 2016/04/02 Books
    世界でもっとも正確な長さと重さの物語 : 単位が引き起こすパラダイムシフト / ロバート・P・クリース著 ; 吉田三知世訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:香野 淳

    メートル[m]、キログラム[kg]、秒[s] などは、現代に生きる私達にはなじみ深い単位であり、あまり気に掛けることなく日常的に使っている方が多いと思う。しかし、メートルとキログラムを基本とする単位系を国際的に導入することになったメートル条約が締結されたのは、ほんの140年ほど前(1875年)のことである。
    本書は”World in the Balance: The Historic Quest for an Absolute System”の翻訳版であり(原著のサブタイトルが内容をよく表していると思う)、内容はメートル、キログラム、秒などから成る基本単位系(国際単位系:SI)の成立に至る歴史、社会や文化と単位との関係に関する歴史であり物語であり、文献やインタビュー、実在の資料を基に丹念に描かれている。物語の前半は各地域(中国、西アフリカ、ヨーロッパ)で使われてきた単位がその文化とどのようにつながっているのか等が描かれており、後半の物理法則を基にする究極の単位、普遍的な度量衡体系へとつながっていく。前半の章では、国際単位系(ある意味で生活の実感と切り離されたところで定義される単位系)がどうしてヨーロッパで提案され、それが国際的に成立するに至ったのかという点や、フランス革命との関連や国際社会の動きなどは非常に興味深い。
    科学史、科学哲学の専門家である著者(R. P. Crease, Professor in the Department of Philosophy at Stony Brook University, New York)の目を通して描かれた歴史、物語であり、多くの方に楽しく読んで頂ける一書と思う。英語に自信のある方は原著を読まれるのもよいかもしれない。

  • 2016/03/31 Books
    ランダウの生涯 : ノーベル賞科学者の知と愛 / マイヤ・ベサラプ著 ; 金光不二夫訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:祢宜田 啓史

    ランダウは、凝縮媒質とくに液体ヘリウムの理論に関する先駆的研究、で1962年にノーベル物理学賞を受賞した旧ソ連の理論物理学者である。ランダウが書いた著書は優れたものが多く、私自身、学生時代に統計物理学や電磁気学に関するランダウの見事な理論展開を知り、このような仕事ができないものか、とも思ったものである。このランダウの影響を受けて育ったマイヤ・ベサラプが、アブリコソフなどの話を基に書いたのがこの本である。是非一読していただき、ランダウの物理学への情熱を感じとっていただけたらと思う。

  • 2016/03/31 Books
    さようなら、ギャングたち / 高橋源一郎 [著]

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

    小説という文芸形式の自由さがよく分かります。このような小説を読んだことのないかたは、一読して驚かれるのではないでしょうか。

  • 2016/03/31 Books
    類推の山 / ルネ・ドーマル [著] ; 巌谷国士訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

     シュールレアリスム詩人による,短めの小説。わたしには、この小説が好きで好きで常に持ち歩いて読み返している知人がいます。

  • 2016/03/31 Books
    日本語の森を歩いて : フランス語から見た日本語学 / フランス・ドルヌ, 小林康夫著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

     日本語とフランス語の違いについて、分かりやすく書かれています。言葉に興味のあるかたに、お薦めです。

  • 2016/03/31 Books
    スペクトル幾何 / 浦川肇著 ; 新井仁之 [ほか] 編

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:成瀬 慶明

    著者の浦川肇先生は、東北大学で長く教授をされ、幾何学で世界的な業績を挙げられた方である。一方で、大学の数学教育にも大きな関心を持たれ、学部生及び大学院生向けの教科書を多数執筆されている。
    この本は、コンパクトなリーマン多様体上のスペクトル幾何理論の大綱を展開することを目的としている。特に、ラプラス作用素の固有値と固有関数の振る舞いについて詳細に書かれている。
    この本は大学3年次・4年次から大学院生までの幅広い学生が、興味を持って面白く読めるような内容となっている。ラプラス作用素の固有値と固有関数の振る舞いに関する最前線の研究成果を分かりやすく記述されているので、卒業論文または修士論文の研究テーマを探している4年生または大学院生に一助になる本と思われる。 

  • 2016/03/31 Books
    楢山節考 / 深沢七郎著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

    「楢山節考」「月のアペニン山」「東京のプリンスたち」「白鳥の死」の4編を含む短編集です。(新潮文庫版)いずれの作品も、非常にクールです。

  • 2016/03/31 Books
    アウトサイダー / コリン・ウィルソン著 ; 中村保男訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

    いわゆる「文学」の研究書ではないかもしれませんが、わたしはこの本を読んで初めて、文学を研究することの面白さを知りました。

  • 2016/03/30 Books
    日本の思想 / 丸山真男著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:松永 達

    下の『日本の弓術』のドイツ人は、古くからの日本の思考と対決しながら時間をかけて理解を深めていました。いっぽう、近代以降の日本は、外国の新しい考えや文化を器用に取り入れて、迅速に吸収するとよく言われます。これは、日本の発展の要因だとよく言われますが、いいことばかりでしょうか。あるいは実際、何を吸収したんでしょうか。
    この『日本の思想』の初版が出たのは50年以上前ですが、日本は外来の思想を既成品として受け取ってそれを絶対視するか、あるいは、抽象的な概念や理屈は日本に合わないと言って自分の狭い経験や実感を絶対視してしまうかに偏りがちだと指摘しています。この50年間に、日本は「ものづくり」やヴィジュアルな文化ではこの偏りの間を埋めてきたかもしれませんが、そのほかではどうでしょうか。工業の比重が縮小してきた今、もう一度考えてみてもいいかも知れません。
    この本は、別々の評論や講演が章ごとにまとめられているので、どこから読み始めても大丈夫です。3・4章が講演の書き起こしで、比較的読みやすい文体と内容になっています。1・2章は読みにくく感じるかも知れません。近年、次のような解説書が出ています。
    《日本の思想》講義 : ネット時代に、丸山眞男を熟読する / 仲正昌樹著 121.6/MA59/1

  • 2016/03/30 Books
    西洋紀聞 / 新井白石著 ; 村岡典嗣校訂

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:藤田 裕邦

    18世紀初頭、キリスト教伝道を企てて鎖国下の日本に潜入したイタリア人シドッチは、幕府に捕らえられて新井白石の尋問を受けます。その尋問内容を、他の書物やオランダ商館員から得た情報で補い、白石自身のコメントも付して取りまとめたのが本書です。オランダ独立戦争についてスペインに肩入れしたシドッチの説明、神聖ローマ帝国に関するシドッチとオランダ商館員の話の相違に困惑する白石のコメント、さらには、言葉の行き違いのせいか北アメリカ大陸と南アメリカ大陸を取り違えているかのような記述も。史料としての意義はもちろんですが、異文化の人からの情報収集の難しさをも、本書は教えてくれます。
    自分の手元に置くのなら岩波文庫版が便利ですが、旧字体漢字で書かれているのが少しつらいかもしれません。新字体で注が詳しいのは東洋文庫版(中央図書館2階:080/TO82/1-113)、古文が苦手という人には現代語訳の教育社新書版(中央図書館4階(川添文庫):090/KA98/4.2)もあります。

  • 2016/03/30 Books
    イギリス繁栄のあとさき / 川北稔 [著]

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:松永 達

    経済の繁栄と工業発展は同一視されがちです。これは裏返すと、工業の停滞が経済の停滞をそのまま意味することになります。
    しかしこの本では、こうした見方は、イギリスの産業革命の誤った理想化につながっていて、実際は、イギリスの過去の繁栄には見過ごされている側面がたくさんあって、その遺産が現在のイギリスや世界全体の経済や社会の構造につながっていることがわかりやすく述べられています。また、今なお世界を動かすイギリスの金融業界の強みの背景や、近代以降の世界経済一体化のダイナミズムも知ることができます。
    高校で習った近代の世界史の知識を整理して、今の社会を見る目を養うことができるほか、パンと紅茶の朝食の普及と工業化との関係とか、月曜は日曜の延長で仕事をしなかった時代もあったといった、豆知識も得られます。この本のテーマに興味のある人は、この著者の他の著書や訳書も読んでみると良いでしょう。 

  • 2016/03/30 Books
    日本の弓術 / オイゲン・ヘリゲル述 ; 柴田治三郎訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:松永 達

    ドイツ人の哲学者が日本滞在中に弓道を学んで、洋弓との根本的な違いの背景に禅の思想があることに気付き、戸惑いや苦闘を経て弓道を会得したことが述べられています。西洋社会の人間が、日本にどのように向き合い、どんな側面に特徴や魅力を感じることがあるのかを知る一端にもなります。講演がもとになっているので、短くて読みやすいです。

  • 2016/03/30 Books
    変えることが難しいことを変える。 / 岩淵健輔著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:下園 博信

    著者の名前は、ほとんどの人が知らないと思うが、彼は日本ラグビーフットボール協会・日本代表ゼネラルマネージャーである。2012年から現在まで、現職に就いている。すなわち、2015年ラグビーワールドカップイングランド大会で、世界中から注目された、日本代表を強化・マネジメントの両面から支えてきた人物なのである。エディ・ジョーンズヘッドコーチを支え、代表の強化スケジュールを組立て、選手たちと会話をしながら・・・何が、ラグビーワールドカップでの日本代表の目覚しい飛躍に結びついたのかが、感じ取れる一冊である。

  • 2016/03/30 Books
    天才 / 石原慎太郎著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:森口 哲史

    私が幼いころ、よく母が「田中角栄さんのおかげでお父さんのお給料が上がったのよ。」と口にしていました。幼心にこういう人が日本のリーダーなのだなと感じさせてくれた総理大臣の一人です。この本は、政治家としての評価が分かれながらも、戦後の日本において死力を尽くした田中角栄という人物について書かれた一冊です。昭和を代表する男の豪快な生き様を覗いてみてはどうでしょうか。(なお、政治的信条、思想等とは何のかかわりもありませんので。。。)

  • 2016/03/30 Books
    脳を鍛えるには運動しかない! : 最新科学でわかった脳細胞の増やし方 / ジョン J. レイティ, エリック・ヘイガーマン著 ; 野中香方子訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:川中 健太郎

     米国イリノイ州ネーパーウィル学区の高校体育教師は、独自の体育プログラムの実践を通して生徒の学力を向上させることに成功した。そして、今、スポーツ科学・神経科学の分野では、“運動が筋肉を鍛えて体力を高めるだけでなく、脳を鍛えて認知症を防止し、また、子どもの学力を高める”ことが常識になりつつある。本書は最新の事例と研究成果をわかり易く説明。運動することの意義を考えさせてくれる一冊。

  • 2016/03/30 Books
    リスク : 神々への反逆 / ピーター・バーンスタイン著 ; 青山護訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:石坂 元一

    リスクの探求と挑戦をさまざまなエピソードを交えながら時系列に話が進んでいきます。心理学,数学,統計学,歴史など幅広い分野との関わりが随所に見られます。まずは興味がある章だけを読んでもよいと思います。余力のある人は上下巻を一気に読んでみてください。

  • 2016/03/30 Books
    ケニア!彼らはなぜ速いのか / 忠鉢信一著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:川中 健太郎

      陸上長距離マラソン界を席巻するケニア勢。その速さの理由は遺伝子や体力によって説明できるのか?それとも、彼らを取り巻く生活やトレーニング環境によるものか?著者の忠鉢氏は欧州やケニアを実際に訪れて、スポーツ科学の研究所や、ケニア人ランナーの合宿施設を綿密に取材。アスリート、指導者、そして、スポーツ科学者のそれぞれに読み応えのある一冊。

  • 2016/03/30 Books
    日用品の文化誌 / 柏木博著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:藤田 裕邦

    現代社会において、私たちが当たり前のように使っている様々な「もの」を取り上げ、それらが持つ意味を読み解いていく本です。ある「もの」が存在するためには、当然ながらそれを作り出す技術が不可欠ですが、それだけではなく、社会が「もの」に意義を認めてそれを受け入れること、すなわち需要も必要です。そして、時代の流れの中で社会のあり方が変わると、「もの」に対する需要も変化していきます。本書をとおして、「もの」が単なる物理的存在にとどまらず、社会的・歴史的存在でもあることに、私たちは気付くことができるでしょう。

  • 2016/03/30 Books
    疾走能力の発達 / 宮丸凱史編著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:信岡 沙希重

    疾走能力は基本的運動能力の一つであるが、疾走能力に関する研究は優れたスプリンターを対象とすることが多い。その中でこの本は、疾走能力が著しく高まる児童期に着目し、成長に伴う疾走能力の発達についての知見がまとめられている。特に小学校1年から6年までを縦断的に行った研究の成果などはとても興味深い。体育科教育や運動指導を目指すものにとって有益な情報を与えてくれる1冊になるであろう。スポーツ科学部の学生には是非一読することをお薦めしたい。

  • 2016/03/30 Books
    物語 (エピソード) で読み解くデリバティブ入門 / 森平爽一郎著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:石坂 元一

    デリバティブって聞き慣れない用語だと思いますが,ちょっと複雑な金融商品の名前です。この本ではタイトルのように興味深いエピソードでこの金融商品の歴史を読み解いていきます。皆さん聞き覚えのある「遠山の金さん」も登場します。気構えずに読んでみてください。

  • 2016/03/25 Books
    退職刑事 / 都筑道夫著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:遠城寺 宗近

    著者は故人となったが、多作で知られたミステリー作家。非常に多い作品の中でも、有数の名シリーズ。かつては硬骨の刑事であり、退職した父親に対して、現職の刑事である息子が捜査中の事件を語ると、父親は話を聞いただけで真相を導き出す。いわゆる安楽椅子探偵小説である。

  • 2016/03/25 Books
    下町ロケット / 池井戸潤著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:井手 豊也

    99%を占める日本の中小企業の生き残りをかけての奮闘が面白くかつ感動的に描かれている。

  • 2016/03/25 Books
    歌謡曲から「昭和」を読む / なかにし礼著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:遠城寺 宗近

    歌は世につれ世は歌につれていた昭和という時代を映してきた歌謡曲の背景を,昭和の作詞家の第一人者が語る。

  • 2016/03/25 Books
    任俠書房 / 今野敏著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:遠城寺 宗近

    刑事小説で有名なミステリー作家による娯楽小説。小さなヤクザ一家が、経営の傾いた出版社を立て直す。続編である「任侠学園」、「任侠病院」も含めて、一気に読めて楽しめる。

  • 2016/03/25 Books
    打撃の神髄榎本喜八伝 / 松井浩著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:遠城寺 宗近

    玄人好みのする打撃職人であった元プロ野球選手、榎本喜八(今年、野球殿堂入りした)の人物伝。哲学者様で陰のある彼は、ノンフィクション作家・沢木耕太郎の「敗れざる者たち」(文春文庫など)の中でも取り上げられた。

  • 2016/03/25 Books
    門 / 夏目漱石作

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:井手 豊也

    人の生き方についてこのような人生も有りだなと思わせる作品です。 

  • 2016/03/25 Books
    ベスト・オブ・マイ・ラスト・ソング / 久世光彦著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:遠城寺 宗近

    テレビドラマのディレクターとして数多くの名作を遺した演出家、故・久世光彦によるエッセイ。死ぬ間際に聴きたい歌を一曲選ぶとしたら、昭和の懐かしい歌に託して思い出を綴る。歌の歌詞をたどりながら、時代を振り返ることができる。続編としてさらに4編が出版されている。

  • 2016/03/18 Books
    失敗の本質 : 日本軍の組織論的研究 / 戸部良一 [ほか] 著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:花井 正広

    日本人の組織は、仲間内の関係で意志決定がおこなわれ、たとえ失敗しても責任の所在があいまいで、また同じ失敗を繰り返すことを、旧陸軍の失敗を基に分析したものである。同じ失敗を繰り返さないため、是非知っておくべき内容である。

  • 2016/03/18 Books
    入門都市計画 : 都市の機能とまちづくりの考え方 / 谷口守著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:吉城 秀治

    都市計画に関する本は数多く出版されていますが、それらと比べると本書は、都市計画に関する制度の解説は必要最小限で留められていることや、平易な解説とセットで国内外の事例が写真とともに多く紹介されていることが特長としてあげられ、まさしく入門書として最適な一冊となっています。みなさんが何気なく暮らしている都市のなりたち、そして都市が抱える問題やこれからの都市のあり方について学んでみませんか?

  • 2016/03/14 Books
    雇用・利子および貨幣の一般理論 / J.M.ケインズ著 ; 塩野谷祐一訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

     現在、日本で実施されている量的・質的金融緩和もマイナス金利も、ケインズのこの本がなかったら実施されていなかったことでしょう。人々が将来を心配してお金を貯めこむことによって、モノが売れなくなり不景気になることを説明したこの本は、経済学に革命をもたらしました。金融偏重の現代にこそケインズの警告は大きな意味を持っています。間宮陽介訳(岩波文庫)はちょっと古色蒼然としていますし、訳にも若干問題が。山川浩生訳(講談社学術文庫)は少し軽すぎる。やはり、塩野谷訳で読まれることをお薦めします。

  • 2016/03/14 Books
    人口の原理 / ロバート・マルサス著 ; 高野岩三郎, 大内兵衛訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

     人口は加速度的に増加するが、食糧は比例的にしか増加しないため、貧困や戦争、疫病などの人類史の暗い側面が生じる。この有名な人口法則の命題は、古典的な経済学の礎となりましたし、ダーウィンが進化論を提唱するきっかけともなりました。マルサス生誕250年にあたる今年、当時の理性信仰の楽観主義に冷水を浴びせ、人類史の現実に目を開かせた若きマルサスの思想に、現代的な視点から思いを馳せてみませんか。

  • 2016/03/04 Books
    もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら / 岩崎夏海著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山 峯夫

    前作の続きであり、野球部を「マネジメントを学ぶための組織」「高校野球にイノベーションを起こす」とし、これまでの秩序を創造的に破壊していくことに取り組むマネージャーたちの奮闘が描かれている。テーマは、「イノベーション」。イノベーションとは競争をしないことである、という。イノベーションが成功し、新しいものが生み出されたら、そこにはライバルはいない。競争社会を生き抜くには、競争をしないことが求められる。で、この新しいものを生み出す機会となるものが変化である。変化を受け入れ、イノベーションを起こすことの大切さを学ぶことができる。

  • 2016/03/04 Books
    もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら / 岩崎夏海著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:高山 峯夫

    公立高校の弱小野球部でマネージャーを務める女子高生・川島みなみが、ピーター・F・ドラッカーの著した組織管理論手引書『マネジメント』を偶然書店で手に取ったことを契機に部の意識改革を進め、甲子園を目指すというストーリー。「マネジメントに必要な唯一の資質は真摯さ」という言葉に衝撃を受け、『マネジメント』を通じて様々なことを学んだみなみは、自分が「マネージャー」となって野球部の運営にあたる。野球部の運営を例に、組織のマネジメントの方法が書かれており、大学生活を送る上で参考になると思われる。

  • 2016/03/04 Books
    プレ・デザインの思想 : 建築計画実践の11箇条 / 小野田泰明著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:池添 昌幸

    プレデザインとは、建築設計におけるデザインの前段階の行為のことを指します。日本語では、建築設計の前段階は「建築計画」という行為です。建築計画とは、建築を造るための様々な条件を整理し、その建築に最適な空間のモデルや型を示すことです。著者は、建築計画の研究者であり実践者で、最適な空間を導くための考え方とその方法が11の原則に分けて示されています。初学者には少し難しい内容ですが、大学で建築計画の講義を受けた人には、建築計画の理論と技術が実践にどのように適用されるのかを理解するために、是非読んで欲しい本です。

  • 2016/03/04 Books
    絶体絶命でも世界一愛される会社に変える! : 2代目女性社長の号泣戦記 / 石坂典子著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:鈴木 慎也

    所沢ダイオキシン報道で大バッシングを受けた産業廃棄物処理会社を徹底的に立て直し,ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全再生に取り組むなど,大改革を成し遂げた社長の著書です.荒廃した現場で50代不良社員に立ち向かい,どうやって会社を変えたのかがとても詳細に,かつ分かりやすく書かれています.3S(整理・整頓・清掃)とISOの同時導入など,決して派手ではないもののやるべきことに徹底的にこだわった姿勢が印象的で,多くの示唆にあふれています.

  • 2016/03/04 Books
    ようこそドボク学科へ! : 都市・環境・デザイン・まちづくりと土木の学び方 / 真田純子 [ほか] 編著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:柴田 久

    環境工学、社会基盤工学、都市環境デザイン工学……土木と名乗らずとも「ドボク」を学ぶすべての学生必見!ドボクって何?という素朴な疑問から、多彩な授業の魅力、土木構造物鑑賞のツボまで、先輩74人が丁寧にレクチャー。 ドボクの面白さと奥深さを堪能する学生生活が、この一冊で手に入る!気になるハローワークも満載。

  • 2016/03/04 Books
    だまし博士のだまされない知恵 / 安斎育郎著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:松藤 康司

    だまされる不思議を科学の目で解き明かす入門編。
    占いやスピリチュアル・霊感相談はなぜ人気?振り込め詐欺にあわないためには?
    放射線防護学、手品の名手の先生が、解りやすく解説した本です。

  • 2015/12/24 Books
    絶望の裁判所 / 瀬木比呂志著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:安井英俊

    元裁判官の著者が、一般にはあまり知られていない裁判所と裁判官の実態について詳細に書かれています。裁判官だからこそ知りえた「裏話」的エピソードもあり、裁判制度に興味をもつきっかけになると思います。

  • 2015/12/24 Books
    反骨のコツ / 團藤重光著 ; 伊東乾編

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:安井英俊

    「日本刑法学の父」である団藤先生の人柄や思想が、わかりやすく書かれており、刑法に限らず法学全般に興味をもつきっかけになるのではと思います。憲法改正問題や死刑廃止論についてもわかりやすく書かれています。

  • 2015/12/24 Books
    キヨミズ准教授の法学入門 / 木村草太著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:山下 慎一

    法律を「解釈する」ってどういうことか、小説形式で分かりやすく解説してくれます。法学部に入る前に読んでおくと、法学に関するイメージが湧きやすいかもしれません。

  • 2015/12/24 Books
    弱者の居場所がない社会 : 貧困・格差と社会的包摂 / 阿部彩著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:山下 慎一

    なぜ、私たちの生きている世の中は、こんなにも「生きづらい」のでしょうか。データを交えて、分かりやすく解説してくれます。

  • 2015/12/24 Books
    はじめて考えるときのように : 「わかる」ための哲学的道案内 / 野矢茂樹文 ; 植田真絵

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:山下 慎一

    大学の勉強では、自分の頭で、物事をしっかりと「考える」ことが不可欠です。本書は、そもそも「考える」とはどういうことかを「考える」ための手助けとなるでしょう。文章が分かりやすく、挿し絵も非常に素敵です。

  • 2015/06/19 Books
    Yes! : 50 scientifically proven ways to be persuasive / Noah J. Goldstein, Steve J. Martin, and Robert B. Cialdini

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:竹安 大

    相手を説得する、自分の望むように相手に動いてもらうなど、他人の考えや行動に対して影響を与えることはなかなか難しいものです。この本では、社会学や心理学などの知見に基づいて、どうすれば相手に対してより影響を与えやすくなるかが50の例とともに紹介されています。英語で書かれた本ですが、非常に明快に書かれているためとても読みやすく、何より面白い。この本は私の専門分野とは関係ないのですが、分野外の私でもどんどんと読み進めることができました。心理学や社会学に興味のある人はもちろん、それ以外の分野の人にもお薦めです。

  • 2015/06/19 Books
    オリンピック物語 : 古代ギリシャから現代まで / 結城和香子著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:藤井 雅人

    本書は、オリンピック発祥の地であるギリシャで2004年アテネ大会が開催されるにあたって読売新聞紙上に掲載された連載「オリンピック物語」を再録したものである。新聞記事ならではの歯切れの良さで、オリンピックの「舞台裏」の視点に立ちながら、このオリンピックというスポーツイベントがどのように変化してきたのかを分かりやすく解説してくれている。読後にはおそらく、オリンピックがこれまでいかに政治、経済、社会通念などに翻弄されながら、隆盛を極めているようにも見える現在の姿になっていったのかを知るとともに、その今後のあり方についても考えさせられることになろう。2020年東京大会を控えオリンピックへの関心が一層高まる中で、スポーツ科学部生にはもちろんのこと、他学部の学生諸君にも是非手にとって読んでいただきたい。きっと、ただ「勝った、負けた」で一喜一憂する以上のオリンピックの楽しみ方ができるようになるはず。

  • 2015/06/18 Books
    ピーター・フランクルの諸国漫遊記 / ピーター・フランクル著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:山内 進

    旅は旅先でいろいろに人に出逢い、またいろいろな料理、いろいろな芸術等に出逢えます。また旅はアクシデントもつきもので、まさに人生のように感じるときがあります。ピーターが書いた旅のエッセイ集です。

  • 2015/06/18 Books
    ヴァンサンに夢中 / エルヴェ・ギベール著 ; 佐宗鈴夫訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:鈴木 隆美

    若くしてエイズでこの世を去ったフランス作家の奇才、エルヴェ・ギベールの恋愛物語。同性愛の物語だが、ここで描かれている恋愛の情けなさと愚かしさと美しさは、異性愛者の胸にだって響くはず。ギベール自身の露悪趣味と恥じらいの微妙なバランスも面白い。

  • 2015/06/10 Books
    生物学と医学のための物理学 / Paul Davidovits著 ; 吉村建二郎編集協力

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:武末 尚久

    生物の現象や機能は、つきつめるとすべて物理学の法則に従っている。肘にかかる力は固体力学で、血流の乱流は流体力学で、神経の活動は電磁気学で説明され、個体から細胞、分子レベルまで物理法則が支配している。本書では、主に細胞、組織、個体というマクロな生物現象の理解に必須の物理学が分かりやすくまとめられている。また、多くの例が挙げられており、しかも定量的な考察が多いので、実感としてとらえやすい。さらには、人体の主要器官についての解説はもちろん、昆虫の飛翔など幅広い話題が取り上げられている。学生諸君が知る基本的な物理法則が、どのように生物学や医学に応用できるのかを、ぜひ楽しんでもらいたい。

  • 2015/06/08 Books
    ネット依存症のことがよくわかる本 / 樋口進監修

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:祢宜田 啓史

    授業中、脇目もふらずにネットゲームを行っている学生を見つけ、注意をしたことがある。このようにネットゲームの虜になって、そこから抜け出せない学生もかなりの割合でクラスにいることも分った。そこで、このような中毒症状のことについて知ろうと思い、探したのがこの本である。この中毒症状はネット依存症と呼ばれ、簡単にこの状態になってしまうようである。そして、一度なってしまうと、脳の状態の変化によって、なかなか元の状態に戻ることが難しい病のようである。この病気を専門的に扱っているのは、現在のところ国立の久里浜医療センターだけであり、著者はその病院長である。ネット依存症に関する本は、これ以外にも多くある。気になる方は「ネット依存症」というキーワードで検索し是非読んでいただきたい。

  • 2015/06/08 Books
    中国の大問題 / 丹羽宇一郎著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    “親中派”と揶揄される元中国大使の著者。商社マン(元伊藤忠商事会長)としての経歴を買われ、2010年中国大使に就任したが尖閣問題などに直面した。本書にはその経緯も記してあるが、内容的にはむしろ面子を重んじる中国人とのビジネスをどのように進めたらよいかということが中心である。根底にあるのは孫子の兵法「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」であろうか。レア・アースのみならず漢方薬(生薬)も中国依存度が高い。冷静に付き合うことが大事なようだ。

  • 2015/06/08 Books
    巨大津波 : 地層からの警告 / 後藤和久著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    地質学者による巨大地震への警鐘が本書である。古文書などに記録されている地震はせいぜい1,400年程度である。だが地層を調べることにより、地震のみならず、火山噴火、隕石衝突など地球規模の大災害がいつ頃発生したかが判る。逆にとらえると、将来どのような大災害が起こるかということを推測できる。九州でも太平洋側に面したところでは南海トラフ沿いに発生する巨大地震性津波の影響が懸念される。宮崎平野は仙台平野と同じような地形であり大津波に襲われた過去もある。沖縄先島諸島も危険な地域らしい。本書記載の事例を参考に将来に備えてほしい。

  • 2015/06/08 Books
    寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい : 10歳若がえるための5つの運動 / 久野譜也著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    最近、メタボリックシンドローム(通称メタボ)に代わり、ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)という言葉が問題になりつつある。ロコモとは運動器症候群のことで、「運動器の障害」により「要介護になる」リスクの高い状態になることらしい。要介護というと脳卒中や認知症が思い浮かぶが、実際には転倒、骨折、関節疾患などを原因とする場合も多い。ロコモは、健康で日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる期間、すなわち健康寿命を損なう主因となる。本書には、大腰筋を鍛えることでロコモ予防につながる簡単な5つの運動が載っている。本書を読んで、親世代や祖父母世代にロコモ予防運動を紹介してほしい。

  • 2015/06/08 Books
    捏造の科学者 : STAP細胞事件 / 須田桃子著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:寺田 貢

    本書は、多くの話題を集めたSTAP細胞の顛末を、その発端から結末まで取材した新聞記者の目を通して描いたドキュメンタリ作品である。内容については、ご一読ののち、ご確認いただければ考える。
    この一件で、話題になったものとして「割烹着で実験」、「ムーミンのイラスト」など数々あるが、やはり「リケジョ(理系女子)」という言葉であろう。筆者の須田氏は、別の著作として、iPS細胞の山中教授の取材記もあり、早稲田大学の大学院で物理学の修士号を取得したれっきとした「リケジョ」であるところが興味深い。福岡大学にも多くの「リケジョ」の皆さんが在籍している。ただ、これからの時代を担う若い科学者は、男女の区別などにはこだわらず、世界に羽ばたき、活躍していただきたい。

  • 2015/06/08 Books
    独創はひらめかない : 「素人発想、玄人実行」の法則 / 金出武雄著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:折居 英章

    人工知能、コンピュータビジョン、ロボット工学の世界的権威である著者のエッセイ集です。誰もやったことがない新しいことを発想する考え方から、人を説得するための説明術まで多岐に渡る内容を、著者の実体験エピソードを交えながら、わかりやすく、おもしろく、そして論理的に書かれています。読み終えた後は、自分も何かに挑戦したいという意欲をきっと得ることができると思います。理工系の研究者やエンジニアを目指す人はもちろん、将来の目標が定まっていない学部1年生にも是非読んでほしいです。

  • 2015/06/08 Books
    「反原発」異論 / 吉本隆明著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:本田 知宏

    東日本大震災に続く原発事故以来,「反原発」に反対する意見は影をひそめています.この本では,偉大な思想家のひとりである吉本隆明によって,「反原発」に対する異論が淡々と,しかし熱く語られています.あの事故の被害を被っている人たちには,原発に対する作者の認識が甘いと感じられるかもしれません.その通りだと思います.その気持ちを確かめるために,本を読み進めながら,この思想家と議論してみませんか.

  • 2015/06/08 Books
    寄生虫なき病 / モイセズ・ベラスケス=マノフ著 ; 赤根洋子訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    マラリアを撲滅した島で増えた多発性硬化症。抗生物質使用で発生する炎症性腸疾患。一見関連性のない知見だが、実は寄生虫、細菌やウィルスなどを駆逐した結果としてアレルギーや自己免疫疾患が増えてくるらしい。故意に寄生虫を感染させることにより自己免疫疾患の症状が緩和される事実。免疫とは文字通り疫を免れることであるが、公衆衛生の向上に伴い新たな疫を作り出してしまったようだ。人類が長年付き合ってきた(共生してきた)微生物は、レギュラトリーT細胞を活性化する免疫制御作用を有していた。未来の医療人を目指す学生には必読です。

  • 2015/06/08 Books
    近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか? / 近藤誠著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    日本で最も毀誉褒貶の甚だしい医師と言っても過言ではない近藤 誠医師。彼は普通の医師としての業績(乳がんの乳房温存療法普及提唱者)に加え、何と言っても「ガン放置療法」提唱者として異彩を放っている。本書は現代医学の常識と真っ向勝負する一問一答形式となっており、初年次の学生でも理解しやすい。ガン治療の“正しさ”の判定は大変難しい。なぜなら、患者にとって1つしか選べない(【手術・放射線・化学療法】または【放置療法】)からである。ただ医療系学生にとって、このような理論(極論?)が存在することを知っておいて損はない。国家試験には絶対出ないけれど。

  • 2015/06/04 Books
    子ねこチビンケと地しばりの花 : 未決囚十一年の青春 / 荒井まり子著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:遠藤 文彦

    1950年にとある東北の町に生まれ、1970年前後に東京で学生生活を送った一女性が自らの半生をつづった手記です。そこに描かれた時代は、半世紀近く後に生まれ、2010年代に学生時代を過ごしている皆さんにとって、郷愁を感じ、共感を覚える部分と、異空間であり、別世界ともいえる部分とをあわせ持っています。皆さんにはこの感動的な一冊を、自分たちの時代の意味を深く考えさせてくれる貴重な証言として読んでもらいたいと思います。

  • 2015/06/01 Books
    糖質制限からみた生命の科学 / 夏井睦著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:川中 健太郎

    栄養学の教科書には、主食・主菜・副菜をバランスよく食べようと謳われている。この常識に真っ向から対立して主食抜きの食生活を推奨する著者は、炭水化物制限ブームの陰の火付け役でもある。糖質の甘みがもつ強烈な魅力が現代文明の発達と健康問題をもたらしたと推論する最終章の内容は特に斬新。

  • 2015/05/29 Books
    沈みゆく大国アメリカ / 堤未果著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:青木 光希子

    健康がマネーゲームに委ねられるとこうなる、というアメリカの医療体制について書かれた本です。「医療をビジネスが支配するシステムが、医師を過剰労働させ、何よりもプロとしてのプライドを粉々に潰してしまう。」この、ハーレム地区で開業するドン医師の言葉とその実際の内容は特に衝撃です。政府が薬価交渉権を持たないという事実にも驚きました。次なるゲームのステージは日本、という章で終わっています。そうならないように切に希望します。

  • 2015/05/28 Books
    学生による学生のためのダメレポート脱出法 / 慶應義塾大学日吉キャンパス学習相談員著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:竹安 大

    大学の授業ではレポートを課題として課されることがよくありますが、なかなかうまく書けずに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。この本では、良いレポートを書くために必要となる様々なスキルが紹介されていて、そもそも何から始めたらいいのかわからないという人から、ある程度は書けるがどうしたらさらに良いものにできるか知りたいという人まで、それぞれが次の段階に進むためのヒントが得られるはずです。大学1~2年生くらいの人が読むのにちょうど良いと思います。
    レポートの書き方については様々な本が出ていますが、この本をお薦めする理由は大きく2つ。
    1つは、タイトルに「学生による学生のための」とあるように、学生の目線で書かれていること。大学生としての心構えなどにも触れながら、様々なアドバイスが書かれているので、特に大学に入学したばかりの人が読むと参考になることが多いでしょう。
    2つ目は、具体例として良い例と悪い例がともに挙げられていて、かつその分量が大学に入学したばかりの人にとって多すぎず少なすぎず、適度であろうと感じられること。具体例をざっと見てみるだけでもいろいろなことを学べると思います。
    最後に、この本は皆さんと同じ大学生によって書かれています。本は偉い先生が書くものだと思っている人も多いかもしれませんが、努力次第で皆さんも学生のうちにこうした本を出版したり、起業したりすることだって可能です。この本を読むことで、レポートの書き方以外の面でも刺激を受け、皆さん一人ひとりが自分の可能性に気づくきっかけになってくれれば・・・と願っています。

  • 2015/05/28 Books
    99のなみだ / リンダブックス編集部編著 ; リンダパブリッシャーズ企画・編集

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:山内 進

    読者から寄せられた実話です。1冊に10話ぐらいが掲載されています。心温まる実話に涙が出て、心が癒されます。いろいろな体験が小説のなかでできる感動的な実話集です。

  • 2015/05/28 Books
    越境フットボーラー / 佐藤俊著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:布目 寛幸

    華々しい成果を上げて、欧州の競合チームへと移籍していくプロサッカー選手がいるなかで、所属チームから戦力外とされたり、日本のエリートコースから外れた選手たちは、人知れずアジア・中米など決してサッカー強豪国ではない、プロリーグへと移籍し、プレーを続ける道を探って行く。本書は、これらいわゆる「マイナー海外組」と呼ばれるプロサッカー選手たちを描いた「ノンフィクション」だが、そこから読みとれるのは、逆境の中で、グローバルな逞しさを身につけていくプロサッカー選手の実像である。

  • 2015/05/28 Books
    中国人と日本人 : 交流・友好・反発の近代史 / 入江昭編著 ; 岡本幸治監訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    近年、日中間の関係が悪化しているのは言うまでもない。国家間関係は移ろいやすく、安定させるのは難しいのかもしれない。本書は日中間の交流史に関するアメリカ人、日本人、在米の中国系研究者による共同研究の成果である。日中関係の理解の一助となるであろう。

  • 2015/05/28 Books
    成功するための話術 / ピーター・グーバー著 ; 児島修訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:山内 進

    聴き手の心を捉え、夢中にさせる話術はとても大切です。そのなかでも、特に有効な方法はも聴き手に驚きと感動をもたらすストーリーです。ゼミやサークル等をまとめていく方法として、この本を読んで活用してみて下さい。

  • 2015/05/28 Books
    近現代日本の地場産業と組織化 : 輸出陶磁器業の事例を中心として / 大森一宏著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    発展し続ける産業はなく、当然のことながら衰退してしまう産業もある。本書は陶磁器業を中心とする地場産業を通じて、産業の発展と衰退の要因を明らかにしている。

  • 2015/05/22 Books
    沈みゆく大国アメリカ / 堤未果著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:石井 龍

    現在のアメリカの医療と医療保険制度の実態を知ることができる本です。日本の医療や国民皆保険制度にも問題点はありますが、この本を読み始めて15分くらいで「日本で良かった」と実感します。

  • 2015/05/22 Books
    本当の勇気は「弱さ」を認めること / ブレネー・ブラウン著 ; 門脇陽子訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:安元 佐和

    Vulnerabilityを認め、さらけ出す勇気は人を変える。人生や子育ての中で人の強さの本質とはなにかを考えることが出来る一冊です。

  • 2015/05/22 Books
    かぜの科学 : もっとも身近な病の生態 / ジェニファー・アッカーマン著 ; 鍛原多惠子訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:黒木 求

    サイエンスライターである著者が、誰もがかかるけれど、未だ根本的治療法のない風邪(普通感冒、特にライノウイルスによるもの)の原因、予防法、治療法などについて多角的に解説しています。疫学的調査から遺伝子改変マウスを使った研究まで、これまでの膨大な文献、研究者へのインタビュー、自ら参加した人体実験などのエビデンスに基づいていて、説得力があります。予防にはマスクより手洗いが、また鼻をほじらないことも大切、総合感冒薬は百害あるのみ、免疫力を上げると症状が重くなるなど、これまであまり知られていなかった知見がわかりやすく、面白く語られています(しかし、風邪もがんと同様、当分研究者のメシの種であり続けるようです)。

  • 2015/05/22 Books
    世界を操る支配者の正体 / 馬渕睦夫著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    この本には非常に感銘を受けた。古くからあるユダヤの陰謀論とかたづけるにはあまりにもリアルな分析である。かれの資本主義と共産主義は同根であったという「国難の正体」でも語られてきたことを、さらにウクライナの現状を分析しながら、まさに今を解きほぐしている。時代が変わるときに、それを常に操り利用する数少ない集団が、世界の動きを決めていること、それに歯向うものを時には合法的に時には違法に葬り去る力を持つこと、そしていままさにプーチンと金融資本の戦いが行われていることなど、このような見方がなければ、現在を理解できないと思う内容である。衝撃的な内容であるが、そう思うと腑に落ちるし、見えてくることがこれが正しいのだと納得させられる内容です。

  • 2015/05/22 Books
    日米衝突の根源 : 1858-1908 / 渡辺惣樹著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    この本は分厚くて内容も濃い。しかし文章は易しく、アメリカの近代史を時に日本との関係で克明に描いている。アメリカの歴史書であるが、その経過だけでなく関わった人たちの思いをいれながら進むので、まるで映画を見ているようで人を引き付けてやまない読書と成る。南北戦争から始まり、イギリスとの確執、インディアンとの戦い、メキシコと戦い西へ西へと進む。ゴールドラッシュと石油発見、そうして西海岸に到達後は太平洋に出た。太平洋航路の確立から中国をめざして日本の開国と維新となっていったが、ハワイ王国併合への謀略やスペインと戦ってのフィリピンの植民地化もいきいきと描写している。そのような開拓の歴史としてアメリカ人の開拓精神(軍事力・経済力と法律を使った合法的な略奪)を語っていく。この本は戦後70年と言われる今こそもう一度読み返して見る必要がある。中韓の主張などおかしいことに気がつくだろうが、この本では第2次世界大戦までは描写していない。第1次世界大戦のあとくらいで終わるけど大変楽しい良い本です。今中国はこのまねをして拡張しようとしていますが、注意は怠らないことですね。

  • 2015/05/19 Books
    スポーツ遺伝子は勝者を決めるか? : アスリートの科学 / デイヴィッド・エプスタイン著 ; 川又政治訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:米沢 利広

    著者は、スポーツ・イラストレイテッド誌のライターですが、これまでの遺伝とスポーツに関する科学論文を丁寧に調べ、、現地調査も積み重ねて書かれた本です。スポーツにおける強さの源は「遺伝か環境か」という問いに、現在の先端科学がどこまで迫っているのかということが詳しく述べられています。
    「陸上短距離で、ジャマイカ勢がなぜ強いのか?」「長距離でケニアのカレン族がなぜ強いのか?」「1万時間の法則は、スポーツにも当てはまるのか」など、スポーツ科学を志す者にとって大変興味深い内容です。

  • 2015/05/08 Books
    1分で大切なことを伝える技術 / 齋藤孝著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:柿山 哲治

    内容の薄い、長~い話を我慢しながら聞いた経験は誰にでもあるだろう。それは日本人が「簡潔にまとめて話す」というトレーニングを行っていないからだ。本書は一分で過不足なく、しかも相手の心に残るように伝える方法を伝授する。

  • 2015/04/10 Books
    物質の構造とゆらぎ : 微視的マテリアルサイエンス入門 / 寺内暉著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:武末 尚久

    物質科学。この学問の発展なくしては、我々の現代の豊かな生活は実現し得なかっただろう。
    この学問では、物質中の原子の配列を知ることが何よりも重要である。原子の配列は、一般的には、アボガドロ数レベルの多数の原子が平均的になすものであり、個々の原子の配列は、平均の配列からずれている。この配列のずれは「ゆらぎ」と呼ばれる。通常、個々のゆらぎを観測することは大変困難であるが、物質全体で原子が協力し合えば、興味深い現象として検出され、その現象を解析すれば、ゆらぎを統計的に表現できる。得られる解析結果は、物質の性質を理解するために、そして科学技術に応用するためにも必要不可欠である場合が大変多い。
    本書は、物質科学を深く探求しようと志している学生諸君には、ぜひとも読んでもらいたいバイブル的存在のものである。

  • 2015/04/08 Books
    Born to run走るために生まれた : ウルトラランナーvs人類最強の"走る民族" / クリストファー・マクドゥーガル著 ; 近藤隆文訳

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:布目 寛幸

    ランニングブームと呼ばれる昨今、ミニマルシューズと呼ばれクッションがほとんどないランニングシューズを店頭で見かけたことはないだろうか?本書は、足に痛みを抱え、ランニングを諦めかけた記者が、幻の走る民族を探す旅に出るというストーリーものだが、その底流には、スポーツ科学の知見からみた現在のランニングシューズへの大きなアンチテーゼが含まれており、前述のミニマルシューズ発想の原点に触れることができる。大学院生必読の書である。

  • 2015/04/06 Books
    金持ち父さん貧乏父さん : アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 / ロバート・キヨサキ, シャロン・レクター著 ; 白根美保子訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:山内 進

    お金は、生活するのに大切なものですが、わが国では、お金についての教育は行われていませんね。この本を大学生の皆さんに読んでいただき、お金についての正しい知識を学んで欲しいと思います。そして将来心豊かな生活をしてください。

  • 2015/04/03 Books
    模倣と創造のファッション産業史 : 大都市におけるイノベーションとクリエイティビティ / 富澤修身著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    近年、アジア経済の成長と共にマーケットでは商品の模倣等の問題が生じている。本書はこうした模倣という視点から読むと面白いかもしれない。模倣を悪いものと捉えるのではなく、模倣が持つマーケットにおける本当の意味を教えてくれる。

  • 2015/04/03 Books
    中国 / 南亮進, 牧野文夫編著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    本書は近年成長著しい中国の経済統計を幅広く網羅した統計集である。本書を通じて、20世紀初頭以降の中国の各種経済統計データから近代中国の発展の軌跡をたどることができるだけでなく、現代中国の発展要因を長期統計から把握することが可能である。

  • 2015/04/03 Books
    環境の経済史 : 森林・市場・国家 / 斎藤修著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    人々の活動は自然に大きな影響を与えてきた。本書は、自然環境のうち森林を取り上げた環境史の素描である。本書の視点の面白さは、時代や地域によって森林破壊に対する対応やその対応の速度が大きく異なるという点にある。こうした視点から環境について考えてみるのも面白いであろう。

  • 2015/03/31 Books
    射影幾何学の考え方 / 西山享著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:陶山 芳彦

    高校で習った平面幾何の定理―パップスの定理、チェバの定理、メネラウスの定理等―は、射影の考え方を知ることにより、その定理の持つ新しい幾何学的な内容が見えてくることになるだろう。
    この本は、大学初年度から3年次・4年次までの幅広い学生が、興味を持って面白く読めるような内容となっている。
    特に、射影幾何は大学のカリキュラムには含まれていないが、数学教員を目指す学生にとっては、この射影の考え方を理解していれば、教員として平面幾何を講義する際に、他の先生と異なる面白い講義が出来ることになり、学生の好感度を上げることも出来ると思われる。

  • 2015/03/30 Books
    数学記号を読む辞典 : 数学のキャラクターたち / 瀬山士郎著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:住吉谷 覚

    工学が扱う対象は具体的なモノである。数学の扱う対象は抽象的な概念である。この両者を結び付けるものこそが数学記号である。小学校から中学高校大学と学び続けて来た数学では、数学記号の取り扱いを如何に理解し使い熟すかがその成否を大きく左右したであろう。工学ではその記号の取り扱いを様々な領域に適用することにより、大きな成果を上げている。工学を志し、道具として使ってきたであろう数学記号は、正しく理解し取り扱えているのだろうか?使い続けながらも振り返って確認してみる価値はありそうだ。

  • 2015/03/30 Books
    白熱講義これからの日本に都市計画は必要ですか / 蓑原敬 [ほか] 著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

    日本の都市計画学界のオピニオン・リーダーである蓑原敬を囲んで、若手の都市計画研究者や新進の建築家が、現代日本の都市計画のあり方について、白熱の議論を展開している。1933年生まれの蓑原に対して、若手はすべて1970年代生まれであるが、40歳程度の年齢差をものともしない、白熱の議論が展開されている。
    コンパクトシティ、人口減少、少子高齢化といった言い古された観のあるテーマの内実について、若手から鋭い質問が飛び、まちおこしの提案が展開される。
    戦後一貫して都市計画畑を、官民双方の立場で歩み、欧米の近現代都市計画理論の詳細と国内津々浦々の事情を知る蓑原が、若手の理論の弱点を蹴散らしていく。まるでプロ棋士が7人のアマチュアを同時に相手にしている感がある。
    教科書的な知識体系を超えた1冊である。

  • 2015/03/30 Books
    理科系の作文技術 / 木下是雄著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:大橋 正良

    レポートや卒論を書くのにどうやって作文したら良いだろうと思っている人にはまずこの本を薦めます。いかにシンプルに、かつ論理的に正確な文章を書くかということを是非学び、Webからのコピーに頼らない「書くことのできる技術者」を目指しましょう。

  • 2015/03/30 Books
    女子大生会計士の事件簿 / 山田真哉著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:山内 進

    女子大生会計士と新米会計士補の奇妙な事件を通じて、会計の仕組み、会社の仕組み、経済の仕組みが解き明かされていきます。将来、会計士、税理士、経理の仕事に興味を持っている学生諸君にはお薦めの本です。

  • 2015/03/30 Books
    自分の仕事をつくる / 西村佳哲著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:遠藤 正浩

    魅力的なモノづくりの現場と人を満足させるいい仕事にこだわっている人についての探検レポートです。すぐに役立つハウツー本ではありません。読んだ人がそれぞれ感じてください。

  • 2015/03/30 Books
    錯覚の科学 / クリストファー・チャブリス, ダニエル・シモンズ著 ; 木村博江訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:森山 茂章

    時には心理学に関する本も良いと思います。2004年にイグ・ノーベル賞をとった「見えないゴリラ」など、工学の世界とは全く異なる実験の話が書かれています。

  • 2015/03/30 Books
    アイデアのつくり方 / ジェームス・W・ヤング [著] ; 今井茂雄訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:吉城 秀治

    自らのアイデアを求められる場面はよくあることである。そして、優れたアイデアが湧き出してくる類稀なる人々を除いて、大多数の人々はアイデア出しに苦労することになる。そんなときは、是非本書を手にとって欲しい。1時間で読めてしまう程の文量に、アイデアを手に入れるためのプロセスが整理されている。優れたアイデアというのは、「アイデアの出し方を知っているかどうか」に依るところが大きいことに気付かされる一冊。

  • 2015/03/30 Books
    地方消滅 : 東京一極集中が招く人口急減 / 増田寛也編著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:石橋 知也

    政治経済の予測と比べて著しく精度が高いとされる人口予測。この指標に基づき日本特有の人口減少の構造を明らかにしつつ、いかに対策を講じるべきか検討したのが本書である。まず筆者は人口減少に対する誤解を解くことから始め、極めて近い将来訪れるであろう「極点社会」について警鐘を鳴らす。さらに人口減少に対する国家戦略として早期着手といった「時間軸」の必要性を説く。今、人口問題と向き合うことは我々の暮らしを左右する将来の日本社会を考えることに外ならないことを教える一冊である。

  • 2015/03/30 Books
    フェルマーの最終定理 / サイモン・シン[著] ; 青木薫訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:伊豫岡 宏樹

    フェルマーの最終定理自体は中学生でも理解できるようなシンプルなものですが、証明されるまでに約350年を要しました。本書は 1993年にワイルズによって解決されるまでにこの問題に関わった数学者達の物語がドラマチックに 書かれています。試験勉強では感じることのできなかった数学の美しさ・恐ろ しさ触れることができる一方、著者・翻訳者の文章力で数学が苦手な人でも読みやすい内容になっています。

  • 2015/03/06 Books
    会話のできない中学生がつづる内なる心

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:安元 佐和

    言葉でコミュニケーションの出来ない自閉症の人の豊かな世界を知る事が出来る一冊です。英訳版がアメリカでベストセラーになりました。

  • 2015/03/06 Books
    子供の「脳」は肌にある / 山口創著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:青木 光希子

    子供の愛着形成に関する本に書かれている内容と方向性が一致し、とても納得な内容です。「直接触れる」行為に特化して研究された報告が様々あり、興味深かったです。

  • 2015/03/06 Books
    会話のできない高校生がたどる心の軌跡

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:安元 佐和

    言葉でコミュニケーションの出来ない自閉症の人の豊かな世界を知る事が出来る一冊です。英訳版がアメリカでベストセラーになりました。

  • 2015/03/06 Books
    山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた / 山中伸弥, 緑慎也著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:青木 光希子

    本当にすごい人の説明は、本当に分かりやすい。と、つくづく思いました。研究に向かう姿勢も素晴らしいです。医学生には特に、是非読んで貰いたい1冊。

  • 2015/03/06 Books
    こころをつなぐ小児医療 / 満留昭久著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:安元 佐和

    良い小児科医になるための道標とありますが、子どもや教育に関わる全ての人に必読の書です。

  • 2015/02/26 Books
    ミュンヒェンの白いばら : ヒトラ-に抗した若者たち / 山下公子著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    ナチス支配下のドイツにあって、「狂気」の中で、「狂気」を「狂気」と、果敢にも批判したいくつかの集団があった。その1つが、ミュンヘンを中心とした「白いばら」であった。これを担ったのは、皆さんと同じ世代の大学生であった。この本を読んでいると自分がナチスに追われている気持ちになり、戦慄する。しかし、「白いばら」運動をささえたものは、かれらの宗教倫理、古典に対する素養、それに何よりも「人間性」であったことを知れば、現代日本に生きるわれわれにもおおきな励みともなろう。一読してみたい。

  • 2015/02/26 Books
    路上の人 / 堀田善衛著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    宗教の対立は、21世紀の現代にあっても、人類にとって、深刻な問題を引き起こしている。この書は、ヨーロッパ中世を舞台とし、幾多の主人に従者として仕えたヨナのヨーロッパ遍歴を縦軸とし、正統と異端との間での宗教対立を横軸とした小説である。ヨーロッパとは何か、宗教とは何か、そして、なによりも「人間」とは何かを考えさせられる。「キリストは笑ったか」というのも、1つのテーマとして登場する。

  • 2015/02/26 Books
    ジャン・クリストフ / ロマン・ローラン作 ; 豊島与志雄訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    音楽家ジャン=クリストフの生涯を描いた大河小説である。モデルとなったのが、ベートーヴェンということもあって、ベートーヴェンの伝記と誤解されているが、それに尽きない。ドイツから出発して、フランス、さらに、イタリアと、ことなる文化の相互理解とそれにもとづく人間愛の完成こそが、この小説の根底にあるモチーフである。読者が、少年である時、青年である時、壮年である時で、読み方が変わってくる不思議な本である。

  • 2015/02/26 Books
    寛容について / 渡辺一夫著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    ラブレー研究に生涯を捧げた著者のエッセー集。なかでも「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか」は、読者の肺腑を貫く。著者の答えは、「寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきではない」である。著者は、おもな素材をヨーロッパにおける宗教対立に求めている。しかし、その問題提起は、現代においてこそ瑞々しく、かつ生々しい。著者は、現代においては、「特殊な地域」を除き、「文明国」では、「いかなる宗教も不寛容ではない」し、「宗教の故に死闘は行われていない」という。このことばが、著者特有の「エスプリ」に聞こえるのは、わたくしだけであろうか。

  • 2015/02/26 Books
    江戸時代庶民の法的知識・技術 : 飛騨国を中心に / 中舎林太郎著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    将来を嘱望されながら夭逝した日本法政史研究者の遺作である。飛騨国を中心として、庶民身分でありながら法的知識・技術を有する者が多様に存在し、活動していたことを明らかにし、かれらが有していた法的知識・技術の内容、さらにその習得・伝播の実態について、原史料に即しておこなった研究である。わが国において西洋近代法を継受するインフラがすでに江戸時代に形成されていたことを、生き生きと知ることができる。

  • 2015/02/24 Books
    「世界で戦える人材」の条件 : グローバル企業で30年間伝え続けてきた / 渥美育子著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:大津 敦史

     本書は、アメリカ、日本、その他多くのグローバル企業でこれまで成果をあげてきた最短でグローバル人材になるための、いわゆる「21世紀型学習法」を公開したものです。
     著者は、日本の大学の大学院修了後、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学やトロント大学で学んだ後、イギリスのケンブリッジでの短期留学を経て、アメリカのハーバード大学にその当時あった女子専用のラドクリフ・カレッジに付設されたバンティング研究所で、研究員として新機軸のプロジェクトに参加しています。そのプロジェクトの主なテーマは、ある国や地域固有の価値がどのように他の国や地域に伝播して衝撃を与え、新しい芸術を生んだり、ビジネスモデルを作り出したりという「文化の世界伝播」についてでした。その後、アメリカのボストン郊外で、アメリカ初の異文化マネジメント研修会社を設立し、「タイム誌」に紹介されるなど一躍話題の人となり、数多くのグローバル企業で人材育成や世界市場での戦略策定などを担当してきました。
     そのような著者曰く、日本はこれまで様々な要因から、グローバル化の波に乗り遅れてしまっているけれど、驚くほど豊かな伝統と技術があり、グローバルな潮流にぴったりあったマインドセットに切り替え、時代の先を行く学習方法を身に付けられれば、きっと世界に冠たる国として再生することができるでしょう。本書は、そのような著者の期待と願いを込めて著された「日本人のためのグローバル人材への道」を説くものです。
     私のゼミでは、夏休みの課題として全員に読んでもらい、レポートを書き、その後お互いのレポートを批評してもらいました。その一連のタスクを通じて、真の「グローバル化」の意味を理解し、どのようにすれば「グローバルマインド」を獲得することが可能か、その術を会得することができたようです。
     ぜひ一度、皆さんにも本書を手に取ってお読みいただきたいと切に願っています。

  • 2014/12/26 Books
    会話のできない中学生がつづる内なる心

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:徳永 豊

    人と話をしようとすると言葉が消えてしまう自閉症の著者が、自ら体験していることがらをパソコンの文字を打つことで私たちに伝えたものです。Q&Aの形式になっていて、自閉症である人が、周囲をどうとらえて、どういう理由で、少し変わった行動になるのかを理解できます。いつも落ち着きがなく動いてしまうのは、そうする方が落ち着くからであり、「落ち着きなさい」といわれて動かなくなると、落ち着けず不安が高まるとのこと。なるほど、と読みました。20ヶ国以上で翻訳出版されている反響の大きな本です。興味のある方は、是非!!!

  • 2014/08/05 Books
    医学の歴史 / 梶田昭 [著]

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:斉藤 喬雄

    古代の医療がどのようにして現在我々が学ぶ医学にまで発展したか、ヒポクラテスをはじめ多くの先人の業績を記しながら、医学の歴史を分かりやすく示した好著。ヨーロッパや中国だけではなく、日本における医学の発展についてもかなりの部分を充てている。医学を志す学生には勿論、一般教養として医学の流れを知りたい人々にもお勧めできる。同名の名著として、小川鼎三著の中公新書(39)があるが、ここでは、より新しく内容も充実した本書を推薦する。

  • 2014/07/21 Books
    物理 / マイケル・ブルックス著 ; サイモン・ブラックバーン編 ; 久保尚子訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:武末 尚久

    物理学には探究すべきことがたくさんあります。時計を見ては、時間の性質について思いを巡らせ、太陽の光を感じては、遥かかなたで起きている核融合を想像する。さらに「光とはなにか?」と問いかければ、自然界の最も深遠な謎に首を突っ込むことになります。
    本書は、時間とは何か、重力とは何か、光とは何か、といった基本的な問いから、量子論とは何か、ひも理論とは何か、といった俯瞰的な問いにわたる様々な問い対して、現代の物理学がたどり着いた回答をコンパクトに提示します。
    本書を読み終えたとき、物理学の全体像が把握できるとともに、物理学について新たな思考が身につくでしょう。

  • 2014/07/08 Books
    だから僕は船をおりた : 東京生まれの元漁師が挑む、フードアクション! / 近江正隆著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:添田 祥史

    食、教育、地域再生。このいずれかに興味のある方は、ぜひ読んでみてください。
    著者の近江さんは、東京でも指折りの進学校を卒業するも、大学に進学せずに、北海道を徒歩で放浪しながら漁師をめざします。今でいう6次産業に取り組み、ネット販売の魚部門で日本一の売上を築くも、転覆事故をきっかけに事業を辞め、地域や社会に貢献する道を選びます。その後に手がけた実践がすごい。
    都市と農村をつなぐ。生産者と消費者をつなぐ。学校教育と地域再生をつなぐ。
    いろんなヒントとドラマが詰まった一冊です。

  • 2014/07/01 Books
    バカボンのママはなぜ美人なのか : 嫉妬の正体 / 柴門ふみ著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:築山 泰典

    筆者の生い立ちから、嫉妬に関する考察を深めていく構成である。嫉妬を成長のための糧と捉えながらも、性別によって違う等、大変興味深く納得させられる解釈が展開されている。

  • 2014/07/01 Books
    水危機ほんとうの話 / 沖大幹著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:渡辺 亮一

    2014年3月に水循環基本法と雨水利用促進法が国会で成立し、今後は日本全国において失われた水循環を再生し、雨水を活用していく取り組みが本格化してくる。その中で、日本における水の現状を正しく理解しておくことは、非常に重要であると思われる。著者は、水文学における日本の第一人者であり、この本の中で日本での水循環・利用に関しての様々な誤解や思い込みを正してくれている。今後、水循環や雨水活用の施策立案を考えて行く人には必読である。

  • 2014/07/01 Books
    日本史の謎は「地形」で解ける / 竹村公太郎著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:渡辺 亮一

    『日本史の謎は「地形」で解ける』の続編であるが、内容は非常に興味深い。私が特に興味を持ったのは「日本人の平均寿命を飛躍的に伸ばしたのは誰か?」である。答えは本書を読んでもらえば分かるが、実に意外な人物である。また、「エジプトのピラミッドは何故、建設されたか?」を土木工学的な観点から論理的に説明している部分にも非常に興味を引かれました。「地形」を見直すことで、日本史の謎が解ける!!非常に興味深い内容です。

    文明・文化篇:210.04/TA63/2-2

  • 2014/07/01 Books
    「知的野蛮人」になるための本棚 / 佐藤優著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:渡辺 亮一

    卒論研究の中で、学生に〇〇について調べなさいと言うと・・・ここ最近は必ずウィキペディアの中のある部分をコピペしてゼミで発表する。という様なことが理系の卒論の中でも普通になってきています。学生にしてみるとググることによって簡単に分かる・・・と言いたいところでしょうが、「ネット上の情報はそもそも話し言葉で書かれている場合が多く、文章や内容を読み解いて頭を鍛えることにはなっていない」というのが著者の主張です。私も全く同感で、本を直接自分で読んで自分で得た情報は、必ず脳の中での配置が明確で、今後も使える情報になって行きます。この本は、知的好奇心を満足させるための本の探し方のヒントが満載なので、是非、読んでみて下さい。

  • 2014/07/01 Books
    公共事業が日本を救う / 藤井聡著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:渡辺 亮一

    まずはこの本が書かれたのが2010年である点を強調しておきたい。2011年3月に東日本大震災が発生する1年前、当時、民主党政権による「コンクリートから人へ」という合い言葉のもと公共事業が削減されて行く中で書かれた本である。この本の中で、著者が述べていることは、とても重要であり、今後も日本が世界に対してある程度の影響力を持ちながら、日本人が自信を持ってこの国土で生活していくためには、「コンクリートから人へ」のスローガンは間違えであること、日本という自然災害が多い国土においては今後も適切な公共事業を行っていく必要があることが述べられている。

  • 2014/07/01 Books
    日本史の謎は「地形」で解ける / 竹村公太郎著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:鈴木 慎也

    国土交通省の元官僚の方が書かれた歴史の謎解きに関する本です。地形や気象から見る歴史は、今まで定説と言われていた歴史とは大きく異なる上、地形と気象という「動かない事実」をもとに考察しているため極めて説得力があり、読者はとても痛快な気分に浸れます。著者は土木工学の専門家ですが、他の分野に対しても造詣が深く、だからこそこのような本を執筆できるのだということを実感できるという点でも学生さんにはお薦めです。

    [正]:210.04/TA63/2-1

  • 2014/07/01 Books
    中国「反日」の源流 / 岡本隆司著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    近年、「反日」という言葉を耳にする機会が多くなった。「反日」が起こると、同時代に生きる我々は「反日」が起こったその要因を容易に理解することができる。しかし、「反日」をひきおこし、容易に終息させないメカニズムがどこに由来するのかを理解することは難しい。本書は、この点について指摘している。

  • 2014/07/01 Books
    アイデアの接着剤 / 水野学著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:山内 進

    企画、プレゼンテーション、戦略全てに、アイデアが欠かせません。アイデアのかけらとかけらを接着剤のようにくっつけるときに、新たなアイデアが生まれるといいます。
    自らがアイデアの接着剤となって、新しいものを作り出す方法が、事例等により学べます。

  • 2014/07/01 Books
    農業超大国アメリカの戦略 : TPPで問われる「食料安保」 / 石井勇人著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:田代 安彦

    米国の2/3の舌は日本向け、田中角栄が仕掛けた南米大豆栽培は米中供給85%をブラジル、アルゼンチン47%に変えたが、結局穀物メジャーの手に渡っていることや、米農業のGDPは、1%以下ということ、遺伝子組み換えなど、今後の日本のTPPへの向き合い方を考えるうえで、興味深い。
    『世界の農業と食糧問題のすべてがわかる本』(ナツメ社)などと併せ読むと参考になる。

  • 2014/06/24 Books
    ヘルマン・ヘッセ全集 / [ヘルマン・ヘッセ著] ; 日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会編

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:森澤 万里子

    子供を身ごもったある女性が不思議な老人に,生まれてくる子供のことで一つだけ願いをかなえてやろう,と言われます。彼女は散々考えたあげく,時間切れ直前に,この子が全ての人に愛されますようにと叫ぶのですが生まれた子,アウグストゥスの運命はいかに…
    「愛」をめぐるヘッセの珠玉の名作です。

    アウグストゥス(『ヘルマン・ヘッセ全集』9巻収録)

  • 2014/06/23 Books
    敗者の条件 / 会田雄次著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:井手 豊也

    この本は、World Business Satellite のスミスの本棚で紹介された本で、紹介者の将棋棋士佐藤康光さんによると「日本史、特に戦国時代の「敗者」にスポットを当て、敗者の条件について様々なパターンに分類し、論じています。
    ・・・・・敗者に共通するメンタリティー・行動パターンを分析すると「逆に、勝つにはどうしたらいいか・・」自然と浮き彫りになってきます。」と述べています。私自身も読んでみて、勝つにはどうしたらいいか迄はいきませんけど、大変興味深い本でした。

  • 2014/06/19 Books
    イギリス式お金をかけず楽しく生きる / 井形慶子 [著]

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:山内 進

    日本では、金持ちになるための本が出版されベストセラーになっています。金持ちになれば、人生を幸せに感じるのでしょうか。イギリス人は、住まいに自分で手を加え、自分らしい空間を創っています。ホームパーティーも良く行われて、自然に人との付き合いが行われています。街のパブでは、週末になると、若者からお年寄りまでが、日本で言う町内会のように集まり、素人のバウンドの演奏を聞きながら、楽そうに踊っていました。
    そんなイギリス人の自分らしい、無理のない、楽しむ生き方が今後の皆さんの生き方の参考になれば思います。

  • 2014/06/11 Books
    史上最強の都市国家ニッポン : 逆・日本列島改造論 / 増田悦佐, 三橋貴明著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    若者人口の減少と高齢者の増加により、日本の構造を変革すべき時がきた。自然な成長が期待できず、国にぶら下がる人が増大するこれからの国のあり方を提案している。一定の生産力やGDPの減少により効率化が必要となる。数少ない富をどう使って再投資していくのか、少ない労働人口で多くの年寄りをケアするにはどうしたらいいのか。ケアを受ける弱った老人を減らす、ケアをする人が効率よく動けるように集積する、ケアの費用を高額化してサービスを低下させる、年金を受け取る年齢を引き上げて高齢者には払わなくてすむようにするなどありうるが、彼らは逆日本列島改造を提案している。都市をより効率的な都市へと変え高齢者を吸収せよ、地方は農業を含めて大規模化して人口を減少させる。都市と田舎の明確化が、少ない資源を効率よく使う新しい日本の姿で有るとしている。田中角栄以来勧めてきた地方の都市化の反対の提案であり、考えるべき提案である。 

  • 2014/06/11 Books
    なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか / 若宮健 [著]

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    最近のテレビのCMへのパチンコ業界の進出は非常に目立つ。以前なら深夜などに慎ましやかにあっていたものが、ソフト路線であるが、一般の時間帯に自社を主張している。これまでの電気製品や自動車や化粧品などの主役達はこの不況の中で役割を減らしたためと思われる。 
     パチンコ業界は不況の中でその存在を誇示している。市場規模はかつて医療業界と同等の30兆円を誇っていたが、今では20兆円と下がっているものの、依然勢力を保っている。かつて、韓国にもパチンコ業界があった。たかだか3兆円規模だったらしいが、ほんの最近の2006年に禁止され、韓国から消え失せた。パチンコという麻薬のようなお金の吸い取り紙、その金に群がる政治家などの社会問題により、韓国マスコミが立ち上がり国民運動となった。時の盧武鉉大統領の親族への浸透がやり玉に挙げられた。そして、一気にパチンコが禁止となった。たかだか数千人の利益のために数百万人を泣かせる産業だとの合意である。それに比べ、日本では隅々に金をばらまき、その力を維持している。パチンコ業界が支援する国会議員は民主党に32名、自民党にも12名もいる。これでは日本は危うい。 

  • 2014/06/11 Books
    日本の敵 : グローバリズムの正体 / 渡部昇一, 馬渕睦夫著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    一外交官が、過去から現在までの日本への危機を語ります。国際金融資本の世界的な意図と活動が複雑な現在の外交問題を説明できると著者は書いています。在職中の彼にとって不可解だった事件などを巡り、公的な書籍や文書を使ってひもといていきます。第2次大戦から朝鮮戦争の過程で、アメリカの政府がとった不可解な戦いかたやその後の共産中国の成立までに、世界が金融資本主義と共産主義は対立を装いながら同じ目的で世界を作って行ったことを解説しています。ウクライナ問題で揺れているロシアの動きを含めて、日本の今を理解して未来を予測するのに非常に役立つ本です。

  • 2014/06/11 Books
    シルビオ・ゲゼル入門 : 減価する貨幣とは何か / 廣田裕之著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    減価する貨幣とは何か という副題がついた本である。経済人であり学者であったゲゼルの生い立ちと貨幣に関する著作を解説してゲゼルが生きた第一次世界大戦のころの経済と政治の背景を説明してくれる。そして物質と同じように価値が次第に減耗していく貨幣が現在の経済に役立てる方法を提案している。 

  • 2014/06/11 Books
    医療崩壊の真犯人 / 村上正泰著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    財務省から厚労省へ出向き医療改革政策を行っていた元官僚の医療崩壊に至った経過をその内部から告発をした。本来は国民の健康問題であった高齢者医療の問題を、財政問題から切り込んで抑制策をとった小泉改革。その当然の結果が今日の医療崩壊の原因だと解析する。著者はまさにその政策立案に疑問を持ちながらも関係した。本来、財政問題という事柄ではなく大きな基本政策の一つであった。 
    財政健全化といいながら平均的に圧縮して国民の不満と不安を惹起させた。現実にリーマンショックを含めた経済の崩壊により、不安は現実となり社会問題化して政権交代の引き金を引いたと思われる。読みやすく、現在の医療制度問題を理解するのによい本です。 

  • 2014/06/11 Books
    グローバリゼーション・パラドクス : 世界経済の未来を決める三つの道 / ダニ・ロドリック著 ; 柴山桂太, 大川良文訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    常に日本は未来はグローバリゼーションだとアメリカに言われ、多くのマスコミや学者、英語を公用語にするとか言っている日本の経営者などは、日本の規制撤廃を叫んでいる。TPPはまさにその一つである。一方、民主主義と国民主権は現在の多くの国の基本概念である。筆者はこれらの3並立は不可能で、それぞれが矛盾する関係にあるという。今世界は不安定になってきた。国の方向性を決めるには依って立つ概念が必要であるが、3つのどれに基軸を置くかを考えるときである。

  • 2014/06/02 eBook
    オリンポスの果実

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:長島 和幸

    著者である田中英光は早稲田大学在学中の1932(昭和7)年にロサンゼルスオリンピックのボート競技に出場したアスリートである。と同時に、無頼派の作家として多くの作品を世に送り出す中、1949(昭和24)年、著者が36歳の時、自ら命を絶った。本書は、田中自身のオリンピック参加を題材に上梓したものである。この作品そのものがスポーツ思想の書であることから、スポーツ科学部の学生には是非、一読することをお薦めしたい。

  • 2014/05/30 Books
    華人社会がわかる本 : 中国から世界へ広がるネットワークの歴史、社会、文化 / 山下清海編著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    昨今、日本の都市部においてアジアの人々、特に中国人を見かけることが多くなり、それが当たり前の風景にすらなっている。こうした状況に対し、我々日本人はどのように接していけばいいのであろうか。本書は世界の各地域に形成された華人社会の実態を記している。日本に限定されているわけではないが、中国人が作り出す社会と現地社会との関係を考える上で非常に面白い視点を提供してくれるであろう。

  • 2014/05/30 Books
    スタンフォード大学で一番人気の経済学入門 / ティモシー・テイラー著 ; 高橋璃子訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:山内 進

    わかりやすい例を沢山用いて、経済学をわかりやすく説明しています。経済学の入門書です。
    商学部の学生だけれども、経済学を学んでみたい。経済に二ュースがわかるようになりたい。このような皆さんへのお薦めの本です。スタンフォード大学で一番人気のデイモシー・テーラーによって書かれたものです。これで、皆さんに経済学の知識が身につくといいのですが。

  • 2014/05/30 Books
    アイデアのつくり方 / ジェームス・W・ヤング [著] ; 今井茂雄訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:山内 進

    本書では、成功している出版物、セールス等の成功理由はアイデアを売っているとことだといいます。では、どのようにしてアイデアを手に入れるのでしょうか。
    この謎を解き明かした本です。100頁という小さな薄い本です。
    皆さんの能力や素質が生かし、アイデアを生み出す参考になればと思います。

  • 2014/05/30 Books
    20歳のときに知っておきたかったこと / ティナ・シーリグ著 ; 高遠裕子訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:山内 進

    スタンフォード大学の学生に出された、二時間で手元にある5ドルのお金を増やすという課題の話、その他、企業家や発明家、アーティスト、学者など様々な方々の成功体験が織り込まれています。
    成功の秘密は、自らの情熱と能力と、これらを生かす市場があることなどとも書かれています。
    本書が今後の皆さんの人生選択へのヒントになればと思います。

  • 2014/05/30 Books
    まちづくりの新しい理論 / C・アレグザンダー他著 ; 難波和彦監訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

    現代都市計画には、マスタープランが必須というのが通説である。ところが、こうしたマスタープラン主導の都市計画理論に対する根強い反対意見がある。とりわけ、C.アレクサンダーは、1960年代から、その著、「形の合成に関するノート/都市はツリーではない」において、一貫して伝統的な計画概念(ツリー)を否定し、新しい計画概念(セミラティス)を唱え続けてきた。彼は、その後、ワークショップ・スタイルのまちづくり手法を独自の観点から改良し、カリフォルニア大学の大学院生と共に架空のまちづくりシミュレーションを行い、その成果を「まちづくりの新しい理論」にまとめている。彼は自然発生的な都市空間の持つ、ある種の情感がどのようなプロセスを通して生み出されるのかを明らかにし、「成長する全体」、「ルール」、「実験」、「センタリング・プロセス」といったキーワードを用いて、「新しいまちづくりの理論」を展開している。
    ※参考:「形の合成に関するノ-ト」(所蔵あり/BN00176749)

  • 2014/05/30 Books
    「なりたい自分」になる心理学 / 國分康孝著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:小浜 輝彦

    心理学=「相手の心を読む」、「相手を操作する」ものと誤解している人や、自分のことは今の自分が一番分かっていると思い込む人は案外多い。本来、心理学とは人の心の仕組みを知ることで己を知り、自分がいかに楽しく生きるか、人生をより充実したものにするかに活かす学びであると思う。何かに迷っている、不安を抱えている若者にぜひ一読してほしい本である。

  • 2014/05/30 Books
    大学生のためのリサーチリテラシー入門 : 研究のための8つの力 / 山田剛史, 林創著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:坂田 力

    タイトルの「リサーチリテラシー」とは、研究(リサーチ)を遂行するために必要な基礎的能力のことです。この本には、大学で専門を学ぶとき、あるいは卒業論文に向き合おうとするとき、大学生が身につけておくべき基礎能力が紹介されています。具体的には、「聞く力」「課題発見力」「情報収集力」「情報整理力」「読む力」「書く力」「データ分析力」「プレゼンテーション力」についてわかりやすく解説されています。ノートの取り方からレポートの書き方、学術的文章の読み方まで、大学生の皆さんに是非読んで欲しい一冊です。

  • 2014/05/30 Books
    現代中国経済 / 丸川知雄著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    経済成長とともに中国は「世界の工場」と呼ばれるようになった。本書は、そのように呼ばれるようになった工業の成長について解明している。一方で、こうした成長とともに発生した多くの問題点を指摘し、中国の未来について展望している。

  • 2014/05/30 Books
    華僑・華人と中華網 : 移民・交易・送金ネットワークの構造と展開 / 濱下武志著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    近年、中国経済の発展が注目されているが、それ以前より、世界には華僑と呼ばれる中国人によって広域の商人ネットワークが形成されていた。本書は華僑商人によって形成されたネットワークを「中華網」と呼び、中国国内経済の分析からは見えてこないもう一つの中国人のダイナミズムを提示する。

  • 2014/05/30 Books
    進化する中国の資本主義 / 加藤弘之, 久保亨著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    資本主義の発展過程は地域によって大きく異なる。それは、近年の中国経済の発展過程からも明らかであろう。本書は、中国の資本主義と先進国の資本主義の同じ点、異なる点について市場秩序のあり方及び政府の役割に注目しながら提示している。

  • 2014/05/29 Books
    分子集合の世界 : 熱と温度の測定を通して視る / 関集三講話

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:祢宜田 啓史

    阪大理学部化学科で、「物理化学」研究室の教授をされていた関集三先生が、自分がやってこらえた熱物性の研究を、化学に興味の持っておられる方々に語られたものである。話は、先生の恩師である仁田勇先生の研究室に卒論生として入られたところから始まる。続いて、自作された装置の話、ガラスをはじめとする固体の相転移、界面活性剤の相挙動、などが取り上げられている。特にガラスに関する内容は、先生のライフワークであり、非常に読み応えがある。

  • 2014/05/28 Books
    ひらめきの物理学 : 身近な物理現象を77のパズルとパラドックスで解き明かす / マーク・レヴィ著 ; 森田由子訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:武末 尚久

    この本は、物理学に関する「パラドックス(いろいろな楽しい難問)」とそれらの解説からなります。この本を読んでいくと、高校、大学の物理の知識が活かされることが分かります。また、この本の内容は、物理を学んでいない人と雑談をするときの話のネタにもなります。この本を読んで、直感力、論理的思考力、批判的思考力を養って下さい。

  • 2014/05/28 Books
    殺人犯はそこにいる : 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件 / 清水潔著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    5年前に釈放された冤罪「足利事件」を覚えている人も多いと思う。
    実は同様の少女誘拐殺人事件が半径約10kmの地域で5件発生しており、それらはいずれも未解決のままであるとしたらどうだろうか。精度の低いDNA型鑑定で冤罪の元となる犯罪を確定したため、都合の悪い他の事件に全く触れないとしたら、この国の司法制度はどうなっているのだろうと危惧する人も多いと思う。ただ捜査方法や司法のあり方だけに問題があるのではなく、日本の宿痾ともよぶべき組織の無謬性にあるような気もするのだが。
    一方、記者クラブを使った情報操作は特定秘密保護法案よりこわいかもしれない。
    著者は「桶川ストーカー殺人事件」で犯人を特定した伝説の記者で、今回も犯人らしき人物を特定している。
    事実は小説よりも奇なり。

  • 2014/05/28 Books
    脳内麻薬 : 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体 / 中野信子著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    覚せい剤で退学になる事例も発生しており、薬物の問題はかなり身近になってきたといえる。本書はあらゆる依存の元となるドーパミンの働きについて解説したものである。副題は人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体とあり、脳内回路「報酬系」の働きにより、ドーパミンが良く(達成感)も悪く(依存症)も作用することが述べられている。本書を読むと人間の愚かさが見えてくる。依存の元となるもの(タバコ、アルコール、ギャンブル、ゲーム等々)に近づかないのがベストだが、味気ない人生のような気もするので、最低限ドラッグだけには近づかないことをお勧めします。

  • 2014/05/28 Books
    下に見る人 / 酒井順子著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    著者は「負け犬の遠吠え」で一世を風靡したエッセイスト。独特の視点で世の中を斜めに切る筆調が著者の持ち味ともいえる。この本ではイジメや差別というものに切り込んでいるが、被害者ではなく加害者の観点からいじめる動機やメカニズムに踏み込んでいることが新しい。本人の幼い頃から現在までの、どんな時になぜ「上から目線」で見たのかを自己分析している。『世の中をざっくり上下に分けるとしたら、その境界線に近いところにいる人ほど、他者を下に見たいという欲求は強くなるのです。それは自らのポジションを死守するための自衛手段と言うことができるでしょう。』とは至言です。差別することとは自分自身に対する自信の無さから起こるのです。

  • 2014/05/28 Books
    激変!「糖尿病治療薬」最前線 : キーワードは「低血糖を起こさない」「やせる」「血糖コントロールがラク」 / 鈴木吉彦著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    糖尿病は21世紀の国民病であり,その制御は国民皆保険制度をもつ我が国にとって喫緊な課題である。
    そんな中で注目は,2014年発売開始となった大型新薬「SGLT2阻害剤」である。
    なんと尿からのブドウ糖取り込み(再吸収)を阻害するという薬で,結果,尿中にブドウ糖をダダ漏れさせる。
    糖尿病治療薬でありながら糖尿病という状況を作り出すという一見,たちの悪い冗談のような新薬である。
    ただ血糖値は,ダダ漏れする分下がるので,高血糖に伴う怖い合併症は避けられることとなる。
    「糖尿病」は「高血糖症」と言い換えるべき時代がやって来たのかもしれない。
    SGLT2阻害剤だけではなく,既存の新旧治療薬との対比や理想的な併用の示唆もあり医療系の学生に是非お勧めする。

  • 2014/05/28 Books
    意外と会社は合理的 : 組織にはびこる理不尽のメカニズム / レイ・フィスマン, ティム・サリバン著 ; 土方奈美訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    入ってみるまで分からないのが会社という組織である。
    たぶん就活する学生にとって悩みの種であり、うわべの姿にあこがれて入社するとすぐに離職となってしまうだろう。本書は海外の企業(組織)の事例を取り上げ、マグドナルドからボルチモア市警、宗教組織(教会)、アメリカ陸軍はてはアルカイダまで、横断的に組織を比較した希有の書である。
    仕事を成し遂げるために存在する組織がいつのまにか肥大化し、コスト増から市場に吸収される。不適切なインセンティブを設定すると、無灯火自転車の逮捕など本質的な目標から遠ざかってしまう。しかし、一見、不合理の塊のような会社組織が意外と合理的であるという結論に達している。
    就活を始める前に一読をお勧めします。

  • 2014/05/28 Books
    糖質制限からみた生命の科学 / 夏井睦著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    著者は傷の湿潤療法を提唱した医師であり、自身の体を使って試すことで説得力を増している。糖尿病が国民病になりつつある現在、最も有効な手段は糖質制限にあることは自明である。しかし、なぜか糖質制限は体に有害であるとの説もまことしやかに囁かれているのも事実であり、著者の反論は手厳しい。ただ、この本の価値は「カロリー」という概念に真っ向から疑念をたたきつけたことがユニークといえる。実はカロリーの算出法は化学的に計算された数値に基づいており、細胞内の代謝とは関係のない値であるらしい。摂取カロリー量の多寡で太るわけではないのである。また脳に必須のブドウ糖もアミノ酸や有機酸などから代謝(合成)されるので心配はいらない。著者の説は進化にまで踏み込み、結論は「炭水化物が人類を滅ぼす」となる。信じるのは自由でありますが、少なくとも減量には効果抜群です。

  • 2014/05/27 Books
    オレ様化する子どもたち / 諏訪哲二著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:築山 泰典

    永年、高校教諭として子どもたちと関わってきた筆者が、その変化の様子を的確に捉えた内容である。現代の子どもたちの特性として、幼児期の全能感が消失しないこと、また教育における教師から生徒への授業が、「贈与から等価交換」に変化している状況より、学級崩壊を解釈している。後半は、近年出版された青少年教育課題を対象とした書物に対する書評にて展開される。教育者を目指す学生は是非、一読いただきたい。

  • 2014/05/21 Books
    夢をかなえるコツ : ビジネス・受験で勝者になる日本スポーツ史上最強のメソッド"セルフ・ディレクション" / 白石豊著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:米沢 利広

    著者の白石先生は、福島大学の先生で、学生時代は体操競技の選手でした。その後、スポーツ選手のメンタルトレーナーとして多くのチーム、選手を指導してきました。
    この本では、4人のトップアスリートに対するメンタルとー二ングと二人の高校生が「夢の実現にチャレンジする」物語が書かれています。スポーツ科学部の学生にとっては、専門種目の競技力を向上させるヒントが多くあります。また、社会人になったとしても大いに参考になる図書だと思います。

  • 2014/05/20 Books
    アンネの日記 / アンネ・フランク著 ; 深町眞理子訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:伊藤 亜希子

    アンネ・フランクの名前は聞いたことがあっても、日記を読んだことがあるという人が最近少なくなってきました。ユダヤ人であるアンネは、ナチス・ドイツのユダヤ人迫害が進む中で、約2年間の隠れ家生活を送りました。その最中も彼女は日記を書き続けます。10代の少女の夢や希望、親子関係、恋について、ときには軽やかに、ときには苦しみを伴って彼女はことばを綴ります。そして、ユダヤ人迫害が進む社会における理不尽さ、戦争や平和について、少女の視点から鋭く捉えています。
    差別や偏見から生じる理不尽さ、不平等、争いなどは、私たちが生きる現在の世界でも未だに課題として存在しています。彼女が日記を通して今日もなお私たちに語りかけるものを、是非大学生の若い感性で捉えてほしいと思います。

  • 2014/05/20 Books
    教師が育つ条件 / 今津孝次郎著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:伊藤 亜希子

    在学中に教職課程の授業を履修し、教員免許を取得しようとする人、教育に興味がある人に是非読んでもらいたい本です。著者がこれまでの調査研究で拾い上げてきたさまざまな教師の声をもとに、教師がどのような経験を通して教師として育てられていくのかという点に着目し、「教師が育つ条件」を検討しています。教師は子どもを育てる仕事をしていますが、それと同時に子どもや保護者、他の教員との関わりのなかで教師自身も育てられていきます。今日の教師が置かれている状況、教師に求められる資質や能力、教師の成長につながるさまざまな機会について、教師の声を多く紹介しながら論が進められるので、非常に読みやすい本です。教師の実際や現在の教師を育てていくさまざまな制度の諸課題などについても、具体的に触れることができます。

  • 2014/05/20 Books
    そこに僕らは居合わせた : 語り伝える、ナチス・ドイツ下の記憶 / グードルン・パウゼヴァング著 ; 高田ゆみ子訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:伊藤 亜希子

    今を、そして未来を生きるために、私たちは過去から学ぶものが数多くあります。この短編集は、<普通>のドイツ人がナチス支配下でどのように暮らしていたのかを描いたものです。当時のドイツ人が知らず知らずのうちにナチス・ドイツの体制に順応していった様子、隣に暮らしていたユダヤ人を「ご近所さん」として当たり前に匿おうとした様子などが、著者の実体験や実際に見聞きしたエピソードを下敷きに物語として描かれます。多感な10代をナチス支配下のドイツで暮らした世代が当時を思い出しながら語る物語は、単にナチスの思想を非難するにとどまらず、当時を生きた人々のさまざまな感情を私たちに伝えてくれます。
    世代を超えて、語り継いでいかなくてはならないこと。著者は物語という形でこのことに真摯に向き合っています。過去に向き合うことなしに、私たちはしっかりとした未来を築くことはできないのではないでしょうか。この本が私たちの過去・現在・未来について考えるきっかけになればと思います。

  • 2014/05/16 Books
    ここ : 食卓から始まる生教育 / 内田美智子, 佐藤剛史著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:小清水 孝子

    「性を大切にしようと思えば生が大切になる。生を大切にすれば食が大切になる。「性」と「生」と「食」はつながっていたのです」。助産師である筆者が、思春期の子供達の様々な「性」の悩みに向き合う中で、家族で食卓を囲むことの大切さを訴えています。食べることは、空腹を満たすだけではなく、心も満たしてくれるものであるはずです。
    今、自分が生きていることの奇跡、食卓の大切さ・・・
    これから社会に出て、近い将来、父や母となるであろう大学生に、ぜひ読んでもらいたい1冊です。

  • 2014/05/16 Books
    ジムに通う人の栄養学 : スポーツ栄養学入門 / 岡村浩嗣著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:小清水 孝子

    スポーツ選手がトレーニングを効率的に行い、コンディションを良好に維持し、競技特性にあった体づくりを行うためには適切な食事・栄養摂取が重要です。このことは健康づくりのために運動をしている人にも同様です。
    この本では、健康づくりのために体を動かしている方が、日ごろの運動と栄養・食事の効率を高めるための情報が、科学的なエビデンスに基づいて、わかりやすく書かれています。
    スポーツ栄養学を学びたい方の入門書としてお薦めです。

  • 2014/05/15 Books
    次郎物語 / 下村湖人著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    若くして短歌の才能を讃えられ、髙田保馬の畏友でもあった佐賀出身の著者の自伝的小説。最近ようやくその生家を訪問し、短歌「母の骨」の凄さに惹かれ再読した。著者が学んだ佐賀中学は、わたくしの母校=佐賀西高等学校の前身校であることもあって親しみを覚える。人格の形成とは、いかにしておこなわれるべきかを、あらためて学んだ。

  • 2014/05/13 Books
    煩悩の文法 : 体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話 / 定延利之著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:山本 大地

    「庭に木がある」と言うが「庭で木がある」と言うと不自然なことは、日本語を母語とする我々は即座に判断できる。しかしそれがなぜかと問われて答えられるだろうか。「えーと『庭でパーティがある』とは言えるから、『で』というのは『木』のようなモノではなくてデキゴトの場所を表す言葉なんだ!」等と考えたあなたは一つの立派な仮説を立てたと言える。しかし、四色ボールペンのような便利なものは日本にしかないと思っている人に対して「四色ボールペン、北京でありましたよ」と言うのは不自然ではない。「四色ボールペン」はデキゴトではなくモノなのに...
     本書は体験を語りたがる人間の煩悩という観点からこのような現象に説明を試みたものだが、仮説を立てる→反例を挙げる→新たな仮説を考える、という学問の基本な手順を学ぶ上でも得るものが多いだろう。

  • 2014/05/02 Books
    日米・開戦の悲劇 : 誰が第二次大戦を招いたのか / ハミルトン・フィッシュ著 ; 岡崎久彦監訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    アメリカの政治家であるフィッシュは、大東亜戦争が太平洋戦争へと進んだ経過をアメリカの罠に架かっていった日本の悲劇であることを発表した。当時アメリカのルーズベルトは公約として世界戦争には加わらず不戦を掲げて大統領に当選した。アメリカ国民はドイツや日本との戦争を望まなかったため、ドイツから攻められイギリスから援助の要請があっても容易に動くことができなかった。また日本も注意深くアメリカとの戦線を開くことがなかった。そのため、アメリカは日本からの攻撃を誘発させるための裏からの中国支援(フライングタイガース)・ABCD経済封鎖を強めて、暗号解読に成功後は日本からの平和交渉を引き延ばし、最終的にハルノートにて、日本の対アメリカ戦争へのスイッチを入れさせた。当時すでに真珠湾攻撃も予測できていたが、それへの対応をわざとせずに、奇襲攻撃をさせた。一番の目的はアメリカ国民を戦争へ駆り立てることだった。不覚にも反戦主義のフィッシュ当人すら騙され、真珠湾攻撃を知ってからは対日戦争を鼓舞する演説を行ったという。
     第二次世界大戦の帰趨を決めるアメリカの参戦は、ルーズベルトの策略にはじまり、原爆の人体実験、ソ連との密約をへて、世界共産化の奔流、冷戦構造へと流れていった.アメリカの政治家フィッシュの回想録で古いものだが読み応えがあり絶版になっているのが非常に惜しい。

  • 2014/05/02 Books
    感応する環境 : デザイナーのための都市デザインマニュアル / I.ベントレイ [ほか] 著 ; 佐藤圭二訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

    今日、都市計画の課題は、コンパクトシティによる中心市街地の活性化と、都市と農村を含む広域計画である。この本は、前者、特に歩行者空間に関連した都市デザインがとりあげられている。日本では1960年代の後半から都市デザインが議論され、C.アレクサンダーやK.リンチの方法論が取りざたされたが、やがて都市デザインは景観論に置き換わり、法制度や土地利用の問題として考えられるようになった。しかし、都市を構成する一つ一つのパーツの組み合わせとして景観が立ち現れる訳であり、より良い都市デザインは小さなパーツを受け持つデザイナーの手腕にかかっているとも言える。この本は英国で読み継がれ、パーミアビリティ(都市空間の浸透性)などの興味深い概念も扱っている。

  • 2014/05/02 Books
    オランダの持続可能な国土・都市づくり : 空間計画の歴史と現在 / 角橋徹也著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

    オランダは、国土の半分近くが海抜ゼロメートル地帯にあり、国土の1/3が人工的に干拓によってつくられた、九州とほぼ同じ面積、人口、GDPを有する地域である。こうしたフラットな国土に、人口70万人以下の中小都市が分散し、鉄道や高速道路で効率的にネットワークされている。オランダは、福岡への一極集中が進む九州とは、様々な意味で対照的な地域・都市計画を進めてきた。とりわけ、公共交通や自転車交通による低炭素化や男女共同参画社会など、見習うべき多くの取り組みが見られる。本書はオランダにおける国土づくりの歴史から、コンパクトシティ政策を経て21世紀型の持続可能性をめざすオランダモデルまでが、丁寧に語られている。

  • 2014/05/02 Books
    人口減少時代の大都市経済 : 価値転換への選択 / 松谷明彦著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    環境が改善し医療が進歩することで、思いもよらない長い人生が享受できるようになった。しかし、それを予測できなかった日本の年金保険制度、医療制度は持続不可能になっている。これからの日本の姿を分析し、新しい世界を提案する。
    これからの少子高齢化の日本では
    これまでの大量生産型の産業ではやっていけない
    都市は急速に経済効率を悪化させる
    大都市ほどその衝撃が大きい
    移民ではなく外国企業を受け入れよう
    高度な製品の生産にたえる体制と人材を育成しよう
    等の提言をしている。

  • 2014/05/02 Books
    不死細胞ヒーラ : ヘンリエッタ・ラックスの永遠 (とわ) なる人生 / レベッカ・スクルート著 ; 中里京子訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:浦 綾子

    この本は、不死細胞つまり死なないヒーラ細胞にまつわる衝撃の事実が綴られています。永遠の命を与えられた癌細胞は、1951年から今も世界中の研究室で生きています。そして、医学界の重要なツールとなり多くの研究の礎となりました。しかし、癌細胞の主であるヘンリエッタは、自分の細胞の一部が死後60年以上も生き続け、医学に多大な貢献をし続けていることを知らず、家族や子孫の誰も知らないのです。
    ・・・ヒーラ細胞は、私たちに科学や倫理学、人種や階級に関する重要な課題を分かりやすく教えてくれます。

  • 2014/05/02 Books
    アメリカの鏡・日本 / ヘレン・ミアーズ [著] ; 伊藤延司訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    日本の敗戦後アメリカは日本を占領して、多くの占領政策を行っていた。GHQが日本人へwar guilt programを実行しているとき、著者はアメリカから日本へ来た。そして占領政策を進めるアメリカを見て、この本を記したが、当時のマッカーサーはこれを発禁とした。日本を軍国主義として罪を着せ二度とアメリカに刃向かわないようにしようとするアメリカが本来は断罪されるべきだと、この本で述べている。経済・教育・文化などの日米分析は感動させられる。そして今の世界が100年前と同様の環境にあることが理解でき、日本のすべきこともわかる。

  • 2014/05/02 Books
    持続可能な発展の経済学 / ハーマン・E・デイリー[著] ; 新田功, 藏本忍, 大森正之共訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名::志村 英生

    いま、日本は不況の中にある。多くの若者が就職できないまま、浮遊状態にある。一方既得権を持つそれより上の世代は苦しいもののデフレの効果で大きくは変わらない生活を送っている。一方、年間3万人を超す自殺者が発生しており、多くが中年世代である。かつて交通事故が年間1万数千人になった頃、国を挙げて問題にして対策を取ってきた。しかし若者の就職難など大きくは問題としないままでは、断絶した世代間の闘争勃発の可能性もある。ところが幼いことから戦うことを否定された教育を受けた若者は戦わないまま逃げ込み引きこもっている。
     日本の政治はこの現状を改善しようと史上最大の国債発行となりながらも、現在だけでなく未来からも借金して今の国民へ配ろうとしている。拡大しなければ・成長しなければ、豊かにはなれないとの思い込みに政治の不安定が続いている。
     デイリーは持続的に成長を続ける経済は今後不可能であることを示し、成長ではなく発展を目指す様に変えていくべきだと考えた。これまで産業革命の時から、大きな化石エネルギーを使いながら人類は大きく生産力を拡大して、食料・機械・環境・物質などを消費してきた。そしてそれに合わせるように人口が増加してきたが、グローバル化で活性化されたこれまで押さえられていた大きな人口を抱える中国やインド、インドネシア、ブラジルなどなどの人たちの生活向上(=エネルギー消費)は地球の限界を超えようとしている。その危惧から、人口抑制とエネルギーや資源の利用効率向上を提案する。世の中のCO2削減問題でも、途上国は先進国のこの危惧に対して、「これまで自分たちがよい目に会っていたのだから途上国にもそれをする権利がある」と主張しまとめることができていない。しかし、現実には中国の世界中の資源獲得戦争は世界で大きな摩擦も起こしていくだろう。覇権がアメリカから中国に移行している現在のこれからの方向性を示し予言する書でもある。
     資本が資本を拡大していくアメリカ資本主義は限界となり終焉が間近である。資本の暴走をどう抑えて社会の改善に生かすのか、これからの課題と思われる。

  • 2014/05/02 Books
    国難の正体 : 日本が生き残るための「世界史」 : 元大使が緊急提言 / 馬淵睦夫著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    一外交官が、過去から現在までの日本への危機を語ります。国際金融資本の世界的な意図と活動が複雑な現在の外交問題を説明できると著者は書いています。在職中の彼にとって不可解だった事件などを巡り、公的な書籍や文書を使ってひもといていきます。第二次大戦から朝鮮戦争の過程で、アメリカの政府がとった不可解な戦いかたやその後の共産中国の成立までに、世界が金融資本主義と共産主義は対立を装いながら同じ目的で世界を作っていったことを解説しています。ウクライナ問題で揺れているロシアの動きを含めて、日本の今を理解して未来を予測するのに非常に役立つ本です。

  • 2014/05/01 Books
    職業としての学問 / マックス・ウェーバー著 ; 尾高邦雄訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    研究対象にひたすら沈潜することこそが、人格形成への道であること、そして、堅い岩盤に穴を開ける労苦を厭わない者だけが、政治家たりうることを教える本。翻訳もさることながら、ドイツ語原文での精読を勧めたい。この著者の『一般経済史要論』第4章を、ドイツ語で読んだのは、大学1年生の秋から大学2年生の夏にかけてであった。
    (『職業としての政治』他、著書多数)

  • 2014/05/01 Books
    ローマ法 / 原田慶吉著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    著者は、その生涯を、ローマ法研究に捧げた。この本は、教科書として、第二次世界大戦後まもなく出版された本である。しかし、日本では、いまだに、この本を凌駕するローマ法の教科書は出現していない。法律、とくに民法の勉強が進めば進むほど、この教科書の偉大さを実感できる。学部学生のみならず、大学院学生にも一読を勧めたい。

  • 2014/05/01 Books
    市民法の理論 / 原島重義著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    2013年12月21日に逝去した民法学者の論文集。とくに、「民法理論の古典的体系とその限界」、「わが国における権利論の推移」、「契約の拘束力」の諸論文は、民法学を学ぶ皆さんにとって、必ずや「導きの星」となるだろう。40年前の著者にお教えを初めてうけて以来、これらの論文は、わたくしを叱咤激励してくれた。

  • 2014/05/01 Books
    罪と罰 / ドストエフスキー作 ; 江川卓訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    その名が知られているわりには通読した人が少ない本。これを読めば、読者は、主人公の心に乗り移って、殺人にいたる動機から罪の告白までを追体験することができる。ページを繰るたびに、ドキドキしてくるから不思議だ。法律の勉強を志す人、将来、警察官・検察官・裁判官・刑務官・保護観察官になりたい人にぜひ一読を勧めたい。

  • 2014/04/08 Books
    わがいのち月明に燃ゆ : 一戦没学徒の手記 / 林尹夫著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    第二次世界大戦末期に戦死した若き学徒の日記および論文。いまは亡き兄がこの本をプレゼントしてくれたのは、わたくしが高校1年生の夏であった。一読して、その語学力・読書量・教養に驚嘆した。とくに、新一年生に勧めたい、わたくしの座右の書である。

  • 2014/04/08 Books
    中世農民の世界 : 甦るプリュム修道院所領明細帳 / 森本芳樹著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    著者は、その生涯を、初期中世ヨーロッパ社会経済史研究に捧げた研究者である。わたくしは、門外漢ながら、学部学生の時から、著者の業績に畏敬の念を覚えていた。一読すれば、著者のライフワークが浮かび上がってくる。「現代思想の先端に触れていなければならないはずの歴史家も、真面目な仕事をしようとすればその時間の大半は職人的な作業に費やさなければならない」との著者の「あとがき」を、けっして忘れることはあるまい。

  • 2014/04/08 Books
    アジア太平洋戦争 : 斃 / 太宰治他著 ; 浅田次郎 [ほか] 編集委員 ; 北上次郎編集協力

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    カエサルの『ガリア戦記』にも似た研ぎ澄まされた文語による体験記。戦艦大和の最後の出撃・轟沈から救出・帰還にいたる状況を、叙事詩にも似た文章でつづる。戦争の悲惨な現実を知ることもさることながら日本語の美しさをあらためて実感できる一冊である。

    戦艦大和ノ最期(『アジア太平洋戦争 : 斃』収録)

  • 2014/04/08 Books
    マルコ福音書 ; マタイ福音書 / 田川建三訳著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    本文124ページ、註725ページから成る本書を手に取れば、ギリシア語の「テキスト」が読めるということは、どういうことかが、わかる。古典研究のみならず、法律条文の解釈にあたっても、本書は、たいへん参考になる。ぜひ、一読してほしい。

  • 2014/04/07 Books
    これが物理学だ! : マサチューセッツ工科大学「感動」講義 / ウォルター・ルーウィン著 ; 東江一紀訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:武末 尚久

    著者は、マサチューセッツ工科大学の教授であり、物理学の教鞭をとっている。この本は、著者が行った講義をまとめた書である。著者は、物理学の基礎が「人に感動を与える 美しいもの」であることを説いている。インターネットで無料視聴できる著者の講義では、「物理を体感する」様子がよく分かる。

  • 2014/04/05 Books
    顔をなくした数学者 : 数学つれづれ / 小林昭七著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:陶山 芳彦

    著者の小林昭七先生は、アメリカの超一流大学であるカリフォルニア大学のバークレイ校で長く教授をされ、幾何学で世界的な業績を挙げられた方である。一方で、日本の大学の数学教育にも大きな関心を持たれ、この事に関しても色々の形での提言をされている。
    この本は、先生のエッセイ集であり、先生の数学に対する思いが数学を研究する研究者本人への興味にまでも及んでいる。何も難しい数学が書かれている本ではないので、楽しく読める事と思う。
    特に現代数学の源泉としてのギリシャ数学の紹介の部分も興味深く読めるのではないかと思う。数学の先生を志望する学生には、特に、一読を勧める。
    最後に本応用数学科と先生との繋がりについて述べておく。
    先生は2003年の8月に逝去されたが、その前の10年以上に亘り本応用数学科に毎年1ヶ月滞在された。この滞在中には、何度も学部学生に対する講演や先生方に関する講演をしていただいた。従って、先生は私達の学科にとって大変親しい方であった。

  • 2013/07/09 Books
    この数学者に出会えてよかった / 数学書房編集部編

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:秋山 獻之

    良い先生、良い数学者に出会うことは、数学を志すときに非常に大きな要素である。ここでは、16人の数学者により、それぞれの数学者との出会いが書かれている。専門分野の記述も多く、分かりにくいところもあるが、良い数学者との出会いが数学を学ぶ力になることを感じることが出来るだろう。

  • 2013/07/04 Books
    人間臨終図巻 / 山田風太郎著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:平松 智久

    英雄、武将、作家、芸術家、芸能人から犯罪者まで、ありとあらゆる「死に様」だけが年齢順に羅列されたこの二冊の伝記集は、私たちに今「いかに生きるか」を問いかけてきます。『上巻』で紹介されるのは、15歳から64歳までに命を落とした455名の生。『下巻』で描写されるのは、65歳から121歳で死を迎えた450名の命の輝き。試しにあなたの現在の年齢のページを開いてみてください。きっと自分の今までの人生を振り返らざるにはいられないでしょう。明日を生きのびるために、是非手に取ってもらいたい本です。

  • 2013/06/27 Books
    食える数学 / 神永正博 [著]

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:鈴川 一己

     日本では「数学は美しい」という内容の啓蒙書が多い中、「実用的な数学」を紹介したユニークな本です。著者は数学科卒⇒大学⇒企業⇒大学と渡り歩き、それぞれの場所で苦悩を味わった経験を元に書かれています。日本では学校の教科書でも「数学の美しさ」を強調する傾向がありますが、「数学は役に立つ」という視点から書かれたこの本は貴重なものです。理工系の皆さんに読んでほしい本です。

  • 2013/06/26 Books
    日本プロ野球改造論 : 日本プロ野球は、日本産業の縮図である! / 並木裕太 [著]

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:永星 浩一

     かつては規模が同じだった日本プロ野球とメジャーリーグが、ここ15年間で総収益で4倍の差が付いたという事実。旧態然たる日本プロ野球と改革を続けるメジャーリーグをスポーツビジネスとして比較し、日本プロ野球に何が欠けているのかを明らかにしていく。スポーツビジネスに関心がある人には必読の書である。

  • 2013/06/26 Books
    大便通 : 知っているようで知らない大腸・便・腸内細菌 / 辧野義己著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    手に取るのをためらうようなタイトルですが、中味は至って大まじめです。腸は食物の消化吸収をつかさどる器官だけではなく、同時に免疫をつかさどる器官でもあることが分かってきました。善玉菌、日和見菌、悪玉菌それぞれのネットワークがもたらす腸内細菌と病気の関係。そればかりか、太りやすい菌と太りにくい菌による肥満と腸内細菌の関係には驚愕します。あなたも食生活で善玉菌を増やしてみませんか。これから「育菌」の時代がくるかもしれませんよ。

  • 2013/06/19 Books
    中国の市場秩序 : 17世紀から20世紀前半を中心に / 古田和子編著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    近年、中国経済の成長が著しい。しかしながら、中国市場経済の発展パターンは特徴的である。この要因は近代以前にあると考えられる。本書は、近代以前の中国に形成された中国市場経済の特徴について市場およびそれを支える秩序を中心に検討している。

  • 2013/06/19 Books
    近代中国を生きた日系企業 / 富澤芳亜, 久保亨, 萩原充編著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    近年、近代中国経済史研究者の間でもささやかれていることであるが、現代(21世紀初頭)中国で起こっている経済事象と20世紀初頭の中国で起こっていた経済事象の間には多くの共通点が見られる。本書で取りあげられている在華日系企業もその一つとして位置付けられるであろう。在華日系企業の活動実態を解明し、近代日本・中国経済に与えた影響とともに中国社会に与えた影響を明らかにするという本書の課題は、今日的な経済問題を考える上でも重要な視点となろう。

  • 2013/06/17 Books
    ニッポンの底力 / 町田宗鳳 [著]

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:築山 泰典

     比較文明学者の立場からの論点ではあるが、作者は仏教にもキリスト教にも精通した宗教学者でもあり、多面的な解釈を用いながら、日本文化を肯定的に解釈しながらも、今後の日本の進むべき姿を提示されている。今日的な我国の課題を捉えながら、その立ち位置を再考する機会ともなり、社会人となる前の学生期に、読んでおくことをお勧めしたい。

  • 2013/06/12 Books
    明かされなかった福島原発事故の真実 / 朝日新聞特別報道部著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    東日本大震災による悲劇は震災当日で終わらず、福島第一原子力発電所の事故により大幅に増幅され、福島の将来に暗雲をもたらす結果となりました。本書は、あの日から何が起きたかを綴った朝日新聞の連載記事をまとめたものです。ここで判ることは、放射線量などの測定データを隠そうとする人達が少なからず居たということです。特に緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)のデータを結果的に全く生かせなかったことが、大量の被曝者を生み出すことになったのは残念なことです。「不安を招くから」という理由での情報隠蔽は今も続いているような気がします。

  • 2013/06/06 Books
    本当は強い阪神タイガース : 戦力・戦略データ徹底分析 / 鳥越規央著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:永星 浩一

     本書は「マネーボール」という映画で取り上げられ注目されるようになった、セイバーメトリクスの手法を詳しく取り上げている。この手法は、野球を統計的手法で分析し、選手獲得や起用、評定に役立てるものであり、実際、過去の阪神タイガースに適用してその戦力分析を試みている。結果からすると、弱いと思われていた阪神タイガースは意外と強い球団であった(はず)という。ではなぜ、結果はそうではなかったのか?その点については、本書を読んでお考えいただきたい。また、有名選手や歴代監督のチームに対する真の(そして時として意外な)貢献度も明らかにされている。単なる打率や防御率といった指標だけで野球を見るのとはまた違った野球の実像が見えてくる。

  • 2013/06/03 Books
    フィンランド教育の批判的検討 : 学力の国際比較に異議あり! / 柴田勝征著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:永星 浩一

     本学の理学部の先生の著書。日本でもてはやされているフィンランド教育の実体に迫る。「情報化社会と倫理」他の授業風景と同時進行で、話題を進めていく。教員の立場で読むとうなずけることも多いし、自分のやり方とは違うなと思う場面もある。学生の立場で読むと、いつもの授業風景が違った角度で見え、振り返って「自分は学生としてどうあるべきか」が自覚できるかもしれない。本書は、批判的にモノを見ることの大切さを教えてくれる。一般に「すぐれている」とか「正しい」と思われていることでも、意外とそうではないことが分かるようになる。昨今の「教育再生」なるものの正体を見抜いていく上でも貴重な指南書になるだろう。

  • 2013/06/03 Books
    功利主義入門 : はじめての倫理学 / 児玉聡著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:永星 浩一

     一時期話題になったテレビの「白熱教室」のサンデル教授の授業で取り上げられたテーマの一つでもある。近代社会の基礎、学問体系の基礎ともいえる功利主義を丁寧に解説した良書。サブタイトルが「初めての倫理学」とあるように倫理とも密接な関係がある。実利的なものばかり学ぶのではなく、たまにはこのような哲学的な本を読んで思索にふけるのも大学時代には必要である。

  • 2013/06/03 Books
    市場と感情の経済学 : 「勝者の呪い」はなぜ起こるのか / リチャード・H・セイラー著 ; 篠原勝訳

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:永星 浩一

     これは、今や「行動経済学」として知られる、非合理的人間行動を体系に取り込んだ経済学への道筋を示した本。近年の経済学の一つの潮流ともなっている。心理学などの成果も巧妙に取り入れられている。もっとも商学部で学ぶ学問の中には以前から知られていたことが多く含まれている。商学部で学ぶ学生諸君にも、伝統的な経済学の入門書と併せて本書を読んで基礎的な経済学の素養を身に付けていただきたい。

  • 2013/05/31 Books
    歴史人口学の世界 / 速水融著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    近年、人口の変化が大きな社会問題となるにつれ、人口問題を考えるための視点が求められるようになっている。本書は人口という問題に対し、どのようにアプローチすればいいのかを教えてくれるであろう。

  • 2013/05/31 Books
    中国経済史入門 / 久保亨編

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:瀬戸林 政孝

    本書は、近代中国経済史に関する入門書である。日本の中国史は世界で最も研究水準の高い研究分野の一つであり、本書では20世紀、21世紀を通じて日本に蓄積されてきた大量の中国史に関する文献紹介及び研究史の整理を通じて、近代中国の実像が描かれている。また、近年の中国経済で起こっている出来事の真相を紐解く鍵となる良書であろう。

  • 2013/05/30 Books
    働かないアリに意義がある / 長谷川英祐著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    昨今、真面目な学生が増えているように感じる。その代わりではないが精神的悩みを抱えた学生も増えているようだ。本書はそのような方々にお勧めする。著者は動物生態を研究する進化生物学者。アリ、ハチなどの真社会性生物は驚くほどヒトの社会に相似する生態をもっている。その中で観察される個体には、何と7割も働かないものがいるという。全員がいっせいに働くことで起こるリスク(疲労)を避けているらしい。働かないアリも実は「働きたくないから働かない」わけではないのだ。専門性が高くなる前、第二章まででもOKです。

  • 2013/05/30 Books
    「反日」で生きのびる中国 : 江沢民の戦争 / 鳥居民著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    日中戦争を「反日」暴動の主因と考えていませんか。もちろん遠因としてありますが、1994年に始まった「愛国主義教育実施綱要」による「反日」教育推進の結果、戦争を直接あるいは間接的に経験したであろう高年齢層より、「反日」教育を受けた若年層の嫌日感情の方が強くなってきたそうです。重要なことは、「反日」教育の実態を日本のマスコミが全くといっていいほど報道しなかったことです。結果として、2004年アジアカップ(重慶)での「反日」行為が明らかになるまで大多数の日本人に気付かれることはありませんでした。その後も「反日」暴動はエスカレートするばかりで収束に向かう気配はありません。本書を読むと日中間の将来は暗澹としていますが、いかに教育というものの影響が大きいかも痛感いたします。時間がなければあとがきだけでも。

  • 2013/05/29 Books
    生き方 : 人間として一番大切なこと / 稲盛和夫著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:柳瀬 敏彦

    稲盛氏は京セラと KDDIの創始者であり、最近ではJALのV字再建の立役者としても知られる。稲盛氏自身の人生観や実体験に基づいた人生の指南本である。読んだあとに思うのは、もっと若い時にこの本に出会ったら、自分の人生はもっと違ったかもしれない、ということである。「その人の心の持ち方や求めるものが、そのままその人の人生を現実に形づくっていくのであり、寝ても覚めても強烈に思いつづけることが大切」とある。若人には、分野を問わず、ぜひ一度は、読んで欲しい本である。

  • 2013/05/27 Books
    20歳のときに知っておきたかったこと / ティナ・シーリグ著 ; 高遠裕子訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:出石 宗仁

    著者はスタンフォード大学で医学博士を取得し、現在は工学部で起業家を目指す人向けの講座を担当しているティナ・シーリグです。起業家向けの内容ですが、どの分野でも、既成概念にとらわれないで発想転換し、諦めずに努力すれば道が拓けることを教えてくれます。他人より能力が劣っているのは遺伝子のせいだと思っていませんか。眠っている遺伝子を呼び起こしましょう。悩んだり落ち込んだりした時に一章ずつでも読むと元気になれるでしょう。

  • 2013/05/27 Books
    山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた / 山中伸弥, 緑慎也著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:上原 明

    今を時めくノーベル生理学賞受賞者の山中先生の頭の中が覗ける面白い本です。この本は、第一部が山中先生の自伝、第二部がインタービュー形式からなっています。iPS細胞研究の話についてだけでなく、医師への志、大学時代の部活への関わり、整形外科の研修医時代における指導医との関わり、医師や医学者としての目標設定等々の体験話についても、率直な易しい言葉で綴られています。人間塞翁が馬的な出来事の連続であったこれまでの人生が上手に紹介されているので、医学生の皆さんには考えさせられるとても参考になる本だと思います。是非一度読んでみてください。

  • 2013/05/25 Books
    特集変貌する大学スポーツ / 友添秀則編

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:藤井 雅人

    1999年11月に創刊された、年2回発行の特別雑誌。最新の第28号(2013年5月発行)まで、各号ではスポーツ界にとって時事的かつ重要なテーマについての特集が組まれており、その中での人文・社会科学分野を中心とする気鋭の研究者・評論家による論説は、それぞれのテーマを「幅」と「深さ」をもって読み解くことの必要性を教えてくれる。一方で、年2回の発行のこの特別雑誌を継続的に読めば、社会におけるスポーツ界の動きを概観的に捉えることもできるだろう。たとえば第28号では、「学校運動部の現在とこれから」という特集が組まれ、様々な論者が多様な立場から持論を展開しているが、これは昨今の指導者の体罰・暴力問題に触発された運動部活動の存在意義を問う動きを受けてのものである。また、各号ではこうした特集以外にも、選手・指導者・研究者・評論家などスポーツ界で有名な人物との「座談会」や「インタビュー」が掲載されており、スポーツ科学研究者が「聞き手」となっていることもあって、普段は知れないような当事者たちの生の声を聞くことができる。なお、運動部での活躍を目指している学生のみなさんには是非、第14号(2006年5月号)の特集「変貌する大学スポーツ」を読んでいただきたい。運動部での活躍を生かすも殺すも、実はそれ以外の部分の大学生活にかかっていることが、感覚的にではなく、理論的に理解できると思う。

  • 2013/05/25 Books
    日本的スポーツ環境批判 / 中村敏雄著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:藤井 雅人

    スポーツ界の泰斗によるスポーツ文化論の好著。1995年の発刊ではあるが、今もってその内容は色褪せていない。読後は、スポーツという社会現象が、経済、政治、地域社会、風土、民族性などのいわゆる「環境」によって、いかにそのあり方を規定されているのか、そしてまた、そのことに我々日本人がいかに無頓着であるのかを、著者の鋭い分析を通して知ることになるだろう。また、「スポーツ環境としての『部活』」と題して、様々な改革案を掲示し、「自主性・主体性」を持った運動部活動の実現を目指す著者の主張は、昨今指導者による体罰・暴力やしごき、部員による社会的モラルを欠いた言動などの問題に揺れる運動部活動のこれからのあり方に、依然として大きな示唆を与えてくれる。学生のみなさんには是非、この本をきっかけとして、現代スポーツの問題点を鋭く指摘・分析する中村敏雄のスポーツ学の真髄に触れて欲しい。特に、テーマ別の全9巻から成る『中村敏雄著作集』は読み応え十分。

  • 2013/05/23 Books
    建築家、走る / 隈研吾著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:遠藤 文彦

    今話題の建築家による今話題の本です。今話題の本など普段あまり読まないのですが、後で読むより、今読んでおいた方が面白いというか、精神的にためになるよ、と人に薦められて読んでみたところ、本当にそうだと思ったので、さっそく学生諸君に(教職員のみなさんにも)推薦してみようと思いました。建築の話自体も面白いですが、もっと懐の深い本です。

  • 2013/05/22 Books
    スタンフォードの自分を変える教室 / ケリー・マクゴニガル著 ; 神崎朗子訳

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:中村 光江

    著者はスタンフォード大学の医学部健康増進プログラム担当の健康心理学者および教育者である。人々がストレスとうまく付き合い健康的選択をするよう援助する中で、「意志力」に対する思い込みが不要なストレスを生み成功を妨げていることに気づき、「意志力の科学」という公開講座を開催するようになった。本書はその講座を書籍化したものである。心理学、経済学、神経科学、医学の各分野からの見解を取り入れた示唆を、理論を交えながら実行可能な形で紹介されており、内容に従って実行することに意味がある。健康問題解決だけでなく個人の目標達成や自己改革にも役立つことが、ビジネス書の売り上げ上位にランキングされている所以であろうと思われる。

  • 2013/05/16 Books
    ディケンズ短篇集 / ディケンズ[著] ; 小池滋, 石塚裕子訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:渡部 智也

    長編小説で有名な19世紀イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの短編集。人間の暗い異常な心理を探求した、やや幻想的な作品が11篇収録されているが、その中でも秀逸なのが「追いつめられて」。この作品は、その題材を含めて全く古さを感じさせないミステリーとして純粋に楽しむことが出来る。本作に魅了された方は、是非この作品のタイトルがなぜ「追いつめられて」と受動態になっているのかについても考えてみてほしい。

  • 2013/05/16 Books
    白衣の女 / ウィルキー・コリンズ作 ; 中島賢二訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:渡部 智也

    イギリスのミステリーと聞くと、誰もがまずシャーロック・ホームズを思い浮かべると思うが、それよりも数十年前の段階で、「イギリス最初の本格ミステリー」と称される作品を書いたのがウィルキー・コリンズである。本小説は、そんな彼の代表作品。翻訳で文庫本3冊、と非常に長いように思うかもしれないが、いったん読み出すと止まらなくなるほどおもしろい。そして、今から150年以上も昔に、21世紀の今なお「読める」ミステリーを書いた人間が海外にいるのか、と感嘆したくなる。

  • 2013/05/15 Books
    被災地の本当の話をしよう : 陸前高田市長が綴るあの日とこれから / 戸羽太著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:築山 泰典

     2011年3月11日のことは、九州にいる私たちにとっても大きな衝撃であった。しかし、時間と共に、そのことに対して意識が低下してきていることも残念ながら事実ではなかろうか。時間を経て、冷静に考えることが出来る今だからこそ、改めて被災地のことを認識する必要があるのではないでしょうか?
     被災地が直面した現実とこれか目指す方向、そして求められるリーダーシップ論にまで、陸前高田市の市長として著者は多くの示唆を与えてくれる。

  • 2013/05/14 Books
    哲学 / 岡道男訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

     一戸建住宅を売るとき、不動産会社が、「環境良好・眺望抜群」と書いた。買主が買って転居してみると、近隣には暴力団組事務所があり、周囲にはマンションが屹立していて視界ゼロだった。不動産会社の責任はどうなるか。古代ロ-マ時代、キケロ-は、本書にあって、これに類似した問題を取り上げている。法律学入門書としても最適である。

    義務について(キケロー選集9『哲学』2巻収録)

  • 2013/05/14 Books
    河上肇全集 / 河上肇著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

     治安維持法違反で服役した河上肇の1935年2月12日から1937年6月15日までの刑務所における日記である。昨今の獄中日記と違い、一読すれば、堅忍不抜の志操、想像を絶する教養の蓄積、人を見抜く慧眼、何よりも、その人類愛に感動する。ゼミナ-ルなどで刑務所見学をする機会があれば、見学前に、ぜひ一読しておくことを勧めたい。

    獄中日記(『河上肇全集』22巻収録)

  • 2013/05/14 Books
    倫理論集 / [セネカ著] ; 兼利琢也, 大西英文訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

     セネカは、「怒り」に狂った人間の表情の分析から説き起こして、「怒り」が、他人のみならず、本人をも破滅させることを、生々しく教える。「キレ」やすい、きみやあなたに、ぜひ一読を勧めたい。この書物を読めば、人生で失敗することも少なくなろう。

    倫理論集(『セネカ哲学全集』第1巻)

  • 2013/05/14 Books
    民法風土記 : 「法の現場」を歩く / 中川善之助[著]

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

     法律学の勉強が好きになる1つの方法は、「法の現場」を歩いてみることである。野田ゼミでは、福岡を中心とする九州でおきた法律事件を取り上げ、訴訟記録を閲覧したり、「法の現場」を訪問している。モデルは、本書である。著者は、「宇奈月温泉事件」の舞台となった黒部峡谷その他各地を踏査し、「法の現場」を生き生きと描く。

  • 2013/05/14 Books
    現代ロ-マ法体系 / サヴィニー [著] ; 小橋一郎訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

     19世紀前半のドイツにあって、「学問」としての法律学の形成に全身全霊を捧げた法学者の代表作品。推薦者は、大学院学生時代以来こんにちまで35年間、この書と格闘してきた。ロ-マ法文がベ-スになっていて難解だが、第1巻の緒言だけでも一読したい。法律学研究における「歴史」の意味を考えるうえで、不可欠の書物といえる。

  • 2013/05/10 Books
    エンデの遺言 : 「根源からお金を問うこと」 / 河邑厚徳, グループ現代著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:志村 英生

    インフレだデフレだと騒ぎ、バブル崩壊後リーマンショックなどの災難を受けながら20年を過ごした現代日本人のための、お金というものの姿を分かり易く理解できる書籍です。貨幣の信用とは?利子とは?などの疑問に答えてくれるNHKの放送に使われた分かり易い書物です。

  • 2013/05/01 Books
    数学的センス / 野崎昭弘著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:秋山 獻之

    20年以上前に「数学セミナー」に連載されたものをもとに再編集したものである。今読むと、現在の数学教育やそれによって育った学生を危惧して一石を投じたものであるともいえる。「美しい数学は詩なのです」と語る著者の思いが数学コンプレックスを軽くしてくれる、心やさしい数学再入門である。

  • 2013/04/27 Books
    賢いスポーツ少年を育てる : みずから考え行動できる子にするスポーツ教育 / 永井洋一著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:米沢 利広

     この本は、現在の少年スポーツの指導のありかたに疑問を呈し、どのような指導を目指し、どんな子どもたちを育てるのがよいかといったことが書かれています。

    1 多くの資料や先行研究の結果から、現在のスポーツ少年指導の問題点を明らかにしています。学部の学生にとっては、科学的な目や論理的な思考といった点で入門的な本になるのではないでしょうか。

    2 自分が育ってきた過程(小学生の頃から現在まで)の比較ができるので、現実味があり、どのようにこれからスポーツに取り組むことが大切なのかがわるのではないでしょうか。

    3 将来スポーツの指導者を希望する学生が多いので、そのときに参考になるのではないでしょうか。

     このような点から、この本を推薦してみました。

  • 2013/04/26 Books
    人生・愉しみの見つけ方 : 「いま」を充実させる100の逆転発想 / 川北義則著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:石藏 利文

     すべては自分にとってプラスの出来事である。辛いことやイヤなことがあったとき、あるいは劣等感に悩んだとき、そう考えることができれば、人生は愉しく、充実したものになります。本書は、そんなプラス発想のクセを身につけるためのヒントを満載した本です。目次は、1.愉しみ方にも基本がある,2.時間を豊かに使う方法,3.幸せに生きる知恵,4.愉しみが倍になる人間関係,5.変化の時代を愉しむ生き方です。ぜひ在学中に読んで欲しい図書の一つです。

  • 2013/04/26 Books
    ご冗談でしょう、ファインマンさん / R. P. ファインマン著 ; 大貫昌子訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:鈴川 一己

     理系ならば、まずこの本を読むべきです。もちろん文系の人にもお勧めの本です。堅苦しいお話はありません。自伝を通して自ずと理科あるいは科学の面白さを教えてくれるすばらしい本です。私がわざわざ推薦しなくてもいいほど有名な本です。現在はコンパクトな文庫本になりました。ファインマンが高校物理を教えれば、物理好きの学生が増えたかもしれません。

  • 2013/04/26 Books
    日本の都市空間 / 都市デザイン研究体著 ; 彰国社編

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

     私が、都市について漠然と考え始めた1970年頃に出会った一冊である。建築家、磯崎新氏の華やかな序章に魅せられて読み進んだことを覚えている。この本に触発されて京都、奈良、伊勢、松江などをめぐり、私たちの祖先がつくりあげてきた日本の都市デザインについて友達と議論したことを思い出す。あれから40年過ぎた。今、読み返してみても、その時に受けた新鮮な印象は変わらない。私たちの日常の生活空間に、「ま」、「かいわい」、「あられ」など日本人の感性に基づく都市デザインを取り戻さなければと思う。

  • 2013/04/26 Books
    宮澤賢治語彙辞典 / 原子朗編著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:酒井 幸仁

     宮沢賢治の作品を読んだことがあると思います。どんな印象でしたか。昔古本屋さんでこの本をみつけて購入しました。宮沢賢治の作品を読み直したりするときに使ってみてはどうでしょうか。新しい発見や理解ができるかもしれません。一つおすすめしたいのは、小さい頃に読んで今も記憶に残っている本を、大きくなってもう一度読んでみることです。きっと本の内容の感じ方が変わっています。そこから自分の変化も感じられることでしょう。面白いですよ。

  • 2013/04/17 Books
    金・銀・銅の日本史 / 村上隆著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:川田 知

    日本史を「金属利用の歴史」を通して概観し、科学史、技術史、さらには産業遺産の立場から肉付けしたものが本書である。文献に基づく金属利用の歴史に物足りなさを感じていた読者には、目の覚めるような内容となっている。今までの金属史は、全面的に書き改められるのではないだろうか。採鉱から精錬、加工までの過程を歴史としてとらえると同時に、微量分析技術を駆使して本質に迫っていく。日本独自の技術が渡来人とともに生まれていく過程は、特に興味深い。考古学を志す学生諸君にも是非読んでいただきたい。

  • 2013/04/16 Books
    バレエ入門 / 三浦雅士著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:遠藤 文彦

    バレエを見たことはないけれども、バレエに全然興味がないわけではない、バレエとは何なのか、できれば知りたいと密かに思っている人、少しでもいいからバレエの世界を垣間見たいと常々思っていた人、そんな人には、バレエの魅力、バレエの歴史を分かりやすく綴った本書がお薦めです。著者のバレエに対する愛と情熱を率直に表す一文―「バレエは素晴らしい芸術です」―から始まるこの本を読めば、読者は絶対にバレエの魅力、バレエの素晴らしさに目覚めるだろうと確信しています。

  • 2013/04/10 Books
    ショートカットの女たち / パトリス・ルコント著 : 桑原隆行訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:桑原 隆行

    フランスの映画監督が書いた小説である。ショートカットの女性にだけ特別惹かれるトマという27歳の男が主人公の物語。彼は、30歳までに結婚相手(もちろん理想的なショートカットでなければならない)を見つける、と家族の前で宣言するのだが。パリは広い、どうやって見つける?嬉しい偶然と不意打ちに満ちた軽快で素敵な物語を楽しんでほしい。

  • 2013/04/02 Books
    寝ながら学べる構造主義 / 内田樹著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:鈴木 俊男

    この本は、著者が市民講座のノートをもとに書かれた本で、「ふつうのことば」で書かれた現代思想の解説書です。著者が20歳の頃にこの様な本があれば良いと思っていた本を、50歳代前半になって書いたものです。まえがきにある通り思想家たちは「人間はどういうふうにものを考え、感じ、行動するのか」という問いに答えようとしているのです。
    この本を通して、思想家たちが解明した「私たち凡人」の日々の本質的なあり方の一端に触れてみませんか?

  • 2013/04/02 Books
    問題解決のための「社会技術」 : 分野を超えた知の協働 / 堀井秀之著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:大和 竹史

    「社会技術」とは、社会問題を解決する技術である。この技術とは、広義の技術であり、法体制や経済制度、社会規範などすべてのシステムを包含している。少子高齢化が加速し、日本社会が社会問題だらけの社会になっていくことは間違いない。個人から組織の問題に対し最適な解を選択し、限られた資源を活用していく以外に日本の延命はない。本書は、具体的な問題の全体像を把握する技術を示し、複雑な問題の解決を試みたものである。

  • 2013/04/01 Books
    生命とは何か : 物理的にみた生細胞 / シュレーディンガー著 ; 岡小天, 鎮目恭夫訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:山本 大輔

    量子力学の創造に深く関わったシュレディンガーが生命の本質を追求した書。遺伝子の分子的基盤が確立されていなかった時代に、理論物理学者ならではの洞察で生命の本質に迫ろうとしている。本書に刺激された研究者らによりDNAの二重らせん構造が発見され、その後の分子生物学の発展へ大きな影響を与えた名著である。

  • 2013/04/01 Books
    動的平衡 : 生命はなぜそこに宿るのか / 福岡伸一著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    分子生物学者にして週刊文春のコラムニストとしても有名な著者の作品。方丈記の冒頭部分、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」と生命体との関係考察が印象深い。新陳代謝とは食物から新しいタンパク質を取り入れ、古い細胞をバラバラにして捨てるということで、これが著者のいうところの動的平衡になる。すなわち人は数ヶ月もすると、「分子的」には全く別物の人に変化しているという不思議な現実が存在する。エントロピー増大則(無秩序化)に逆らうような動的平衡(秩序化)の終わるときが「死」であるとしたら、iPS細胞などを用いた再生医療が動的平衡と調和できるのか、今後の進展が楽しみです。

  • 2012/06/29 Books
    油の正しい選び方・摂り方 : 最新油脂と健康の科学 / 奥山治美, 國枝英子, 市川祐子著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    膜を構成する脂肪酸は、細胞機能維持にとても重要な役割を果たしています。脂肪酸には飽和、不飽和などの区別がありますが、現在、問題視されているのは不飽和脂肪酸、中でもリノール酸系列(n-6)の油脂です。一方、善玉とされるのが魚油などに含まれるα−リノレン酸系列(n-3)の油脂です。現代に多い病気(生活習慣病)は、これらの比率(n-6/n-3)が大きく変化した結果というのが著者の説です。本書を読むとあなたの食生活が激変間違いなしです。「エコナ」の問題点をいち早く指摘した点も注目に値します。

  • 2012/06/29 Books
    生体リズムと時間治療 : 飲むタイミングで薬の効き目を高める! / 吉山友二, 大戸茂弘共著 ; 日本薬学会編

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    時計遺伝子を知っていますか?生き物は体内時計に従いリズムを守って生きています。例えば、朝起きて交感神経系が優位になると、心拍数が増え血圧も上昇します。夕方から夜になると副交感神経系が優位になり、上がった血圧や体温はゆっくりと下がり休息をとれるようになります。このリズムに従い、発生しやすい疾患も多々あり、有名なものに明け方の喘息、昼前の心筋梗塞、脳梗塞があります。このリズムを覚えておくと、くすりの効き目を最大にできるばかりか、副作用の軽減もできるのです。これを時間治療といいます。新世代の薬剤師へお薦めの一冊です。

  • 2012/06/29 Books
    国家とはなにか / 萱野稔人著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:屋宮 憲夫

    国家の成立から現在の国民国家(資本主義国家)までの展開を暴力の組織化という視点を中核に論じる。ホッブス、スピノザ、シュミット、アルチュセール、フーコー、バリバール、ドゥルーズ=ガタリなどの論考が縦横に駆使され説得的な文脈の中で分析されていく。国家の暴力性と近代国民国家の構造、その歴史的現実性、そして国民が暴力の担い手であり同時に暴力の受け手である仕組、国民国家の総力戦争遂行基盤(国家アイデンティティ)としての「国家・国民の神聖化」と「生存共同体機能の経済的社会的強化」、我々の世界観・歴史感の構造や暴力性などのテーマについて、桜井均の「テレビは戦争をどう描いてきたか-映像と記憶のアーカイブス-」の現実的体験的考察を想起しながら読むと理解しやすく納得できる。

  • 2012/06/29 Books
    君を幸せにする会社 / 天野敦之著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:永星 浩一

    主人公は「クマ太郎」といい童話調に話が進みますが、内容はリゾートホテルの経営にまつわるビジネスの話。著者は大学在学中に公認会計士試験に合格し、すでに『会計のことが面白いほどわかる本』でベストセラー作家にもなった天野敦之氏です。短時間に読み切ることができます。

  • 2012/01/19 Books
    コーヒーハンター : 幻のブルボン・ポワントゥ復活 / 川島良彰著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:永星 浩一

    コーヒー研究家川島良彰氏のエルサルバドルへの留学から、コーヒー会社の社員として世界各地を飛び回り、新しいコーヒー文化を創造するための独立までの半生記。反乱に富んだ青年時代の話もさることながら、数十年もの昔生産放棄された幻のコーヒーブルボン・ポワントゥを再発見し商品化にこぎつけた手に汗握るストーリーが面白い。農産物の商品開発の難しさと可能性を教えてくれる。

  • 2012/01/19 Books
    不思議に劇的、漢方薬 / 益田総子著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    「漢方薬は長く飲まないと効かない、あるいはすぐには効かない」と考えてはいないだろうか。これは、漢方薬に対する典型的な先入観であり、「証」さえ合えば即効性に富むものである。事実、多数発生したストレス性の口内炎が甘草瀉心湯を煎じ服用することにより、翌日、軽快していた例もある。本書は、たまたま、漢方薬の劇的効き目に感動した西洋医の実例集である。ちなみに東京大学医学部ご卒業の方です。

  • 2012/01/19 Books
    内部被曝の真実 / 児玉龍彦著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    放射性物質は決して縁遠いものではなく、身近なもの、例えば一部の温泉水にも含まれており、外部被曝である限りいたずらに怖がる必要はありません。ただし、内部被曝となると事情は異なり、決して「直ちに影響はない」として悠長に構えておられるものではありません。放射性ヨウ素による甲状腺ガン、放射性セシウムによる膀胱ガンなど、チェルノブイリ原発事故以来のデータが蓄積しつつあります。放射性物質による内部被曝を避けるために何をすべきか(するべきだったのかも含む)、感動を生んだ国会での参考人質疑を中心とした本物の専門家(東京大学アイソトープ総合センター長)による一冊です。

  • 2012/01/06 Books
    臨床とことば : 心理学と哲学のあわいに探る臨床の知 / 河合隼雄, 鷲田清一著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    臨床心理学者と臨床哲学者の対談集。初年次に行われるSGD(スモール・グループ・ディスカッション)では、他者の意見を「聴く」ことが重要となります。一方、“正解のない”問題提議に戸惑うかもしれません。投薬するくすりに正解はあっても、臨床の現場で遭遇することに単一解をもってよしとできることはあまり多くありません。医療系を目指す人に、特に最終章は必読です。

  • 2012/01/06 Books
    手術とからだ : 神様は天の邪鬼 / 辻秀男著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    手術とは単に体にメスを入れ、患部を切り離し、後はつなぐだけと考えてはいないだろうか。実は体にメスを入れることにより、ホルモン分泌など極めて複雑な生体反応(侵襲反応)が起きている。侵襲反応は免疫応答の一種であるが、必ずしも術後の回復に役立つ反応ばかりではない。それは、副題の「神様は天の邪鬼」という言葉にも表れている。様々な麻酔法の比較など薬学部生ではあまり学ぶことのない知識の宝庫が本書である。

  • 2011/12/24 Books
    戦後日本病人史 / 川上武編著 ; 川上武[ほか]執筆

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:金城 順英

    病気の歴史は薬の歴史。人類の福祉向上に役立ってきた新薬の歴史は、言わば表の歴史である。その裏側にひっそりとたたずむ“病人”の歴史を本書は綴っている。“病人”側に立つことによって、初めて理解できる病気の社会的側面。医療系を目指す方々に一読をお勧めします。

  • 2011/04/11 Books
    日本は世界5位の農業大国 : 大嘘だらけの食料自給率 / 浅川芳裕 [著]

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:井手 豊也

    自給率が示す数字と国民の食に関する危機感とは。窮乏する農家と農林水産省の果たすべき仕事はどうなっているのか。

  • 2011/04/11 Books
    国家の命運 / 薮中三十二著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:井手 豊也

    国益を背負う外交の現場とは、いかなるものなのか。世界という視座から見た日本は今、どういう国なのか。著者の四十年余の外交官生活を振り返りながら、衰えゆく日本の国勢を転換させる為の進路を提示する、本となっている。

  • 2011/04/06 Books
    現代の金融入門 / 池尾和人著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:栗田 高光

    金融の仕組みや理論について、本質的なところを分かりやすく解説しています。複雑化した現代金融を理解する上でとても役立つ一冊です。

  • 2011/04/06 Books
    競争と公平感 : 市場経済の本当のメリット / 大竹文雄著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:玉田 桂子

    本書は経済学の観点から競争について書かれた書である。「競争」と聞くと「上位の人と下位の人の差が大きくなって大変だ」とか、「競争すること自体が好きではない」と思うかもしれない。しかし、競争がなくなってしまったらどうなるだろうか。スポーツがつまらないものになってしまうだけではなく、企業間の競争がなくなってしまったら便利な商品や良い商品を開発する意欲がなくなってしまうために生活がとてもつまらないものになってしまうだろう。本書は競争の良い面を平易に解説し、競争との付き合い方を示している。経済学に興味がなくても楽しく読める良書である。

  • 2011/04/06 Books
    新化学読本 : 化ける、変わるを学ぶ / 山崎幹夫著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

    本書は約20のなじみ深い化合物を題材として取り上げ、それぞれの化合物の発見にまつわる興味深い話などを交えながら有機化学に関する基本的事項について分かりやすく解説している。なかでも、イスラエルを建国した化合物-アセトン、建築家の夢が扉を開けた芳香族-ベンゼン、眠りの神の贈り物-モルヒネなど、話はユニークであり、軽い気持ちで読破できる内容となっている。

  • 2011/04/06 Books
    いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ : 有効需要とイノベーションの経済学 / 吉川洋著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:栗田 高光

    ケインズとシュンペーターという経済学の巨人について、時代的な背景を踏まえながらその思想や理論を学ぶことが出来ます。大変読みやすく、また、経済学の果たすべき社会的役割を考える上でとても参考になります。

  • 2011/03/22 Books
    医薬品クライシス : 78兆円市場の激震 / 佐藤健太郎著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

    本書は、薬に興味がある学生諸君にとって衝撃的なタイトルの新書です。著者は、新薬研究の現場を経験されており、内部事情をよく理解され、たいへん分かりやすく納得できる内容に仕上がっています。2010年問題が騒がれ、合併を繰り返して大きくなった製薬企業が新薬創出の危機に至っているのはなぜなのかが良く理解できます。内容的には6章からなり、薬の作用、新薬開発のプロセスといった全体を理解するための前置きから始まり、副作用の話。次に薬価切り下げ、ジェネリック医薬品の出現、ブロックバスター確保のため合併を行う製薬企業、2010年問題。最後に新たなタイプの新薬の話題で結ばれています。おそらく1日で読破できる内容であり、是非読んでいただきたい一冊です。

  • 2010/07/07 Books
    スポーツ報道論 : 新聞記者が問うメディアの視点 / 滝口隆司著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:藤井 雅人

    大手新聞社の運動部記者が各種メディアによるスポーツ報道のあり方を論じている好著。特に新聞記者という立場からの他のメディア報道についての分析は興味深い。娯楽性を重視するテレビのスポーツ報道や世界のスポーツを変えていく巨大なテレビマネーに関する批判的な論評には、活字報道のプロフェッショナルとしての著者の矜持が感じられる。その一方で、著者は、オリンピックやサッカーW杯といったビックスポーツイベントのスポンサー契約が新聞社にも一般的になってきた現在、新聞報道もまたスポーツに対する健全な批評性を失いつつあると警鐘を鳴らしている。また、地方新聞社をはじめとする、地方メディアによるスポーツ報道の可能性についての記述は、著者の地方支局勤務の経験が良く生かされており、地方に生活する我々にとっても大変興味深い内容となっている。
      本書は、テレビ、新聞、インターネットといった各種メディアによる、国内外のスポーツ報道の現状とその問題点を概観するための良書といえよう。

  • 2010/06/14 Books
    W杯に群がる男たち : 巨大サッカービジネスの闇 / 田崎健太著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:藤井 雅人 

     先般遂に、2010年FIFAワールドカップ(W杯)南アフリカ大会が開幕した。出場全32カ国による戦いは、約1ヶ月にわたり世界中を熱狂させることになろう。
     この本は、W杯がなぜこれほどまでに巨大なスポーツイベントとなり得たのかを、その利権に「群がる男たち」の姿を通して描き出している。W杯という熱狂の舞台の背後でうごめく欲望とそれに翻弄される人々の葛藤の描写は、丹念な取材に基づくノンフィクションならではの迫力がある。読後は、W杯という巨大スポーツイベントが、もはやグローバルビジネスと無関係には存在し得ないこと、そして今まさに南アフリカの地で生み出されている熱狂が、ピッチ上の華やかな舞台だけではなく、そこには見えない「闇」の部分によってもたらされているという事実を痛感するだろう。スポーツが、スポーツの論理だけで存続していくことは不可能であり、経済や政治というより大きな力に翻弄されながら存在していかざるを得ない現状を示している好著。

  • 2010/06/14 Books
    もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら / 岩崎夏海著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:築山 泰典

     表紙をみると何か怪しさを感じる本ではあるが、ビジネスにおけるマネジメントの理論を部活運営に活用した高校野球部の話である。スポーツに関わる学生にとってみれば、物語で展開される場面は身近なことと感じられると思う。
     マネジメント理論の具体的展開手法を部活動運営を題材に学習するには、最適なマネジメント入門書と考えます。

  • 2010/04/07 Books
    地球環境報告 / 石弘之著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:佐藤 伸

    本書は,私が高校生の時に読んだ本のうちで,最も印象に残っているもののうちの一冊です.最近になって政府もエコポイントやハイブリッドカーをはじめとする環境に優しい車への補助金や減税といった制度を作り,環境問題に積極的に取り組んでいますが,本書を読めば,1988年当時から既に環境問題が地球のあちこちで深刻な影響を及ぼしていることが分かるでしょう.

  • 2010/03/23 Books
    啓発録 : 付書簡・意見書・漢詩 / 橋本左内〔著〕 ; 伴五十嗣郎全訳注

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者:鍵原 理人

     私達は、何の手柄があってこの豊かな21世紀日本に生を享けることができたのでしょうか。何の努力もしていません。とするならば、この幸運を私有・独占してしまってよいのでしょうか。ひとたび海外に目を転ずると、まだまだ貧困に苦しんでいる人々は大勢います。21世紀日本に生を享けたという幸運・・・、多少なりとも、世の中にお返ししていくのが筋なのかもしれません。本書は、幕末の志士として知られる著者15歳の著作、小著の中に含蓄のある言葉が溢れ返っています。これから身を立てて行く皆さんにこそ読んで貰いたい一冊です。

  • 2010/03/18 Books
    無限のなかの数学 / 志賀浩二著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:栗田 高光

    数学は様々な美しさを秘めた学問ですが、「無限」という概念は現代数学の中で特に光彩を放っていると思います。本書は、無限というキーワードを中心に数学の面白さを雄弁に語ってくれます。経済学を深く学ぶためには数学は必須ですが、本書は数学的思考力を磨く上でとても有用な一冊だと思います。

  • 2010/03/18 Books
    思想としての近代経済学 / 森嶋通夫著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:栗田 高光

    近代経済学の根底にある価値観や社会像は何なのか。このような疑問に答える上で、本書は必読の書だと思います。通説にとらわれない議論の展開は知的好奇心を刺激します。経済学の深層に迫る一冊です。

  • 2010/03/17 Books
    渡辺一夫敗戦日記 / 渡辺一夫[著] ; 串田孫一,二宮敬編

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    著者は、ラブレー研究にその一生をささげた。本書は、太平洋戦争中に著者が、ノートに大部分についてはフランス語で書いた日記である。この日記は、著者逝去後、後継者であった二宮敬によって発見された。戦時中の「狂気」の時代にあって、「狂気」の時代であったからこそ愚直に研究に専念した著者の姿は、わたくしの生涯の模範である。

  • 2010/03/17 Books
    夜と霧 / ヴィクトール・E・フランクル [著] ; 池田香代子訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    著者は著名な心理学者であった。アウシュヴィッツ強制収容所に送られた著者の体験記が本書である。本書は、強制収容所の実相を伝えるにとどまらない。強制収容所にあって、旧約聖書のヨブにも似た受難を生き抜いた著者の姿からは、多くのことを学ぶであろう。法律学にかぎらず、およそ学問を志す若い皆さんに、ぜひ一読をお勧めしたい。

  • 2010/03/17 Books
    神聖喜劇 / 大西巨人著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

    第二次世界大戦中対馬の要塞に送られた東堂二等兵が、各種法規をたてに上官に抵抗する姿が、印象的である。著者は、旧制福岡高等学校から九州帝国大学に進んだが、思想上の理由から退学処分となった。福岡およびその周辺も小説の舞台として登場するので親しみが湧く。「法の支配」とはなにか、をも考えさせられる巨大な作品でである。

  • 2010/03/13 Books
    疑似科学入門 / 池内了著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:井上 隆司

    現代は、カード占い、UFO、血液型診断、種々の健康食品等、一般に科学的根拠が薄いとされているにも関わらず、広く信じられているものに溢れている。これらをまとめて「疑似科学」と呼び、その反証に熱心な学会も存在するが、どこに認識や方法上の問題があるのかあまり明確でない。本書は、これまで十把一絡げにされがちであった疑似科学を3種のカテゴリーに分類し、科学の時代にあってなお非合理主義がまかり通っている理由を鋭く分析する。単に疑似科学の害悪を説くのではなく、我々を取り巻く「複雑系」を理解するにあたって、いかに我々が誤解や錯覚に陥っているかなど、そもそも科学的思考や根拠とは何かを考えさせる、時宜を得た良書である。

  • 2010/03/13 Books
    したたかな生命 : 進化・生存のカギを握るロバストネスとはなにか / 北野宏明, 竹内薫著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:井上 隆司

    近年のコンピューテーション能力の恐るべき進歩は、気象現象、経済動向等、いわゆる複雑系を対象とする科学を強力に推し進めている。しかし、生命現象に向き合った時、その想像を絶する複雑さと、進化の過程で獲得された様々な‘生きる’戦略の見事さに圧倒されてしまうだろう。本書は、このような生命の本質にある「したたかさ」をロバストネスと呼び、その秘密に迫る。生命科学の新たな展開を予言する必読の書である。

  • 2010/03/05 Books
    人はなぜ恋に落ちるのか? : 恋と愛情と性欲の脳科学 / ヘレン・フィッシャー著 ; 大野晶子訳

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:桑原 隆行

     「同時に複数の相手に恋愛感情を抱くことはない?」,「恋にかまけて食欲を忘れる動物たち」,「恋する脳をスキャンしてみたら」,「どんなに愛するパートナーがいても人は浮気する?」,「モテたいという思いが人間の能力を開発した」,「人類最古のラヴレター」等,こうした目次に読書欲,好奇心を刺激される人は読んでみるといいでしょう。

  • 2010/03/05 Books
    ミーナの行進 / 小川洋子著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:桑原 隆行 

    ミーナという少女はマッチをつけるやり方が芸術的に美しく,カバのポチ子に乗って通学する。「彼女に出会う以前,私にとってマッチはマッチ以外の何ものでもなかった。ところがひとたび彼女がマッチ箱を取り出すと,それは無言の儀式にもなり,敬虔な祈りにもなることを知った。」

  • 2010/03/05 Books
    若い読者のための短編小説案内 / 村上春樹著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:桑原 隆行

     題名が「若い読者」となっていますが,どれほど図々しくても年齢的に決して若いとは言えない私のような読者にとっても面白い示唆に富んだ本でした。吉行淳之介,小島信夫,安岡章太郎,庄野潤三,丸谷才一,長谷川四郎の小説が,村上春樹という書き手・小説家の視点で読み解かれています。

  • 2010/02/26 Books
    くすりの発明・発見史 / 岡部進著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

    本書は、西洋医学における医薬品の歴史から始まり、笑気ガスから始まる麻酔薬の発見•改良の経緯、伝承薬からの抗マラリア薬キニーネの発見などについて発明•発見者の人生行路にも焦点をあてながら、平易な言葉で紹介されている。薬の話でありながら、その時代背景を語り、発明者にまつわる人間模様を推理し、と読者を飽きさせない。薬に興味のある学生諸君にお勧めできる好著である。

  • 2010/02/26 Books
    もうアレルギーに苦しまない : 発症のしくみ・予防と治療法 / 永井博弌著 ; 日本薬学会編

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

    スギ花粉などによるアレルギー疾患は、この50年間で10倍以上に増加しています。本書は、まずなぜアレルギー患者が増えたのかの主な要因を5つあげ、その対策を衣食住改善の面から述べています。次に、予防のための生活環境整備を原因物質となるアレルゲンの回避と除去、大気の清浄、精神安定法、体の鍛錬、食生活の改善の点から考え、最後に症状を抑えて苦しみを取り去る『抜苦の薬』と発病を防ぎ生活の質を高める『与楽の薬』の上手な使い方に及んでいます。本書は、アレルギー疾患に苦しんでいる方やアレルギーに関する知識を得たい人たちに是非勧めたい一冊です。

  • 2010/02/23 Books
    イソフラボンとシグナル伝達 : 化学から骨粗鬆症・成人病・癌まで / 小河原宏著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

    イソフラボンは大豆のポリフェノール成分として健康食品、サプリメント等で使用されていますが、最近その過剰摂取が問題視され厚労省の食品安全委員会から摂取の上限が決められました。イソフラボンを安全に、安心して使用するためには、その科学的根拠を理解することが必要です。このような観点からイソフラボンについてまとめたのが本書であリ、若干専門的であるものの、図を豊富に用いて分かりやすく述べられています。大学院生ばかりでなく、健康食品に関心のある学部学生の皆さんにも読んでもらいたい一冊です。

  • 2009/12/17 Books
    才能教育論 : スポーツ科学からみて / 宮下充正, 平野裕一編著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:山崎 一彦

    スポーツ競技における才能とは?
    大学院レベルで主に運動生理学、バイオメカニクスの分野からよく検証されている。
    人間という運動を行える才能という根本的なことから、現在叫ばれているタレント発掘を考える上で、指導者が根拠とともに創造できる1冊である。
    各章ごと研究課題も提示されており、それらを考えていくと、尚面白い。

  • 2009/12/10 Books
    還暦ルーキー : 60歳でプロゴルファー / 平山譲著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:米沢 利広

     映画「ありがとう」にもなった原作です。主人公の古市氏は、阪神淡路大震災によって家も仕事場(写真屋)も財産もすべてなくしてしまいました。震災時の悲惨な状況、そして、その後の町の復興に努力したこと、そのような中で、60歳を前にプロゴルファーを目指して、練習を重ね、見事プロテストに合格したことなどが書かれています。夢を実現させる生き方は、私たちに勇気と感謝の気持の大切さを教えるものです。
     古市氏の「奇跡を起こす」、「勇気を失うことは、すべてを失うこと」といった言葉と生き方は、スポーツ選手だけでなく多くの人に参考になると思います。

  • 2009/11/02 Books
    本番に強くなる : メンタルコーチが教えるプレッシャー克服法 / 白石豊著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:米沢 利広

     著者の白石氏は、大学教員でありながらメンタルコーチとして多くのスポーツ選手・チームを指導してきました。メンタル面の専門的知識はもちろんのこと、座禅やヨガといった自身の体験をもとにした豊富な指導体験は、大いに説得力があります。スポーツ選手として直面する緊張やプレッシャー、失敗するかもしれないといった不安に、いかに対処したらよいのか、といった内容が述べられていますので、スポーツ科学部の学生にとっては必読の書といってもいいでしょう。また、多くの参考文献も掲載れているので、自分でメンタルマネジメントを勉強するのにも役立ちます。

  • 2009/08/07 Books
    医師アタマ : 医師と患者はなぜすれ違うのか? / 尾藤誠司編集

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:黒岩 中

    医師・患者間に横たわる「溝」は、「患者中心の医療」が喧伝される現今では以前ほど深いものでは無いかもしれないが、医師が「患者の健康を守る」立場であると考える上では、必ずしも埋め尽くされるものでは無いようである。これからの医療の方向が「患者と共に考える医療」へと移行するのなら医師は自分の「医師アタマ」度を自覚する必要があるのだろう。

  • 2009/06/08 Books
    失われた「20年」 / 朝日新聞社「変転経済」取材班編

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:佐々木 昇

    バブル崩壊後の長期不況から最近の金融危機による深刻な不況までの日本経済について、朝日新聞が特集記事として伝えてきた記事を再編集してできたのが本書である。元の文章が新聞記事ということもあって大変読みやすく、一項目が簡潔にまとめてあり、また最近までの20年間の日本経済の問題点がよく理解できる。ただしこの本はあくまでジャーナリストが書いた本である。

  • 2009/04/17 Books
    こんなに使える経済学 : 肥満から出世まで / 大竹文雄編

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:玉田 桂子

    人はなぜダイエットに失敗するのか?こんな身近な疑問も経済学で解決できます。気鋭の経済学者が身近な事柄に対して経済学的な観点から解説しています。自分の行動パターンが分析できるのでとても面白い本です。

  • 2009/04/17 Books
    法的判断とは何か : 民法の基礎理論 / 原島重義著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

     法の解釈はいかにあるべきか。著者は、わが国における裁判例に対する批判的分析から出発します。そのうえで近代私法学の一形成者であるサヴィニーに立ち返ります。ともにすれば否定の対象としてしか見られない近代私法学の古典的体系の意義を、その思想的基盤としてのカント・ヘーゲルをふまえ描きます。哲学と法律学とがいかに不可分の関係にあるか、を教えてくれる本です。考え抜いて書かれた、読めば読むほど奥の深い一冊です。

  • 2009/04/17 Books
    法律家・法の解釈・財産法・財産法判例評釈(1)(総則・物権) / 来栖三郎著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一 

     民法学者であった著者が残した論文を3巻にまとめたものです。内容は、第1巻が、法の解釈、第2巻が契約法、第3巻が家族法です。とくに、法の解釈と擬制に関する研究、債権の準占有者への弁済に関する論文、第3巻の遺言の解釈論が印象に残っています。各自の関心に即して、その中の1本でもいいですから読んでみてください。同じ著者による『契約法』も、ごらんになると、研究とは、いかにあるべきかを実感することができます。

  • 2009/04/17 Books
    経済学的思考のセンス : お金がない人を助けるには / 大竹文雄著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:玉田 桂子

    経済学と聞くと何か難しいもののように感じていないでしょうか。経済学が対象とする分析対象は人間(あるいは企業、政府)の行動です。どういうインセンティブを持たせれば人々の行動を変えられるのかということは経済学の基本的な考え方の一つです。この本を読めば経済学的な考え方が楽に身につけられます。

  • 2009/04/17 Books
    だまされないための年金・医療・介護入門 : 社会保障改革の正しい見方・考え方 / 鈴木亘著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:玉田 桂子

    社会保障の重要性が改めて問われている中、経済学者が経済学的な考え方に基づいて社会保障がどうあるべきかを平易に解説した画期的な本です。政策提言については経済学者の中でも賛否両論ありますが、経済学的な考え方が受け入れられにくい日本で著者が決死の(?)覚悟で書いています。自分の年金がどうなるのか、医療がどうなっていくのか知りたい人にとっては必読の書です。

  • 2009/04/17 Books
    家族法 : 家族法判例評釈 : 親族・相続 / 来栖三郎著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一 

     民法学者であった著者が残した論文を3巻にまとめたものです。内容は、第1巻が、法の解釈、第2巻が契約法、第3巻が家族法です。とくに、法の解釈と擬制に関する研究、債権の準占有者への弁済に関する論文、第3巻の遺言の解釈論が印象に残っています。各自の関心に即して、その中の1本でもいいですから読んでみてください。同じ著者による『契約法』も、ごらんになると、研究とは、いかにあるべきかを実感することができます。

  • 2009/04/17 Books
    ポアンカレ予想 : 世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者 / ジョージ・G・スピーロ著 ; 鍛原多惠子 [ほか] 訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:石黒 賢士

    百年来の難問「ポアンカレ予想」を解決したロシアの数学者ペレルマン氏が、2006年に数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞の受賞を辞退し数学界が衝撃をうけた。
    同氏は断った理由を「自分の証明が正しければ賞は必要ない」と説明した。
    本書は多次元の空間を分類する条件を示したものである位相幾何学(トポロジー)の問題とその解決までの道のりを語っている。また、フランスの数学者ポアンカレ氏を含む
    トポロジーの歴史についての記述も興味深い。

  • 2009/04/17 Books
    日本の不平等 : 格差社会の幻想と未来 / 大竹文雄著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:玉田 桂子

    「格差」について何か話したいのであれば、この本を読んでからにしてください。決してやさしいとはいいませんが、一応研究者向けではなく一般向けの本です。

  • 2009/04/17 Books
    契約法 : 財産法判例評釈(2) : 債権・その他 / 来栖三郎著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一 

     民法学者であった著者が残した論文を3巻にまとめたものです。内容は、第1巻が、法の解釈、第2巻が契約法、第3巻が家族法です。とくに、法の解釈と擬制に関する研究、債権の準占有者への弁済に関する論文、第3巻の遺言の解釈論が印象に残っています。各自の関心に即して、その中の1本でもいいですから読んでみてください。同じ著者による『契約法』も、ごらんになると、研究とは、いかにあるべきかを実感することができます。

  • 2009/04/17 Books
    日本民法典の史的素描 / 原田慶吉著 ; 石井良助編

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:野田 龍一

     日本民法は、ローマ法以来2000年の伝統のうえに成り立っている、といわれています。では、具体的に、日本民法のそれぞれの条文は、どのような系譜をたどって形成されたのか。これをあきらかにしようとしたのが、この書物です。著者が自裁なさったため、債権法の部分は、未完成におわっています。ただし、第709条については、巻末に独立の論文があります。同じ著者である『ローマ法』とあわせて、ぜひ、手にとってみてください。

  • 2009/04/07 Books
    The Hyborian heresies / Dale E Rippke

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:ピーターズ,J.M.

    I am planning to research Robert E. Howard's life and work, and this is a potentially valuable book for that project.

  • 2009/04/07 Books
    成長の限界 : ローマ・クラブ「人類の危機」レポート / ドネラ・H・メドウズ[ほか]著 ; 大来佐武郎監訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

    今更という感もあるが、「成長の限界」は、1972年に出版されたローマクラブの警告の書である。当時、高度成長期の日本で大学学部生だった私は、驚愕しつつも一気呵成に読んだのを思い出す。地球環境問題は、実に今から37年も前に、アメリカMITの若き研究者から提起されていたのである。今日では、環境をキーワードとする本は膨大な数にのぼるが、この本は、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」と並ぶ、地球環境問題の草分けの書といえよう。

  • 2009/04/07 Books
    無縁・公界・楽 : 日本中世の自由と平和 / 網野善彦著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

    日本の中世都市においては、無縁、公界、楽などと呼ばれる概念があった。これは、現代風にいえば、自由人、パブリック・スペース、特区などに該当するものである。都市史の分野では、一般的に近世城下町を日本の都市の原型とする立場が優勢であるが、網野善彦の提示する日本の中世世界は、むしろ現代に近く、極めて魅力的である。グローバリズムが支配的な現代においても、我々自身の歴史のなかから、明日を読み取ることができる好例といえよう。

  • 2009/04/07 Books
    オランダモデル : 制度疲労なき成熟社会 / 長坂寿久著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

    世界的な金融危機に伴う不況に見舞われている昨今、ワークシェアリングという言葉がマスコミを賑わしている。オランダは1982年、実に27年も前に、政府、労働組合、経営者の三者による「ワッセナーの合意」を形成し、世界で初めてワークシェアリングを実践した国である。私が1年間滞在した1996年当時は、ワッセナーの合意の立役者である労働委員長コックスが首相を務め、生き生きとした男女共同参画社会を目の当たりにできた。今日の日本からしても、合意形成を旨とするオランダモデルには、学ぶべき点が多いといえよう。

  • 2009/04/07 Books
    環境問題をシステム的に考える : 氾濫する情報に踊らされないために / 井村秀文著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:塩路 幸生

    人間活動により排出される温室効果ガスが原因で、21世紀の地球が温暖化するのはほぼ確実なようで、人類には、低炭素、共生、循環型社会の実現が求められている。人体の生理的メカニズムを解明することによって病気を治療あるいは予防するのが医学だとすれば、地球の医学とでもいうべき学問が「環境学」である。「環境学」を学ぼうとする皆さんにおすすめする一冊。

  • 2009/04/07 Books
    グローバル恐慌 : 金融暴走時代の果てに / 浜矩子著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:佐々木 昇

    米リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけにした今回の世界的な経済危機は、金融部門が先導して実体経済に波及したものであるが、サブプライム問題、投資銀行、CDSや金融派生商品など一般にはわかりずらいことががらが多い。この本はこれらについて大変わかりやすく解説してある。ただ恐慌についての認識が少し不明確なために結論部分が曖昧に終わった感が否めないのが残念だ。

  • 2009/04/07 Books
    英語論文によく使う表現 / 崎村耕二著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:中村 由依

    卒業論文の書き方で悩んでいるあなたにお勧めの一冊です。論文は日本語で、というあなたも一度手にとってみてください。
    本書は、英語・日本語の両方で、論文に頻繁に使われる表現が紹介されています。
    きっと、自分の書きたかったフレーズが見つかるはずです。私も学生時代から愛用しています。

  • 2009/04/07 Books
    「今」がわかる!日本経済ダイジェスト / 高橋進監修

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:井手 豊也

    世界のこと、知っておいて損はない。総頁数わずか125頁に、サブプライムローン問題に端を発した金融危機後の各国の経済事情がわかりやすく記述されている。

  • 2009/04/07 Books
    「手紙屋」 : 僕の就職活動を変えた十通の手紙 / 喜多川泰 [著]

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:米沢 利広

     多くの学生が、大学を卒業して社会に出るまでに、就職活動で悩むことと思います。この本は、就職活動をうまく乗り切るためのコツやテクニックについて書かれたものではありません。就職活動に悩む主人公に、10通の手紙を通して「働くこととは?」、「仕事とは?」、「やりがいのある仕事とは?」など、人生を自分らしく生きる大切さをアドバイスしています。就職活動をはじめる前にぜひ読んでください。

  • 2009/03/18 Books
    不老と不死 : 遺伝子からの選択 / 三井洋司著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

     秦の始皇帝が徐福に不老長寿の薬探しを命じたほど、古来、人々は不老長寿を望んでいます。現実には動物はすべて老い、寿命をもつことを知っていますが、なぜ不老不死ではないのか?本書では、まず個体レベルでの寿命と細胞レベルでの寿命の相違点を解説し、正常細胞の分裂回数には限りがあり、加齢者からの細胞は分裂回数が減少することを示します。細胞レベルでは無制限分裂できる不死化細胞株を樹立できるが、これは癌化に近づいていることも解説されます。結論は、動物個体に寿命があって世代替わりすることが動物種の進化に重要であり、遺伝子に刻まれているこのシステムを変更できるかが、不老不死に迫る要点ということのようです。

  • 2009/03/18 Books
    食と健康 : 情報のウラを読む / 村上明, 森光康次郎編

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

     今日、健康食品の売れ行きが増加し、書店には健康雑誌があふれている。しかしながら、ある食物が健康増進に効果的であるという場合に、そのメカニズムがどの程度分かっているのか、あるいは、どの程度有効なのかを科学的に平易に書いた本は少ない。本書では、ダイエットの科学からはじまり、サプリメントや魚、野菜、フルーツ、豆、茶、香辛料などの食品群の科学、抗酸化作用や遺伝子組み換え、環境ホルモンなど、食と健康にまつわる事柄について、科学的なデータに基づき客観的かつ平易に解説されている。

  • 2009/03/18 Books
    だれかのいとしいひと / 角田光代著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:桑原 隆行

     ぼくは、目次の「転校生の会」や「完璧なキス」に一目惚れのように惹かれて買った。タイトルの誘惑には素直に無抵抗に従うのがいいと思う。角田光代さんの小説に描かれているのは様々な気分だ。さらに、奇妙な関係の恋人たちが出てくる『太陽と毒ぐも』、二人の女優さん夏川結衣、財前直見が出てる映画にもなった『対岸の彼女』。これらを読むのも素敵な時間だ。

  • 2009/03/18 Books
    アーモンド入りチョコレートのワルツ / 森絵都著 ; いせひでこ絵

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:桑原 隆行 

     こういう不思議なタイトルが好きな人、ピアノ曲が想像・創造させる物語が気になる人は読んでみたらどうだろう。少年少女時代の記憶と情景が浮かび上がってくる。そして、森絵都さんの語りが気に入ったら、『永遠の出口』なども読んでみるといい。ぼくには、文庫本の解説を角田光代さんが書いているのも嬉しかった。

  • 2009/03/18 Books
    新しい薬をどう創るか : 創薬研究の最前線 / 京都大学大学院薬学研究科編

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

     新薬の創製は、多くの専門家の協力により初めて成し遂げられるが、時には数年足踏みしたり、あるいは後戻りしたり、簡単なものではない。このような薬づくりをテーマにした本書は、創薬の基本的な考え方から最新の情報まで網羅しており、やや難解な部分もあるが全体的に読みやすく、学部学生の興味をそそる内容に仕上がっている。

  • 2009/03/18 Books
    凍りついた香り / 小川洋子 [著]

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:桑原 隆行 

     小川洋子さんの物語に満ちている匂いや静かで密やかな音を味わったら、何度でもまた味わいたくなる。「それからいよいよスポイトで、香料の一滴をすくい取る。香りが逃げないよう、素早く蓋を締める。」不思議な職業の人たちが出てくるのも気になる。『薬指の標本』(これはフランス映画にもなっている)、『海』、『密やかな結晶』なども読んでみよう。

  • 2009/03/13 Audio Visual
    The Iliad / Homer ; translated by Robert Fagles ; read by Derek Jacobi

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:ピーターズ,J.M.

    This is an audio recording of most of a popular translation into English of Homer's classic epic poem The Iliad and would therefore be of great use for Fukudai students and teachers (of English, history, and literature).

  • 2009/03/13 Audio Visual
    The chronicles of Narnia / C. S. Lewis

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:ピーターズ,J.M.

    These are excellent audio books of the classic works of children's literature by C. S. Lewis and therefore would be great to have in Fukudai's library, for scholarly research, English language ability improvement, and student's interest.

  • 2009/03/13 Books
    One who walked alone : Robert E. Howard, the final years / Novalyne Price Ellis

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:ピーターズ,J.M.

    I am planning to research and write an article about Robert E. Howard, and this book is an important biography of his last years.

  • 2009/01/08 Books
    「勝負脳」の鍛え方 / 林成之著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:築山 泰典

    「いざという時に、実力が発揮できない」、このことを科学している本です。脳外科医の立場から、スポーツ場面の心・技・体のことがわかりやすく表現されています。勝負によって成長する人間を理解でき、読み終えたとき、前向きになった自分を感じる、そんな本です。

  • 2008/12/15 Books
    Smart choices : a practical guide to making better life decisions / John S. Hammond, Ralph L. Keeney, Howard Raiffa

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:米田 清

    人生に一発逆転なんて稀です。一時は逆転したように見えても "what goes up must come down"。長い目で見ると、日常的に賢い選択を積み重ねるのが幸せになる近道です。この本はその方法をやさしく教えてくれます。これより実用的な意思決定理論の本は見たことがありません。題名の Smart Choices は「あたまいい選び方」くらいの意味で、くだけた言い方です。この本には日本語訳もあります。ただし題名が「分析と決断」と、こちこちになってるところから推して、翻訳も固いかも。この本の英語はやさしいですから、怖がらずに原書で読むことをお勧めします。

  • 2008/12/10 Books
    分子生物学の軌跡 : パイオニアたちのひらめきの瞬間 / 野島博著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

     本書は、分子生物学の開拓者たちに焦点が当てられ、たとえば、ワトソンとクリックのDNA二重らせん発見の経緯、DNAポリメラーゼの発見等々、分子生物学の基礎となる彼らの「ひらめきの瞬間」が、21章にわたり事実をもとに書かれている。偉大な発見の裏には、大変な苦労や時には幸運が隠されており、読んでいて面白い。本書は、読み物であるが、これから分子生物学を学ぶ学生にお勧めの一冊である。

  • 2008/12/10 Books
    薬の生い立ち : モルヒネからインターフェロンまで / 中島祥吉著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

     医薬品の開発には十数年もの長い年月がかかり、成功する確率は極めて低い。現在、汎用されている医薬品は、厳しい開発競争を勝ち抜いた「すぐれもの」である。このような医薬品の開発の歴史には、貴重な経験が凝集されており、そこから多くのことを学ぶことができる。本書には、医療に大きなインパクトを与えた12の薬剤の発見や開発の経緯、対象疾患、作用機序等が分かりやすく解説されている。特に、薬の発見やその開発の歴史に関しては、多くのドラマがあり、本書を読んで薬の発見と開発にロマンを感じていただきたい。

  • 2008/12/03 Books
    肥満は万病のもと : 体脂肪を知る / 今川正良著 ; 日本薬学会編

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

     肥満は生活習慣病の原因であり、近年我が国でも肥満人口が急速に増加していることから、肥満への関心が高まっている。本書は、脂肪を中心に基礎的な面から説き起こした肥満に関する科学的な読み物であるが、若い女性に目立つ「やせ」の問題点を指摘し警鐘を鳴らすなど、啓蒙書的な部分も持っている。さらに、肥満のメカニズムに関する遺伝子をベースにした研究成果や肥満と密接に関係した糖尿病についても紹介されており、肥満の全体像を把握するのにコンパクトにまとめられている。薬学部生はもとより、肥満に関心を持つ学生諸君に読んでいただきたい一冊である。

  • 2008/11/26 Books
    人間のための街路 / バーナード・ルドフスキー著 ; 平良敬一, 岡野一宇訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

    最近、街路が注目されている。A.ジェイコブスの”Great Streets”やJ.ゲールの「屋外の生活とデザイン」にも見られるようにパブリック・スペースとしての街路が見直されるようになった。B.ルドフスキーは30年以上も前から、世界各国の街路を紹介し、その空間の豊かさの重要性を唱えた。日本の宮島や大阪の屋台への言及は、私たちのまちを再発見するチャンスでもある。

  • 2008/11/26 Books
    歴史の都市, 明日の都市 / マンフォード著 ; 生田勉訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:黒瀬 重幸

    ルイス・マンフォードは、「都市の文化」や「芸術と技術」などの書物で知られるアメリカの都市計画家である。彼は、英国のE.ハワードやP.ゲデスの都市論を継承しつつ、小都市論の育成と巨大都市の否定を唱えた。21世紀に入って、コンパクトシティや持続可能な開発が世界的に注目されているが、ルイス・マンフォードの歴史に根ざした主張は、地球環境問題が深刻化しつつある今日においても新鮮である。

  • 2008/10/10 Books
    ムハマド・ユヌス自伝 : 貧困なき世界をめざす銀行家 / ムハマド・ユヌス, アラン・ジョリ著 ; 猪熊弘子訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:鍵原 理人

     著者は、2006年にノーベル平和賞を受賞した経済学者。氏と言えば、マイクロクレジットの創始者として有名ですが、本書を読めば、それは単なる手段に過ぎないことが分かるはずです。氏の目的は、あくまでもバングラデシュの貧困削減にあります。場所と時代が異なれば、全く別な手法が編み出されていたに違いありません。氏が銀行家ではなく、学者を自認する所以でしょう。
     「奴隷制度」同様に、「貧困」を歴史の遺物にせんとする氏の志。経済学を学ぶ皆さんに是非読んで貰いたい一冊です。

  • 2008/09/25 Books
    もっとも美しい数学ゲーム理論 / トム・ジーグフリード著 ; 冨永星訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:石黒 賢士

    ノーベル経済学賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュはアカデミー賞映画「ビューティフル・マインド」(2001年)のモデルとなった。専門分野はゲーム理論。この本はナッシュが作った基盤の上にゲーム理論がいかに多様な形でいかに広範な科学の分野に応用されているかを紹介している。経済活動や人間の行動、生物進化の過程まで「自然の法典」を解き明かす可能性が期待される。

  • 2008/08/27 Books
    「甘え」の構造 / 土居健郎著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:西村 良二

    「甘え」の心理は日本人の特徴的な心性であるが、「甘え」の概念は種々の病的な心理を解く鍵となるし、「甘え」は現代の社会不安を理解するための視点を提供していることを指摘した名著です。精神科医であり、精神分析医でもある著者は、臨床の具体的事実をあげながら、対人恐怖やとらわれの心理、青年の強い友情などに解明の光をあてている。人間の心に関心のある皆さんにお薦めしたい本です。

  • 2008/05/16 Books
    実録!少年マガジン名作漫画編集奮闘記 / 宮原照夫著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:光冨 省吾 

    「作品」は、「作者」だけが作るのではなく、編集者、時代の流れ、大衆の欲望などがブレンドされて作られて行くということがわかる1冊。

  • 2008/04/28 Books
    レストラン・ホテル・ショッピング / 玉村豊男著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

    とても楽しい本です.フランス文化に興味のある方におすすめします.

  • 2008/04/28 Books
    科学としての法律学 / 川島武宣著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:畑中 久彌

    法律学に砂を噛むような味気無さしか感じられなくなってしまった……。そんな人は、一度この本に目を通してみるのもよいかもしれません。全編を読み通すのは難しいと思いますが、冒頭の「法律学への不信」という部分だけでも、大いに参考になると思います。このほか、三ヶ月章『法学入門』という本の12~15頁も参考になると思います。

  • 2008/04/28 Books
    カフェ・舗道・メトロ / 玉村豊男著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:川島 浩一郎

    とても楽しい本です.フランス文化に興味のある方におすすめします.

  • 2008/04/14 Books
    Reckoning with risk : learning to live with uncertainty / Gerd Gigerenzer

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:米田 清

    ベイズの定理は数理統計学や意思決定理論を勉強すると初めの方に出て来る式で、結果から原因の確率を逆算します。たとえば「ある検査で陽性だった(結果)けど、ほんとに感染してる(原因)確率はいくらか」というような計算です。この本を読むとベイズの定理が直観的にわかるようになります。その結果、統計的な議論を簡単には信じないで、疑うようになるでしょう。特に医療の裏にある経済的な動機が見えて来ます。

  • 2008/04/10 Books
    ケインズ : 新しい経済学の誕生 / 伊東光晴著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:栗田 高光

    ケインズ経済学は、皆さんが授業で学ぶ「マクロ経済学」においてとても重要な役割を果たしています。本書は少し古い本ですが、ケインズ経済学の考え方やその歴史的背景を学ぶ上で格好の入門書と言えます。本書をじっくり読み込んで、経済学の面白さを実感して下さい。

  • 2008/04/04 Books
    生き方 : 人間として一番大切なこと / 稲盛和夫著

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:鍵原 理人

     人間は何の為に生きるのか、そして、何の為に働くのか・・・
     モノが溢れ、選択肢が有り余る今こそ、原理原則をしっかりと確立しておかねば、世情に流されるまま・・・ということになりかねません。京セラを27歳で創業した著者の言葉は、これから社会に出て行く皆さんの心に強く響くことでしょう。

  • 2008/04/02 Books
    ルポ貧困大国アメリカ / 堤未果著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:佐々木 昇

     市場原理主義的な政策の結果、現在のアメリカで生まれている深刻な格差社会の実態を、教育、医療、軍隊などについて紹介している。貧しくて医療保険にも入れない貧困層が増大している現実や、教育費の負担ができないために教育費の肩代わりを求めて軍隊に志願する若者達の実態、そして現在のイラク戦争で軍隊そのものが民営化されている実態を明らかにしている。ただもう少し掘り下げた分析がほしかった。ルポの限界だろうか。

  • 2008/03/31 Books
    風味絶佳 / 山田詠美著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:桑原 隆行

     甘くほろ苦い恋物語を読んだ後は、黄色い箱のキャラメルを好きな誰かにプレゼントしてみたらどうだろう。もちろん、自分の口に一粒放り込んでみるのも悪くない。そういう気分になるはずだ。この本が原作になった映画『シュガー&スパイス』を観るのも素敵な時間になる。柳楽優弥と沢尻エリカが出ている。沢尻エリカから、ぼくの思い出は映画『クローズド・ノート』や小池真理子著『エリカ』へとつながったりする。

  • 2008/03/31 Books
    ゴールデンスランバー / 伊坂幸太郎著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:桑原 隆行

     伊坂さんの作品の舞台は多くが東北宮城県の仙台。暗殺テロ事件の犯人にされた無実の男が主人公だ。仙台の街に潜んだ彼は、彼を信じ愛してくれる人たちの助けを借りて巨大な組織の追跡を逃れる。最後に自由を手にするまでのスリリングな顛末が語られている。主人公に加担して読んでいた読者は涙を流す。他、『アヒルと鴨のコインロッカー』、『陽気なギャングが地球を回す』など、小説でも映画でも楽しむことができる。

  • 2008/03/31 Books
    蜜月 / 小池真理子著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:桑原 隆行

     一人の画家(男)と関わりのあった女性たちの物語。画家死亡のニュースを知って、それぞれの女たちの記憶が蘇る。その男との蜜月のような快楽、狂おしい欲望を満たすことだけに耽溺していた日々。それらが失われた後も、たくましく、淡々と女たちの人生は過ぎていく。小池真理子さんの本は他に、『恋』、『虹の彼方』、そして最新作『望みは何と訊かれたら』などを読んでみたらいかがでしょう。

  • 2008/03/31 Books
    この国のけじめ / 藤原正彦著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:吉田 守

    本書は約30年前に「若き数学者のアメリカ」という随筆でエッセイストクラブ賞を受賞された数学者で随筆家でもある藤原正彦氏の最近の随筆集である。その受賞作品を著す契機となった父君の新田次郎氏との対話とか、最近巷間話題になった小川洋子氏の「博士の愛した数式」の出版に関わる話などがあって、何事にも由来があるものだなあと思い、興味深い。尚、著者の藤原氏は文明評論に関して独特の一家言を持っておられるようだ。

  • 2008/03/08 Books
    水は健康を育む / 中室克彦, 上野仁著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

    必須アミノ酸をはじめ生体成分の多くは生体外環境から摂取されており、水はそのキャリアーとして働く。生体外環境が健全に保持されて、初めて生体恒常性は良好に維持される。本書は、水の物理化学的性質から生物学的役割、さらに水の利用のあり方まで、広範かつ平易に水の諸問題が記されており、環境の観点から生体を見直すのによい入門書である。

  • 2008/03/08 Books
    日本人と中国人 : なぜ、あの国とまともに付き合えないのか / イザヤ・ベンダサン著 ; 山本七平訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:山口 住夫

      日本と最も付き合いの長い国、そして昔から最もつきあいにくい国、中国。この国との間がなぜうまくいかないか、について、著者は主として明治維新の「尊皇攘夷」思想の原点を探ることによりその説明を試みている。すなわち、古来日本は世界の“中華”たる中国に心酔し、日本をこれと同化させて、これを日本の中に実現しようとした。これを極めた結果、最終的には「中国を否定せざるを得ない」ことになってしまった。同じことがアメリカの民主主義に対しても生じている、という論理を展開している。
     この本は、論理により常識を検証する方法(哲学実践)のよい教材であるので、是非一読をお薦めする。

  • 2008/03/08 Books
    毒と薬の科学 : 毒から見た薬・薬から見た毒 / 船山信次著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

    毒は私たちの生活に密接な関係があり、毒と認識されないまま何気なく使っている製品もある。その一方で、知らないうちにヒトに悪影響を及ぼしたり、また故意にヒトを傷つけたりする目的でも使用されている。本書は、その毒を科学的に解説しているが、科学的な難しい内容ばかりでなく、犯罪や環境など私たちの生活に密接した話題が多く、興味を持って読むことができる。薬学部生には、医薬品やそれ以外の生物活性物質の有害作用が事例とともに記載されており、理解しやすく、是非読んでいただきたい。

  • 2008/03/08 Books
    くすりの効き方は人によって違うの? / 千葉寛, 有吉範高著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山方 健司

    薬局で手に入る風邪薬でさえも、決められた量を飲んだ際に感じる眠気はひとによって様々です。これは遺伝子の微妙な違いが主な原因の一つです。本書では、まず薬が体に入った後に処理されていく過程を分かり易く解説しながら、その過程での個体差が、薬の効き方や副作用の出方を左右することを述べています。次に、薬の活性に対して個体差をもたらす代謝酵素の多型について述べ、最後は、一人ひとりに最適化されたテーラーメイド医療を実現するための問題点や展望で締めくくっています。本書は、これから薬学を学ぼうとしている学生でも理解しやすく、是非読んでいただきたい一冊です。

  • 2008/03/08 Books
    私家版・ユダヤ文化論 / 内田樹著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:山口 住夫

     みんなが知っている“ユダヤ人”という言葉。ではユダヤ人とは誰のことを言うのか?古くよりクニを持たず、世界中に分散して、各所で「守銭奴」と排斥を受け、差別され・・。いっぽうでは、「経済を支配している」とか、「天才が多い」と畏敬の念を抱かれながらも、誰もユダヤ人を定義できない。でも「彼はユダヤ人だ」という。そして「ユダヤ人は・・・・だ」という。
     著者は、あらゆる面からユダヤ人の定義を試み、なぜ迫害されるのかを30数年にわたって追求した結果、結局定義できないと“定義し”、かつその定義は、「西洋の思想を支配している“比較定義を基本とする論理性”に起因している」と結論した。
     この本は、高度の哲学的思考法=論理を駆使して考察された過程を詳細に述べており、論理の実践を楽しむつもりで読めば、かなりの思考力の訓練になるとお勧めする。

  • 2008/03/05 Books
    本調子 : 強運の持ち主になる読書道 / 清水克衛 [ほか] 著 ; 読書普及協会編

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:米沢 利広

     NPO法人読書普及協会が編集した初めての本です。読書の達人たちが、読書法について指南をしています。どうしたら人生を変えるような本と出会えるのか、成功する人はどんな読書法をしているのか、夢をかなえる読書法とは、読書を続ける読書力をつけるためには、などなどあなたの読書法も少し変わるかもしれません。
     読書普及協会(http://yomou.com/)では、推薦本も紹介しています。こちらでも楽しい本が見つかるかもしれません。

  • 2007/12/25 Books
    下流同盟 : 格差社会とファスト風土 / 三浦展編著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:築山 泰典

    休日、郊外の大型ショッピングセンターを利用することは、私にとって楽しみの一つである。しかし、この存在が地域の「商店街」を閉鎖へ追い込み、地域コミュニティの喪失につながっているとは考えてなかった。アメリカ型の「ファスト風土」の検証から、最近、聞かなくなったが現象としての「デフレスパイラル」を改めて解釈させてくれた。

  • 2007/11/07 Books
    「大人」がいない… / 清水義範著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:築山 泰典

    公共の場でも、携帯電話を見つめゲーム(モバゲー)に興じる「大人」をよく目にする。元来、ゲーム機とは子どものモノとの認識は既に過去の事になっていることを実感する。生物学的な大人と対する言葉は「子供」であるが、社会性からは大人に対し「大人でない」との解釈を本書では展開する。また、生物学用語である「ネオテニー(幼形成熟)」を用い、現在の日本社会での「大人」の解釈を進めていく。「若いですね」との言葉を「ほめ言葉」と解釈する日本人の国民性から、大人として持つべき思考性の在り方まで、「大人考」を促す書である。

  • 2007/10/18 Books
    現代芸術は難しくない : 豊かさの芸術から「場」の芸術へ / 田淵晉也著

    教員お薦めの本(人文学部)

    推薦者名:古川 智次

    伝統芸術は豊かさの芸術で、現代芸術は「場」の芸術であるという視点は新鮮である。著者はシュルレアリスムの研究者。本書では現代芸術の原点とも言うべきマルセル・デュシャンー男性用便器にサインをしただけの作品「泉」(1917年)はどの美術の教科書にも出てくるーに多くを割いているが、全体を通して解説は明解で説得力がある。文明社会における現代芸術の意義について、「現代に生きる者の生活を活性化する芸術、現代生活のなかのストレスを緩和し、生きのびる活力を注入するもの、それが現代芸術なのだろう。」と述べているように、本書は現代芸術論というよりむしろ、現代芸術文化論ともいうべきものである。現代芸術は難しいと考えている方に薦めたい。

  • 2007/10/12 Books
    Happiness : lessons from a new science / Richard Layard

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:米田 清

    あなたの人生の目的は、あなたが幸せになることです。さて、どうしたら幸せになれるか。それを科学的に追求してるのが、この本です。著者は経済学者ですけど心理学や生物学の最近の成果にも詳しく、すぐ使える知識や考え方が満載です。私が学生のときにこんな本があったら、迷いが少なく生きられたのになあ。この推薦を書いてる時点では和訳されていないようで、拾い読みもできますから、初めて英語で読む本としてもおすすめです。

  • 2007/08/31 Books
    交通死 : 命はあがなえるか / 二木雄策著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:森永 淑子

    交通事故による悲劇は後をたたず、遺族の声が報道されることも増えた。本書で著者は、子の事故死を契機とした保険会社との交渉、調停、刑事・民事裁判において交通事故がどのように「処理」されるかを、遺族の立場から丹念に叙述しつつ、感情論に走ることなく批判を加えている。近年の交通事故の厳罰化や、損害賠償に関する裁判実務の変化により、本書の内容は古くなった部分もある。しかし、交通事故に対していわば麻痺している我々の感覚への批判や、生身の人間であった被害者の死を機械的・定型的に「処理」することへの抵抗という本書が投げかけた問題は、今も我々の前に残されているのではないか。

  • 2007/08/31 Books
    悪魔に魅入られた本の城 = La biblioteca stregata / オリヴィエーロ・ディリベルト著 ; 望月紀子訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:森永 淑子

    19世紀ドイツの著名な学者モムゼンの蔵書が近年イタリアで次々と発見されたのは何故か?火災、ナチス・ドイツの人種迫害、盗難、図書館員の過失といった様々な要素が絡み合って、本が数奇な運命を辿ったことが明かされてゆく。単なる謎解き本とも読めるが、書籍の電子化や廉価古書店の繁盛等を背景として書籍もどんどん捨てられる現代において、知的遺産をいかに守るか、価値ある本をいかに見い出し保存するか、図書館の役割などについても考えさせられる1冊である。

  • 2007/07/09 Books
    スポーツを考える : 身体・資本・ナショナリズム / 多木浩二著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:藤井 雅人

    「スポーツを考える」。何をどう、そして何のために?こうした私たちの問いに、高名な思想家である著者は、(近代)スポーツの誕生・変革をその時々の社会の様相との関わりから読み解くことで答えてくれる。つまり、イギリスにおける文明化の流れの中でのスポーツの誕生、アメリカ大衆社会の文化としてのスポーツの変容・拡大、スポーツにおける女性の進出と性差の解消といった変化をたどってきた「スポーツを考える」ことが、実は「社会そのものを考える」ことに他ならないのだ、と。

  • 2007/07/05 Books
    医療倫理 / トニー・ホープ [著] ; 児玉聡, 赤林朗訳・解説

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:出石 宗仁

    精神科医で哲学者でもあるオックスフォード大学教授の著書「Medical Ethics」が最近邦訳されました。特に医学生にとっては、将来避けて通れない現実的な例を中心に多面的推論の仕方が紹介されています。量的にもコンパクトで、生物学や医学の知識が少しあるけれど、哲学や論理学を学んだことがないという人にも抵抗無く読める医療倫理学入門書として推薦します。

  • 2007/06/19 Books
    無形の力 : 私の履歴書 / 野村克也著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:豊村 伊一郎

     プロ野球、楽天の野村監督の生き方が披瀝された本である。著者いわく、「壁にぶち当たったときに私はいつも知恵をしぼってきた。どうしたら貧しさから抜け出せるか、どうしたらプロ選手として大成できるか」など。その時々の解決法を見いだすために彼がとった方法は関連した本を読むことであった。つまり情報を収集して問題解決に役立てたということである。情報が個人の頭脳に蓄えられればそれが知識となり、それを活用できれば知恵に転化できる。

  • 2007/06/13 Books
    健康・老化・寿命 : 人といのちの文化誌 / 黒木登志夫著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:斉藤 喬雄

    筆者は現職の岐阜大学長で、国際的にも有名ながん病理学者であるが、現在、医療や健康におけるさまざまな問題点を、筆者の経験などとともに歴史や文学などのエピソードを交えながら、堅苦しくなく興味深く綴っている。さらに、そのような視点から、学者としての立場に立って先進的な医学研究にまで触れている点、学術的な面での入門書としても優れている。学生のみならず、多くの人に勧めたい。

  • 2007/04/05 Books
    分子生物学の夜明け : 生命の秘密に挑んだ人たち / H.F.ジャドソン著 ; 野田春彦訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山野 茂

    本書は、分子生物学の黎明期におけるドキュメンタリーであり、遺伝子の本体と構造、遺伝暗号解読とリボゾーム、タンパク質の立体構造などの問題が解明されていく過程が、臨場感あふれるかたちで展開されています。本書から、分子生物学誕生の歴史的背景が分かるばかりでなく、当時の世界的に著名な研究者たちの着想から研究の展開方法を知ることは、特に研究を指向する薬学生にとって、意義あるものと考えます。

  • 2007/04/03 Books
    眼の誕生 : カンブリア紀大進化の謎を解く / アンドリュー・パーカー著 ; 渡辺政隆, 今西康子訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:上野 勝美

     地球46億年の歴史は,カンブリア爆発とよばれる5億4300万年前のできごとを境に2分される.この時,海生無脊椎動物の爆発的多様化が起こり,同時に多くの系統で硬組織(骨格)をもつグループが現れる.では,カンブリア爆発はいったいなぜ起こったのか?
     本書は,カンブリア爆発の原因に関する著者の仮説「光スイッチ説」を紹介した,科学的読み物である.それによると,三葉虫という海生無脊椎動物の1分類グループ(節足動物)が初めて「眼」を獲得,つまり太陽光線という視覚信号を本格的に利用し始めた.これにより捕食者・非捕食者の関係が突然激化し,それが主要な淘汰圧となりカンブリア紀はじめの海生無脊椎動物の爆発的進化を引き起こしたというのである.古生物学者が,残された数少ない「ピース」を手がかりに,どのように「パズル」を組み立てていくのかを肌で感じることができる本である.

  • 2007/04/02 Books
    光と物質のふしぎな理論 : 私の量子電磁力学 / リチャード P.ファインマン著 ; 釜江常好, 大貫昌子訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:御園 雅俊

    ファインマンは、くりこみ理論の研究により1965年にノーベル物理学賞を受賞した。この本は、そのファインマンが量子電磁力学を易しく解説したものである。ガラスによる光の反射のような身近な例から始まり、光と電子の相互作用や素粒子論までが、分かりやすく、楽しく書かれている。物理の楽しさを知る、あるいは再認識するのに好適。

  • 2007/04/02 Books
    チーム医療 : 薬剤師の果たすべき専門性 / 土田明彦 [ほか] 編著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:小野 信文

    病院における医療は、多種の専門性の集団の協力によって成り立っている。現代の医療の本質は、法律的にも医療人と規定されている医師・薬剤師・看護師が中心となり、他の臨床検査技師、放射線技師、管理栄養士などとチームを組み、総合的に地域の患者のために、安全で効果的治療を提供しなければならない。本書は、薬剤師がこの中でどのような専門性を発揮して行けば良いか、また如何に重要な役割を担っているを分かりやすく述べている。これから薬剤師を目指す人が一読すべき書である。

  • 2007/04/02 Books
    チーム・バチスタの栄光 / 海堂尊著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:小野 信文

    本書は、心臓移植の代替手術でむつかしくリスクが高い「バチスタ手術」を題材として、現役医師が著した医療ミステリーである。手術による患者の死の謎(医療過誤か殺人か?)に迫るスリリングな展開はコミカルで、肩の凝らないミステリーと云ってしまえばそれまでだが、医療現場がリアルに描かれていて、日本の現代医療の背景も見えてくる。

  • 2007/04/02 Books
    環境中の化学物質と健康 / 青木康展著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:安藤 功

    自らが創り出した化学物質により人の生活は豊かになりましたが,一方では健康リスクを負うことにもなってきました。公害病などで不幸な歴史に学び,現代社会が抱える諸問題をのりこえ化学物質と賢くつきあうための方法を提言しております。是非一読し化学物質に対する理解を深めて下さい。

  • 2007/03/15 Books
    あなたのなかのサル : 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源 / フランス・ドゥ・ヴァール著 ; 藤井留美訳

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:山口 住夫

    “サルでもわかる○○”なんて題の本がでていますが、そんなこと言ってほんとに大丈夫? 人間ってそんなに偉いの? 思いやりってほんとにヒトだけの能力なの? 霊長類研究の第一人者の著者に依れば、思いやりも、ヒトと仲良くするためにいろんな“付き合いの方法”を工夫するボノボ(チンパンジーによく似た霊長類)は、むしろ人間よりも“仲良くする能力”においてヒトよりも長けているかも知れないと、おもしろい観察をしています。

  • 2007/03/15 Books
    新・民族の世界地図 / 21世紀研究会編

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:山口 住夫

    イラクの問題から朝鮮付近に注目が集まろうとしている昨今、口ではみんな平和を唱えながらも、人間は本来戦っていなければ落ち着かないのかと、人間の本性に懐疑の念を抱きたくもなります。 本書は、地域ごとに、民族ごとに、歴史をさかのぼって、その成り立ちや、宗教の系統などを分析し、人類史何回かの民族移動と、それに付随する感情が、さらに経済的問題がこれに加わって紛争をさらに複雑にしていることを説明しています。

  • 2006/10/24 Books
    職業としての学問 / マックス・ウェ-バ-著 ; 尾高邦雄訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:鍵原 理人

    講演の記録である本書は70頁程度で比較的読み易く,学業に務めるを本分とする皆さんにこそふさわしいでしょう.「いやしくも人間としての自覚のあるものにとって,情熱なしに為し得る全ては無価値である」「人の『個性』はその仕事を通じて発揮される」など,心に刻みたい言葉に出会えるに違いありません.

  • 2006/10/10 Books
    正義論 / ジョン・ロ-ルズ著 ; 矢島鈞次監訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

     正義などというと現代では気恥ずかしく感じられるくらい、私たち現代人は共通の正義というものを見失ってはいないでしょうか。ジョン・ロールズはそのことに生涯をかけて取り組んできた研究者です。彼の出した答とは?私たち人類にとっての正義とは、最も恵まれない人の状態を最もよくするように最善を尽くすというものでした。彼がこの答にたどり着く道程には、社会科学の根本的な問題が見え隠れします。現在、訳書は絶版で入手できませんので、興味のある人は図書館から借り出して読みましょう。

  • 2006/10/10 Books
    道徳感情論 / アダム・スミス著 ; 水田洋訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

     人間がいかに利己的であろうとも・・・。この本の書き出しですが、皆さんはこの後にどういう言葉を続けますか?経済学の父として有名なアダム・スミスの出世作であるこの本は、自分のことをいちばん大切だと思う人間が、どうしたら人のことを考えて平和な社会を築くことができるかを語りかけます。人を自分のことのように感じる共感の感情は自分からの距離に反比例して小さくなっていきますが、その範囲は全人類に及ぶはずだ。スミスのメッセージは今も新しいのではないでしょうか。

  • 2006/10/10 Books
    プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 / マックス・ヴェーバー著 ; 大塚久雄訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:山崎 好裕

     神様の存在ような共通の価値を見出せなくなった現代において、人は社会の歯車として日々の生活をニヒルに送ることが多くなっていないでしょうか。そんな社会では多様な価値観がぶつかり合います。そんななか、私たちはどうやって力強く生きていけばよいのでしょう。100年前を生きたヴェーバーは、ギリシャ悲劇の主人公のように運命に翻弄されながらも、自らの判断を高く掲げて勇気をもって生きることを提案します。精神なき専門家が跋扈する時代の描写は、まるで現代のことのようでドッキリさせられるものです。

  • 2006/10/05 Books
    比類なき"トラブル事例集" : 40事例を徹底分析-あの事故の真相に迫る / 日経メカニカル編

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:森山 茂章

    壊れると分かっている機械を設計する技術者はいません.しかし実際には機械は壊れ,大きな事故となることがあります.安全な機械を設計するには,機械がどのように壊れるかを設計の段階で予想しなければなりません.そのためには過去に起きた事故を知る必要があります.本書には様々な事故の原因が具体的にわかりやすく示されています.これらの事例から「安全な設計」について考えて下さい.

  • 2006/10/05 Books
    「ご冗談でしょう、ファインマンさん」 : ノーベル賞物理学者の自伝 / リチャード・P.ファインマン著 ; 大貫昌子訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:井手 豊也

    ノーベル賞物理学者の自伝/ただ一人の人間が、一生の間によくもこれだけ傑作で、しかもとほうもない事件に出くわし、またこれほどのたくさんの悪気のないいたずらを思いついたノーベル賞物理学者。それでいて非常に暖かく人間味のあるこの本は、実にすばらしい読み物である。

  • 2006/10/04 Books
    自助論 / S.スマイルズ著 ; 竹内均訳

    教員お薦めの本(経済学部)

    推薦者名:鍵原 理人

    「天は自ら助くる者を助く」
    自分で自分を助けない人を一体誰が助けてくれようか.
    自分で自分を信じられない人を一体誰が信じてくれるだろうか.
    全ての基本は,自分の足で立つこと,「自立」にあります.
    この本を読んで是非自分を奮い立たせてください.元気が出ます.

  • 2006/10/04 Books
    エンパワーメントコミュニケーション : コーチング&カウンセリングのプロが書いた / 岸英光著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:小浜 輝彦

    コミュニケーションは我々にとってとても重要な要素であるにもかかわらず、学校や教育現場でその本質を本格的に学んだり、教わる機会はない。それゆえ社会に出ても対人関係や組織の中で自分がどう振る舞えばよいかに戸惑い悩む人も多いのではないだろうか。このニーズに反映してコミュニケーションに関する書籍はこれまで数多く出ているが、そのほとんどはテクニックに終始しており、表面的な対処療法のように思える。著者は、コミュニケーションによって人に結果を創り出す「コーチング」分野の第一人者であり、他書とは違った切り口でコミュニケーションの本質を鋭く捉えている。是非、一読、二読、いや百読してその本質に触れていただきたい。

  • 2006/10/03 Books
    グーグルGoogle : 既存のビジネスを破壊する / 佐々木俊尚著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:弘津 真澄

    日経ビジネス2006年9月25日号の特集「グーグルはなぜタダなのか」も一緒に読みましょう。

  • 2006/10/03 Books
    頭の体操BEST / 多湖輝著

    教員お薦めの本(商学部・商学部第二部)

    推薦者名:弘津 真澄

    記憶力偏重になりがちな定期試験の副作用を抑制するために・・・。

  • 2006/10/03 Books
    市塵 / 藤沢周平著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:井手 光治

    「読史余論」、「西洋紀聞」、自伝「折りたく柴の木」などの著書で知られる江戸中期の儒学者新井白石は、6代将軍徳川家宣の侍講を務め、また政治顧問でもあった。本書は、家宣のブレーンとして白石が関与したイタリア人宣教師シドッチ事件、朝鮮通信使応接の改変、貨幣の改鋳などの改革を軸に、白石の半生を描いた歴史小説である。藤沢周平独特の、巧みな構成と卓越した表現が光る。一読に値する作品である。

  • 2006/10/02 Books
    生命を探る / 江上不二夫著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山野 茂

    この本は、約40年前、著明な生化学研究者によって「化学の立場から生命の謎を探る」という主題のもとに著されたものです。18世紀終わり頃から始まった「生命の本質を探る研究」により、酵素、生体をつくる物質、エネルギ−変換、情報の伝達と発現などが明らかになる過程が分かりやすく書いてあります。古典的な書籍ですが、最新の生物学を学習する薬学生にも興味ある内容と思います。

  • 2006/10/02 Books
    義務とアイデンティティの倫理学 : 規範性の源泉 / クリスティーン・コースガード著 ; オノラ・オニール編 ; 寺田俊郎[ほか]訳

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:屋宮 憲夫

    萱野稔人「国家とは何か」で論じる国民国家の構造の中でも、国家・社会集団により形成される主体性ではない主体性、個々の価値観・正義感に基づく規範性(義務感)を我々は形成しうるのか。著者は、カントに依拠しつつ、自律的反省、自己価値の認識、「生きるに値する生」・「行うに値する行為」の自己認識(実践的アイデンティティ)、その実践的な自己構成、他者の存在価値の尊重による正義の普遍化について論じる。実践的アイデンティティは、国民国家的集団アイデンティティのあり方をこのような「近代の理想」に変容する可能性を持つだろうか。本書は大部の翻訳書であるが記述は具体的であり、他の倫理学者の見解と著者の回答も付され、秋の夜長にゆっくりと読み進めたい。

  • 2006/10/02 Books
    羞恥心はどこへ消えた? / 菅原健介著

    教員お薦めの本(スポーツ科学部)

    推薦者名:築山 泰典

    ”恥ずかしさ”は誰しもが経験するものである。しかし、この感覚には大きな個人差があり、同じ行動でも人によって恥ずかしいと感じない人もいる。また、学校教育の中で、体育教師には生活指導場面での役割が求められることが多い。この時、「恥ずかしくないのか?」との表現を用い、行動の変化を促す場面もあることでしょう。「恥ずかしいことを恥ずかしいと感じることの必要性」をもう一度考え、自身の行動を分析し”恥ずかしさと成長の関連性を考える機会”になればと、この本を推薦いたします。

  • 2006/10/02 Books
    テレビは戦争をどう描いてきたか : 映像と記憶のアーカイブス / 桜井均著

    教員お薦めの本(法学部)

    推薦者名:屋宮 憲夫

    戦後61年を経た暑い夏、総理大臣の靖国神社8.15参拝が注視され、その是非が問われるなかで、メディアは、あの戦争の実態と責任の問題、国家と市民との関わり(公と私のあり様)を例年に増して取り上げた。本書は、映像メディアとして今圧倒的な影響力を持つテレビが、戦争について何をどのように描き、何を描かなかったのか、という問いを過去のドキュメンタリーを素材として実証的に考察したものである。戦争とそのもたらしたもの、人間と社会・国家のかかわり方、これらの日本的特性、メディアの役割、限界とその克服を番組制作者である著者が具体的かつ重層的に論じる。読み進めやすく理解しやすい記述だが考えさせられる内容に満ちている。

  • 2006/10/02 Books
    エレガントな宇宙 : 超ひも理論がすべてを解明する / ブライアン・グリーン著 ; 林一, 林大訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:石黒 賢士

    相対性理論と量子力学、現代物理学の柱とも言えるこの二つの理論が、実は両立しない、つまり、この両方が完全に正しいということはあり得ないのである。アインシュタインをはじめ数多くの研究者たちがこの対立を解消しようと試みたが、挫折した。しかし、超ひも理論 (Super String Theory) という数学的理論の登場により、この物理学の難問は解決されるというのが本書の主題である。

  • 2006/10/02 Books
    みんな大好きな食品添加物 / 安部司著

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山野 茂

    私達が口にする加工食品には、栄養素以外に食品添加物という化学物質が入っています。食品添加物は、食品の保存や嗜好性を高めるといった目的で添加されていますが、全てが安全ではなく、安全性確保のために使用基準が定められているものがあります。この本では、食品添加物のセールスマンとして食品製造現場を見てきた著者が、驚くような食品添加物使用の実態を告発しています。

  • 2006/10/02 Books
    危険学のすすめ : ドアプロジェクトに学ぶ / 畑村洋太郎著

    教員お薦めの本(工学部)

    推薦者名:多賀 直恒

    安全と危険、成功と失敗、この対峙する言葉は、日常多く耳にする割には立ち入って一般の人は考えない。本書は具体的な事例を通して著者は物事との本質に迫り解明のための方法論を示しわかりやすくそのメカニズムを解説している。日本社会が失っている日本人の意識と行動の見直しをするため、失敗や危険を学んで成功・安全の鍵を知る道しるべとなる。工学部建築・多賀直恒・2006.9.26

  • 2006/10/02 Books
    蘭学事始 / 杉田玄白[著] ; 片桐一男全訳注

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:斉藤 喬雄

    解体新書の和訳をいかに苦労して行ったか、一部は中学校の国語教科書などにも登載されてよく知られた杉田玄白の回顧録であるが、医学だけではなく日本における近代的な科学の勃興を、江戸後期の蘭学者の事蹟を通して知ることができる。この文庫本では、現代語訳や原文のほか、玄白が蘭学事始を執筆し大槻玄沢などがそれを世の中に広めた事情が解説として丁寧に記されており、日本近代史の一面を窺う上でも興味深い。

  • 2006/10/02 Books
    医学の歴史 / 小川鼎三著

    教員お薦めの本(医学部)

    推薦者名:斉藤 喬雄

    古代の医療がどのようにして現在我々が学ぶ医学にまで発展したか、ヒポクラテスをはじめ多くの先人の業績を記しながら、医学の歴史を分かりやすく示した古典的な好著。ヨーロッパ、中国だけではなく、日本における医学の発展についても、かなりの部分を充てている。医学を志す学生には勿論、一般教養として医学の流れを知りたい人々にも推薦できる。

  • 2006/10/02 Books
    博士の愛した数式 / 小川洋子著

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:石黒 賢士

    第一回本屋大賞に輝く大ベストセラーであり、映画化され2006年1月に公開されたので、本書を記憶している人も多いだろう。記憶を失った天才数学者と幼い息子を抱えて働く家政婦の出会いと幸福な一年のラブ・ストーリー。随所に数学的事実が引用されているが、「博士の愛した数式」とはオイラーの公式と呼ばれるもので、複素数の世界において三角関数を "べき乗 " もしくは "指数" 関数に統一する美しい公式である。

  • 2006/10/02 Books
    素数の音楽 / マーカス・デュ・ソートイ著 ; 冨永星訳

    教員お薦めの本(理学部)

    推薦者名:石黒 賢士

    「数の原子」と呼ばれる素数の分布は予測不可能である。本書は、豊富なエピソードとともに世紀の謎「リーマン予想」に挑む。 混沌しか見えないところに構造と秩序を見つけようと幾多の研究者たちが心を虜にされた素数。「フェルマーの最終定理」以上の、世紀をまたぐ超難問を軸に、数学者たちの横顔と挑戦を描いていくノンフィクションである。

  • 2006/10/02 Books
    奪われし未来 / シーア・コルボーン[ほか]著 ; 長尾力訳

    教員お薦めの本(薬学部)

    推薦者名:山野 茂

    薬学部卒の女性科学者コルボーンの合成化学物質に関する膨大な論文の調査・分析から、恐ろしい事実が明らかになりました。それは、環境中の合成化学物質が、野生生物やヒトの内分泌系を撹乱し、生命の根源を脅かしているというものです。この本は、「内分泌撹乱化学物質」と呼ばれる合成化学物質の危険性や生命の謎に迫る科学ドキュメンタリーで、ミステリー風に仕立てあげられています。